夏イベにむけて、頑張っていきます。
『ヒトヒトマルマ……ゴンッ! ザザー』
『妙高姉さん、そんなマイクに近づかなくてもいいから! お
『そうなんですね。では……ゴンッ! ザザー』
『あー、重巡那智だ、代わりに読み上げる。本日ヒトハチマルマルより米国艦たちの送別会を行う。任務のない者は出席するように。鳳翔や大和は、かなり張り切っているから期待して良い、とのことだ』
11時00分 執務室
Starring:提督
「提督、Intelligenceを借りたいの!」
「……ぽい!」
帰還を控えた米国艦たち一行が、いつの間にか仲良くなった暁と夕立を引き連れてやってきた。ある「お願い」のためだった。
「……なんで俺がそれをやるんだ? 別に直接伝えればよくない?」
もっともな疑問だと思うのだが、暁がそれは駄目と首を振る。
「そこは、アトランタもレディのプライドがあるし」
「Meたちが言ったら、絶対Run Awayするから」
「確かになぁ」
相談の内容はこうだ。今回の件でアイオワを心配してくれたこと、久我の侮辱から暁と夕立を庇ってくれたこと。諸々を感謝の気持ちを返したい。でも問題は、彼女は絶対逃げると言うことだ。
「司令官なら適任よ。暁が認めるから!」
「気軽に言ってくれるなぁ」
そもそも、彼女はなぜそこまで他の皆との接触を避けるのか。それを判断する材料は、俺にはない。
「私の推理では、アトランタは何か悩みがあって苦悩しているのよ!」
どこかの政治家みたいなことを言うコロラドはスルーして、原因を考える。
「そもそも任務では連携取れてるんだろ? 無理強いして輪に入れることないんじゃないのか?」
俺も防大時代、手のかかる後輩二人がいなかったら、多分ぼっちだ。
「いつもはSilentにしてるわ。でもこのままじゃGoodじゃないわ。あなたが大切ってことだけ伝えたいの」
「アトランタさんは夕立たちをかばってくれたっぽい。でもお礼を言おうとすると逃げるっぽい」
まあ言いたいことは分かった。彼女たちはアトランタを輪に入れたいんじゃなくて、「輪に入ってなくても大事な仲間だから」と伝えたいだけなんだな。
だけどまあ、言われる方になると相当に照れくさいだろうかなぁ。南部のやつが「先輩、あなたが大切です!」とか真顔で行って来たら
「実は私にいい考えがあります」
レンジャーが進み出る。艦歴の長い彼女だから、米海軍伝統のコミュニケーションスキルとか、そう言うのを期待したのだが。
「この国には素晴らしい文化があると知りました。卓を共にすることで
「
「却下ですね」
「推理は必要ないわね。却下よ」
全員からノーを突きつけられ、彼女は肩を落とした。そりゃあここ数日、隼鷹や千歳たちとやらかしたアレコレを知ってりゃなぁ。
結局、俺がやらないといかんらしい。
「分かった。とにかく話しておくが、彼女が嫌がるようなら俺も深入りはしないからな」
場の空気が明るくなる。もう大丈夫だと言わんばかりだが、そこまで俺を信頼する原資は何なんだ?
