仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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秋刀魚獲れねぇ。せめて〔銀河〕分だけでもなんとかしたい。

今回は飛龍のお話です。二航戦ってどんな子たちなのか、自分的になかなか理解できず、頭の中でこねくり回したりしてましたが、いざ書き始めたらすっと描写出来ました。なんかかしこまり過ぎたみたいです。

彼女たちはそんなに特別じゃなくて、他の艦娘と同じように必死に生きてるだけなのです。


第32話「飛龍の帰還(その1)」

Starring:飛龍

 

『皆が一生懸命努力したけれども、この通り本艦もやられてしまった。力尽きて陛下の艦をここに沈めなければならなくなったことはきわめて残念である。どうかみんなで仇を討ってくれ。ここでお別れする』

 

――駄目! 生きて! 私はいいから!

 

『飛龍も済まなかったな。勝たせてやれなくて』

 

――そんなのいい! そんなのいいから! 逃げて。逃げてよ!

 

『ふふっ。お互い”次”があれば、また思い切り暴れてやろう』

 

――次なんていいよ! 誰か! 蒼龍! 赤城さん! 加賀さん! 誰か! 誰か!

 

 

 

――戦ってよ! 生きて戦ってよ!

 

 

 

――生きて! 多聞丸!

 

 

 

 ベッドから跳ね起きた時、自分の()が布団を跳ね飛ばしていた事に気付いた。

 

(なにこれ? 私手があるの?)

 

 自分の身体(・・・・・)を確認すると、そこには華奢な手があった。周囲を見回す。

 

「飛龍さん! 久しぶり!」

 

 そこで自分が、女の子たちに囲まれている事に気付いた。小柄な女の子が、こちらをのぞき込んでくる。いや女の子、だけではない。彼女は。

 

「瑞鶴? うそ。これって」

「飛龍さん、私翔鶴です。分かりますか?」

 

 分かる。何故かわかるのだ。目の前の女性たちが、かけがえのない戦友(とも)であることに。

 

「赤城さんに、加賀さんまで。私どうしちゃったんですか? みんな人間みたいになって」

 

 赤城さんの魂を感じる女性は、静かに説明してくれた。それは驚くべき”次”のお話だった。

 

「落ち着いて聞いてください。ここは私たちが沈んだ80年後の世界なんです。あなたは、いえ”私達”は新たな命を得て艦娘になったんです」

 

 そして加賀さんは、最も知りたい事を教えてくれた。

 

「蒼龍はまだ来ていないけれど。じきに会えるわ。魂が呼び合うから」

「蒼龍とまた会えるの!」

 

 未だ混乱の中にあったが、飛龍は少しずつ思い始めていた。この状況は悪い事ではないと。だがもうひとつの懸念。

 

「多聞丸! 多聞丸は? 乗組員の皆は!?」

 

 四人の表情が曇った。飛龍はそれで察した。新たな命を得たのは、自分達だけだと言う事に。次なんて無かった。無かったんだよ。翔鶴が席を立つ

 

「私、提督に報告に行ってきます」

「提督?」

 

 飛龍は聞き返す。瑞鶴は力強く答えた。

 

「80年後の軍人さん。大丈夫。信頼できる人だよ。ちょっとバカっぽいけど」

 

 バカっぽい? そんな人が提督なのか? あと何故か赤城さんが顔を引きつらせていた。

 

(80年後の世界、か)

 

 これから何があるのだろう。きっとまた激しい戦いが待っている。だけどそこに、多聞丸はいない。無性に蒼龍に会いたくなった。

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

Starring:提督

 

「多聞丸かぁ。俺になれったって無理だわな」

 

 頭をかきながら言うと、翔鶴・瑞鶴の苦笑が帰ってきた。期待どころか、そんな事考えてもいなかったとでも言うように。

 

「飛龍さん、山口少将の事を慕ってましたから」

 

 翔鶴が言う。それは分かっている。分かっていたがあそこまでとは思わなかった。話を聞くと、まるで魂を分かちあっているかのようだ。

 

「今飛龍は?」

 

 漣に問うと、彼女は言った。

 

「今赤城さんが泊地を案内しています」

 

 ともあれ、このタイミングでで正規空母が一隻増えるのはありがたい。作戦成功に近づくし、エアカバーがあれば轟沈が出る確率も減る。

 

「ご主人さま。一応ですけど、例のデータにパスワードかけときました」

「例のデータ? なんか飛龍に見せちゃまずいもんあったっけ?」

 

 漣は無言でタブレットを操作し、俺に見せてくる。

 

「あー。これかぁ」

 

 候補生時代に提出したレポートである。割と山口多門に批判的な文章だった。

 

「どれどれ、どんなの?」

 

 瑞鶴がタブレットをひょいと取り上げる。ここで止めさせておけばよかったと、俺は後悔する事になるが。

 

「うわー、結構辛辣」

「こら瑞鶴」

 

 姉に窘められて、瑞鶴はタブレットを返してくる。この文書は、俺なりの思いがあって書いたものだが、飛龍との関係においては毒にしかならない。

 

「いいかお前ら。この話題はこれまでに……」

「それ、見せて」

 

 聞き慣れない声がした。油を刺していない蝶番(ちょうつがい)のように、首をぎぎぎと回転させる。肩を怒らせた二航戦飛龍がいた。その後ろには、赤城が頭を抱えている。

 

「これ。使い方は?」

 

 青くなった瑞鶴が、目の前でタブレットを操作する。飛龍は無言で電子のページをペラペラめくった。

 

「よぉく分かりました。でもあなたの下で戦うのは無理そうです」

 

 それだけ言うと、どすどすと絨毯を踏みしめて、執務室から出て行ってしまう。中には頭を抱える俺達五人と、赤城の冷ややかな視線が残された。

 

「私が行きましょう。皆はそこで猛省していてください」

「言葉も無い。申し訳なかった」

 

 俺たちはぺこぺこ頭を下げつつ、赤城を見送る。俺もこの状況は放置はできない。俺が考えている事、ちゃんと話さんとな。結局俺は、赤城を追いかける決意をする。彼女に任せるだけでは、解決しないから。その決心も一本の内線によって無に帰すのだが。

 

「ご主人さま、指令室にお願いします!」

 

 緊急事態らしい。皆の命を預かる立場として、この件は先延ばしにせざるを得ない。俺は三人に見送られ、中央指令室にと駆け出した。

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