仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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明日はコミケですね。私は推しのえちぃ本を買いあさる、わけではなく。尊敬する先発の作家さんにご挨拶に行きます。えちぃ本はそのついでに買います。

あ、感想もお待ちしています。頂けると話のクオリティが上がります(ただし主観)。


第39話「海外艦の着任(その3)」

Starring:プリンツ・オイゲン

 

17:03(ヒトナナマルサン) 資源貯蔵庫

 

「えー? 提督の許可ないんですか?」

 

 工廠付の艦娘は思いっきり渋っていたが、金剛はそれを押し切った。

 

「問題ないネ。彼女たちはもう仲間ダヨ」

 

 そうは言いましてもねーと。彼女は困った口調で言うが、既に端末を弄ってなにやら処理を始めていた。オイゲンは思う。そんな軽い事で良いんだろうか? 仲間と見てくれるのは嬉しいけれど。

 

「じゃあいつも通り。指紋認証で一回ミスったらやりなおしなので、またここに来て下さい」

「さんきゅーネ!」

 

 金剛は頷くと、工廠の奥に向けて歩き出した。妖精や整備兵たちが46cm砲のメンテナンスをしている。それを扱うべき大和型戦艦はこの泊地には居ないらしいが。後に続くビスマルク姉さまもオイゲンも、日本の工廠は初めてだ。本当に見せてはならないものはこんなところに置かないだろうが、それでも興味は引かれる。

 

「何処へ行くんですか? 何か新兵器でも開発しているとか?」

 

 金剛はあははと笑う。

 

「そんなものがあったら、戦いはもっと楽になっているヨ。見せたいのはもっと地味な物ネ。でも退屈はさせないヨ」

 

 立ち止まった先には、フォークリフトやトラックが並べられた区画がある。基地の警備兵たちが敬礼で出迎える。肩にかけている小銃は、確か加賀が欲しがっていたやつだ。三人は搬出用のゲートの脇には、人間サイズの出入り口がある。金剛は鍵代わりの右手を押し付け、認証を済ませる。

 中をのぞいた時、ビスマルク姉さまと二人、目を見開いた。

 

「これは……」

「何でこんなにあるのよ!?」

 

 目の前にあるのは、泊地に貯蔵されている資源だ。燃料・弾薬・鋼材にボーキサイト。立ち並ぶドラム缶とコンテナの量は、全て常識的な量よりゼロがひとつ多い。

 

「テートクの指示ネ。硫黄島作戦にどうしても必要だからと、遠征チームが集めたデース」

 

 彼女はふふんと胸を張る。

 

「赤城は何故教えてくれなかったのかと拗ねてましたケド、私も硫黄島作戦について教えてもらってないカラ、おあいこデース」

 

 よく分からないが、赤城と張り合っているらしい。オイゲンとしてはそんな事はどうでも良くて、ただ目の前の大量の物資に目を奪われた。ビスマルク姉さまも同じようだ。

 

「大規模な鎮守府なみですね。わずか一個艦隊でここまで充実させたのは本国でも見たことがありません」

「そりゃそうネ。苦労したデース」

 

 金剛曰く。ここまで躍起になって資源を集めたのは、もちろんあの提督の方針である。作戦の全体像はまだ聞いていないが、彼は個々の艦娘に無理をさせるのではなく、「手数」を増やして敵艦隊を翻弄しようと考えているようだ。反復攻撃には資源がいる。そしてこの資源を元に必要な装備その他を開発し、修復材などの収集に使用する。要するに、米帝プレイをする(物量で押し切る)と言う。

 

「でもどうやって? 敵の侵攻をかわしながらこれだけの資源を集めるなんて、普通じゃないわよ?」

 

 姉さまの指摘はもっともで、これだけを集める手品があれば皆やっている。なにやら危険な臭いがした。

 

「普通じゃなければ出来るネ」

 

 ちょっとした悪戯だと言う。遠征先の拠点に余った資源を持たせ、現地の部隊と取引を行う。ある時は簡単な対潜任務を肩代わりし、またある時は演習相手になった。わざわざ先方が指定する編成で演習を挑むと、これが結構喜ばれた。そう言った内職が実を結び、結果はご覧の通り。

 

