仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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ごめんなさい。ボルテス見に行ってて投稿するの忘れてましたアワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿

一日遅れですが投稿です!


第28話「アドバイザー赤城と、大作戦の序曲」

Starring:赤城

 

8:24(マルハチフタヨン) 執務室

 

 津田(つだ)宏武(ひろむ)と言う軍人がどの程度優秀なのか、実のところ赤城は掴みかねていた。五航戦との演習で即興で立てた作戦や、先の戦闘で見る限り、間違いなく優秀の部類には入ると思える。しかし前任と同じレベルで作戦立案が可能なのか。考えてはみたものの、焦りの類を一切感じていない自分に、少々驚いている。

 

「ふむふむ。これが少佐の、硫黄島攻略作戦ですか」

 

 執務室のテーブルに海図を広げ、艦隊に見立てた駒を配置してゆく。確かに前任のような神がかり的指揮は必要としない。代わりに泊地の戦力をありったけぶつける作戦である。赤城の見る限り、戦いの流れを読むと言うより、適切な戦力を機械的に送り込む事が出来れば勝てる。意外な事に彼の作戦は堅実だった。もっと投機的な作戦を好むと勝手に思っていたが、少し考えて納得した。

 このような大規模な作戦で、しかも練度に偏りがある現状での奇策はリスクが大きい。イレギュラーが発生しやすいからだ。大きな作戦ほど、シンプルな方が齟齬が起きにくい。特に戦死者にトラウマを持つ彼なら、冒険は好まないはず。詭道(きどう)を好みながら、詭道の限界もわきまえているわけか。

 

 最近少しずつ、彼と言う人間が分かってきている。

 

「それで私と加賀さんには、ちゃんと一番の激戦地を任せてくれるんですよね?」

「遺憾だが頼むことになる」

 

 別に遺憾ではない。自分達が一番強くて、一番戦意旺盛だから、一番大変な戦場に立つ。それだけである。

 

「それにしても、ここまで潤沢な物資をどうやって用意するんです?」

 

 正道で敵を叩きのめすには、戦力が必要である。それだけの数を縦横無尽に動かすには、大量の補給がいる。ひとつの無理から逃げれば、別のところで無理をしなければいけなくなるのだ。

 リストに記された見積もりは、横須賀も維持できるほどの分量だ。全艦隊を根こそぎ運用するのでそうなる。綾郷大将に無心するのかと思ったが、彼だって無から有は創り出せない。前任の作戦であれば常識的な量で済んだのだから。

 

「大丈夫だ。問題ない。もう9割方手配済みだ。残る1割は、何とかならなきゃ綾郷さんに泣きつくさ」

 

 と言う事は現時点で彼を頼っていないと言う事だ。どんな魔法を使ったのだろう?

 

「ヒントは”遠征”だ。まあそれは後で話す。作戦の話を続けよう」

 

 なにやら怪しい臭いがする。彼の事だから、無理のない作戦を行う為に、ここで無理をしたのではないか。気になるが流す事にする。どの道後で聞ける話だ。

 

「でもまあ分かりました。この作戦案には賛成です」

「えっ?」

 

 気味の悪いものでもみるように、少佐の視線が向けられた。失礼な。

 

「いや。賛成してもらえるとしても、何か一言あると思ったんだが」

 

 この人こそどうも一言多い。先ほどまでの評価を一段下げてやろうかと、一瞬悩んでしまった。

 

「皆が元気に帰って来られる作戦なら、私は文句はありません。それより作戦が成功したら、綾郷大将はそれなりのものを送ってくださるよう。それだけ念押ししておいてください」

 

 お酒はどぶろくで満足している。野菜も新鮮な物の栽培が軌道に乗っている。やはり肉か魚、あるいは果物だろう。茸や山菜も悪くない。一時期止まっていた捕鯨も、艦娘の護衛で再開されているという。鯨のすき焼きを食べてみたい。いやいや。これだけの大作戦。成功報酬として肉厚のステーキを無心しても罰は当たらないのではないか。

 

「……よだれ出てるぞ」

「おっほん。失礼しました」

 

 手拭いを取り出して唇をたたく。少佐は、何やら気持ち悪い顔でこちらを見つめてきた。

 

「どうしました?」

「いや。お前なんか、雰囲気違くない?」

 

 そうですね。違うと思います。それだけ答えればいいのだが、何だか悔しく感じて、にっこりと笑いかけるだけにした。

 