「提督さんも大好きっぽい!」
夕立が大げさに手を広げ、俺は苦笑する。のだが、艦娘たちは少し驚いた表情で彼女を見やり、何人かにやにや笑いを浮かべる。
「私の推理が正しければ、夕立は――」
「やめましょう。野暮ですよ」
何か言い出したコロラドに、サラトガが人差し指を唇に当てた。
そんな大げさな話でもないと思うんだがな。
「とりあえず送別会に参加するように頼んでみるから」
また安請け合いしてしまったようだ。安心した艦娘たちは、お礼を言って執務室を出て行く。
何故か今日も、赤城の機嫌が悪かった。
12時04分 閑閑亭
「すみません許してください何でもしますから」
両手を合わせてお辞儀する俺に、アトランタは大げさにため息をついた。
「頼むよ。送別会出てくれないか? サラトガ辺りに頼んで、皆が暴走しないように頼んでおくから」
「そう言うのって本人の前でいきなり言うの? 話をして打ち解けるとか、サプライズとか、そう言うのじゃないの?」
それは十二分に承知しているが、何しろ明朝ハワイに向けて抜錨だからな。時間がないし、それに多分、これでいいんじゃないかと思う。
「ここに来るまでの俺がそうだったから分かるんだが、お前もサプライズとか嫌いだろう?」
「うん、まあそうだけど」
歯切れが悪いが、肯定だろう。
「かと言って相手が嫌いってわけじゃない。心の準備なしに、グイグイ来られるのが嫌なだけだ」
だから単刀直入に話をして、事情を汲んでもらうのが誠実だと感じたのだ、のだが。
「……放っておいてくれればいいのに」
すげない返事だった。まあそう言われるとは思ってたよ。俺は、多分どちらの気持ちもわかる立場にいる。
「ここが普通の職場ならそれでいい。でも俺たちは、一時の別れがそのまま一生、ってのは普通にありうる。だからあいつらのささやかな言葉だけ、受け取ってやってくれないか?」
アトランタは沈黙する。思考を遮られるのが好きじゃないのは、彼女じゃなくてもそうだろう。俺はただ答えを待つ。
「提督さんは……」
「ん?」
彼女はそっと語り出す。どうやら俺は、それを話してもらえる程度には信頼を得たらしい。
「提督さんはさ、考えたりしない? 自分が死んじゃって、そのせいで自分の
皆が必死に戦っている時に、自分は海の底で、駆け付けることができなかった。その後悔を抱えて、今も戦っている。サバイバーズ・ギルトの裏返しだ。俺は”残されて”しまった。彼女は自分が”残して行って”しまった。合わせ鏡のようだとも思う。
「俺の事情は、全部知ってたわけだ」
アトランタは頷く。若干の罪悪感を感じた。
「こっちに来るとき、Admiralから。よく話してみろ。自分と向き合えるから、って」
まあ別に隠してるわけじゃない。ここじゃ皆知ってるし。
「この姿になった時、アイオワとか本当に嫌だった。なんで一番苦しい時に、ソロモンに来てくれなかったのに、後から来て最強だなんだって。でもいいやつだった。あいつも辛いって分かったし。そうしたら、誰に気持ちをぶつけたらいいか。分かんなくなった」
つまりこいつは、果てしなく優しいのだ。だからこそ周りに人が寄ってくるけど、距離感がうまくつかめない。
「そっか。でも良いんじゃね?」
「……なにが?」
聞き返すアトランタはどこか不満顔で、おかしくなってしまう。こいつは優しいだけじゃなく意外に感情豊かで、それを隠すつもりで隠してない。夕立も暁も放っておかないわな。こういうキャラのやつは。
「俺は今確かにここにいることが幸せだと思うし、お前も一歩踏み出す方がいい気もするけど、一足飛びを強要しても疲れちゃうだろ」
「それは、まあ」
やっぱり不満そうな返事。つまり皆と仲良くしたいのが丸わかりなのだ。
「じゃあこうしよう。小さくて地味な一歩として、俺を練習台にする。任務外ならため口も許可。変な渾名もつけていいぞ? 漣のやつにもご主人さまとか読んでくるし。今更だしな」
三度アトランタは不満そうに唇をへの字にする。言葉にするなら「なにいってんだこいつ?」と言ったところだろう。
「いいじゃないか。”
我ながら名案のつもりだったが、先ほどと打って変わって、彼女はくくく、と笑い出した。
「なんか、馬鹿らしくなっちゃった。今晩の送別会、出ることにする」
「おう、そりゃいい考えだ。まあ悪いようにはしないよ」
アトランタはしばし考え、ペンを取り出す。紙ナプキンにさらさらと何か書いて、俺に差し出した。
「じゃあ一歩を踏み出す。責任はもってもらうから」
視線を落とすと、それはメッセージアプリのアカウント名だった。
「連絡した時、返事はなるべく早くね」
早く登録しろと、彼女はぴらぴらと紙ナプキンを振る。事情は分からないが、俺はスマホを取り出した。
「分かってるだろうが……」
「検閲は入るんでしょ。大丈夫」
「いったい何でそんな話になったんだ?」
アトランタはぺろりと舌を出す、と言うたいへん彼女らしくない仕草だったが、何故か違和感を感じなかった。そして、俺を満足そうに眺める。
「まずはね。知ってみたいと思ったから」