足柄さんのお話です! 舞台で大活躍みたいですね。行きたかったけど、諸々の事情で駄目でした(´・ω・`) 円盤は駄目みたいですが、頼むから別の演目でいいからまたやって頂きたい。
さて、私はかっこいい足柄さんと残念な足柄さん。どっちも大好きなので両立できないか頭をひねってみました。
三部作です。どうぞお楽しみに!
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Starring:提督
数日後俺と妙高は執務室でノートPCをのぞき込んでいた。漣と鈴木一曹は、まあ口が堅いので大丈夫だろう。画面の向こうは勿論足柄。川内に着けさせた小型カメラと骨伝導のマイクを通している。
「相変わらず渋谷をうろついてますね」
「那智との待ち合わせかな?」
「那智は今日お休みじゃありませんから」
うーん。でもナンパ待ちって感じでもなさそうだ。駆逐艦や海防艦を引率しない時の足柄は、ピシッとしたスーツで行動する。一見したら出来るビジネスパーソン。しかも超美人だ。俺が言って良いのか分からんが、あれを見たら確かにナンパのひとつもしたくなる。
「おっ、誰か話しかけてきたぞ?」
声をかけてきたのは、あごひげと派手なTシャツ。おまけに日焼けと装飾品じゃらじゃらな青年。何処に出しても恥ずかしくないチャラ男だ。足柄は一旦はあしらうそぶりを見せたが、意外にも二人で何処か店に向かった。まだこんな時間なのだが。
「あいつ、大丈夫なんだろうか」
「川内さん。二人はどんな会話を?」
今日の川内はベースボールキャップを目深にかぶり、緩めのシャツとズボンを身に着けている。これなら泊地の人間でもぱっと見では分からないだろ。なおコーディネートは那珂である。
『特に特別な事は言ってないみたい。服装褒めたり、好みのお酒がどうとか。たださ』
川内はいったん言葉を切った。嫌な予感がする。
『あいつ嫌な目をしたね。なんか企んでるんじゃない?』
「企んでる? おい大丈夫なのか?」
「落ち着いてください。例え艤装が無くても艦娘を制圧できる人間なんて、それこそ達人クラスの格闘家とかですよ?」
妙高はそう言うが不安なのは仕方がない。そうは言っても、足柄とチャラ男は普通に談笑している。
『んっ』
川内が小さく唸った。なんだどうした?
『今足柄さんのお酒に錠剤を入れた』
「……っ!! 川内! すぐにあの野郎を叩きのめせ!」
何処かのエロ漫画みたいな展開にうちの艦娘を巻き込んでたまるか! ってかあのクズ野郎どうしてくれようか! だが妙高はかなり冷静で。
「今足柄はしっかり男の手元を見ました。あと艦娘を酩酊させるような強い薬なんて、軍隊並の予算が必要ですよ」
つまり足柄は気付いてやらせたと言う事か? 確かに彼女は酒に口をつけない。チャラ男は少しイラついている様子だ。そして足柄は携帯を取り出す
『友達を呼ぶと言ってるね』
友達? まさか他の艦娘をこんな事に巻き込むとは思えんが。
そんな疑問を解消したのは、店にぞろぞろ入って来た、五人組の若者だった。男が四人、女性が一人。彼らはミリタリー柄の全員タンクトップとジーンズで、その何と言うか。発達した二の腕をお持ちでいらっしゃった。
つまりは、マッチョ五人組である。割とガチな。彼らはチャラ男の肩に手を回し、薬を入れた酒を飲ませようとしている。コワイ。
『『今回は見逃すけど、次からは女の子はちゃんと口説きなさい』って言ってる。他の人たちは『顔は覚えたからな』って』
こええ! なんか免許証確認してるし。
「要するに、これから被害を出さないために一芝居打ったと」
「あの子はもう」
確かに立派っちゃ立派だが、心臓に悪い。で、あのマッチョさんたちは何者?
『なんか
姐さん? やばい話じゃないだろうな? 極道の妻とか、なんかイメージ合ってて嫌なんだが。
『
例の会だと? まさか。まさかな。妙高を見ると、流石に不安そうな顔をしている。やがて六人+川内は店を出て、駅に向かう。井の頭線に乗るようだ。たどり着いたのは都心から少しだけ離れた街の、ちょっとした規模のお寺。宗旨は真言宗かな?
『姐さん! お待ちしてました!』
屋外だから、川内を通さなくても声は聞こえた。並んで出迎えるのはマッチョマッチョマッチョ。足柄よ。どんだけマッチョにモテるんだよ。
『私ずっと楽しみだったの! みんなと
なぬ! する? 何をするんだ? この小説R18タグは付いてなかったよな? 安心して良いよな?
『ではあちらでお着替えを』
足柄は奥に通されてゆく。流石に川内の隠密能力でも、不法侵入しろとまでは言えない。ってか着替えシーンなんて中継させたらそれこそ犯罪だ。嫌な汗を感じながら待っていると、出てきた足柄が身に着けていたのは
そして寺の中で待機していたらしい。同じく道着を纏った老若男女がぞろぞろと出てくる。
『姐さん。今日は勝たせてもらいますぜ。腕の一本くらい覚悟してくださいよ?』
『冗談じゃないね。姐さんを倒すのはあたしさね。艦娘の骨が砕ける音っていうの、ずっと聞きたかったのさぁ』
『キシシシ。昔を思い出すのぉ。目玉の一個くらい、このおいぼれに差し出してくれんかのぉ』
怖い! こいつら怖いよ! 何なんだあの危ない生き物たちは。
『ありがとうみんな! 私ずっと夢だったの!
『へへへっ、他流派やストリートのケンカ屋まで声をかけるの、大変だったんですぜ』
ひゃくにんくみて? 流石に妙高もこれには絶句し、頭を抱えた。画面の向こうでは「おりゃー」と殺到するマッチョたちと、それを片っ端からなぎ倒してゆく足柄であった。
「……川内。もういいぞ。後で小遣いをやるから、帰りの便まで遊んで帰れ」
『いいの? ありがと』
俺はため息ひとつ、ノートPCを閉じた。
「何と言うべきでしょうか?」
「まあ予想通りっちゃ予想通りなんだが」
あそこまでぶっ飛んでるとは思わなかったが。
「ま、いいんじゃないか?」
「いいんでしょうか?」
良いと思う。別に悪い事をしているわけでは無し、誰かを傷つけているわけではない。いや傷つけてはいるが、そこは承知の上でやってるわけだからな。
「あいつ物凄く楽しそうだったじゃないか。男女交際とか、本人が興味を持つまで良いんじゃないか? 人も艦娘も、生き方を選ぶ権利がある」
妙高ははっとして、それから静かに頷いた。
「そうですね。姉としては複雑ですが、私もあの子の快活さが好きですから。今回の件は私の方から足柄に謝罪しておきます。どうもお騒がせを――」
事態は丸く収まった……のだが。俺はNINEの着信に気付く。これがきっかけに、何やら妙高姉妹の様子がおかしくなってゆくのだが。