【本編完結】仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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艦娘だけではありません。人類もまた戦っています。

レーダーが通じない。現代兵器も通じない。それがどうした。人間の武器は果てなきトライ&エラーなのです。

人類軍のフェアリーダンスをお届けしましょう。


第139話『人類の反撃!』

Starring:南部瞬大尉

 

 坊ノ岬沖海戦。連合艦隊はこの地で最後の戦いに挑み、そして世界から消滅した。期せずして彼女たちはこの地に戻り、あの日の再戦を挑もうとしている。米海軍にではない。運命にである。

 

 それならまあ、ちょっとくらい助太刀したくなるのが人情と言うもの。南部瞬は〔ゼロ戦〕派だったが、〔大和〕にだって憧れていた元男の子である。

 

『蟠竜02 艦隊発見 すごい数です! 戦艦も空母も確認不能! 艦載機だけでも空がまっ……』

『中尉! 背後から!』

 

 ざざっとノイズがして、先行した〔彩雲〕から連絡が絶たれる。南部が手ずから育てたパイロットだった。操縦桿に力が入る。

 

『少尉』

 

 一条真矢少尉が一言だけ、自分を呼んだ。呆けていた叱責と、励ましだろう。分かっている。

 

『俺は今、大尉だぞ』

 

 返事はなかったが、南部は既に、落ち着きを取り戻している。

 

「ドラゴンリーダーより蟠竜(ばんりゅう)各機。俺たちは深海棲艦に向け、人類最初の大攻勢をかける。女の子の手助けもいいが、そろそろいい所も見せてやろうじゃないか」

『ソウリュウリーダー了解! 艦娘の黄色い声が聞こえるようであります』

『コクリュウリーダー了解(Copy)! トモダチは助けに行きませんとネ』

 

 各分隊も意気軒高だ。なにしろ敵に囲まれる前提の、過酷な状況で戦っていた者たちである。日本中、いや極東中から優秀なパイロットをかき集めた。元航空自衛隊、米軍の残存パイロット、果ては台湾・韓国空軍から、民間の曲芸飛行士まで。

 この寄せ集めこそが、反撃の象徴、蟠竜(ばんりゅう)隊だった。

 

 期せずして80年前、大和を攻撃するため米艦隊が飛び立ったヒトフタサンフタ――12時32分、艦娘たちの突入を支援するため、空戦を開始した。

 

『DD117〔すずつき〕より蟠竜各機へ、只今より噴進弾による支援攻撃を開始する』

「ドラゴンリーダー了解! 我々はミサイル着弾後に突入する」

 

 地獄の開戦直後を生き残った幸運艦〔すずつき〕〔ふゆつき〕の二隻が、航空隊に先駆けてのミサイル攻撃を行った。それは増設した〔トマホーク〕ミサイル。対空兵器でもなければ、妖精の加護もない、最新(・・)兵器だった。

 

 瞬たちの眼下を、白い航跡が伸びて行く。

 

 炸裂。巨大な炎の塊が生まれた。この時、敵の防空網に大穴が空いていた。

 

 〔トマホーク〕に詰め込まれていたのは、発掘・残存していた小銃の実包、つまり弾丸である。ガワは現代兵器でも、中身は妖精の加護を受けた、大戦期の兵器だったと言うわけだ。それらが散弾となり、敵艦載機に襲い掛かった。

 そこら中で白煙が吹き上がり、敵が高度を落としてゆく。

 

『よし諸君。〔F-2〕部隊が突入するまで敵を引き付ける。フェアリーダンスと行こうか!』

 

 南部は獰猛に叫び、操縦桿を倒した。

 

 敵艦載機(タコヤキ)は所詮数重視の兵器である。妖精の加護さえあれば、人間でも倒せる。

 四式戦闘機〔疾風〕たちは、つぎつぎとタコヤキに取りつき、20mm機関砲でずたずたに切り裂いて行く。空戦に集中する中で、海面を埋め尽くす大艦隊がちらりと視界に入った。これに立ち向かう艦娘たちは、相当に苦しい戦いを強いられる。

 だからこそ津田先輩が頑張っている。そしてそれを、自分たちが支えているのだ。

 

 艦娘は決して、孤独な存在ではない。

 

『ファルコンリーダーより蟠竜隊。これより対艦攻撃を行う。進路上から退避してくれ!』

『ドラゴンリーダー了解! こちらはそろそろお暇させてもらう』

 

 精鋭部隊は攻撃も早いが、引き際も心得ている。彼らは〔F-2〕支援戦闘機の突撃のため、きっちり仕事をした。蟠竜隊が開けた大穴から、十二機の〔F-2〕が突入した。そして両翼にぶら下げられた巨大な飛翔兵器を投下する。

 

 イ号無線誘導弾。大戦時に陸軍が開発した誘導爆弾である。撃ちっぱなしの兵器ではないので、敵に命中させるまで誘導し続けねばならない。つまり高速がゆえに直ぐに戦場を通り抜けてしまうジェット機からは使えない。しかしそこはコロンブスの卵。投弾と同時に、誘導電波を中継する端末をパラシュート投下したのだ。旧軍の電探をリバースエンジニアリングして製造されたそれは、〔F-2〕の誘導電波を、精霊の加護を帯びたものに「翻訳」し、〔イ号爆弾〕を誘導した。

 

 深海棲艦は、この誘導システムを察知できなかった。十二機の〔F-2〕戦闘機が投下した二十四発の〔イ号爆弾〕は、きっちり航空母艦と、それを守る戦艦に命中弾を与えていった。

 その中には戦艦クラスの爆沈と、姫級の大破による飛行甲板使用不能も含まれていた。

 

 ある歴史家は語る。第二次(・・・)坊ノ岬沖海戦を以て、人類は初めて艦娘と並び立ったと。

 

『ドラゴンリーダーより各機。仕事はした。あとはお姫様たちにお任せしようじゃないか』

『異議なし!』

 

 蟠竜隊各機は、操縦桿を倒し、海面に向けてダイブ。そのままスロットルを引いて急上昇した。

 

『隊長、五時の方向。友軍です!』

 

 南部は振り返る。そこには、たくさんの飛行機。妖精の力を持った、艦娘の艦載機であった。見える距離ではないのを承知で南部は愛機の主翼を振った。「バンク」という、飛行機乗りの挨拶だ。部下たちもそれに倣う。

 

(頼みましたよ先輩!)

 

 南部は機首を佐世保に向ける。次にこの海に来るときは、残敵掃討か、悲惨な遅滞戦闘のどちらかだろう。だがまあ、心配いらないだろう。津田先輩と、あの艦娘たちならば。

 

 夜の海ももう、暗くはない。

 

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