おかげでリチャードはお迎えできてません(´;ω;`)
●同日 五時間後、
Starring:赤城
矢筒を空にしたことに気付いて振り返った時、弓道場に座って拳銃をくるくる回している相棒に気付いた。
「加賀さん! もう動いて良いんですか!?」
「ええ。明石の話では、硫黄島には間に合わないそうだけれど、戦列復帰は可能だそうよ」
彼女は自分にすらに気付かなかった赤城の不調には何も触れなかった。ありがたいが申し訳ない。
「流石ドイツの名銃ね。提督もいい仕事をしてくれたけれど、この銃のリロードには両手がいるわ」
「そ、そう」
不満そうに言う加賀さん。よく分からないが、撃つのは回復するまでお預けと言う意味らしい。
「やっぱり怒ってます?」
質問を予想していたのか、加賀さんはいつもの表情を崩さなかった。そして静かに告げる。
「ええ。怒っているわ。頼られなかったのもそうだけれど、立ち直らせたのが提督と言うのも面白くありません。でもまあ、真っ先に打ち明けに来てくれたので不問にします」
「そうではなく」
自分は艦娘としてやってはいけない事をしたのだ。あまつさえそれを全て済んだと思い込み、逃げていた。一航戦の誇りを汚したのだ。
それなのに加賀さんは、自分を責めてはくれなかった。
「赤城さん。私の相方は
その言葉は果てしなく優しい。同じ魂を持つ
でもその強さと優しさが、疲れ切った心に重かった。
彼女は強い。そして未来を見ている。なのに私は。
「
加賀さんが負の思考を断ち切ってくれた。それが一番知りたい事で、一番怖い事。なのに加賀さんは。困った人ね。言外にそんな言葉を
「赦せませんよ」
「……そうでしょうね」
「赦す」と言う言葉を期待した自分の甘えと厚顔さを呪う。なのに加賀さんは、いつもの顔をしている。一見無表情なのに、優しい顔。
「罪を犯していない者を、どうやって赦すんですか?」
予想外だった。赦すという言葉は確かに期待した。でもそもそも罪を犯していないだなんて。
「赤城さんは疲れ切った心を振り切ってやるべきことをやったわ。保身に走ってあなたを蔑ろにした人たちこそ責められるべきです」
それは、分かっているけれど。
「それにあなたはもう、全てを受け入れて生きていく覚悟があるのではなくて?」
「!!」
正直に言うと、言われるまで気付かなかった。だってそうでなければ今頃弓など引いていない。自責感で潰れている。
きっと見てしまったから。狂わんばかりの罪悪感を抱え、立ち上がろうとする
「私は、身勝手です」
本当に身勝手だ。だって落ち込んでるふりをして、とっくに前に進もうとしているのに、自分でそれに気付かないなんて。
そこで加賀さんはふっと笑う。滅多に見せない、希少で優しい笑いだ。
「私だって
そこで初めて、くすりと笑っている自分に気付いた。
「加賀さん。今日は多弁ですね」
加賀さんも笑い返す。
「そうね。そろそろ黙るとします」
悩んでいたのが馬鹿らしくなった。いや苦悩自体はまだある。だが救わなければならない諸々を放り出すのは馬鹿馬鹿しい。
全てが終わったら。ホームの皆のところに行こう。もう石の下にいる、あの子たちだけれど。ごめんなさい? ありがとう? 何を言うべきか分からないが、何かの気持ちをぶつければ、手向けになるのかも知れない。少なくとも逃げているよりはずっといい。
「提督のところへ行ってきます」
折り目正しく礼をすると、加賀さんは相変わらず拳銃をくるくる回しながら言った。
「そうね。それが良いわ」
赤城は加賀さんの言葉を背に弓道場を出た。
何かが変わった。皆が変わった。それはきっと、人の身体で人と触れ合ったから。自分は空母〔赤城〕で、加賀さんは〔加賀〕。でもそれだけではなくなってゆく。
つまりええと。何が言いたいんだろう。上手くまとまらないけど、それが無ければ自分は軍艦のまま。艦娘の自分になれなかったろう。
それはきっと、良い事なのだ。