仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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高雄さんってぽんこつかわいいですよね。

うちの高雄さんはそうじゃなくて、気難しいけどまっすぐな女性……にするはずだったんです(´ヘ`;)

変な属性まで付いちゃってるのは、その場の勢いです。

そうそう。この度赤城さんとケッコンしました! なんかね、ケッコンボイス実際に聞くとまたキャラ観変わりますね。受け取った愛は、作品で皆様に還元したいと思います(`・ω・´)シャキーン


第29話「高雄の恋愛相談」

Starring:漣

 

10:01(ヒトマルマルヒト) 執務室前廊下

 

『重要会議中 緊急の用事は大淀へ』

 

 持ち上げられた右手は、執務室のドアを叩くことなく降ろされた。この向こうでは、ご主人さまと赤城さんが議論を交わしている。漣には分からない言葉と、分からない視点で。だからノックなどしても何にもならないし、むしろ邪魔なだけ。そんな事、分かっているのだ。

 結局漣は、踵を返して寮に戻る選択をする。せっかくの任務空けである。寝るなり七駆の皆と過ごすなり。有意義な使い方があるはずだ。そう思っても、未練から振り返ってしまうのだが。

 

「あら漣さん。少佐は留守かしら」

 

 背中越しに声をかけてきたのは、両手にゲーム機を抱えた高雄さんだった。

 

「おはようございます。えっと。それは?」

 

 彼女が大事に持っているゲーム機は、セ●の名機メガ●ライブである。ネットでプレイ動画を見たことがあるが、漣も現物は見たことがない。と言うかこんなもの何処から手に入れたんだろう?

 

「ああこれ? 秋雲さんに『とにかく難しいゲームを紹介してちょうだい』って頼んだら、この戦争ゲームを教えてもらったの。ジャンルがアクションじゃなければ対等に戦えると思って」

 

 またご主人さまとやり合うつもりらしい。何やら良い感じにミイラ取りがミイラになっていらっしゃるご様子。ちなみに彼女が持つソフトは激ムズで、ヘビーユーザーですら真のエンディングにたどり着けるとは限らない、ゲームと言う名の苦行である。それを指摘したところ。

 

「あらそうなの? そう言えば秋雲さんも、『最初はセガサ●ーン版から始めた方が良いですよ?』って言ってたわね。じゃあそっちを用意しないと」

 

 完全に目的を失っている重巡部隊のエースであった。戦略ゲームは湯水のごとく時間を使う事も教えてあげた方が良いだろうか? それロード時間も異常に長いし。

 

「それで漣さん。入らないの? 会議はもう始まってるみたいですけど」

 

 再び現実を突きつけられた。漣は肩を落とす。

 

「いいんです。入っても役に立ちませんから」

 

 実際無理矢理入ろうとしたところで、ご主人さまは拒絶するだろう。作戦は最高機密。それを知る者は少ない方が良い。情など入る余地はない。

 

「出来る事もありませんし」

 

 そこまで聞いて、高雄ははっと驚き。何かに納得したように頷いた。

 

「漣さん。まだこんな時間だけど、間宮に行かない?」

「えっ?」

「だって見てられないんですもの」

 

 さあさあと漣の背中を押して。高雄は歩き始める。ここまで心配されるほど、自分は酷い状態に見えたのか。そう思うと少し情けなくなった。

 

 

 

 丹賑島泊地においても、『間宮』は艦隊の士気を維持する最終防衛線である。軍艦は(重油)で動くが、艦娘は甘味で動くのだ。その為前任も現職も、嗜好品の補給にはかなり気を使っている。ちなみに最終防衛線はもうひとつあって、いわゆる般若湯(はんにゃとう)と呼ばれるエナジードリンクだ。別の名を「お酒」と言う。

 

「それで秋雲さんに言われたんですよ。『グーニーズ』のファミコン版はもう少佐がプレイ済みだろうから、Apple II(あっぷるつー)版で挑んだらどうかって。でもゲーム機じゃなくてパソコンだから、結構高いらしくって。光速船ほど珍しくはないみたいですけど」

 

 あーあ。誰が高雄さんをこんなにした。って言うか秋雲ちゃんの玩具になってる。これはもう(゚⊿゚)シラネ

 

「……私ね」

 

 急に高雄さんの声色が変わった。さっきまでは漣の気を紛らわす世間話と言う事だろう。優しい人だ。話題の内容は置いておいて。

 

「最初は木葉提督の事、うさんくさい(ひと)と思ってたんです。妙に馴れ馴れしいし、おじさん臭いし」

 

 漣は思う。ああなんとなくわかると。ご主人さま(木葉提督)に率いられて丹賑島にやって来たのは、赤城さんと金剛さんと高雄さん。そして漣を含む軽巡・駆逐艦が数名。絶望的な戦力だった。最初は皆死地へ向かうと思っていたし、ちゃらんぽらんに見える振る舞いに、漣も不安を感じていた。それでも前任は艦隊をまとめ上げ。泊地を守り抜いたわけだが。

 

「でも愛着って出るものですね。『この人は私が何とかしないと危ない』って思ってしまったら、そこから良いところが見えてきてしまいました。そう言う意味では、私の負けですね」

 

 高雄さんは、やっぱり木葉提督(ご主人さま)の事が好きだったんだろう。甲斐甲斐しく世話をする高雄さんは、切羽詰まったような色をしていた。任務上必要だからと泊地を飛び出してダッチハーバーに向かうような性分を、どこかで感じ取っていたのかも知れない。それにしても。ダッチハーバーの任務はそれほど重大なものなのだろうか? 彼女を泣かせてまで行かねばならない程に。

