仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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投稿時間が遅れてすみません。

そしてイベントは進んでいない(´・ω・`)。丁督に戻ろうかな。

さて今回は、ちょっとした誤解から大変な騒ぎになるお話です。

そろそろシリアス展開にぶち当たりますので、今のうちドタバタ劇をお楽しみください。


第56話「提督、ちょっとした失言と大騒動(その1)」

10:41(ヒトマルヨンヒト) 執務室

 

Starring:提督

 

 俺は不快感を隠せぬまま、読んでいた通達文を放り出した。わざわざ文書で送り着けてきたから、何事かと思った。この内容は勘のいい提督なら、皆眉を顰めるだろう。

 

「どうしたんですか? いつもの難しそうな顔が、更に難しそうですよ?」

 

 漣の軽口(気遣い)でも、今日に限っては気が晴れない。そんな俺が気になったのか、大淀もキーボードを止めて、俺を見る。

 

「実はな。呉で赤城が妊娠したらしい」

「!!」

 

 大淀が目を見開き両手で口を塞いだ。なんだ? 驚くとは思ってたが、そこまでショックか?

 

「それは、その。おめでとうと言って良いんでしょうか?」

 

 そう。それなんだよ。

 

「当人としてはおめでたいし、俺も祝福したいと思う。だがな、諸々の事情で素直に喜べんのだ」

「諸々の事情と言うとその。何か障害が?」

「障害と言うか、色々面白くないんだよな」

 

 だんだん大淀の表情が強張って来る。こいつ、今の会話だけで事情を察したのか? いやそんなことないよな。何怒ってるんだろう?

 

「提督。私貴方を見損――」

 

 バサバサバサ! 書類が机から散らばる音がして、漣を見やる。さっきの軽口は何処へやら、なにやら呆然としている様子。

 

「すみません。体調が優れないので、部屋で休みます」

「お、おう。辛かったら明石を頼れよ? 連絡入れとくから」

 

 漣は返事も無しにとぼとぼと出ていく。あんなあいつは初めてだ。あとで様子を見に行くかな。

 

「提督、最低です」

 

 大淀が吐き捨てるように言う。そうだよ。俺も同意見だ。

 

「お前の言う通りだ。呉の(・・)赤城だって、あちらの(・・・・)提督との関係を宣伝工作に利用されたくはなかろうに」

 

 ずずずとお茶をすする。なんか大淀が目をぱちくりさせている。面白い。俺に届いた書類は、艦娘と人間の愛の結晶が誕生した事を、祝福の言葉と共に皆に伝えろとの事だった。

 

「えっああ。そう言う事でしたか。私はてっきりこの間呉に行った時に何かあったのかと。そう言えば計算も……」

「計算? それに何かってなんだ?」

 

 俺は首をひねるが、大淀はその質問には答えない。 

 

「すみませんでした」

 

 話をぶった切って頭を下げる大淀。何か謝られるような事をしたっけ?

 

「でも宣伝工作でヒーローヒロインを作るのはよくある事では? そこまで提督が怒こる理由が思い当たりませんが」

 

 そうなんだが、仮免とは言え俺も提督。だんだん横の繋がりも出来てきて情報も入ってくるようになったわけだ。そらからすると、違う事実も見えてくる。

 

「最初はルソンの叢雲。次は横須賀の榛名。そこからキールのビスマルクにノーフォークのアイオワ。でもって今回の赤城で情報開示の運びとなった。相手は民間人もいるが、ほぼ提督か基地関係者。これからは艦娘と提督のケッコンは推奨するし、妊娠出産も大歓迎。なんならジュウコンもどうぞどうぞ。いくら何でも軍事組織がリベラルすぎやしないか?」

「それは、そうですが」

 

 まあリベラルなのは悪い事じゃない。ただし古来からリベラルは、抑圧の意図を隠すための(ころも)として重宝されてきたわけで。

 

「この通達出したの、鎮守府解体派の重鎮だから」

「えっ?」

 

 そりゃ意外だろう。連中が艦娘の恋路なんぞに配慮するなどとは想像もできまい。聡明な彼女も、これだけでは察せなかったらしい。だが次の単語で全て理解したようだ。

 

「人質、だよ」

「!!」

「艦娘にへそを曲げられたら、この戦争は立ち行かなくなる。だから海軍、いや人間は艦娘との関係悪化を何より恐れている。だがどうだ。もし守るべき()が出来れば、艦娘は人間を裏切れなくなる。そんな考えは不自然じゃ無かろう?」

 

 特に子供を育てるには人間のインフラがいる。産婦人科に各種予防接種。小児科や対等な友人。大きくなれば学校にも行く。それらは鎮守府だけで賄えないから、艦娘の人間社会への依存は増してゆく。そしていざとなれば子供に危険が及ぶと脅す事も出来る。艦娘同士の関係は基本良好であるから、他の艦娘たちも仲間の子供を見捨てるような事はできまい。

 

「艦娘と人間の同化は、俺もひとつの未来だと思っている。だから方針自体は賛成なんだ。ただ奴らが裏で考えている事が不愉快極まりなくてな」

 

 大淀は暫し思案する。そして、ゆっくり首を振った。

 

「いいじゃありませんか。艦娘も恋をして、それから好きな人の子供を産める。その事実があれば、偉い人の思惑なんて些末な事。皆もそう言うと思いますよ?」

 

 そうだろうか? 先輩から託された鎮守府が、俺を人質に操り人形と化す。そんな未来は見たくない。俺はケッコンなんぞする気も無いが。

 

「提督が優しい人なのはもう皆知っています。でも最近は特に過保護になってませんか?」

「お前までそう言うか」

 

 提督は過保護。漣にも赤城にも随分言われている。何と言うか、不安なんだ。上手くは言えないけど、不安なんだよ。そんな俺を見て、大淀はふっと息を吐いた。

 

「でも漣さんには過保護なくらいが良いですよ? 通達は私の方で展開しておきますから、すぐに誤解を解いてきてあげてください。謝罪もですよ?」

「お、おう」

 

 大淀に追い立てられて、俺は立ち上がる。元々様子を見に行くつもりだったので、それは良いのだが。

 

「提督」

 

 大淀に呼び止められた。

 

「何だ?」

 

 振り返った先には、駄々っ子を宥める保母さんのように微笑む大淀がいた。

 

「通達にはジュウコンもアリだって書いてあるんですよね? それも伝えてあげてください。漣さんも多少安心するでしょう」

「何で? 関係なくない?」

 

 何で漣の見舞いがジュウコンの話になるんだ? 俺ケッコンすらやる気ないし。

 

「それはご自分で考えてください」

 

 そう言って大淀は、通達書に視線を落とす。俺は頭を掻き、難解なクイズの内容を反芻するが、簡単にわかる筈もなかった。

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