仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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飛龍のお話最終です。

来年こそは新春ライブ行きたいなぁ。休みは取れたけど、肝心のチケットが取れるかどうかが分からない(´ヘ`;)


第34話「飛龍の帰還(その3)」

Starring:飛龍

 

 初めて食べたパフェなるものは、えもいわれぬと言うかなんというか。冷たくて甘くて美味しかった。語彙力はあれだが。

 

「どうだ。令和時代の甘味も悪くは無いだろう?」

 

 少佐が面白いものを見るように言う。不満だが美味しいのだから仕方がない。

 

「何で、多聞丸の悪口なんか書いたんですか?」

 

 我慢できずにいきなり話を切り出してしまった。苦笑が返って来る。口では分析するのは当然と言いながら、相当に根に持っている自分に気付く。

 

「まず悪かった。山口提督への評価は何ら曇りは無いが、それを無思慮に見せてしまったのは俺の手落ちだ」

 

 ふーん。曇りが無い、か。

 

「それって結局、多聞丸を下に見てるって事ですか?」

 

 嫌な言い方だと思う。船だった頃はこんな風に言わなかったのに。そう考えて気付いた。自分は彼を評価し始めている。あんな戦い方が出来る人が、何故多聞丸を分かってくれない。そんな感情を抱いている。

 少佐はしばらく思考し、懐から文庫本を取り出した。タイトルはずばり『山口多聞』だ。

 

「これって?」

「山口少将の伝記」

「伝記出てるんですか!? 流石は多聞丸!」

 

 生来の陽性な性分が災いあるいは幸いして、無邪気にはしゃいでしまった。

 

「そうそう! 海軍体操を広めたエピソードは外せないよね! あと陸攻に自分も乗り込んだ話!」

 

 ぺらぺらとめくってみる。自分も知っている武勇伝の数々。どこも鉛筆で書き込みがしてあった。これを書いたのを少佐だろうか?

 

「凄い人だったんだよ。さっきも言ったが俺に勝てる要素なんて無い。才能って言うより、生き方だろうな。子供の頃から軍人になるって決めて、ずっとそれを胸に刻んで生きてきたんだろう。ただふんわりと『船長になりたい』って防衛だ……兵学校に入った俺じゃ役者が違うよ」

「だったら、何で?」

 

 そこだ。そこが埋まらない。何故、多聞丸では駄目なのか?

 

「俺の見立てでは、彼の武器はみっつだ。ひとつは優れた状況判断。ふたつは攻撃重視の敢闘精神。この辺は語るまでも無いな。みっつめは困難な作戦を達成するための猛訓練。そしてこれをやる理由は――」

 

 少佐は一呼吸置き、そして言った。

 

「戦死者を減らすためだ」

 

 そうだと思う。皆多聞丸を「人殺し」と言ったが、戦場に出てしまえば、彼は温情主義の人だった。自分から見ても、彼の猛訓練は殺したくないからだ。訓練で「殺して」でも実戦を生き残らせて、水兵たちを家族の下に帰す。そう言う人だった。

 

「まあ俺も指揮官やってみてよりいっそう思うようになったんだがな。だが”俺たちの戦い”はそれだと駄目なんだ。ミッドウェイみたいに、一回きりの大決戦ならいい。だけど艦娘の戦いは、次々湧いてくる深海棲艦を叩き続けなきゃならない。それだけで大変なストレスだ」

 

 昼の戦いを思い出す。あんな襲撃が何度もあったのだろうか。それでも訓練不足でで死んでは意味がない。

 

「訓練が疎かになったら、なおさら危ないじゃないですか」

「そこは密度を上げるしかないな。金剛も加賀も神通も、皆よくやってくれているよ。うちをぬるいと言うなら、一度神通の訓練を見てみると良いぞ」

 

 少佐が身を乗り出す。先程までの軽い口調を捨て去り、ただ言った。

 

「飛龍、心はな。心はとても大切なものなんだ。命があれば良いと言うわけじゃない。心が壊れたら、人も艦娘も死ぬんだ」

 

 気迫に押された。彼に何があったのかは分からないが、その体験から出てきた言葉じゃないか。それは分かる。

 

「ま。偉そうに言ってるが、俺は前任のスタイルを踏襲しただけだから何も偉くない。だが一点だけ。()は山口多聞に何ひとつ勝てないが、丹賑島泊地(・・・・・)はあの日の第二航空戦隊に勝っている。この点のみにおいてだがな」

 

 そう言って少佐は、店内に視線を向けた。そこには談笑する艦娘たち。先程の戦闘で勇敢に戦っていた者たちだ。飛龍の見る限り、彼女たちの戦いぶりは80年前に何ら劣るものではなかった。

 

 分からない。

 

俺たち(提督たち)は艦娘たちを殺したくないが、壊したくもないんだよ」

 

 それではっとした。自分も多聞丸が、提督が壊れるのが嫌だったんだ。家族に手紙を送る筆まめな彼が、重責に堪えかねて水底に沈んでいった。自分が同道させてしまった。それが悔恨。

 

 ならばそんな事が起きないようにするのが、自分の「次」なんじゃないのか? だったら。うん、悪くない。

 

「そっか。提督(・・)は」

 

 80年後の提督たちも、きっと負けていないはずだから。

 飛龍はアイスクリームをいっきに頬張り、頭痛を感じて頭をたたく。これも新しい感覚だ

 

「多聞丸に本気で勝つつもりなんですね!」

「え? いや待て。勝てるわきゃないだろ?」

 

 いや勝ってもらわなければならないのだ。提督――そう言えば名前なんだったっけ?――は、一緒に「次」を戦ってもらわなければならない。多聞丸の後継者に相応しい提督になってもらわねばならないのだ。

 

「じゃあレッスンワン。索敵は大切にねッ。空母戦は先手必勝! 慢心はダメ、ゼッタイ。そして、大胆に!」

「どうした急に。お前本当に俺に山口イズムを仕込む気か?」

「当然ですよ? 二航戦を使いこなすには必須な事です。これから蒼龍も来るんですから」

 

 えっへんと胸を張って、説教を始めてしまう。妙にしっくりくる。これが「艦娘の自分」か。

 

 

『ふふっ。お互い”次”があれば、また思い切り暴れてやろう』

 

 

 うん。そうだね多聞丸。

 

 

 暴れてやろう! 一緒に(・・・)




どうやら二代目多聞丸育成計画が発動したようですw

こんなんなっちゃった(失礼)彼女を蒼龍がどう思うか、その辺もおいおいやっていきますノシ



次回は鈴谷のお話です。
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