仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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先週のまえがき、熱ある中で書いたからめっちゃ怖い事になってますね。ご心配をおかけし大変申し訳ありません((((;゚Д゚))))

ごく簡単な手術をしたら後遺症で熱がでて、現在自宅療養中なだけなので大した話ではないです。ご安心を 

でも体調悪い時って無駄に不安になって大げさな事言っちゃったりしますよね。皆様は体調壊した思い出って何かありますか? 笑い話で済むようなやつを教えて頂けると、療養の励みになります 


第49話「三人の動物園(その2)」

Starring:漣

 

 ご主人さまが連れてきたのは、動物園のはずれにあるボr……小さな日本家屋だった。

 

「ここは? 茶室ですか?」

 

 ご主人さまは頷いて、案内の看板を指さす。

 

「この茶室は閑閑亭(かんかんてい)って言うんだ。江戸時代初期の話だけどな。これを作った大名が、どんなもんですかと征夷大将軍を招いたんだ。その大名はかなり仲が良かったから、将軍はズバッと言っちゃった」

「何をですか?」

 

 赤城さんが問う。普通に考えたら飛躍した話だ。

 

「『お前がこんな物を作れるようになったのは、戦いが無くなって侍が(ひま)になった証拠。だからこの茶室は閑閑亭と名付けたらいい』ってな」

「閑、ですか。そんな名前付けられて、大名は怒らなかったんですか?」

 

 ご主人さまは頭をポリポリと掻く。何か照れくさい事を言う顔だ。

 

「これは俺の想像だけどな。喜んだんじゃないかと思う。その大名は、実際に戦国のサバイバルを生き残った人だったから、『お前たちのおかげで平和になった』って言われたようなもんだからな」

「なるほど。そう言う解釈もできますね」

 

 生真面目な赤城さんは顎に手を当てて思索に励んでいる。漣は何となく分かった。ご主人さまの言いたい事。

 

「つまりな。丹賑(ニニギ)島に俺たちの閑閑亭を建てよう」

「え? これを建てるんですか?」

「別に茶室である必要はない。俺たちはそこに籠って、毎日ぼーっと生きるんだ。で、あいつら閑人(ひまじん)だなぁって後ろ指をさされて、それを聞いて喜ぶのさ。『俺たちのおかげで平和になった』ってな」

 

 赤城さんは。いや漣も。ものすごい発想に面食らい、そして爆笑した。この人は時々とんでもない事を言う。こんなに大爆笑したのはいつ以来だろう?

 

「あははっ。本当にあなたと言う人は」

「ふふっ。どうです? うちのご主人さまは」

 

 ご主人さまはにやりと笑い、閑閑亭の写真を撮りだした。

 

「色々割り切れんこともあるだろうが、まあ力を貸してくれ。悪いようにはしない。多分だが」

 

 そんな事いわれなくても、漣の意志は決まっているのだ。

 

「何処までもついていきますよ。ご主人さま」

 

 赤城さんはまだ笑っていたが、それはいつしか苦笑いに変わって行く。そしてふうっと息を吐く。

 

「分かりましたよ提督(・・)。あなたを信じましょう」

 

 ご主人さまの顔がぱっと明るくなる。心なしか鼻声になっている。

 

「そうかそうか。割と長かったな」

「それは誰かさんが初動でやらかしたからですね」

「全くです!」

 

 そんな話をしていたらまたおかしくなって、今度は三人で笑った。やっぱり、赤城さんを誘って良かった。

 

 

 

「そう言えば、漣さんはどうして私を誘ってくれたんですか?」

「はにゃっ!」

 

 ちょうど、ご主人さまが用を足しに行ったタイミング。赤城と漣さんは屋外のテーブルで彼を待っていた。無邪気に聞かれて、また変な声が出てしまった。そんなもの答えようがない。

 

「えっと。それはですね」

「本当は提督と二人で来たかったんですよね?」

 

 不意を突かれた。今日の赤城さんはボケボケだから、つい油断してしまったのだ。

 

「どうしてですか?」

 

 だから肯定してしまい、混乱は極まる。

 

「だって私が行くと言わなければ、漣さんは断りかねない様子でしたから」

 

 そうかもしれない。高雄さんの気遣いはありがたかったけれど、赤城さんにも心配をかけていたようだ。だから聞きたくなった。

 

「赤城さんは、ご主人さまをどう思ってるんですか?」

「えっ? どうと言いますと?」

 

 赤城さんは戸惑う。会話がいきなり飛んだように思えたのだろう。つまり彼女は、今の話を色事(コイバナ)だとは思っていない。

 なあんだと思った。だったら良いよねとも。だって自分の方がまだ先を走ってるんだから。

 

「いらないなら、漣がもらっちゃいます」

 

