私の艦隊でも遠征+若手育成要員になっちゃってますが、天龍は大好きな艦娘です。
皆さんの艦隊は天龍をどうしていますか? 天龍語りがあれば、感想蘭にお願いします。報酬は私が喜ぶ事です(笑)
Starring:響
「やるのです!」
「そうね! やりましょう!」
拳を握り締め、響ら六駆の面々は積極参戦を宣言した。津田司令官から聞いたレギュレーションでは、駆逐艦を付けていいと言う。もちろん天龍さんの背中を守る役割は、他の駆逐隊に譲るつもりはない。
「お前ら、遊びじゃねぇんだぞ?」
肝心な天龍さんは、ちょっと引いていた。これだから自覚のない人は。
「当然だよ」
真剣な顔で言い切ると、続いて暁たちも頷いた。
「そもそも、どっから聞きつけてきやがった?」
「さざな……じゃなくて。じゃのめのミシンはヘビーなのよ!」
暁は蛇の道は蛇と言いたいらしい。漣がこの件をリークしたのは諸々の意図を感じるけれど、今のところそれは触れないでおこう。
「お前らは余計な事考えなくてもいいんだよ。これはオレの問題なんだからな」
「そうはいかないのです!」
その通り。そうはいかないのだ。追従しようとした時、会議室(という名の談話室)の引き戸がガラガラと開いた。
「はいはい。詰めて詰めて」
駆逐艦たちをぞろぞろと引き連れてやってきたのは陽炎だ。続いて入って来た不知火が、大きな皿をテーブルに置く。上にはおにぎりが山と盛られている。
「長丁場になるから、鳳翔さんに頼んで夜食を用意してもらいました」
「おい長丁場ってなんだ? そもそもお前ら何でいるんだよ?」
天龍さんの質問は奇麗にスルーされた。響もわざわざ説明する気は無い。代わりに時雨が訓練海域の海図をテーブルに広げる。
「さあ、作戦会議を始めるよ」
「がんばろー! おー!」
子日が拳を振り上げると、夕立がそれに続く。
「天龍さんをお助けするっぽい!」
「はいっ! 私達海防艦もご助力しますよ!」
択捉の後ろには、新入り含めた海防艦たちが列を作っている。
わけが分からないと頭を抱える天龍さんに、吹雪がおにぎりを差し出した。
「皆天龍さんのお世話になりましたから。私達で話し合ってお助けする事にしたんです」
「お前、赤城の応援は良いのかよ?」
本人は嫌味を言っているつもりなんだろうな。天龍さんに皮肉なんて無理だけど。
「赤城さんはそれくらいで負けません! あとどっちも応援するので、どっちも勝ちます!」
ぐっと拳を握り、吹雪が熱弁する。天龍さんはこんらんしている。
「俺はお前らに好かれるような事した覚えねーぞ?」
「御冗談を」
ばっさり斬り捨てたので、天龍さんは頭の上に「?」を浮かべている。自覚が無いのがこの人の凄いところだ。
この艦隊。特にほとんどの駆逐艦・海防艦は、配属後天龍さんのお世話になる。遠征と言っても敵との接触はざらだし、戦闘を伴うものも多い。そんな中彼女は、人間の身体で戦う事を教え込み、体調の管理から艤装の取り扱い、メンタルの管理まで熱心に教えてくれた。ちなみに困ったときの対応や人の体のあれこれは、龍田さんが教えてくれた。
まあ結局行きつくのは「人柄」である。だから、恩に報いたい。駆逐艦・海防艦ならそう思う。
「まず勝てる作戦が必要です!」
朝潮の言う事は当たり前ではあるけれど、自分達と赤城さんとの戦力差は絶大だ。強い弱いではなく、レギュレーションが違う。正規空母のようにパワーで押し切ることが、軽巡にはできない。
決して軽巡や駆逐艦が空母に劣っているわけではない。もし艦隊全員が赤城さんだったら、軽巡のように素早く補給を終えて取る物も取らず戦場にはせ参じる……なんてことは出来ない。きっちり護衛を手配して、ようやく出陣となる。絶大な攻撃力は小回りが利かない対価だ。
これは司令官が言っていたけれど「もし艦隊が軽巡や駆逐艦だけなら、仮に最終的に敗北が待っていたとしても、戦う事は出来る。しかし空母が護衛無しなら、そもそも戦争にならずに負ける」。艦隊にはまだ司令官を警戒する駆逐艦も多いが、聞かせてあげたい言葉である。