「いつも通りですよ? そもそもいつもとどう違うと?」

「なんか妙に楽しそうと言うか。今まではもっとピリピリしてたからな。こう言う話の時」

 

 それはそう。いまでは諸々を意識しすぎて余裕を失っていた。自分は人ではなく艦娘。それならば戦う事(こう言う事)を少しくらい、楽しんでも良いじゃないか。

 

 だって多少やらかしても色々押し付けられそうな人が、目の前に来てくれたのだ。頑張って働いてもらおう。

 

「ところで前任(木葉提督)は何と?」

「あー、それなんだが」

 

 少佐は言いにくそうに頬をぽりぽりとかく。何なのだ?

 

「先輩曰く『艦娘との信頼関係が必要になる作戦だから、少なくとも何人かはお尻触れるくらいの関係を築きなさい』だとさ」

「あの人はもう」

 

 言いぐさに呆れてしまうが、言っている事はその通りだ。彼にはこれからも艦娘たちのフォローに邁進してもらわなければならない。あと本当にお尻触ったら、太平洋に(チン)せねばならない。

 

「しかし生きていてよかったと安心したら、腹も立ってきます」

 

 あれだけ心配させておいて、お尻触るのがどうとか。舐めるのもいい加減にして欲しいものである。だからと言って嫌いになれないのが、余計に悔しい。

 

「悪いがお前の胸に留めておいてくれ。綾郷さん的には、この秘密が漏れるのは相当にまずいらしい」

 

 苦虫をかみつぶしたような顔を見て、彼の心中を察する。これは思い切り罪悪感を感じている顔だ。

 

「出来る事なら高雄さんだけは、伝えておきたいですが」

 

 だが案の定、津田少佐はそれを却下した。

 

「先輩は危険な任務の最中(さなか)。『実は生きているけど、やっぱりまた死ぬかもしれません』なんて残酷な話、俺には出来ん」

 

 悲しいが納得だ。機密保持の問題だけでなく、艦娘たちのメンタルを考えても、この件は伏せておくべきだ。心が痛む選択だが。

 

「うーん。でも少佐が鎮守府解体派と繋がっている疑惑は、晴らしておきたいですね」

「それだよなぁ」

 

 ここの艦娘たちが俺から一線を引いているのはその噂のせいもあるだろう。疑惑を説くには時間がかかるが、その時間は捻出できそうにない。赤城は暫し悩み、静観を選択した。

 

「加賀さんには心配ないと伝えておきますが、後は放っておきましょう」

「おい、それで良いのか?」

「無理に否定しても深みにはまるだけです。払拭できるかどうかは少佐次第ですね」

「俺次第かぁ」

 

 正直それが一番自信ない。もちろんやるしかないのだが。結局この件は持ち帰りとなった。まずは作戦についてだ。

 

「では私が感じた事をいくつか」

 

 前任の時代から機動部隊は自分が回していた。その自負があるから、いくつか改善点を提案できると思う。

 

「後発の水雷戦隊はもっと少数の編成で良いでしょう。練度が低いからと言って過大に見積もっても効率が悪いです。それより部隊数を増やして敵を分散させましょう」

「だが部隊当たりの戦力が低下するぞ? 当たり前だが」

「それこそ彼女たちを舐めるなですよ。艦隊同士の間隔を詰めて相互支援するようにすればいいんです」

「確かに精神的にも余裕をもって戦えそうだな」

 

 少佐は納得した様子だ。作戦計画書に赤を入れて行く。

 

「分かった。訓練計画も含めて、そこは練り直そう。何か神通に伝える事は?」

「いいえ。彼女にお任せします」

 

 泊地の小型艦は天龍さんから基礎訓練を受け、実戦向きの教練は神通さんが担当する。局地的な戦場での機微は水雷戦隊の真骨頂だろう。ストイックな彼女からアレコレを受ける方の心情は、まあ置くとしても。

 

「後は情報伝達の効率化ですね。意思疎通ができずに混乱をきたしたら、作戦は成功しようがありません」

「そうだな。まず俺が頂点で、機動部隊・水上打撃部隊の指揮をお前と金剛がそれぞれ……」

 

 白状しよう。画期的な大作戦に関われると知り、少々浮かれていた事を。そんな興奮の裏で、ちょっとした問題が水面下から顔を出していたのである。

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