仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

134 / 134
本日は夜まで用事なので、午前更新です。

さて、毎日暑いですね。皆様も無理せずご自愛ください。そして私、体調を壊す(´;ω;`)
イベントは現在E3-1っす。まだ慌てる時間じゃない。友軍も苦し(震え声)

さて、今回もとてもとても大切な回です。津田がある決断をします。その後悪乗りもしますが。流行のネットミームは嫌いですか?



第134話『最後の謝罪』

Starring:赤城

 

●呉市役所地下 緊急避難所

 

 病室の外に立つ艦娘たちが、一斉に敬礼する。赤城はそれで初めて、自分の宝物が皆の宝物になったと気付いた。漣も頷く。

 

「必ずお守りいたします!」

 

 敬礼する呉の親潮には、ただの上官には感じさせない熱があった。早潮ら、他の者たちも同じだ。戦う者特有の、最大限の敬意だった。

 

 名将云々ではない。任地に居たいが為に出世ルートを蹴り、仲間の危機に激怒して中央と喧嘩をし、そして今、重症の中で戦いをやめない。全て艦娘と共にありたい為に。

 そんな提督は、全ての艦娘にとって、理想そのものだったから。

 

「呉鎮守府の、誇りにかけて」

 

 赤城も、漣も答礼した。嫌な気はしない。いや、何より誇らしい。

 

「じゃあ、皆準備をお願い。あと赤城。ちょっとだけ耐えて」

 

 木葉司令官の声がした。振り返るとそこには彼女と、子供を抱いた八千草仁美だった。

 

 彼女は静かに頭を下げる。言葉での謝罪はなかった。謝罪など意味を持たない。自己満足に過ぎないと分かっているから。

 

 赤城ももはや、食ってかかるようなことはしなかった。怒りが無いわけではない。ただ、宏武さんにとってそのほうがいいと感じたから。きっと、もう大丈夫だから。

 

「……八千草さん」

 

 消え入りそうな声がした。目を覚ました宏武さんを、思わずのぞき込む。彼の顔は相変わらず痛々しいけれど、その目は穏やかだった。

 

「最後に、お子さんを撫でさせてもらえますか?」

 

 思わぬ言葉だった。それでも彼女は子供を抱え上げ、宏武さんの右手に近づけた。彼の手が、ゆっくりと揺れる。赤城は思わず、左手の指輪に視線を落とした。彼は最後にと言った。彼は、決別を選んだ。

 

「……ありがとう、ござ……ました」

 

 宏武さんの言葉が途切れた。医者が駆け寄り脈をとって、大丈夫ですと頷いた。

 

 八千草仁美は何も言わず、泣く事もせず。いや、泣く事も許されずにその場を離れた。宏武さんの言葉は、彼女にとっての十字架だったろう。

 でもきっと、宏武さんが与えたのは、それ以上に赦しなんだろうな。そう思った。

 

「よく耐えたわね」

 

 いつものように軽薄さを演じて、木葉司令官がねぎらう。

 

「こんな状況になる前に彼を許せば、もっとちゃんとした、たくさんの言葉で和解できたでしょうね。馬鹿な人です。でも――」

「でも?」

「私も同じです。許せずにいたのも。ぎりぎりで間に合ったのも」

 

 木葉司令官は何も言わず、ウィンクしてみせた。

 

「今度お好み焼きでもおごるわ」

「呉焼きも付けてください」

 

 彼女はそのまま憲兵たちの元へ行き、状況を説明し始める。

 

 色んなひとたちがいてくれて、良かったな。素直にそう思えた。

 

 

 

「私は木葉少将よ。久我大佐の反乱により通信回路が破壊されたわ。緊急事態につき私が臨時に指揮を取ります。反乱軍は北ブロックの要人を監禁している。包囲して、姿を現した瞬間を拘束しなさい。設置された爆薬から信管を抜け。要人を傷付けるな!!」

 

 ノリノリの演説と共に、木葉樹希少将は行進する。なんだかよく分からない様子の陸戦隊兵士やその他職員たちも、彼女の白い軍服と、それを取り囲む憲兵さんを見て、小銃を置いて事情を尋ねる。反乱の鎮圧とは程遠い、牧歌的な風景が広がっていた。

 

 やがて、状況の危険さを理解できた陸戦隊員が銃を構え直し、他の部隊に「状況を伝える」ために散っていった。

 

「これは案外」

 

 言いかけた漣がはにゃーと声を上げて、頭を伏せる。ひゅっひゅっと風切り音が響いた。まだ抵抗する部隊がいるらしい。机を積み上げて簡易バリケードを作っている。

 

「閃光手榴弾!」

 

