あと1エピソード挟んで、物語は佳境に入ります。結構重い展開もありますが、少年漫画的に燃えるやつを目指してますので、お楽しみに(`・ω・´)b
●駆逐艦寮 七駆部屋前
Starring:提督
許可を取って駆逐艦寮に入ったら、七駆の部屋に人だかりが出来ていた。血の気が引いてゆくのが分かった。漣の身に何かあったんだろうか?
「おい! 一体なに――」
気が付いたら俺の身体は宙を舞っていた。地面に激突した時、どうやら俺はドロップキックを食らったと言う事が分かった。
「だっ、駄目だよ曙ちゃん! ちゃんと祝福してあげようって漣ちゃんだって言ってたじゃない!」
「分かってるわよ! でもこいつの顔見たら足が勝手に!」
耳に入ってくる潮との会話によれば、どうやら俺を蹴飛ばしたの曙らしい。お、俺が何をしたと。
「大丈夫ですか? つかまって」
俺を助け起こしたのは高雄。最近漣と仲がいいから、彼女も心配でやってきたのだろう。
「私も怒ってますよ。その気がないなら仕方がないです。でもそんな伝え方をするなんてあまりにも酷いじゃないですか」
いやちょっと待て。ちょっと何を言っているのか分からん。俺が何かしたらしいが、尋ねようにも腫れた頬が痛くてしゃべれん。
「司令官」
振り向くと霰がいた。彼女も漣を? と思ったら違うらしかった。
「霞姉さんがさっきから何もしゃべらずぼーっと同じところを掃除してます。それで朝潮姉さんが、司令官を呼んできて欲しいと言ってました」
え? 何で霞が? どう言う事だ? マジ分からん。
「こっちが先よ! まずは漣に謝んなさい! 今朧がついてくれてるけど、さっきまで大変だったんだから!」
何が大変だったんだ? 漣も霞もどうしたんだ?
「おおここにいたか司令官。足柄が号泣しながらヤケ酒を始めて手が付けられんのだ。貴様からもちゃんと謝罪と釈明を」
こっちもかよ! しかも何で足柄が飲んだくれるのに俺が釈明しなくちゃならんのだ? もういい加減何が何だか分からない。だがよく言うだろう。最悪な事態は、それまで最悪だと思っていた問題の後にやってくると。
「駄目ですよ! そんなもの使ったら殺しちゃいます!」
「ここは穏便にしましょうよ。ね?」
「放してちょうだい! この男だけは私の手で始末しておくべきだったんです!」
必死に止めようとする蒼龍飛龍を引きずりながら、〔九六式軽機関銃〕を二挺も構えた加賀が、仁王立ちでこちらへやってくる。ってか陸戦隊の備品
「断・罪!」
トリガーにかかった指にぎりぎりと力が入るのが分かった。こりゃあかん。南無三。俺は遠くダッチハーバーで戦う先輩に懺悔をした。すみません。俺では力不足だったようです。全てを諦めようとした時。
「加賀さん? 皆さんもどうかされたんですか?」
渦中の人物。航空母艦赤城がひょっこりと顔を出したのだった。
15分後。俺は皆の前で正座させられていた。ついでにやらかした加賀も。
「この度は私の説明不足により、皆様に大変不快な思いをさせてしまい、慙愧に堪えません。許してください何でもしますから」
「事情は分かった。だが何でもすると言ったな? ならば足柄にはちゃんと謝罪しておけ」
「当然漣にもよ!」
「霞姉さんにもお願いします」
とりあえず。俺が頭を下げればそれで収まるらしい。それならまあ安いもんだ。
「しかし、赤城も慕われてるな。泣く程心配する奴がこれだけいてくれるなんて」
俺としては、艦隊のリーダーが慕われてるのが嬉しくて言っただけだったのだが。
「は?」
「は?」
曙と潮がハモった。凄い怖い声で。
「司令官、今の話は妙高に伝えた方が良いと思うのだがどうだろう?」
ちょっ、なんか怖い!
