Starring:提督
「ええそうですね。あなたはそう言う人でした。分かってましたとも!」
赤城がなんか拗ねている。頬を膨らませつつ。……こいつこんな風な絡み方をする奴だっけ?
「でもまぁ。お前の勝ちだろ? 電が沈み際にばら撒いた機雷でもお前を倒しきれず、結局天龍が沈められたわけだからな」
「ええまあ。誰かさんがずるっこしなければもっと楽に勝てたんですけどね」
「そうか? お前の〔彗星〕、何故か
にやにや笑いながら言ってやるが、赤城はぷいとそっぽを向いた。
「威力より命中率を重視しただけです。他意はありません」
「他意? 俺はお前の判断ミスについて聞いているんだが。ん? 何か他意はあるのかなぁ?」
「ぐぬぬ」
まあこいつも、天龍たちを心配してたってことだな。素直じゃ無いやつめ。
「……ご主人さま。天龍さんが来ますよ?」
調子に乗る俺を窘める漣は、すこぶる不機嫌だ。何かあったのか? あとでフォローは入れておこう。
Starring:天龍
津田少佐はにっこりと悪そうに笑い、天龍に椅子を薦めた。大変むかつくので辞退したが。
「さて。うちの旗艦をあそこまで追いつめた感想は?」
下らない化かし合いをするつもりはない。不快感を顔いっぱいに表し、言ってやった。
「散々引っ掻き回してくれたじゃねーか」
その一言で、少佐の表情は苦笑に変わる。悪戯を仕掛けたら、予想以上に大事になって慌てる子供のようである。
「言っておくが、
「怒る気にもなれやしねぇ」
とは言え内心では特に怒りも恨みもしていない。彼やチビ共が引っ掻き回さなくても、自分は負けていた。いやもっと惨めな負け方だったろう。そう言う意味では感謝すべきだし、気付きも得た。
「あいつらにはちゃんと礼は言ったな?」
「たりめーだろ」
ひとりひとりお礼を言って回ったが、陽炎などは「次は何をすればいいの?」などと無駄に張り切っていた。無論次など無い、はず。
「龍田にも言っとけよ?」
「龍田? なんで?」
「お前秘密にしたつもりだろーが、相当に心配してたぞ?」
うっ。やっぱりバレてたかと頭を掻く。龍田は見かけによらずかなりの心配性である。そんな彼女を心配させたくないのに、こんな事をやっている自分も自分であるが。
「じゃあ結論を話そうか」
話を急ぐ少佐の言を手で制した。まだ肝心な事を聞いていない。
「その前に、オレを赤城にけしかけた理由を教えてくれ。意味がないと思うならしないだろ?」
彼はそんなことかと前置きして、いきなり遠回りな話を始めた。
「旧陸軍の人事評価だがな。あそこは将校をみっつの基準で評価したそうだ。ひとつは指揮官
「オレは教育適って言いたいんだろ?」
それは何度も言われて来た。言われるたびにお前は後方で引っ込んでいろなんて意味に捻じ曲げて、勝手にフラストレーションを溜めていたわけだが。
「まあそうだな。ちなみに俺の自己評価は参謀適だ。指揮官やるほど好かれてないからな」
「えっ?」
「えっ?」
隣の机で作業していた漣と大淀がぽかんと口を空けている。うんまあ。自己評価と言うものは、周囲の評価とは必ずしも一致しないものだと言う事だろう。少佐はそれに気づかず、話を続けるが天龍にとっては意外な物だった。
「だが天龍。俺はお前は指揮官適でもあると思ってる」
「オレが? さっきだって突っ込む事しかできなかったぜ?」
それは便宜上部隊を率いてはいるが、大規模な艦隊を動かす金剛や赤城と自分が同じジャンルであるとは思えない。
「そう言うのは戦隊旗艦から降りてくる命令か、龍田あたりの具申に従っときゃいいんだよ」
「そんな適当でいいのかよ?」
「それより大事な物があるんだよ」
少佐は断言するが、「的確な指揮」以外に何が必要だと言うんだ?
「お前ら全員、赤城相手に突っ込んでも誰一人戦意を失わなかったろ? お前が励ましたからだろうし、逆に励まされた事もあるかもしれない」
天龍の脳裏に、今日の記憶が浮かぶ。
――天龍さんごめん! 下がるわ!
戦闘力を失った雷を見て、天龍は確かに後退を選択しかけた。
――止まらないで!
それを止めたのが響だった。
――まだ負けてないわ! 雷の為にも進むわよ!
暁もそれに同意し、叫ぶ。
――進もう! 司令官と皆で練った作戦と天龍さんがいれば!
