今回のお話は、構想初期からずっと書きたかったエピソードです。どうぞお楽しみくださいヾ(*´∀`*)ノ
Starring:提督
『市民の皆様にお知らせです。呉市全域に空襲警報が発令されました。今西通り、倉本通りを中心に、深海棲艦が出現しました。該当地域の方は、地下壕に避難するか、海軍もしくは艦娘の保護を受けてください。それ以外の地域の方は、決して外出せず、屋内へ留まってください。繰り返します――』
一瞬、着弾かと思い、反射的に伏せた。しかし爆風はこない。よたよたと立ち上がる俺の頭上には、複数の
「走れ! 走って逃げろ!」
頭を抱えて地面に伏せていた市民たちは、我に返って走り出す。だが獣は、後ろを向いた者を狙う。例えば老人や子供。しかも相手は軽自動車ほどの陸上型深海棲艦。
長谷部の顔が浮かんだ。ここで逃げる選択肢なんて、きっとないよな。それは呪いだったけど。そうせざるを得ないのだ。
「走れ! 走るんだ!」
拳銃を抜いて走る。全体重を乗せての体当たりは、あえなく弾き飛ばされて終わった。今更ながら、赤城と漣を遠ざけた不手際を呪う。それでも俺は立ち上がり、効かないと分かっている銃を向け、発砲する。
陸上型の注意がこちらに向いた。よたよたとその場を離れる老人たち。乳母車から赤ん坊を引っ張り出し、必死に逃げるご夫人。
だがそれは全員ではない。
八千草さんがいた。子供を必死に引きずって、後ずさりをしている。子供が怪我をしているのか!?
長谷部のやろぉ! 死んでからも手かけさせやがって!
俺は再び走った。更に二発、発砲する。さっきは三発撃った。もう四発しか撃てない。やつの顔が、口が、牙が迫る。
動物の死骸が自動車に踏みつぶされるような。乾いて、気持ち悪い音がした。それが何か認識する前に、身体が左右に揺らされる。
そこで俺は、陸上型が俺の左腕に歯を食いこませ、身体を振る。引きちぎろうとする気だ。痛みはない。でもきもちわるい。叫び散らして我を忘れたい。そんな誘惑を、辛うじて抑え込む。
最後のチャンスだ。俺は両足に力を込めて、左腕に食らいついて左右に振れる頭部に、身体を押さえつける。まだ生きている右手、それが握った銃口を、陸上型の目に……押し込んだ。
猛獣だろうと、深海棲艦だろうと、目は脳と直結している。拳銃弾だって、そこに一発撃ち込めば、あるいは。
拳銃が小さな銃声をあげるのと、俺が跳ね飛ばされるのは同時だった。地面にぶつかるまでに、俺の左腕を咥えた陸上型が、ゆっくり
ははっ、俺の勝ちだ。
やるべきことはやったぞ。もう俺は――。
「津田さん! ごめんなさい! ごめんなさい!」
俺のベルトを引っこ抜いて、必死に左腕を止血しようとする八千草さんがいた。いいんですよ。名付け親の責任ですから。俺は長谷部の、先輩ですから。
『私たちが恐れるのは、失望する事ではありませン。悲しみを受ける事デース』
金剛の声が聞こえた。そうだな。俺がやるべきことは、
でもそれでも、気付けた。これでやっと。俺は皆のところへ。
だったら、死ねないな。ぜったい、しネない……。