……というわけで、一日遅れですが最新話です!
海軍の話なのに〔紫電改〕や〔烈風〕ではなく〔疾風〕なのは、完全に私の趣味です。
「大東亜決戦機」っていう中二心くすぐる渾名、最高だよね!?
よければ感想欄に、好きな大戦機があれば挙げていってください!
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Starring:提督
赤城・漣と三人、転がり出るように休憩室を飛び出し、待っていた大淀に声をかけた。
「敵襲か!?」
彼女はそっと首を振る。
「横須賀からの支援部隊です」
「部隊? 艦隊じゃないのか? ってか何で俺が詳細を知らないんだ?」
大淀は済まなそうにクリップボードを差し出す。
「すみませんでした。提督の睡眠を妨げたくなかったので、漣さんと相談して二人で処理しようと」
漣を見ると目を逸らした。俺は、こんなにも気遣ってくれる存在につらく当たっているんだな。大淀も、俺が下らない言い争いに興じている間も頑張ってくれていた。
(取り繕え。俺は大丈夫だ。そう振舞うんだ)
念じるように自分に言い聞かせる。
「とにかく、着陸許可を出してやれ」
飛行場では、任務外の艦娘たちが物珍しい「人間の戦闘機」を見上げていた。
「四式戦闘機〔
大興奮の明石と夕張が、着陸する二機の戦闘機に熱い視線を送っている。
「〔疾風〕って珍しいのか? しかも二機しかないぞ?」
明石がちちちと指を振って見せる。
「〔疾風〕は妖精さん製作のものでもレアですよ? でもあれは知覧の実機から再現したレプリカの〔疾風〕です。人間のパイロットが深海棲艦と戦うための翼です」
深海棲艦には、現代兵器は通じない。そう現代兵器
戦争が始まってしばらく経った時、ある事実が判明した。現代の兵器は意味をなさないが、艦娘や妖精たちが使用しているものと同じ時代の兵器なら、深海棲艦をある程度傷つける事が出来るのだ。姫級を撃沈する事は出来なくても、上空の敵を排除して艦娘を支援する事なら出来る。
こうして第二次大戦の兵器がリバイバルされた。今陸自の主力小銃は〔四四式騎兵銃〕だし、新設された空軍は少数ながら〔ゼロ戦〕や〔隼〕を配備している。アメリカなどはもっと徹底していて、民間に払い下げられた大戦型戦闘機を買い集め、保管されている〔アイオワ〕級戦艦を再稼働させるため改装中である。
どうやらあの〔疾風〕は空軍の新鋭機と言う事らしい。
「あの〔疾風〕は、まだ大量生産が始まってませんから、乗っているのはエース。恐らくサウザンドクラスですよ?」
サウザンドエース。文字通り深海棲艦の艦載機を千機仕留めたエースだ。人間相手の戦争なら考えられないが、質より量の深海棲艦は、攻撃が効きさえすれば落とす事は困難ではないと聞く。それでもスコア千機は妖精でもレアで、人間ともなればごく限られた精鋭中の精鋭だろう。
「なるほど。綾郷さんも粋な事をしてくれるな」
今横須賀の艦隊は動かせない。南半球では豪州との通商路を守るため、敵南洋艦隊の拠点捜索が行われており、これには横須賀の艦隊も参加している。留守番の艦隊まで丹賑島に振り向けたら鎮守府が空になってしまう。そこで空の英雄さんを送り込んでくれたと言うわけだ。
俺はクリップボードに挟まれた情報に視線を落とし、目をむいた。まじか。
「あいつ、功績を挙げたとは聞いていたが」
「お知り合いなんですか?」
驚いた大淀が尋ねてくる。資料に記されているのは、懐かしい名前だった。
やがて二機の〔四式戦〕が降り立つ。開いたキャノピーから顔を出した士官は、まだ若い。片方は体つきから女性だと分かった。
