仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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最終章開始です! 提督たちと、艦娘の反撃が始まります!

夏イベも始まりましたね。当方まだ手付かずです。今度こそ後段も突破します(`・ω・´)シャキーン

いきなり暑くなりました。健康管理と水分補給にはお気をつけを。

※タイトルのナンバリングがまたズレていたので修正しました。すみません(;´Д`)


第七章「提督たちの一番長い日」
第128話『宣戦布告』


呉 『ひぐれ食堂』

 

Starring:提督

 

 突然だが、俺はラーメンが好きだ。

 家系なんかも好みだが、死ぬ前に食べる一杯を敢えて選ぶとしたら、尾道ラーメンだろう。最近じゃいろんな店が参入してきたが、動物系のタレは焼きそばで食べた方が好きだ。やっぱり魚介系スープと豚のヘッドを合わせた昔ながらのがいいね。

 勘違いしないで欲しい。俺は他のも好きだ。その上で昔ながらのが一番好きだと言っているだけなのだ。

 

「そう思わんか?」

 

 水を向けた相手は、苛立たし気に俺を見やり、お冷をごくりと飲んだ。

 

「そう邪険にするなよ。これからの戦いを前に、健闘を称え合おうと思ってきたんだ。久我大佐」

 

 苦虫をかみつぶしたような顔を無視して、俺は大盛ラーメンを注文する。久我のやつもいい店を知ってるもんだ。これからも使わせてもらおう。

 それにしても、こいつもラーメン好きとはなぁ。変なところで共通点である。

 

「では大盛ラーメンと大盛焼きそばひとつずつ。餃子三皿で」

「漣は、普通のラーメンでいいです。あ、ごはんきぼんぬです」

 

 お気に入りの店を我が物顔で注文しまくる俺たち三人に、久我は小さくため息をついた。悪いが、この程度の嫌がらせはさせてもらう権利はあるだろう。

 

「で、何だね?」

 

 久我広路(こうじ)大佐は、不快そうではあったが、俺たちの振る舞いが興味深くもあるらしい。直ぐに調子を取り戻して、日本酒を二人分、注文した。場所を取ってしまうから、店への迷惑料であろう。

 

「会談前に、あんたのことを知っておこうと思ってな」

 

 既にアオ――深海女王や綾郷大将、先輩は現地入りして外務省や各国の役人と会談を繰り返している。まだ何とも言えないが、今回の講和条約締結は、双方に理がある。悪くない滑り出しだと思う。

 そして明日から始まるのが、艦隊総司令の無田口(むたぐち)蓮司(れんじ)大将との会談だ。……確かに名前は悪いが、無能な人ではない。有能かどうかは、まだよく分からないが。

 ここで海軍の意思統一が図れれば、講和条約は一気に前進する。

 

「甘い男だな」

 

 久我は言う。それは自覚している。ここまでされた相手がどんな人間か、知りたくなることも。

 

「君や綾郷の『計画』とやらは詳細まで把握している。いい加減”装備品”に特別な感情を抱くのはやめ給え」

 

 装備品、か。まあ彼女たちを知らない軍人は、もしかしたらそのように思うかもしれない。

 

「なぜ、そこまで艦娘(私たち)を敵視するんです?」

 

 久我を軽蔑しきっている赤城は、彼に視線すら送らない。ただ餃子にたれをちょんちょんつけながら尋ねた。

 これには久我も(かぶり)を振る。

 

「敵視はしていない。ただ、戦をするには武器ではなく人間だという信念はある」

「どこかのSFアニメみたいです。ネタが更新されてないと思われです」

 

 漣も、視線を合わせずずるずると麺をすする。久我にしてみればさぞ不快なことだろうが、多分この二人は分かってやってるな。

 

「あんた、親も自衛官(カンピン)なんだってな。俺がPTSDなった小笠原の海戦で、ご両親ともに戦死されたとか」

 

 艦娘二人は、驚いて今度こそ久我を見た。それならばなぜ? そう思っていることだろう。彼は能面のように、日本酒のコップに手を伸ばした。

 

「私も君と同じだ。防人の両親に憧れて育ったよ。だが両親の死と、現場で思い知った。娑婆の人間は、今まで散々冷や飯を食わせていた自衛官を、役立たずとなじった。艦娘がいれば、我々は要らない、とな」

「……軍人の宿命だ」

 

 俺だってそれは納得していない。だが俺にも理想はある。横須賀の金剛と腕を組む、気弱で優しそうな青年の写真。俺はそれを当たり前の光景にしたい。久我(こいつ)のような苦しみを出さない。艦娘と深海棲艦、人間が共存する世界を望んでいるのだ。

 

「艦娘に入れ込むのは結構。だが誰か冷静な人間もいるべきだ」

 

 それも同意だ。俺だって艦娘に無批判な世の中は望んじゃいない。だが彼の言葉に、俺は違うものを感じた。能面の奥底に、潜んだ”何か”を。

 

「あなた、裏切られるのが怖いんじゃないですか?」

 

 赤城が言った。相変わらず視線はラーメンを向いている。

 そうか。その考えならしっくりくる。こいつもきっと、色々あったんだろう。

 

「久我、悪いことは言わない。呉の艦娘たちと腹を割って話してみろ。まだ間に合う」

 

 彼は静かにコップを置き、立ち上がる。

 

「メンテナンスと言うものは、人間が装備品にやるものだ。逆ではない」

 

 俺も日本酒に口を付ける。予想通りの決裂だが、久我と言う人間を俺は嫌いきれなくなっていた。同じような苦しみを味わったであろうから。

 しかし俺は、家族を守らなければならない。

 

「残念だ」

 

 振り返り、正直な気持ちを一言だけ、告げた。久我は何も言わず、店を出て行く。

 

 ラーメンは旨いままだが、どこか味気ない。全てが片付いたら、もう一度来ようと決めた。

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