まだイベントE3-1です。E2まで丙で頑張ったけど、もう丁で行ってます。次のイベントは特効艦の予想が出たらきっちり育てときます。装備もちゃんとしよう。
ところで皆様、足柄さんは好きですか? 私はカッコいい足柄さんも残念な美人な足柄さんも大好きです。
足柄さん好き、もしくはケッコンされてる方。何か書いて行ってくれたら嬉しいです。
Starring:足柄
「何ですか? これ」
「天秤だ」
当然それは分かっている。知りたいのはそれを何に使うかである。と言うかもったいぶらずに教えて欲しい。実を言えば足柄だって興味津々なのだ。
「ちょっとゲームをしようじゃないか。善行章、持ってるよな?」
佐渡はポケットから三つ、コインを取り出し執務机に置いた。「善行章」と言うのは、戦前の海軍で水兵に渡す「頑張ったで章」だ。それを袖につけていると、その水兵はベテランとみなされた。
これを引用して、「よくやったコイン」を海防艦に配る事にしたのも提督である。ありがたがる者もそれほどでもない者もいるが、この仕組みは概ね受け入れられている。
「おう、いっぱい貯めたな。じゃこの善行章と同じ重さだけのチョコをやろうじゃないか」
「ほんとか!? にひひっ」
提督は別の引き出しからチョコレートの箱を取り出す。現在入手困難になった、ちょっとお高いブランドの物だ。
「それご主人様が自分へのご褒美に買っておいたやつですよ?」
「まあいいじゃないか」
漣がぷーっと頬を膨らませる。どうやら彼は、また自分の楽しみを海防艦に大盤振る舞いするつもりらしい。そうはいかないぞと思う。今度内地に行ったら同じものを買ってきてやる。
霞に知られたら、彼女も同じ事をしようとするだろう。もちろん黙っているのはフェアではない。どちらが先に手に入れるか勝負してやろう。
「じゃあ、この重りで測るぞ」
提督は片方の皿に三つのコインを乗せ、反対の皿にピンセットで小さな重りを乗せていく。
(あれ?)
足柄はそんな彼の仕草に違和感を覚えた。大淀を見やると、彼女も首をひねっている。提督の軽量の仕方は過剰に厳密だったからだ。普通は天秤の皿の片方にコインを乗せ、もう片方にチョコレートを乗せればそれでいいはず。半端が出てもその分まで要求するほど佐渡も意地汚くない。はずだ。
しかし大淀は何も言わなかったので、足柄も続く事にした。提督の事だ。何か考えがあるのだろう。
提督は何も言わず、今度はチョコレートの重量を測りだす。大淀が小さく「えっ?」と声を上げた。何だろうかと自分も天秤に注目すると、なんだかおかしい。提督はコインを測るのとチョコを測るので、別々の重りを使用している。そこで足柄は、提督の意図に気付く。
「ふむ、ちょうど五個分だ。チョコ五個をお前にやろう」
「えー、五個かよ」
やっぱり意地汚かった、わけではない。択捉達姉妹にも分けるなら六個必要だ。優しい子なのだ。
いつもなら提督もそれを分かっていて、一個おまけする。だが彼はその代りに、にやにやと笑いだす。誰かをいたずらで引っかけた卯月のような顔だ。
「佐渡、お前は騙された。本当は六個貰えるはずだったチョコは、お前が騙されたせいで五個しか貰えなかった」
「なんだよ、それ!」
佐渡の抗議もどこ吹く風。彼は天秤の皿に、コインとチョコレートをそれぞれ乗せる。
「俺はこの天秤に細工をしたんだ。お前からチョコ一個分
「そんなのひでぇじゃん!」
佐渡は狐につままれたような顔をした後、真っ赤になって怒りだす。多分チョコをもらい損ねたより、「提督に」騙された事がショックだったんだろう。
「佐渡、これは俺が考えたいたずらじゃない。アメリカ大陸を征服したコンキスタドーレスが現地の労働者に使った手だ。彼らはこれで労働者が手にするはずだった正当な報酬をネコババしたんだ。要するに、お前は勉強しなかったから、損をしたと言う事だ」
