仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

50 / 119
足柄さんのお話です! 舞台で大活躍みたいですね。行きたかったけど、諸々の事情で駄目でした(´・ω・`) 円盤は駄目みたいですが、頼むから別の演目でいいからまたやって頂きたい。

さて、私はかっこいい足柄さんと残念な足柄さん。どっちも大好きなので両立できないか頭をひねってみました。

三部作です。どうぞお楽しみに!


第50話「足柄さんの休日(その1)」

12:52(ヒトフタゴフタ) 執務室

 

Starring:提督

 

 重巡足柄。艦隊の切り込み隊長。その戦いぶりは、自他ともに認める勇猛果敢。それでいて猪突はしない。常に自信満々で周囲を鼓舞し、彼女がいるだけで艦隊は狼の群れと化す。「戦ってきてくれ」と言うだけで現場を回してくれるので、俺としても助けられている部分が大きい。

 皆は赤城を「艦隊のお姉さん」として接するが、彼女もある意味お姉さんだろう。

 

「タイが曲がっているわよ?」

「えっ本当?」

 

 先ほども暁を呼び止めて、服装を窘めていた。それも規律云々の話ではなく。

 

「海軍は身だしなみが大事よ。その方が強そうでしょ?」

 

 なんて語り掛けている。彼女は腰をかがめて視線を合わせ、タイと襟(海軍ではジョンベラと言う)を直す。

 

「それにね。気を付けないと素敵な出会いが逃げちゃうわよ?」

「うん! 気を付けるわ!」

「よろしい。じゃあ演習頑張ってらっしゃい」

「はーい」

 

 暁は手を振りながら走って行く。気分を害した様子は一切なくて、ねぎらいを受けたくらいのつもりでいるだろう。指摘をしたのにねぎらいになってしまったのがお姉さんマジックだ。

 そんなわけで彼女は上からは頼られ、下からは慕われている。俺からすればまったく問題のない艦娘だったわけだが――。

 

「公務ではそうですね。でもプライベートが問題なんです」

 

 不安を語るのは妙高型一番艦妙高。足柄の姉だ。彼女は携帯電話を取り出す。明治大正昭和生まれの艦娘たちも、今ではガジェットを使いこなす者が多くなった。中には神風のように使おうとして使われる者もいるが、まあそれは個性というやつで。

 

「これを見てください」

 

 見せられたのはNINE。つまりチャットアプリだ。機能としては似た名前のメジャーなアプリのパチモンである。あっちの方は機密保持の点で問題があるとされたので、現在軍関係者のプライベート用として、こちらの使用が義務付けられている。

 

「休暇で本土(内地)に行くたびに送ってくれるんですが」

 

 どれどれ? 俺は身を乗り出して、差し出されたスマホを見る。どうせちょっと羽目を外しただけだろう。三人の妹を持つ妙高だから、多少心配性になるのは仕方ない。

 

『大学生たちに声をかけられちゃったわ。身体を動かすのが好きだって言ったら自分達もって言うからジムに誘ったの。でも皆へばって帰っていったわ。次に会うときまでには鍛え直すって言ってた』

 

 俺は頭痛を感じて眉間を指でつまんだ。足柄よ。その大学生たちと会う日は二度と来ないぞ。

 

「私も同じことを書いたんです。そうしたら」

 

 そうしたらどうしたと言うんだ? 妙高は画面をスクロールして、再び差し出してくる。

 

『いいのいいの。たまーに原石が混じってるんだから。この間ナンパしてきた子だってちょっと空手を手ほどきしたら、今では一人の修羅よ』

 

 おい罪のないチャラ男に何をしたんだお前は。

 「ウェーイw チャラ男くん見てるー? チャラ男くんの友達は今足柄さんの隣で巻藁(まきわら)突いてまーすw もう一人の修羅でーすwww」とか変な想像しちまったぞ。

 

「次の時はこれです」

『那智と待ち合わせの時間が空いたから、ぶらぶらしてたらボクシングジムを見つけたの。飛び入りでスパーリングしたら倒しちゃって。是非コーチにって言われちゃった。流石に断ったけど』

 

 お前そのうちゲ●ターロボのパイロットにでもスカウトされるんじゃなかろうか。きっちり悪の帝国滅ぼして帰ってきそうだけど。

 

「何と言うか、小学生と大人の女性の悪いところ取りだな。これは」

「言い得て妙なのがまた」

 

 妙高も苦笑する。やっぱりなんだかんだ言っても妹が可愛いんだろうな。

 

「話は分かった。だが結局は本人の問題だろ? 何か危険があるなら俺も矯正させるつもりではあるが」

 

 むしろ危険を感じるべきなのは都心の若者たちであろう。足柄は狼なのだ。気をつけなさい。年頃になったならつつしみなさい。である。

 

「私が気になっているのは、あの子がちゃんと恋愛できるのかどうかなんです」

「あー」

 

 まあね。腕っぷしだけを物差しにすると、艦娘に恋愛は厳しい。足柄より強い男性なんて、人間国宝だ。

 

「だってあいつレディだろ? さっきだって暁に」

「ギャップがありすぎるのが問題なんです」

「うんまあそうだな」

 

 内輪では大人のおねーさんで、外に出ると豪快。普通の内弁慶とは真逆だな。泊地のように気を使う必要が無いからあんなになるのか。

 だがこの件で俺に出来る事はなさそうでもある。

 

「強権を振るえというなら、出来ない事もないが、やりたくないぞ。さっきも言ったが余程の事が無ければ自分の事は自分で決めるべきだ」

「分かっています。ただ実態をこの目で見てから判断したいのです」

 

 それはもっともではある。妙高の立場なら気になるであろうから。とは言え。

 

「そうは言ってもなぁ。あいつ気配を察知するの上手すぎるからな」

 

 そう考えた時、適任者の顔が浮かんだ。まあ聞くだけ聞いてみるか。報酬は足元を見られそうだがな。

 

「漣、川内を呼び出してくれ」

 

 話を聞かないふりをして稟議書に目を通していた漣は、ディスプレイから目を離さず受話器を取る。今日川内は非番の筈だ。結局彼女は、改修した夜偵の実戦テスト×3を報酬に、足柄の追跡を受けてくれたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。