 木葉司令官の一声で、艦娘たちが一斉にポーチから閃光手榴弾(スタン・グレネード)を取り出し、ピンを抜いた。だが上に向かって砲弾を撃ち出す軍艦の癖が出たのか、それらの榴弾は全て天井にぶつかり、床に落ちて炸裂した。

 憲兵が前に出て投降を呼びかけるが、応じる様子がない。クーデターに直接加担している連中かも知れない。

 

「漣!」

「はい! 赤城!」

 

 漣はそのままの体勢で伏せ、〔89式小銃〕を発砲。銃撃は一瞬止む。赤城は閃光手榴弾のピンを抜くと威力を調節してストレートで放り投げた。今度こそ、閃光が敵の陣地を覆った。

 ”敵”はたちまち無力化された。

 

「凄いです!」

 

 親潮を筆頭に、呉の艦娘たちが驚きの声を上げる。呉鎮守府に所属するのがいかに精鋭艦隊でも、陸戦技術まで保有する艦娘は稀有だろう。

 

「ねえ、どこで覚えたの?」

「ええ、その」

「何と言いますか。加賀さんの薫陶の賜物といいますか」

 

 もごもご言いよどむ二人に、親潮たちは首をかしげる。

 

「加賀さんですか? あきつ丸さんや神州丸さんではなく?」

「色々ありまして」

 

 相棒の加賀が銃器マニアに目覚め、ことあるごとに陸戦訓練に誘ってくるとは言えない。別に言ってもいいのだが、真面目な親潮が戸惑った顔が、容易に想像がつく。

 

「ねえ、呉の加賀さんってどんな人なんですか?」

「そうですね。艦隊ごとに個性が違いますが、共通するのは、厳しくて優しい人です」

 

 漣は苦笑していった。

 

「そこは変わらないですぞ」

 

 赤城もまた、自慢げに頷いた。そんなの当たり前だからだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

スケベ提督と元ブラック鎮守府(作者:ルフレオ)(原作:艦隊これくしょん)

▼劣悪な環境だった元ブラック鎮守府に着任する事となった優しく、それ以上にバカでスケベなクソ提督が心を閉ざした艦娘達と少しずつ打ち解けていくお話。▼


総合評価:1493/評価:7.31/連載:83話/更新日時:2026年07月07日(火) 23:09 小説情報

柱島泊地備忘録(作者:まちた)(原作:艦隊これくしょん)

 ブラック企業に勤めていた、とある男。▼ そんな彼が目覚めると、見知らぬ車に乗っていて、紅紙一枚で左遷を言い渡される。▼ 事情も分からない彼に課せられたのは提督業。そして彼はどうやら罪人の扱いを受けているらしいが……?▼ あらゆる鎮守府から欠陥品として見捨てられた艦娘達と共に、暁の水平線に勝利を刻むべく奔走する――。▼ 艦これ? 知ってる知ってる。攻略サイト…


総合評価:25162/評価:9.27/完結:106話/更新日時:2022年06月24日(金) 01:43 小説情報

新米提督苦労譚~艦娘たちに嫌われながらも元気に提督してます~(作者:ぬえぬえ)(原作:艦隊これくしょん)

 軍学校をギリギリの成績で卒業した落ちこぼれ軍人、明原(あきはら)楓(かえで)。彼は大本営の采配によってとある鎮守府に提督として着任することになった。大抜擢の理由は『類稀なる器量と采配を振るえるには提督しかない』と言うバカみたいなモノ。誰がどう見ても左遷であるのは明白であった。しかも、着任する鎮守府の艦娘にはファーストコンタクトで罵られる始末……――――そん…


総合評価:9989/評価:7.08/連載:105話/更新日時:2026年07月15日(水) 00:46 小説情報

離島鎮守府再建記(作者:フェレッ党)(原作:艦隊これくしょん)

庁舎全壊、人員ゼロ、艦娘ゼロ、物資少々、食料ほぼなし。▼離島の鎮守府に着任した艦娘提督の新任少尉に突きつけられる現実。▼そんな中で襲い来る深海棲艦。一縷の望みをかけた高速建造の結果、現れたのは――▼これは、1人と1隻から始まる、鎮守府を建て直す物語。▼


総合評価:2680/評価:8.77/連載:49話/更新日時:2026年07月19日(日) 07:00 小説情報

提督に転職したら想像以上にブラックだった件(作者:Sh1Gr3)(原作:艦隊これくしょん)

ごく普通のサラリーマンから【提督】に転職した男が、慣れない業務と想像よりもブラックな環境に四苦八苦しながらも、なんとか頑張っていくお話の予定。▼※しっくりこないのでタイトル変えました。ご容赦ください。▼前タイトル:転職先がブラック鎮守府だった件


総合評価:3125/評価:8.52/連載:41話/更新日時:2026年07月12日(日) 18:02 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>