「だから司令もやっていいってのかよ」
「いや、俺もやっちゃ駄目だしコンキスタドーレスのやった事なんか以ての外だ。だが実際やる奴はいる。俺が重りを乗せているとき、大淀も足柄も不思議そうな顔をしていたぞ。二人はちゃんと勉強してるから気付けたんだ。実は俺はこの天秤に、『お前が勉強していれば騙されたと気づける仕組み』をしていたんだがな」
そこで佐渡はうっと言葉に詰まる。佐渡が騙されたとのは、相手が提督だからだろう。だが明確な悪意を持った者が、笑顔で近づいてくることなど珍しくはない。
「そんな事、司令がやんなきゃいいじゃん!」
「俺は基本しない。だが深海棲艦か、軍の人間か、シャバの悪党か。そう言うやつとお前が対峙する日は来るかもしれない。そんな時天秤に乗せるのはチョコじゃない。お前の大切な人の命かもしれない」
そこでようやく佐渡は、提督の言わんとしたことを理解したようだった。海防艦特有の責任感なのか、佐渡は更に怒りを爆発させる事はなかった。勉強は嫌がるが、頭が良い子なのだ。
「まあそう難しい顔をするな。勉強なんてクイズみたいなもんだ。この天秤と重りを自由に弄って良いから、俺がどうやってお前を騙したのか突き止めてみろ。そうしたらこのチョコは箱ごとやろう」
佐渡の顔がぱっと輝く。佐渡もこう言う「勉強」ならば大好物だ。増してやご褒美がハイソなチョコ箱ごととなれば言う事はない。姉妹と言わず、海防艦たちで分け合う事が出来るだろう。
漣を見るとぶつぶつ言いながら、鈴木一曹に宥められている。気持ちが分かるだけに笑えない。自分もあとでフォローしておこう。
佐渡はと言えば、天秤をひっくり返したり、皿をこんこん叩いたり、あれこれ弄り回している。
「ヒントをやろう。このクイズは教科書に載ってある方法で確かめられるぞ」
提督はにやにや笑いながら大淀を見やる。彼女はふっと微笑んで、資料として一冊ずつ本棚に並べられている中から、理科と算数の教科書を取り出し、佐渡に手渡す。それらを食い入るように眺め、天秤と交互に見つめる。そして天秤に重りを乗せ始めた。二十分ほどして。
「分かった! 重りの数をごまかしたんだ!」
上機嫌で宣言する佐渡に、足柄は大淀と顔を見合わせ。にっこり頷きあった。
「良く分かったな!」
「にひひっ!」
ここぞとばかり三人で佐渡を褒め倒す。佐渡がこれだけ真剣かつ根気強く理科と算数をやったのだ。いくら褒めてもほめ過ぎではあるまい。
「司令はコインを測るとき大きな重りを使った。でもチョコを測るとき中くらいの重りと小さな重りを組み合わせて使った。その時小さな重りの数を少なくしたんだ」
「その通り。だから算数の知識があれば気付けたと言ったんだ。一度分かっちまえば何て事はないだろ?」
提督は嬉々とした表情でチョコレートの箱を渡す。学問に最も必要なもの。それは成功体験である。提督は見事な手腕で、それを彼女に与えたのである。
「分かったよ! 佐渡様は勉強するぜ!」
「そーかそーか。頑張ってこい」
「いひひ。じゃあ大淀さん、いこうぜっ」
現金なもので、佐渡は大淀を引っ張って教室に向かう。とりあえず、一件落着だ。
「じゃ、仕事に戻るか」
うーんと背伸びする提督に、何だか聞きたくなった。
「流石でした。私も大淀も、ちゃんと答えてあげられなかったのに」
「そんな大したもんじゃない。子供の頃言われた事を、右から左で佐渡に話しただけだよ」
そう言う提督は、苦虫をかみつぶしたような顔で笑った。
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