第一線の正規空母 vs 軽巡の先駆け+六駆の戦いはいかに?
Starring:提督
背中からヤバい興奮が伝わってくる。こう言うのをヒリつくって言うんだろうか。一流の勝負師なら血が滾って来るところだ。だが俺は勝負師ではない。だからして。
「あのそろそろ許して頂けませんでしょうか?」
「うふふ。だーめ」
命乞いは却下され、浴びせられた殺気は引っ込めてくれそうにない。言葉こそ甘えるような字面だが、こいつは何時でも俺の首を獲れる。まあ本当に首を獲る事は無かろう。
天龍は今、赤城との演習を準備中。六駆とともに、状況開始を待っている。俺は指令室でそれを見守っていたわけだが。
「天龍ちゃんはね。とっても傷つきやすいの」
切り出した話題は、やはり天龍についてだった。こいつ考えは読めないが、行動原理は分かりやすい。
「知ってるよ」
思っていた事をそのまま返したら、龍田の声がわずかに低くなる。
「ふーん? そうなんだ」
こえぇえ!
とは言えこいつ、受け答え次第で俺を見限るな。駆逐艦たちに人気のある彼女を敵に回したくないし、それより単純に嫌われるのも嫌だ。
「お前の言いたい事は分かる。天龍型は正面切って戦うのには不向きだ。それを最前線に引っ張り出したらどうなるか。リスクは確実にある」
「うふふ」
それならわかつてるわよね? 背中越しの彼女はそんな顔をしているのかも知れない。だが指揮官には指揮官の都合があるのだ。
「もし硫黄島の作戦が失敗に終わったら。どの道俺なり俺の後任なりがあいつを前線に出さなきゃならんだろう。その時は恐らく、もっともっときつい状況での出撃になる」
そんな事龍田には百も承知だろう。ただ時として、正しさは人の心を頑なにする。
「天龍ちゃんを、強くできる?」
ようやく本音らしきものが出てきた。前に出さなければ生き残れないと言うのなら、生き残れると言う評価に値する何かを引き出してみて。彼女はきっと、そう言っている。
「やるのは俺じゃなくて本人だろ? だが俺があいつを使いこなせると言う証明は出来るかもしれんぞ?」
「もしそれが失敗したら……」
失敗したら。「強くなることに」ではないな。天龍のまっすぐさが損なわれることになったら。俺の胴体は、首とサヨナラするかもしれん。比喩ではなくガチで。だが――。
「好きにしろ」
俺はそれだけ答えた。
「うふふ」
龍田は何も言わない。こつこつと靴の音が小さくなっていき、指令室の扉が開く。俺はだくだくと汗をかき、背もたれに身を預けた。
「もう良いぞ漣。ありがとな」
我が秘書艦もふーっと息をはく。何かあった時止めに入ろうとしてくれたのは、俺でも分かる。
「龍田さん。とっても優しい人なんです。ただ天龍さんが絡むと、その」
「ああ分かってる。みなまで言うな」
俺もあいつの人柄は疑ってない。ただ身の危険を感じてるだけだ。
「そこまでして天龍さんを戦わせる必要、あるんですか? 七駆もがんばりますし、大型艦の皆さんだって」
そうなんだがな。本来は。
「あいつが一線で使えると、助かるのは事実なんだよ。それを置くにしても、ちゃんと割り切っておかないと、あいつら前に進めない気がしてな」
「ほほう」
なにやら漣がにやにやし始める。気持ち悪いぞ。
「ご主人さまって、最近皆の事にどんどん踏み込んでいくようになりましたね」
「そうか?」
そう言われればそうかもしれない。あまり意識した覚えはないのだが。
「確かに
そう言ったのに、漣は何故か口を尖らせた。
「気を付けちゃ駄目です! そのままでやってください!」
「そ、そうか?」
「そうです!」
よく分からんが、こいつが強く言うなら意味のある事なんだろう。
まあそれはそれとしてだ。演習は始まる。
「天龍さんは、どう出ますかね?」
「決まってる。
「いいんですかそれ?」
良くはない。良くは無いがこれが最適解だと思う。少なくても今は。
「俺だったら応援を呼ぶなり煙幕を
「無理ですね」
「だからこれで良いんだ」
龍田が加わっていればまた話は違うんだがな。響の今後にも期待したいが、天龍を押さえるにはもうちょっとだけ場数を踏まないと駄目だろう。
ここで電が分派。先行する。実はこいつは
「ご主人さまって、演習だと普通に捨て石を使いますよね?」
「そりゃあな。深海棲艦は捨て石を多用するだろ? そう言うのに対応するには、自分達も捨て石戦術を使えるようになっておいた方が良い」
まあ実戦で使わせる気は毛頭ないがな。生き残らせるため、演習限定の捨て石だ。そう思いつつ漣を見たら、なにやらにやにやしていた。なんだよ?
「まあいい。ここで赤城は迷う。先行する電を叩くか、本隊を空襲して頭を潰すか。俺なら指揮機能を持った本隊を狙う。多分それはあいつも同じだ」
そして攻撃隊は放たれる。だが天龍隊の五隻には、最新鋭の対空火器を限界までガン積みしている。そして実は天龍型の対空性能は、意外と悪くない。
結果雷が大破判定を受け落伍。後方に退避する。それ以外の者は小破程度の損傷を負うが、戦闘継続は可能。
「普通ならこの攻撃ですり潰されて投了だ。だがここで電の突撃が効いてくる」
通常の演習なら、駆逐艦一隻の突入なんて論外だ。随伴艦が蹴散らすからだが、今回赤城は単体。魚雷一発が怖い存在だ。それにどうせ俺が作戦を提供……じゃない。
「実はそこまで意味はない。ああしとけば赤城のやつが警戒して、本隊への攻撃が不徹底になると思っただけだ」
普段ならそうはいかんだろうが、天龍の戦術に俺の影がちらついているのは感じているはず。ならば余計に電が気になるだろう。くっくっく。
「ご主人さま、相変わらずですねぇ」
なんかしみじみ言われたが失礼な。こっちは勝つための作戦を必死こいて考えただけだ。
「ほっとけ。再び赤城のターンになる。あいつは再び選択肢を突きつけられる。電か、本隊か。どちらに空襲をかけるか。結果電を選ぶだろう。ここで天龍を沈めても、電に接敵されたら自分がやられる可能性がある」
モニターには、ジグザグ軌道で逃げ回る電がいた。しかし
白旗を艤装に掲げ、彼女は離脱してゆく。これで天龍艦隊は三隻に減じる。だが電を爆撃する間、彼女たちは順調に赤城に迫っていた。
「勝てますかね?」
握りこぶしを作った漣が聞いてくる。
「この状況だと厳しいな。多分赤城に接敵する前に次の空襲を耐えられないだろう」
「ええっ!? 何とかならないんですか?」
「あいつらのうち、誰か一人でも空襲を生き残れば、活路はある」
そして実際に、天龍は耐えきった。大破判定なので、ああと一撃攻撃を受ければ、どんなに小さなダメージでも轟沈判定を食らう。これ以上は何をしても無駄。と赤城も思うだろう。だが容赦はしない。最後に残った天龍に全力の一撃をかけようとする。
実際に血気盛んな天龍も反転し、戦場から撤退を試みる。艦隊が消滅するよりも、一隻だけでも離脱に成功した方が裁定が違う。本人もこの決断は忸怩たるものを感じているだろう。
たとえ
そして赤城の足元で何かが爆ぜた。
と言う激突だったのさ。
よければどっちが勝つか予想を書いて行ってください♪