畳みかけるように響が言った。弱気は吹き飛んでいた。
――分かった。進むぜお前ら!
そして、五人はひとつになった。
図星を突かれた天龍はふくれっ面を浮かべるしかない。少佐はにやにやと笑う。
「たとえ部隊を器用に動かせなくても、作戦を思いつかなくても。『こいつについてきゃ大丈夫』と思わせられるやつは指揮官適だ。あとお前、皆をリラックスさせて発言しやすい空気を作るのも上手いな。そこからいいアイデアが出るし、間違った時も駄目出ししてもらいやすい。そしてお前はそう言うのを拾うのも得意だ」
「さっきから、褒め過ぎじゃね?」
こうまで言われると、逆にうさんくさく感じてしまう。だが少佐は本気のようで。
「金剛や足柄も似たタイプだが、お前の方がどんな相手とも相性が良い傾向がある。良い意味で馴れ馴れしい」
余計なお世話だ。だけどまあ、言わんとしている事は分かった。戦うのに必要なのは、必ずしも武器でない事を。自分がこれしかできないのかと忌々しく思っていた事が、勝つために何よりも必要だった事を。
皆が教えてくれた。寄ってたかって。
「さて、それで今後の事だが、確かに負けはしたが赤城をあそこまで追いつめた実績を俺は評価している。前線に行くか?」
天龍は少しだけ考えた。考えるふりをした。何故ならもう答えは決まっているから。
「前線には、人が足りない時だけ呼んでくれ。オレは基本、チビ共の世話でいいや」
六駆の連中も、直ぐに作戦に参加するようになるだろう。だが新たな駆逐艦や海防艦が艦隊にはやってくる。そいつらを鍛えるのも、まあ悪くない。
「その代わり、必要な時は呼べよ? 育てっぱなしってのは好かねぇからな」
断ったのにも関わらず、何故か少佐はほっこりしている。漣や大淀、事務のおっちゃんまでにこにことこっちを見ている。じろりと威圧してやる。
「まああれだ。前線指揮官をひとり失ったのは痛いけどな。それ以上の人材を手に入れたかもしれんな」
天龍は仏頂面で、低い声を出した。
「余計なお世話だ。
Starring:提督
「諸君らには、パラオ迄の輸送任務を担当してもらう。敵拠点の硫黄島を迂回しての作戦行動となるから、十分気を付けてくれ」
「おう!」
天龍が元気よく答えると、新米の駆逐艦もそれに続いた。
「了解じゃ! 任しとき!」
初遠征の浦風は良い感じで張り切っている様子。まあ暴走するキャラじゃなさそうだし、しても皆が止めるだろう。
「浦風は運が良いわよ! うちの天龍さんはね!、あの赤城さんを演習で追い詰めた事があるんだから!」
「ほんまに!? 詳しゅう聞きたいわ!」
こいのぼりほどに長い尾びれをくっつけて、武勇談を語る。
「その話を新入りにすんなっつっただろ!」
「でも事実なのです」
「謙遜は天龍さんらしくないよ」
「あのなぁ!」
ブリーフィングは一時中断される。俺は苦笑半分でそれを見守った。
「結局、収まるところに収まったみたいだな」
一人ごちたつもりだったが、背中から急に気配がする。
「そうだねぇ。おかげで首と胴体も離れずに済んだかも」
龍田は相変わらず怖い事を言う。俺はこいつだけは敵に回すまいと誓う。
「勘弁してくれ。失敗するなと強要されるとかえって失敗しやすくなるもんでな?」
龍田は俺の言葉を無視し、一方的に言った。
「これからも天龍ちゃんを守ってね。
提督か。どうやら俺は、天龍型二人の信頼を得たらしい。一応は。だが龍田の言う事には、一点だけ異議があった。
「あいつは守られるだけのやつじゃないだろ?」
龍田は1テンポ遅らせて、そっと答えた。
「しってるよ」
むっとした顔を背ける彼女に、俺は初めて親しみを覚えたのだった。
と言う天龍ちゃんだったのさ。
彼女は艦これを知って初めて気に入った艦娘です。一人称オレで粋がってるけど旧式で雑魚っぽくて、気風が良くて超良い人。ケッコンもいいけれど月一で飲みに行ってお互いの愚痴とか言ったり聞いたりしたいです。
「こんな天龍ちゃん良いよね?」とかあったら感想にお願いしますm(__)m
次回はお待たせしました。久しぶりに恋バナです。諸々の事情で、公開が一日ずれこむ可能性があります。ご了承くださいませ。