仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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お約束通りの連続更新です。

いよいよ海外艦の登場です。夏イベでレーベ以外のドイツ艦が揃ってお迎えできたので、その様子の脳内補完したらこんなお話になりました。

※冬コミは休みが取れたので、推しの作家さん応援に行きます。


第37話「海外艦の着任(その1)」

Starring:ビスマルク

 

 めらめらと赤い火が昇る。それは未来への灯か、それとも彼女たちの明日か。

 

ありがとう(Dunkeschön)。お世話になったわ」

 

 戦艦ビスマルクは右手を差し出した。

 

どういたしまして(You're welcome)。お礼を言うなら、丹賑(ニニギ)島に”meたちが”配属されたら、仲良くしてあげてちょうだい」

「任されたわ」

 

 握手を交わしたアイオワは、ハワイ所属の戦艦だ。欧州からパナマを経由してはるばるやって来た自分達を見送ってくれた。

 なにしろ艦娘と言うのは厄介なもので、同じ艦の魂を受け継いでしまうと、一人の提督の元に配属できるのは一人のみ。配属されない艦娘は練度を上げる事が出来ない。だから新たな提督を求めて、ドイツからやって来たわけだ。練度が低いから護衛付きで。なお自分達と入れ替わりに、新たにドロップした艦娘たちが欧州に向かうと言う。アイオワはこれを「野球(baseball)のトレード」と評していた。

 

「皆さん。敵の警備艦隊です。サラたちが引き受けますから、直進して丹賑島のエアカバーに入ってください」

 

 偵察機からの情報を受けて、サラトガの直掩機が俄かに動き出す。ここで同道もお終いと言うわけだ。

 

「はい! ありがとうございます!」

「また会おう!」

 

 オイゲンとグラーフも礼を述べ、敬礼する。特に寂しさは感じない。共に戦う日は直ぐに来る。そんな自覚があったからだ。

 

「ところで、ニニギ島の艦娘たちって優秀?」

 

 別れ際に尋ねてみた。「心配しないで(Don't worry)。皆優秀よ」と答えたアイオワは、何故か微妙な笑いが浮かんでいた。

 

 優秀、なのよね?

 

「姉さま。出迎えの艦載機です!」

 

 オイゲンが手を振る。「赤城だろうか?」と。グラーフが言う。アメリカ艦たちは、艤装を構えて急ぐように促した。三人のドイツ艦は駆けだす。彼女たちの戦場へと。

 

 

 

●丹賑島泊地 提督執務室

 

「ようこそ丹賑島へ。着任後すぐの大作戦で大変かとは思うが、まずは体を休めて、訓練に加わって欲しい」

 

 提督を見てとりあえず安心した。それなりの圧を感じる人物だったからだ。なよなよした上官は願い下げだ。

 

「とりあえず、ささやかだが歓迎会を用意した。17時00分(ヒトナナマルマル)に食堂に来てくれ。それまでは休息をとるなり、泊地を見て回るなり」

「分かったわ」

 

 提督の横で事務仕事を行っている秘書艦に視線を移す。美しい黒髪の艦娘だ。前世でも当然ながら会った事はないが、グラーフがちらちら見ているので、彼女が赤城だろう。長髪を横に結んだ小柄な駆逐艦は、真剣な面持ちでマウスを動かしている。仕事熱心なようだ。

 

「了解した。この国の空母と交流するのを楽しみにしていた」

 

 そこは空母に限定しなくて良かろうに。前世で実戦経験のないグラーフは、先達から戦い方を学ぶ気満々だ。道中サラトガも質問責めにしていた。そして自分のルーツである赤城にご執心。視線に気づいた彼女はにっこり笑いかけてくる。グラーフが目を逸らす。小学生か。

 

「楽しみですね! 姉さま!」

 

 オイゲンの「楽しみ」は、単純に歓迎会を意味しているのが半分。もう半分はこれからの生活だろう。共に戦ってみるまでは分からない。だがこの緊張感には期待できる。

 

 結論から言う。それは裏切られるのだが。

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

Starring:提督

 

「うん。頼りになりそうな子たちだな。海外艦って言うのは、みんなあんなに貫禄があるのか?」

 

 うっかり口を滑らせたら。早速赤城にくぎを刺された。

 

「それ、皆の前では言わないでくださいね」

 

 確かに失言だった。あくまで外見だけの感想で、日本艦に貫禄が無いと言ったつもりはないが、面白くないと感じる者はいるだろう。

 

「それとまだ24時間経ってませんよ。流石に新しい方の前でやらせるのは不味いと思ったので、見逃しましたが」

 

 新人の前じゃなきゃ免除はしないってことね。分かってるさ。勝負は絶対だ。しかしこいつ、本当に楽しそうだな。

 

「わっちはちゃんと24時間やりきるでありんす。歓迎会の時刻までにはお勤めは終わるでありんす」

「そうです。その気持ちを忘れずに」

 