 

「はい。漣さんの番よ?」

 

 高雄さんは微笑みながらアイスクリームをつついている。そう言えばおごってもらったのだった。お礼を言ってスプーンをつける。

 

「好きなんでしょ? 少佐の事。赤城さんに取られたと思ったとかじゃない?」

 

 一番言われたくない事を言われたと思う。自分と津田提督(ご主人さま)はそう言うんじゃないのだ。対等な相棒と言うか、ご主人さまが取りこぼした球を拾う係が漣と言うか。

 

「ごめんなさい。自分の中で大事にしていたものに、私が土足で踏み込んだのね」

 

 今感じている不快感を、的確に言い当てられた。悔しかったが、こくんと頷く。

 

「私もそうだったなぁ。愛宕にからかわれるのが嫌だったもの。でも言われちゃったの。『高雄。その気持ちとは真剣に向き合った方がいいわ』って」

 

 確かに愛宕さんなら言いそうだ。いつも優しく笑顔を絶やさない彼女だが、一度何かを苦言しようと決めたら、割と容赦がない。高雄さんが寂しげに笑う。相棒の忠告を聞く暇もないまま、突然の別れを迎えたからだろうか。

 

「私は、とても後悔してる」

 

 それだけ言って、アイスに口をつけた。きっと同じ苦しみを味わっている艦娘もいるだろう。このままでは漣も、それを味わう事になるのだろうか?

 

「漣は、ご主人さまと姉弟(きょうだい)みたいな関係だと思ってました。赤城さんがご主人さまを助けてくれたら漣も仕事が減るし万々歳かなって。でも二人がお墓参りから帰ってきたら」

「思っていた以上に仲良くなっていて、焦りを感じた。そうね?」

 

 肯定するべきではない。何かが壊れる。そう思ったが、漣は頷いていた。苦しかったから。そして高雄さんは言う。

 

「すぐ気持ちを伝えろとまでは言わないけど。やっぱりこのままじゃ後悔すると思う」

「そう、でしょうか?」

 

 高雄さんは、漣に自分を重ねている。そう感じたが不快ではなかった。言葉の断片から真摯さが読み取れたから。

 

「だから考えるのよ。作戦立案で役に立てないなら、何をしてあげられるか。どうせ自分は何も出来ないなんて思うのは論外」

 

 それでも良いのだろうか。確かに赤城さんと戦って勝てる要素など、自分にあるかどうかは怪しい。でも思ってしまう。ドアの前でノックすら出来ないままでいるなんて。それはきっといやだ。

 

「でも決断しなきゃいけない時は近いわよ。自分の心に正直にね」

 

 高雄さんは笑いかけてくれた。そうだ。うじうじ悩むのは漣のキャラではない。とりあえず動いてみて、その後決めれば良い。

 

トンクスです(ありがとうございます)!」

「どういたしまして」

 

 高雄さんは一仕事終えたような顔をしている。それだけ心配させてしまったわけだが、ふと気になった。

 

「ひとつ良いですか? 高雄さんにとって、ご主……津田少佐ってどんな人なんでしょうか?」

 

 ここで初めて、高雄さんは困ったような顔をした。彼女はご主人さまを嫌っているように見えた。見えたが、最近はゲーム機を持って追いかけまわしているし、嫌悪感を持っているようには思えないのだが。

 

「そうね。”天敵”かしら。あの勝ち誇った顔を見ていると、コテンパンにしてバカめと言ってやりたくなるのよね」

 

 それは、ご主人さまの術中にはまっているのでは。彼も好かれようと思ってケンカを売ったわけじゃないだろうが、結果は上手くいきすぎるくらいうまくいっているのかも知れない。

 

 ともあれ。悩みが晴れて味わうアイスクリームは、とっても甘かった。

 

 

 

Starring:提督

 

男性寮 提督の自室

 

 海軍軍人にとって、毎朝意識が覚醒してから起床ラッパが鳴るまでの時間は、最後のオアシスである。これから始まる一日の苦行を前に、お布団との別離を惜しむのだ。だが仮免提督にはそれすら許されない。目の前の現実があるらしい。

 

「ご主人さま! 朝ですよ! また映画見て夜更かししたんですね?」

 

 一方的にまくしたてる漣が、俺の布団をはぎとった。

 

「うわっ、何だよいきなり! ってかここ男性寮だぞ!?」

「シラネーヨです。赤城さんが公務をサポートしてくれるようになったので、漣は手が空いた分私生活をサポートする事にしました」

 

 そんな事を言いつつ、漣は布団からシーツを外している。なお丹賑島に業者は入っていないので、洗濯物は持ち回りで洗っている。

 

「いや、昨日干したから」

「今日も干すんです」

 

 頑固なまでにてきぱきと片付けて行く、我が初期艦を不思議に思うより、まず気圧された。

 

「お前本当にどうしたんだよ? 悩みがあるなら聞くぞ?」

「悩みですか。ありますけど、それより優先する事ができたので」

「わけわかんねーよ」

 

 投げやりに返してしまったが、漣はまったく気にしていない様子。むしろ鼻歌交じりに、俺の言葉をスルーした。

 

「今は分からなくても良いんでーす」

 

 漣はしたり顔で笑うと、パンとシーツを広げて見せた。

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