ギャグ回ですが、実はターニングポイントなお話だったりします。
それはそうと震電が欲しいですが、ネジが足りないから無理かなぁ。丁提督の悲哀です。
Starring:提督
「で、説明してくれるんでしょうね?」
「はい。この度は大変申し訳ありません」
二時間半後。件の部屋で、霞に正座させられる俺がいた。
『いやぁ参りました。まさか提督から預かったDVDを搬入し忘れるとは』
スピーカーから聞こえてくる明石の声。てへぺろな顔をしてそうで大変にむかつく。
『少し時間を下さい。方法は見つかると思うので』
「その”方法”と言うのは、やばいやつじゃないだろうな?」
『ま、まさか。そんな事をさせたら私が赤城さんにどんな言い訳をしたらいいか』
赤城? なんであいつが出てくるんだ?
「とにかく急いでくれ。こっちは1日しか時間を確保して無いんだ」
明石はもう一度謝罪し、放送は終わる。
「ほんっっっと馬鹿じゃないの!」
二の句も告げん。我ながらどうしてここまで調子に乗ったのか。
「すみません許してください! 何でもしますから!」
仁王立ちの霞に、俺は土下座する。プライド? なぁにそれ知らなけど。多分今いらない。
「何でもするって言ったわね! 今まで遠慮してたお説教を、まとめてさせてもらうわ!」
ちょっ、あれ以上あるのかよ!? そしてお説教は、痺れた俺の足が動かなくなるまで続いた。
「というわけで、もっと自覚を持ってちょうだい。いいわね?」
「誠に申し訳ありませんでした」
謝るなり俺は足を崩す。ここまで膝を酷使するのは、法事でもなくなったのだが。
「で?」
ようやく落ち着いた霞が、モニター前のクッションに腰を下ろす。
「『で?』と言うのは?」
素で分からなくて聞き返すと、呆れた顔が帰ってきた。
「こんな手の込んだ事したんだから、ただ映画観たかっただけじゃないんでしょ?」
ああそれか。ごもっともだ。せっかく話を振ってくれたのだから、単刀直入に聞いてみる事にした。
「お前さ、俺の事どう思ってる?」
「はぁ?」
霞が引き攣った顔で俺と距離を取る。そうじゃねーよ。
「ちがうちがう。提督としてどう評価してるのかを聞きたいんだが」
霞は暫し俺を見つめ、ゆっくりと話し出す。恐らく答えを用意していたんだろうな。この事態を予期して。
「あんた、クズ司令官――前任の関係者よね?」
いきなりの奇襲攻撃だった。しかも割とクリティカル。俺は敢えて答えず、続きを促す。
「隠してもね。あんたたち同じ匂いがするのよ」
「同じ匂い?」
もちろんそのままの意味では無いだろう。同じ雰囲気を纏っているとか、そんなニュアンスだ。そして俺に思い当たることは無い。
「あんたもクズ司令官も、距離の取り方が下手くそなのよ。今回もそう。自分をピエロにして馬鹿やらないと、相手に絡めないんでしょう? ほんとそっくり」
図星を刺されて驚いた。こいつにここまで洞察されるとは。散々嫌われるのも仕事と言いながら、否定される事を極端に恐れている。この泊地にやってきて、大分変ってきてはいるとは思う。だがかと言って先輩も同じかと言われれば、多分違うとは思うが。
「あんたは、実は好かれる事を怖がってる」
これも図星だな。誰かと仲良くなったところで、また
「参ったよ。木葉先輩は俺の師匠みたいなもんだ。戦争も遊びも、みんなあの人に教わった」
「でしょうね。はめの外し方も似てるもの。まああんたの場合はピエロの部分も本質で、それを楽しんでたりもするんでしょうけど。生き生きと馬鹿やってし」
それもぐうの音も出ない。今後は少し控えるとしよう。
しかし参ったな。そこまで似てるのか。でもあの人たらしが、好かれるのを怖がってるなんて初耳だ。
「俺には自覚があるが、先輩が同じなんて思えないんだが」
「それこそ勘よ。あんたたちみたいなのはね。時々ふっと消えて、そのままいなくなっちゃうの! だから皆が言えないでいる事を私が言うのよ!」
驚いた。それって……。
「お前が俺や先輩に厳しいのって、心配して嫌われ役を買って出てくれてるって事か?」
「はぁ? 何でそんな話になるのよ!?」
いや。会話の流れだとそうなるんだが。
(そっか。確かこいつの前世の司令官って、敗北の責任を感じて自殺未遂をやったんだっけな)
彼女が船だった頃の話だ。姉妹を失い、その責任を取って司令官まで。先輩の行方不明でナイーブになるのは分かる。つまりは、自分の司令官を二度と失いたくない。そう思っているのだろう。
霞は忌々しそうに俺を見つめた。
「高雄やあんたには見えてないかもしれないけど、クズ司令官には
何か? そこまで言われて、あれだけ人当たりの良い先輩が、俺以外の人間と親しくしている所を見たことがないと気付いた。まさかな。
「何かってなんだ?」
「さあ」
どうやら霞の所感は、全て感覚的な話であるようだ。だが俺も実戦経験者の端くれ。それが馬鹿に出来ない事も知っていた。
「クズ司令官みたいになりたくないなら、ちゃんとして。皆を悲しませないで」
言葉はぶっきらぼうだったが、それは真摯な願い。俺もこれ以上誰かを泣かせたくない。
「肝に銘ずる。ありがとうな」
「ふん」
霞は腕を組んで顔を逸らす。優しい子じゃないか。今までの苦手意識が薄まって行く。
「俺はいなくならないよ。ずっとここに居る」
そんな言葉がすっと出てきた事に驚いた。そうか。俺は。
俺はここが好きなんだ。
「別に私の事は良いの! 子日や電たちが!」
「分かってる。でもそれにお前を含めても良いだろう? 俺が勝手に決める事なんだから」
「ふんっ!」
なんかこの子、慣れると可愛いけど面白いな。
「でもその、お礼はちゃんと言――」
『ご歓談中すみません! 解決しましたよ!』
霞の言葉を遮って、明石の声がスピーカーから流れた。相当に慌てた様子だから、こりゃ大淀にどやされたんだろう。
『実はですね。この部屋にWi-Fi環境繋いだのをすっかり忘れてまして。普通に提督の部屋から中継するなりサブスクで見るなり出来ましたね。いやー失礼しました』
「……」
やはりこいつを信じた俺が馬鹿だった。公務なら超優秀なやつなんだがな。
「まあいいや。霞、映画観ようぜ。心配するな。ちゃんと特別版は外してもらったから、ミニチュアの手作り感が実感できるようになっててるぞ。本当はルークの吹き替えが水島さんだと良いんだけど、でも神谷さんでも凄く良い演技だし、勿論ラストシーンのアナキンもちゃんと――」
つい熱く語ってしまっていたら、何故か霞のこめかみからブチッ! と言う音がした。
「あーもう! だからそう言うのよしなさいっていってんのよ! この
結局映画は6本全部見た。彼女は戦闘シーンで拳を握っていたし、「No, I am your father」の台詞では「ええっ!」と声を上げた。マスコットたちの活躍にほっこりしていたし、彼らが倒れた仲間を気遣う姿に涙していた。つまりはS勝利であった。
後日。今度は外伝作品でもと誘ったら、凄い顔で睨まれた。でも一生懸命お願いしたら、溜息とともに了承してくれた。
霞たんマジ天使!