夏イベも始まりましたね。当方まだ手付かずです。今度こそ後段も突破します(`・ω・´)シャキーン
いきなり暑くなりました。健康管理と水分補給にはお気をつけを。
※タイトルのナンバリングがまたズレていたので修正しました。すみません(;´Д`)
第128話『宣戦布告』
呉 『ひぐれ食堂』
Starring:提督
突然だが、俺はラーメンが好きだ。
家系なんかも好みだが、死ぬ前に食べる一杯を敢えて選ぶとしたら、尾道ラーメンだろう。最近じゃいろんな店が参入してきたが、動物系のタレは焼きそばで食べた方が好きだ。やっぱり魚介系スープと豚のヘッドを合わせた昔ながらのがいいね。
勘違いしないで欲しい。俺は他のも好きだ。その上で昔ながらのが一番好きだと言っているだけなのだ。
「そう思わんか?」
水を向けた相手は、苛立たし気に俺を見やり、お冷をごくりと飲んだ。
「そう邪険にするなよ。これからの戦いを前に、健闘を称え合おうと思ってきたんだ。久我大佐」
苦虫をかみつぶしたような顔を無視して、俺は大盛ラーメンを注文する。久我のやつもいい店を知ってるもんだ。これからも使わせてもらおう。
それにしても、こいつもラーメン好きとはなぁ。変なところで共通点である。
「では大盛ラーメンと大盛焼きそばひとつずつ。餃子三皿で」
「漣は、普通のラーメンでいいです。あ、ごはんきぼんぬです」
お気に入りの店を我が物顔で注文しまくる俺たち三人に、久我は小さくため息をついた。悪いが、この程度の嫌がらせはさせてもらう権利はあるだろう。
「で、何だね?」
久我
「会談前に、あんたのことを知っておこうと思ってな」
既にアオ――深海女王や綾郷大将、先輩は現地入りして外務省や各国の役人と会談を繰り返している。まだ何とも言えないが、今回の講和条約締結は、双方に理がある。悪くない滑り出しだと思う。
そして明日から始まるのが、艦隊総司令の
ここで海軍の意思統一が図れれば、講和条約は一気に前進する。
「甘い男だな」
久我は言う。それは自覚している。ここまでされた相手がどんな人間か、知りたくなることも。
「君や綾郷の『計画』とやらは詳細まで把握している。いい加減”装備品”に特別な感情を抱くのはやめ給え」
装備品、か。まあ彼女たちを知らない軍人は、もしかしたらそのように思うかもしれない。
「なぜ、そこまで
久我を軽蔑しきっている赤城は、彼に視線すら送らない。ただ餃子にたれをちょんちょんつけながら尋ねた。
これには久我も
「敵視はしていない。ただ、戦をするには武器ではなく人間だという信念はある」
「どこかのSFアニメみたいです。ネタが更新されてないと思われです」
漣も、視線を合わせずずるずると麺をすする。久我にしてみればさぞ不快なことだろうが、多分この二人は分かってやってるな。
「あんた、
艦娘二人は、驚いて今度こそ久我を見た。それならばなぜ? そう思っていることだろう。彼は能面のように、日本酒のコップに手を伸ばした。
「私も君と同じだ。防人の両親に憧れて育ったよ。だが両親の死と、現場で思い知った。娑婆の人間は、今まで散々冷や飯を食わせていた自衛官を、役立たずとなじった。艦娘がいれば、我々は要らない、とな」
「……軍人の宿命だ」
俺だってそれは納得していない。だが俺にも理想はある。横須賀の金剛と腕を組む、気弱で優しそうな青年の写真。俺はそれを当たり前の光景にしたい。
「艦娘に入れ込むのは結構。だが誰か冷静な人間もいるべきだ」
それも同意だ。俺だって艦娘に無批判な世の中は望んじゃいない。だが彼の言葉に、俺は違うものを感じた。能面の奥底に、潜んだ”何か”を。
「あなた、裏切られるのが怖いんじゃないですか?」
赤城が言った。相変わらず視線はラーメンを向いている。
そうか。その考えならしっくりくる。こいつもきっと、色々あったんだろう。
「久我、悪いことは言わない。呉の艦娘たちと腹を割って話してみろ。まだ間に合う」
彼は静かにコップを置き、立ち上がる。
「メンテナンスと言うものは、人間が装備品にやるものだ。逆ではない」
俺も日本酒に口を付ける。予想通りの決裂だが、久我と言う人間を俺は嫌いきれなくなっていた。同じような苦しみを味わったであろうから。
しかし俺は、家族を守らなければならない。
「残念だ」
振り返り、正直な気持ちを一言だけ、告げた。久我は何も言わず、店を出て行く。
ラーメンは旨いままだが、どこか味気ない。全てが片付いたら、もう一度来ようと決めた。