「任せてちょうだい。こんなこともあろうかと、スパイを潜入させておいたの」
「スパイ、なのです?」
がらがらと扉が開く。スパイは ででんと効果音が鳴りそうな勢いで入室し、ふんぞりかえった。
「ふっふっふ。うーちゃんの出番だぴょん!」
一同の顔が微妙なものに変わる。まあ卯月だから。
「みんな失礼ぴょん! これを見るぴょん!」
卯月が掲げたのは、一冊のノート。『駆逐艦でもゼッタイ勝てる。空母攻略マル秘作戦計画書』とある。このセンス、何処かで見覚えが。
「津田少佐の執務机に置いてあったから失敬してきたぴょん」
それはどうなんだろう。どう考えても罠ではないかと。
「えーと、どれどれ?」
陽炎がノートをペラペラめくる。スパイを招聘しておいて期待していないのか、かなり適当に。
「空母のコードネームが『A』で軽巡が『T』だって。いくら何でも出来過ぎてるわね」
しかし数ページめくると、彼女の視線がゆっくりとページを追い始めた。
「どうしたの陽炎?」
心配した不知火には答えず、彼女はノートをパタンと閉じた。
「このノートガチね。書いた人は本気で天龍さんを勝たせるつもりでこれを考えたみたい」
まあ「書いた人」が誰かは、皆もう分かっているだろうが。素直じゃない人だ。
「じゃあ天龍さん。まずはこれを読んでもらって、話はそれから」
だが天龍さんは、差し出されたノートを受け取らなかった。彼女はめずらしく苛立った様子で椅子を引き、どっかりと座り込んだ。
「
全員が顔を見合わせた。別におかしくはない。
「オレは自分の勝手を通そうとしてこんな騒ぎを起こしたんだ。お前らを巻き込むつもりはねぇ!」
天龍さんの気持ちは伝わる。だけどこの部屋にいるメンバーは、誰一人そんな言葉で納得はしないだろうけれど。
「……『ちび共に戦わせてオレだけ後ろで見てろってのか』って言ってくれはったそうやな。ならうちらにも関係ある事やんか」
黒潮が退路を潰してしまう。天龍さんはぎょっとし、「漣のやつめ」とつぶやいた。
「天龍さんと一緒に戦うチャンスがあるなら、雪風がんばりますっ!」
「いっちょやったろうぜぃ!」
皆次々に名乗りを上げる仲間たちをよそに、響はうんうんと頷いた。
「天龍さんが私たちの気持ちを疑うなら、悲しいけど別に構いません。でも今回の件から手を引けと言うのだけはナシです!」
吹雪に言い切られ、天龍さんは乱暴に頭をかきむしり、陽炎に手を差し出した。彼女はにっこり微笑んで、マル秘ノートを差し出す。
「あんにゃろ。オレに散々言いながら、オレが勝つための作戦を考えてたのか」
「素直じゃない人って多いのねぇ」
雷が茶々を入れ、皆が笑った。
「で、どうします? 罠の可能性もあるけど」
判断に困っている様子の陽炎だったが、たぶんそれは心配ない。
「こんな手の込んだことして罠にかける意味がないよ。それに司令官の性格上、こう言うのは真面目に書いたはずだ」
「そうね!」
「なのです!」
我ら六駆は声高にそれを主張し、何人ものメンバーが同意した。
「少佐ってそんなに……」
陽炎は言いかけたが、首を振って言葉を閉じる。「凄い人なの?」が続いたのだろうが、確かに今話す事ではない。
「じゃあ、明日まで時間がないから、図上演習と行きましょう。時間が来るまで可能な限り予測できる展開を出し切っておくわよ」
全員が拳を上げ、盤上に駒をならべてゆく。
「じゃあ天龍さん」
「おう!」
「寝てください」
「……は?」
陽炎は「分かってないなぁ」とでも言いたげにドヤ顔を浮かべる。
「陽炎が言いたいのは、実働部隊が徹夜してはまずいと言う話です。後は不知火たちがやっておくので、仮眠をとったら戻ってきてください。ゆっくりでいいですよ」
天龍さんは困ったように笑い、引き戸に手をかけた。それからまた頭を乱暴に掻き、振り返った。
「お前ら、ありがとな!」
響たちは笑顔で応じる。本当に、素直じゃない人が多すぎる。