 ご満悦の赤い悪魔。ちくしょー。今度こそ勝って「24時間の間、語尾に『我が巨人軍は永久に不滅です』と言う」罰ゲームをやらせたかったのに。

 

『一航戦赤城、出ます! 我が巨人軍は永久に不滅です!」

『あら加賀さん。今日もいい日和ね。我が巨人軍は永久に不滅です!』

 

 うん。病院に連れていかれるレベルだな。くそー。めっちゃ聞きたかったでありんす。

 

 歯ぎしりしていると、ばーんと開き戸が開いて、仁王立ちの高雄が入って来た。どうやらいつものらしい。黒いゲーム機(ピコピコ)を抱えている。

 

「少佐。もう着任の挨拶は終わりましたね? では今日は『バトルマニア大吟醸』で勝負です!」

 

 お前最近カルトなゲームに寄り過ぎじゃね?

 

「臆しましたか? じゃあ『デスクリムゾン』も持ってきました」

「……」

 

 吹き込んだのは秋雲だな。騙される方も騙される方だが。

 

「おや? 怖気づいてらっしゃるんですか?」

「ああわかったわかった。できらぁでありんす」

 

 ゲーム機(そう言えば両方とも同じセガだな)をモニターに繋いでいると、今度は日向が突入してきた。

 

「おお提督! 大変な事に気付いてしまった!」

「ど、どうした急に、でありんす?」

「これを見てくれ。ヤフオクに〔セスナ170〕の水上機型が出品されているんだ!」

 

 あー。この間観せた『ゴジラの逆襲』に登場するやつな。水上機が大活躍する映画だから見せたんだが、随分と気に入ってくれたらしい。外国のプラモは再販を前提としてないから希少になりがちって聞いたことがあるが。

 

「全財産をはたいてもいい。取り寄せてくれないか?」

「いや全財産はたかなくても買えると思うが。分かった。検閲で箱は空けられるかもしれんが、それで良ければ手配しておくよ」

「ありがとう! 一緒に作ろう」

 

 俺プラモは作ったこと無いぞ? ぶきっちょだしな。まあ嬉しそうで何よりだ。

 

「ちょっとクズ司令官!」

 

 休憩時間にネットサーフィンしていた霞が突然立ち上がる。なにやらおかんむりの様子だ。

 

「何でジャージャーがそこまで叩かれないといけないのよ! ネットの人たち冷たすぎるんじゃないの!?」

 

 怒ってた理由それ!? 確かに彼はスター・ウオーズでも不人気キャラだけど。霞的には推しらしい。

 

「いや理由は俺にも分からん。シリアスなシーンでギャグキャラがいるのが許せないとか何とか」

「あんたも同じような事言ってないでしょうね?」

「ええと。以前『出すならもっと上手くやれ』的な事は掲示板に書いたような」

 

 霞の目尻がぐいっとつり上がった!

 

「ちょっとそこに座りなさい!」

「ハイヨロコンデー」

 

 すかさず赤城が言う。くすくす笑いながら。

 

「少佐。口調が元に戻ってますよ?」

「ハイヨロコンデー、でありんす!」

 

 今日は何なんだ? 加賀が何やら書類を持ってきて、机の上に広げた。

 

「少佐。聞きたい事があるの。ここの守備兵に〔四四式騎兵銃〕が回ってきて、私のところに来ないのはどう言う事?」

「いやいや。数が足りないもんをやっと回して貰ったんだぞ? 趣味なんかに回せるか!」

「少佐、話を。私にだって言いたいことがあるわ。私が一番、〔四四式騎兵銃〕をうまく使えるのよ」

「面倒くさいからガノタ界隈に喧嘩売るなでありんす」

 

 お客はぞろぞろとやって来る。

 

「提督ー。この『決断』ってアニメ、多聞丸は出るの?」

「み、ミッドウェイは2話からでありんす」

「提督さん! また加賀さんをぎゃふんと言わせる悪戯を考えたの! 聞いて!」

「いやまて。俺は加賀に悪戯しろとまで言った覚えはないぞ?」

「少佐ぁ? また語尾が戻ってますよ?」

「あーもう! でありんす!」

 

 少佐! 提督! 提督! 俺は多方向から集中射撃を浴びて頭を抱えた。誰だ艦娘たちに色々変なものを教え込んだのは! って俺じゃねぇか!

 

「分かった。いったん休憩にするから、一人ずつ話を聞こう」

 

 赤城が咳払いする。

 

「じゃあ順番に話してくれでありんす」

 

 そこで俺は致命的なミスを痛感する。執務机から立ち上がった時、扉が開けっぱなしになっていた事。その向こうで腕を組んで青筋を浮かべたビスマルクと、おろおろと事態を見守るオイゲンがいた。

 

 そして、欧州生まれの高速戦艦は宣言した。

 

「提督! 貴方の艦隊は少し規律が緩んでいるようね!」

 

 ハイ。ごもっともでございます。でありんす。

 

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