「少々お仕置きが必要ですね。明石さんが作った例の部屋で、でサターン版『乙ガンダム』をやり続けてもらいましょうか?」
そのゲームの事は良く分からんが、高雄の言う事なのでろくでもない事をさせられると言うのは分かる。
「はいはい皆さん。その位にしましょう」
ぱんぱんと手を叩いたのは、救世主赤城大明神様だった。彼女はくそでかため息を吐くと、言った。
「そもそも子供なんてありえません。泊地に
「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」
俺を含めた全員があんぐりと口を開けた。赤城の言葉を反芻する。それってつまり、そう言う意味だよな?
「コウノトリって、太平洋には居ないんじゃないでしょうか?」
高雄が一人だけくそ真面目に答える。そう言う話じゃねぇよ。
「それじゃあ解散しましょう。その通達とやらは、然るべき機会に周知して頂ければいいでしょう」
そう言って赤城は颯爽とさってゆく。ついでに機関銃二挺背負った加賀も彼女を追って言った。
「ピュアかよ」
ぼそりとつぶやいた俺に、今度ばかりは潮や曙も頷いた。
Starring:加賀
陸戦隊の中隊長にえらく怒られた。それはまあ。機関銃をギンバイなんて前代未聞だろう。ついカッとなってやった、今は反省している。
「加賀さんも、私の事でそんなに熱くならなくてもいいんですよ?」
一緒に謝ってくれた赤城さんが、くすくす笑いながら言う。
「何を言っているの? 赤城さんは私が守ります」
あなたは意外と隙が多いんですから。などと余計な事は言わない。
「さっきのコウノトリ、出まかせですね?」
ちらっと尋ねたら、あっさりと返された。
「あの場でああ言っておけば、皆の目が私に向いてうやむやになるし、何より私が提督の子供をなんて言う変な疑念も断てるじゃないですか」
要は場を収めるために思ってもいない事を言ったわけだ。
「赤城さんの事はそれくらい分かります。でもそこまで汚れ役を買うことはないんじゃなくて?」
「良いんですよ。どうせみんなちょっと考えれば気付きます。今時コウノトリさんが子供を運ぶなんて信じてる人いません」
そうだろう。自分もそうだと思うのだが、赤城さんの場合発言とキャラの間に違和感がないと言うか。ぶっちゃけ言うと「彼女なら言いそう」とか思わせる雰囲気があるのだ。いまもさん付けしてるし。
(まあ流石に杞憂でしょう)
結論付けて、空母寮に戻ろうとした時。
「赤城さん! 探しましたよ!」
息を切らせた鳳翔さんに呼び止められたのだった。
「どうされたんですか? そんなに慌てて?」
赤城さんの疑問はもっともで、いつも楚々とした立ち振る舞いの鳳翔さんが、大慌てで赤城さんに駆け寄ってくる。
「赤城さん。私はあなたに謝らなければなりません。あなたには空母戦について私の知る全てを伝えてきたつもりです。でも女の子として普通の事を教えないままでした。驚かず聞いてください。赤ちゃんはコウノトリが運ぶのではないのです」
まさか「考えても気付かない人」が存在するとは。そしてそれが、彼女たちの一番の理解者だったとは。
「あの、何を」
「大丈夫です。恥ずかしことではありませんよ。私の部屋に行きましょう。海防艦用のテキストを龍田さんから借りてきてあります」
鳳翔さんは何と言って龍田さんから借りたのだろう。「赤城さんが使いますので」などと正直に言ったとしたら地獄だ。
「あの鳳翔さん。違うんです」
「いいですか? まずおしべと、めしべがですね」
もう講義は始まるらしい。これ、どうしたらいいんだろう? 鳳翔さんは赤城さんの手を引いてずんずん進んでいく。
「加賀さぁん! 助けて下さい!」
まさかこんなに早く機関銃の件の恩返しができるとは。加賀は顔を引きつらせ、二人を追いかけたのだった。