 言い切った。言ってしまった。赤城さんは、黙った。きっと漣の様子から、いい加減な答えは返せない。誠実な彼女ならそう思っていることだろう。自分は一航戦に喧嘩を売ってしまったわけだ。でも不思議と後悔はなくて、むしろ楽になった。

 たとえ彼に必要なのが、自分じゃないにしても

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

Starring:赤城

 

「漣さん」

 

 ただ呼び掛けた。自分でも何を言いたいのかは分からない。ただ応えなければいけない。それだけは分かった。

 

「すみません。今の気持ちを言葉に出来ないんです。でもこのままじゃ良くない気がします」

 

 漣は頷いた。何か確信が的中したような、そんな顔だった。

 

「最近は、心配しています。夜執務室でうたた寝しながらうなされる彼を、何人も見ています。私も」

「理由は、ご主人さまから聞いたんですね」

 

 それを知るのは自分と、恐らく漣さんだけ。だけど二人とも何とかする糸口が見えないでいる。

 

「はい。彼は弱い自分を必死に強く見せようとしています。でもそれは見栄からではなくて、弱さを直視すると、見たくない過去を突きつけられるから」

 

 自分はあの不遜な態度に、強迫観念めいたものを感じてしまっている。その証拠に多くの艦娘が彼に寄せる信頼を、無意識に見ないようにしている。彼は弱い人だ。だけど自分達が提督に求めるものは、決して強さではない。

 

「たぶん、ご主人さまに必要なのは漣じゃないんです。だから支えてあげて欲しいです。でも諦める事を諦めるくらい、やってもいいですよね?」

 

 彼女が何を言わんとしているかは分からない。分からないはずなのに、ほのかな卑屈さを感じた。

 

「なぜ漣さんでは駄目なんですか?」

 

 漣さんは目を伏せる。なぜそんな酷い事を聞くのかとでも言うように。でもここは引くべきではないと感じた。

 

「漣じゃ駄目なんです。ご主人さまは漣を妹としか思ってなくて。でも赤城さんとは対等な相棒で。きっと追いつけ……あのらんれすか?」

 

 気が付けば漣さんの頬を引っ張っていた。それ以上言わせたくないと思ってしまったらつい、である。そう言えば、加賀さんに勝てなくて捨て鉢になる瑞鶴に、よくこうしたものだった。

 

「そんな事を言ってはいけません。一度誰かに聞いてみると良いですよ。漣さんと話している時の楽しそうな顔について」

 

 そうだ。自分と彼が出会う前にも、漣さんはずっと彼を支えてきたのだろう。きっとそれはかつての。いや今の彼にも必要なもののはずだ。

 

「そうでしょうか?」

 

 不安そうに聞き返す漣さんに、赤城は言い切った。

 

「そうですとも!」

 

 漣さんは少しだけ赤城を見つめ、質問を返した。

 

「赤城さん、ちょっとだけ悔しそうにしてません?」

 

 む。彼女と楽しそうにしてるあの男が? そんな事あるわけがない。

 

「してませんよ?」

「なんか顔が引きつってるような」

「してません」

 

 急に元気になったと思ったら、変な絡み方をするようになったと思う。でもまあ今の方がずっといい。そして漣さんは顔を上げ、にっと笑った。

 

「分かりました。つまり赤城さんと漣とは、同じスタートラインから走り出していたと言う事でおk(オーケー)でしょうか?」

「スタート地点、ですか? 何かの勝負でしょうか?」

 

 だとしたら負けるわけにはいかない。一航戦の誇り! である。

 

「いいですか赤城さん。この勝負は何が勝利条件なのかに気付けるかどうかも勝敗に関わるのです」

「ふむふむ」

 

 変わった勝負である。でも漣さんが挑んできたなら、それは意味がある筈だ。

 

「それで、漣はもう勝利条件を知っているので、一歩リードですね」

 

 ほほう。それは面白い。

 

「その勝負、受けましょう!」

 

 赤城は対等な競争相手に右手を差し出した。握り返す彼女には、卑屈さは微塵も感じなかった。

 

「まあ木葉提督(ご主人さま)なら、『一位も二位もトロフィーを貰えればそれで良いじゃない』とか言いそうですけどネ」

「何故木葉提督が? 二位もトロフィー貰えるんなら勝負の意味がないのでは?」

「それはまあ、謎解きのヒントと言う事で」

「ふむ。難しいです」

 

 そんな話をしていたら、提督がお盆を持って帰ってきた。何も考えていなさそうな顔に、何故だか少しいらっとした。もっともお盆の上の物を見たら、直ぐ感謝の気持ちに変わったのだが。

 

「ほれ。今日のクライマックス。動物園名物デカいチーズバーガーだ」

「この大きさは! こぼれるチーズは! 何たる巨魁(きょかい)!」

 

 とりあえず赤城は、倒すべき敵を目の前のハンバーガーに見定める。目の前の小敵に手こずるようでは、新たなライバルを倒す事は出来ないのだ。

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