飛行帽から出てきた顔は、相変わらずの優男で足をかけた主翼から飛び降り際、機体を愛おしそうに撫でたりしている。女性士官の方は若いなりとは正反対に物慣れた様子で、するっと地面に下りて、こちらへ向かってくる。
「南部
一条少尉と名前が被ったからだろうか、何故か摩耶が面白く無さそうに「ふーん」と声を上げた。そう言えば彼女、かなりの美人だ。どことなく加賀に感じが似てるな。南方系だろうか、少しだけ肌の色が小麦色だ。
「泊地司令の津田少佐だ。ご苦労様」
形式通りというには少々ラフな挨拶をすませると、南部大尉は破顔した。
「お久しぶりです津田先輩。疲れてます?」
なんか尻尾でも振ってきそうな人懐っこさで彼は言う。
「お前は色々楽しそうだな」
「ええ。普段から飛行機に乗れてますから」
これだよ。こいつは飛行機の事を考えるついでに人生を生きてるんだ。この男は南部瞬。防大時代の後輩で長谷部の一個下だ。俺と長谷部とこいつの三人は、よく休日になると遊び歩いてたな。
艦娘たちは俺たちのやりとりを興味津々で伺っていたが、そんな事は構わず明石が突撃してくる。やばい、こいつらを一緒にさせては。
「大尉! 質問宜しいでしょうか? この〔四式戦〕、原型機と
南部の顔がきらきらと輝き出す。なんて状況だ。もう止まらないぞ。
「す、すみません大尉、彼女はちょっと、自分を見失っていまして」
「えー、ひどーい」
大淀のフォローもどこ吹く風だが、南部はまったく気にしない。
「よく分かってるなお嬢さん! こいつは電気式から油圧式に変えてあるんだ。当時の技術の中で性能向上すると言う枷を設けるなら、技術的ハードルの低い油圧式のチョイスは悪くないんだ。エンジンの冷却機構も原型機からかなり弄ってる。機体構造もアルミで強化してるから、軽量で頑丈。こいつなら〔ベアキャット〕相手でもやれるさ」
「武装! 武装は!?」
今度は夕張も入って来た。こうなったら暫く放っておくしかない。
「おなじみの〔ホ103〕と〔ホ5〕のコンビだが、再現に当たっては本家ブローニング社のスタッフが入ってる」
「おおー!」
「マ弾は機械式に戻されているが、これは空圧式の欠点である弾丸の命中角度がいてててて!」
気が付くくと、一条少尉が南部の足を思いっきり踏んずけていた。彼女はぺこりと一礼する。
「皆様、大変失礼しました」
それだけ言って、すたすたと自分が立っていった場所に戻って行く。助かったけどマイペースすぎる。
「お前、その飛行機馬鹿を隠さんで、部下に引かれないのか?」
南部は笑う。何をいまさらと言いたげに。
「俺の部下も皆飛行機大好きですよ。それに俺から飛行機取ったら何も――」
その時、一条少尉が大げさに咳払いをした。南部は「やべっ」とでも言うように苦笑し言った。
「いや山ほど残るな」
と言った。一条少尉が満足げに頷く。あーはいはい。そう言う事ですか。爆発しやがれ。
艦娘たちの温度が俄かに上がる。翔鶴や榛名なんて質問したくてたまらないって顔してるな。あいつらも結構ミーハーと言うか。
「どもっ、青葉です! 恐縮ですが写真を撮らせて頂けないでしょうか?」
不躾すぎるだろ。これは注意しなくてはと口を開こうとするが、先に南部が言った。サインを断る芸能人のように。
「悪いな。枯れた技術とは言え〔疾風〕は新鋭機だから、一応撮影禁止って事になってるんだ」
そうじゃねーよ。二人の写真を取りたいって言ってんだ。
こうして、俺の後輩が助っ人にやってきた。建て直し中の泊地は、更なる混乱の時を迎える事になる。
〔疾風〕は、別サイトで投稿している一次創作でも主役機にしているくらい、個人的に思い入れのある戦闘機です。
実は今回登場した新キャラの二人も、そちらからちょっとだけコラボで連れてきています。
物語にはまったく影響しない、ほんの小さなお遊びではありますが(;^_^A