仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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夏イベ始まる(`・ω・´)シャキーン
こっ、今回は大和きてくれたから! 大丈夫だから!

本日は二回更新で行きます。夜にもう一度更新します。


第126話「そして約束の海へ、再び」

Starring:神威

 

 南洋艦隊たちは、潮が引くように戦場から消えていった。

 

「きっと、提督ね」

 

 翔鶴さんが言う。アメリカ艦の人たちは「さすがにそれは」という顔をしているけれど、神威もそうじゃないかと確信めいたものがあった。

 

「無線妨害が切れてます。パラオより入電。敵艦隊は南東に離脱したそうです」

 

 サラトガさんが電信を読み上げ、緊張は疲れへと変わって行く。どうやら瑞鶴さんの言う通り、パラオ泊地の艦隊が、襲撃艦隊の背後を突いてくれたようだ。

 

 しかし危なかった。自分が持っているものを含め、砲弾は二割を切り、代えの利かない艦載機は四割も損耗。乗り手の妖精さんがいても、機体が無ければ戦えない。積む爆弾も魚雷も無い。

 北に逃げていたら、味方の拠点がない海域で物資不足になる可能性があった。

 

『こちら矢矧。そちらを電探で確認しています。あと二十二海里で合流です』

『ぴゃあ! 待たせてごめん! 物資も持ってきたよ!』

 

 歓声があがる。戦いは終わった。とりあえずは。

 

「ごめんなさい。アメリア」

 

 ささやいただけのつもりが、皆に聞かれていたようだ。レキシントンさんとコロラドさんが、進み出て神威と並び、祈る。

 

「今回はだめだったけど、次は」

 

 コロラドさんが告げた。そう、平和な海が来さえすれば。

 

「それじゃ、行きましょう」

 

 レキシントンさんが名残惜しそうに踵を返した時、なにか(・・・)が起こった。

 

「通信途絶! 翔鶴姉! そっちは!?」

「駄目! 繋がらないわ!」

 

 霧が立ち込め、電探が死んだ。

 

「偵察機を」

 

 サラトガさんが残り少ない偵察機を発艦させる。しかし高度を上げても(・・・・・・・)霧の上に出ない(・・・・・・・)

 

「急いでこの場から……!」

「待って。彼女たち(・・・・)が来た」

 

 瑞鶴さんの言葉をアオさんが遮った。そして、例の宝玉を掲げる。

 現れたのはイロハ級たち。みなアオさんに首を垂れ、ひざまずいた。

 

「これ、どう言うこと?」

 

 コロラドさんが問う。答えるアオさんに、焦りの色はない。

 

「記録にある。彼女たちは、古の同胞。まだ人間と戦うことを海神に命じられる前に、ここに()んでいた者たち」

()んでいた? なんで過去形なのですか?」

「彼女たちはすでに、この世にいない。これはワタシたち――現代(いま)の女王に何かを伝えようとした記録(ログ)を投影している」

「彼女たちは、どうしたのですか?」

 

 アオさんは、静かに首を振る。

 

「分からない」

 

 既に天寿を全うしたか、何者かに狩られたか。それは多分もう、誰も知らない。

 

 先頭にいたイ級が進み出て、何かを手渡した。

 

「パイロット用のゴーグル? これって」

 

 受け取ったアオさんはそれを掲げ、そっと神威たちに差し出した。

 

「おそらく、アメリアのもの」

「これが……?」

 

 静かに受け取る。グラスにはひびが入り、パッキンも痛んで、もう使えないだろう。

 

「覚えてる。アメリアの写真と一緒」

「じゃあ、彼女達は」

 

 アオさんは頷くとしゃがんで、イ級をそっと撫でた。しかしその手は頭をすり抜け、虚空を泳いだだけだった。彼女たちは記録でしかない。そう言うことだ。

 

「伝わった。そして記録した。彼女たちは、瀕死のアメリアを保護し、短い時間共に暮らし、言葉を交わした。でもアメリアは息絶えた」

 

 それが本当だとしたら、深海棲艦との時間はどのようなものだったのだろうか? 彼女たちがおこす火は暖かかったろうか? 食べ物を分け合ったりもしたのだろうか? お互いの歌を聞かせあったろうか?

 

「それは、なぜでしょう?」

 

 アオさんは直ぐには答えない。代わりに、再びイ級を撫でる。その手はやはり、空を流れた。

 

「分からない。記録も無い。でも想像は出来る。彼女たちは、伝えたかった。自分たちがここに存在したこと。自分たち以外のだれかと言葉を交わしたこと」

 

 アオさんは立ち上がり、そっと敬礼した。イロハ級たちもそれに応えた……かのように思える。きっと。

 気が付いたら神威は、いや艦娘たちは全員、彼女達に敬礼していた。

 

「彼女達も、きっと喜んでいる。かつてほんのひと時、深海棲艦(ワタシたち)と人間は共存できた。今この瞬間、こんどは艦娘たちとこの場にいる」

 

 ああそうか。この人たち(・・・)は、寂しかったんだ。やっとわかった。だから瀕死で波間を漂うアメリアを、放っておけなかった。

 

「終わらせましょう。戦争を」

 

 ほとんど無意識に口にした言葉は、期せずして、この場にいる全員の想いだった。なぜかイロハ級たちがほほ笑んだ気がした。

 

記憶(ログ)は持ち帰る。だから、また会おう」

 

 アオさんの言葉を待っていたかのように、それは消えて行く。

 

「ありがとう」

 

 言葉は広がる。そして霧は晴れ、彼女たちは、また記憶となった。

 

「さ、帰ろっか」

 

 瑞鶴さんが、いつもの調子で宣言する。

 大変な旅だった。でも大切な思い出になる。そんな確信があった。

 

 数日後、アメリアの遺品が本国に帰還し紙面を飾ることとなる。そしてそれは、艦娘たちと人間と、友好的な深海棲艦たちとの合同で行われたという事実。北洋艦隊との講和条約が交渉中であるという、戦時下に輝く希望と共に。

 

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