仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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E2-3が突破できない。前段ってレベルじゃねーぞ…(;´Д`) あと新艦が一人も来てくれない地獄……。まあ、月末まであがいて、楽しく苦しむ事にします。

さて、講和会議の会場です。無田口大将のヴィジュアルはまんま「しかしねぇ」のおじさんです。分かる方はあの顔を思い浮かべながらご一読ください。


第132話『混迷する講和会議』

呉鎮守府中枢 地下会議室

 

Starring:アオ

 

 一体、外では何が起きているのだろうか?

 

 呉鎮守府は、自分たち深海棲艦との戦争が始まり、東京が爆撃されてから急ピッチで司令部の地下要塞化が行われたという。もしかしたらだが、今度こそ東京が壊滅したら、政治の中枢がここに移ることも想定しているのかも知れない。

 その鉄壁の司令部中枢は、建造早々に破られようとしていた。

 

無田口(むたぐち)さん、いい加減約束していただきませんかね? こんな茶番で日本の未来をふいにする必要はないはずです。あなたの進退も』

 

 もう何度目の要求だろうか? スピーカーから流れる、久我(クガ)広路(コウジ)大佐の言い草の方が、よほど茶番である。講和交渉の白紙化と「提督」という役職の廃止。アオやアヤゴウにとっては、到底飲める条件ではない。

 会談が始まる直前のことだった。突然、外と繋がる鋼鉄製の扉が閉じられた。どうやら向こう側に土嚢でも積んで物理的に開かないようにしたらしい。平和を語る場は、もはや生き死にが関わる最前線と化したと言っていい。

 

 この場にいるのは、アオと護衛の空母棲姫。そして無田口大将を始めとした、人間の上級将校たち。アヤゴウは横須賀の長として参加しているが、コバイツキはいない。公式には行方不明だからだ。外への回線は全て遮断されていた。

 

 そして海軍のトップは、クガの意図を見抜いて引き延ばしているのか、単純に決める勇気がないのか。彼は相変わらず、煮え切らない返答をした。

 

「しかしねえ。戦争は金がかかるんだよ? そんなものが続いたら私の退職金も危ないのだから」

 

 まだ余裕があるのか、アヤゴウがふっと失笑した。

 神経が苛立つような物言いをよくしゃべるムダグチ司令に、クガの語気がわずかに荒れる。

 

『よく喋る……いいだろう。また一時間時間をあげよう。一秒過ぎるごとに君たちは不利になるがね』

「しかしねぇ。和平のチャンスを見逃したら、私の天下りの話は無くなるのだから」

 

 受話器を叩きつける音がして、通信が止まる。下品にも唾を吐いた佐官もいる。

 

「ニンゲン、分かっているのだろうな? この件は条約を白紙に戻しかねない失態だぞ!?」

 

 食ってかかったのは護衛役の空母棲姫。発言は許していなかったのだが、我慢できなくなったらしい。

 

「落ち着くように。この問題は人間だけの話ではない」

「しかし、お(ひい)さま!」

 

 それだけ告げると、人間たちは感謝するように頭を下げた。

 

「これは、講和反対派の思惑が入り乱れている。恐らくこちらにも」

 

 情報のリークは、人間側だけとは限らない。彼らもそれに気づいているだろう。責任問題をあれこれ口にしないだけでも、この場の人間たちは信用に値した。ムダグチと言う男も、粘り腰は評価できそうだ。ツダヒロム曰く、「彼は名前が悪いだけ」そうだが。それに関してはよくわからない。

 

「女王陛下。装甲破砕の解除はいつ頃になりますか?」

 

 盗聴の恐れを気にせず、アヤゴウが問う。確かに自分と空母棲姫の破砕が解ければ、強行突破も可能かもしれない。だが相手もそれを織り込んでいるはず。

 

「あと三時間はかかる」

 

 誠意を見せるつもりで破砕状態でこの場に臨んだのは失敗だったろうか? いや、上位の深海棲艦が人間と同席しても、対等な話し合いなど成立しない。避け得ない措置だった。

 アヤゴウが、鋼鉄の扉を忌々しそうに見やる。あれを破れればまだ可能性は残されているのだが。

 

「綾郷大将、見解を伺いたい」

 

 参謀長の津路(ツジ)大佐が問う。アヤゴウは悔しそうに答えた。

 

「恐らくですが、時間稼ぎをしているのは我々だけではありません。彼らに私たちを生かすメリットは薄いです。例えば何らかの方法で我々を吹き飛ばし。それを北洋艦隊の陰謀にして講和条約を物別れに終わらせる、などです」

「けしからんですな」

「困ったねぇ」

 

 司令と参謀長は何を考えているか分からないが、取り乱すことはなかった。

 

 ガガガッと、不快な機械音がした。防音の整ったこの部屋で聞こえてくるのはおかしいと思ったら、聞こえてきたのはスピーカーからだった。人間の作法は分からないが、何かの脅しのつもりらしい。ツジ大佐がうるさそうに手を振った。

 

「おおかたドリルか何かで穴をあけ、爆薬を突っ込んでここを吹き飛ばす気でしょう。それを深海棲艦の責任にする。条約はご破算です」

 

 アヤゴウが言う。それはまあ最悪であった。

 

「対策は?」

「ありません。しかし、既に部下が動いております。彼らならひっくり返してくれるでしょう」

「ふむ、つまりここでの時間稼ぎは正解というわけだね?」

「そうなります」

 

 そうと分かるとムダグチは大口を開けて欠伸をした。

 

「津路君、また久我大佐が何か言ってきたら対応してくれ。私は寝る」

 

 そう言ってムダグチ大将は、空いた椅子を並べ始めた。ベッドにするらしい。佐世保の司令が呆れた顔をしたが、よく考えたら何もできないとき、この態度は望ましい。

 

「お任せを! 神聖なる呉鎮守府の赤煉瓦にドリルで傷つけるなど、許しがたい。一言言ってやります」

 

 ツジ大佐も完全にずれているが、どうせ合意できない交渉である。適当にやって構わないだろう。

 

「人間たちのふてぶてしさ、学習した」

 

 ツダヒロムが浮かんだ。とコバイツキも、事態解決に奔走しているだろう。

 

 自分の為に動いてくれているとはいえ、もしツダヒロムがこの場にいてくれれば、アオの言動に右往左往して、緊張を解いてくれるだろう。そうしたら自分は、女王の重責からわずかな間解放されるのに。

 

 ただ彼の声が聞きたかった。

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