仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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今回はちと独自解釈入ります(今更ですが)

ちなみに私は推理もので犯人を当てられた記憶がない。卑怯技で、有名声優がモブを演じてると結構な確率で犯人だったりしますがw


第125話「名探偵コロラドは、迷宮入りを許さない」

11時6分 丹賑島(ニニギ)泊地

 

『ヒトヒトマルロク! 電なのです。駆逐艦寮のドラゴンボールを借りっぱなしの人は、返しておいて欲しいのです。暁がピッコロ大魔王をやっつけた方法を、早く知りたいそうなのです』

 

Starring:提督

 

「犯人はあなたよ、提督!」

 

 放送を聞いた瞬間、戦艦コロラドはびしっと俺を指差し、探偵ドラマのような宣言をした。俺は執務机のモニターから顔を出す。

 

「なんだよいったい?」

 

 俺は犯罪に手を染めた覚えはない。と思ったら、久我の件では大分やらかしたと思いなおし、口をつぐむ。それを見た彼女は、後ろめたさだと判断したらしい。不敵に笑う。

 

「あなたドラゴンボールが好きね?」

「そりゃあ、好きだけど」

「ルパン三世も好きよね?」

「まあ子供の頃から見てたしな」

「ルパンは泥棒よね?」

「そう、じゃないかな?」

 

 コロラドは、指を二本立てて、チチチッと振って見せた。

 

「証・明・終・了ね!」

「どこがだよ!? ぶっ飛び過ぎるだろ!」

 

 こいつ、アニメ好き全員を犯罪者にする気か。

 しかし、真犯人を告げる放送が、コロラドの推理を打ち砕いた。

 

『電なのです。本は秋雲さんが痛んだところを直してくれてたのでした。探してくれた人は、ありがとうなのです』

 

 俺は抗議の意を込めて。コロラドを見上げた。

 

「何か、言うことは?」

「……ざ、残念ね。トリックよ」

 

 それで済めば名探偵はいらねぇ。

 

 アメリカ艦の滞在期間が短くなってきたころ、追加要員でやってきたコロラドは、なぜか始終こんな感じだった。

 

 

 

「いいじゃない。彼女可愛いわよ?」

「うん、それに実力の方も、流石はビッグセブン。かなりの手練れだ」

 

 何となく彼女のことが話題に出た時、長門姉妹が言った。うん、まあ戦闘の力量に関しては、俺も一切疑ってないけどな。コロラドを見やると、彼女は六駆たちと二時間サスペンスのDVDを見てる。

 

「分かったわ! 最初に凶器を持って立っていた男が犯人よ!」

「それだとお話が成立しないのです」

「裏の裏ってやつよ!」

「あれっ、その人死んじゃったみたいよ?」

「それもトリックよ!」

 

 伝え聞くコロラドのパーソナルは、推理マニアなんて含まれていない。つまり目の前にいる彼女だけの個性と言うことになるが、いったい何があったんだろうか?

 

「あら、いいじゃない? 可愛くて」

「うん、そうだな。微笑ましい」

 

 再び姉妹は言う。首をかしげる俺に気付いたのか、長門姉妹が話しかけてくる。別に悪いと言った覚えはない。でも不思議は不思議だ。

 

「『可愛い』って、向こうもビッグセブンだぞ?」

 

 たしなめると、長門は不敵に、陸奥は愉快そうに笑った。

 

「性格と実力は別。演習の時は正々堂々――叩き潰すわ」

 

 陸奥の笑みに一瞬だけ、獰猛(どうもう)さが混じる。長門の方も余裕は崩さないが、戦いに臨む時の、威風堂々とした態度だ。

 

「どの道、手加減して勝てる相手じゃない。大和だって危ないな。彼女はまだカンが戻りきっていないから」

 

 それほどのものか。いや、最強の名をほしいままにした七人なのだから、当然なのかもしれない。

 

「でも、そんな強敵(ライバル)が急に推理マニアになった理由、気にはなるだろ?」

「それはそうねぇ」

 

 陸奥が頬に指を当てる。こんな仕草、似合う奴はそうそういないな。

 

「それはねっ!」

 

 話が聞こえていたのか、コロラドが立ち上がってびしっと指を差した。その相手は、長門ではなく陸奥。二人の因縁は、特に聞いたことはないが。

 

「真犯人を見つけるのよ! それで陸奥の不名誉を晴らすの!」

「陸奥の?」

 

 長門が首をひねる。陸奥本人はどうかと言うと、彼女も事情が呑み込めない様子。

 

「三番砲塔よ!」

 

 三番砲塔? そう言えば陸奥は、そこが原因で爆沈したんだったな。

 

「だって悔しいじゃない! 私のライバルが、虐めの仕返しで吹き飛んだなんて!」

 

 何となく読めてきた。

 陸奥は戦争中期、これからという時に瀬戸内海で謎の爆沈を遂げた。火薬の取り扱いに問題があったとか、色々言われているが、よく分かっていない。その中に虐めを苦にした水兵が、艦を道連れに自殺した、と言う説がある。

 

「海軍の虐めなんて胸糞悪いけど、日本海軍が水兵一人の仕返しで戦艦を吹き飛ばすような間抜けなわけないじゃない! 私のライバルはそんなチャチじゃないわ! 真犯人がいるはずよ!」

 

 なるほど。分かった。いや分からんが、彼女の奇行は、ライバルたちへの強い敬意から来ていることは分かった。

 

「ふふふ、ありがと。でも私は昔のことより、今のあなたと競えることの方が嬉しいわ」

 

 微笑む陸奥は、どこか嬉しそうだ。それは再会した古い友人が、自分との思い出を大切にしてくれた時のように。

 

「それは私も。でもそれはそれ、これはこれ」

 

 そう言った後、コロラドは誇らしげに胸を張って見せた。

 

「まあ見てなさい! 灰色の脳細胞をね!」

 

 彼女は再びびしっと陸奥を指さし、六駆たちの元に戻って行く。

 

「どう? 私の推理が当たっていたでしょう?」

「さっきからコロラドさんが推理した容疑者、端から殺されてるわよ?」

「そ、それもトリックよ!」

 

 まあ、いいか。何だか楽しそうだし、陸奥も嬉しそうだ。

 

「実際のところ? 真相は覚えてるのか?」

 

 ちょっとセンシティブな話題だったかと反省したが、陸奥は気にしない様子で、首を振った。

 

「柱島にいたら閃光がして、気が付いたらここにいたもの。別の艦隊の私なら、覚えてる子がいるかもしれないけど」

 

 陸奥は最後に付け加えた。

 

「どうでも良い、かな?」

 

 長門もそうだな、と応じ、二人はコロラドや六駆たちの輪に加わる。

 どうでもよい、か。全部吹っ切ってるんだな。

 

「ハラショー! 私の予想で当たりだったね」

「まさか祟りじゃーって叫ぶおばあちゃんが犯人とは意外だったわ。暁は分かってたけど」

「だーかーらー、トリックよ! まだ分からないわ!」

「もう放送時間5分しかないのです」

 

 実は、陸奥の爆沈については防大時代、教官に話を聞いたことがある。虐め説は可能性としてはないでもないが、限りなく怪しいそうだ。戦艦〔陸奥〕は初めから、内部からの攻撃を前提として設計されている。施錠され、警備が配置された第三砲塔に侵入するには至難の業。そして、風聞以外の証拠もない。

 

 コロラドに教えてやろうかと一瞬思って、止めた。俺がどうこう言うのは野暮だ。

 彼女ならいつか、真実を突き止めてくれるかもしれない。情熱は、灰色の脳細胞に勝るってな。

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