「ちょっと待ってください! それって完全にイリーガルじゃないですか!」

 

 オイゲンの危惧は真っ当な筈だ。軍の物資を末端の部隊が無許可で動かしていれば、秩序が破綻する。普通なら司令官の首が飛ぶ案件だ。

 

「根回しは出来てマス。ただし作戦が成功しなければ庇い切れないとも言われているそうデース」

「ちょっ!」

 

 ビスマルクは身を乗り出す。金剛はしてやったりと笑った。

 

「私があの変人(・・・・)をテートクと呼ぶ理由が分かりますカ? あの人()――いいえあの人()、そこまでの覚悟を持って一緒に戦ってくれているからデース」

 

 すっと。金剛は目を細めた。ビスマルクも同じように瞳に圧をこめ、オイゲンも動揺を押し殺し構えを取る。

 

「ライン演習。やり直したいそうですネ」

 

 ビスマルク姉さまがあごを引き、金剛を見栄据えた。

 

「赤城と言いあなたと言い。馬鹿デース」

 

 拳を握り、金剛に向けて踏み出した姉さまを、間一髪で腕を引いて止めた。

 

「私は妹たちが大事デース。あなたは違うのですカ? 復讐戦がそんなに大事ですカ? 理解できないデース」

 

 ビスマルク姉さまの顔に憤怒が宿る。彼女はずっとそれを心の支えにして、配属される艦隊を待っていた。その忍耐の日々は痛いほどわかる。だから「馬鹿」の一言は看過できない。

 

「冗談が過ぎますよ! そんな挑発するような事を言わなくても!」

 

 そんな抗議も彼女には通じない。その瞳は冷ややかだった。

 

「あなたに何が分かるって言うのよ! 気が付いたら守るべき何もかもが無くなっていた気持ちが!」

「本当に全て無くなったのですカ? 本当は見えてないだけなんじゃないんですカ? 本当にあなたの事は誰も見ていないのデスカ?」

 

 金剛の言葉が、無自覚な胸に刺さった。気付いてしまった。本当は気付かないふりをしていた。自分の望みを。確かに先に逝く悔しさは、自分には理解できない。だが先に逝ってしまった彼女は、知らないのだ。最後まで(・・・・)取り残される悲しみを。

 

「姉さま。もう止めましょう。私も、姉さまと今を生きたいです」

 

 姉さまの目に失望は宿らなかった。代わりに理解者を失った悲しみが映る。これだ。敬愛する彼女にこの顔をさせたくなかつたから、自分は。

 

「馬鹿は死ななきゃ治らないデスカ?」

 

 金剛が左手を振り上げた。彼女は射撃ポーズを取る。背筋に冷たいものが走る。怒りで我を失った姉さま対応できない。彼女は艤装を付けていないのに、オイゲンはビスマルク姉さまの「死」を感じた。何か隠し武器かも知れない! その時にはもう。何が何だか分からなくなって、彼女は飛び出していた。

 

 いやだいやだ! もう先になんて行かせない!

 

 気が付いた時、金剛はビスマルク姉さまとの間に立(・・・・・・・・・・)ちふさがる(・・・・・)オイゲンの方横を通り過ぎ、すれ違いざまに言った。

 

「……いい子じゃないデスカ。守ってあげるデース」

 

 もし艤装を付けていた(・・・・・・・・・・)()、彼女の主砲は確実にビスマルクを捉えていただろう。武道の達人は気合をぶつけるだけで、一撃を放ったと誤認させる事が出来ると言う。歴戦の金剛はその域に達していて、ビスマルク姉さまに砲撃(・・)を見舞ったのだった。

 

「オイゲン。あなた……」

「ごっ、ごめんなさい姉さま。身体が勝手に」

 

 姉さまのプライドを傷つけてしまった。後悔が湧き上がってくる。なにに金剛は満足そうに笑い、そして言った。

 

「テートクと良く話してみるデース。悪いようにはならないヨ」

 

 彼女はその場を去る。背中越しに言った。

 

「よく出来た妹には、ちゃんとアリガトウするんダヨ。うちの妹たちには負けるけどネ!」

 

 金剛の背中を見送りながら、ビスマルク姉さま。そしてオイゲンも、毒気を抜かれたように立ち尽くした。

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