仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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新キャラ、何か異様に濃いぞw ついカッとなってやった、今も反省していない(∀`*ゞ)テヘッ

皆様てるてる坊主集めは順調ですか? できれば海色リボンを赤城さんと漣の分までは揃えてやりたいところ。作中でも頑張っていますし、応援の意味を込めて。……と言ってもまだ全然ですが。

良ければ誰にリボンを使ったか書いて行ってください(`・ω・´)b


第70話「険路を越えて(その3)」

●間宮 店内

 

Starring:提督

 

 間宮謹製のアイスクリームはせめてものもてなしだ。はっきり言って本土(内地)ならもっと豪華なものが食べられるだろうが、南部ならそのへんの事情は汲んでくれるだろう。材料不足でも間宮が作るものより美味いアイスなんてそうそう無い確信もあるし。

 

「何かもてなしてやりたいが、今回の騒動で漁も出来て無くてな」

「構いません。それは仕事を片付けてからとしましょう」

 

 そう言って一条少尉はお茶を入れてくれる。艦娘たちが普通にやってくれるので慣れてしまっていたが、よく考えたら内地だとコンプラ案件か? そう思っていたら、南部が顔の前で手をひらひらと振った。

 

「大丈夫ですよ。こいつ信用できると踏んだ相手でないとこう言う事しませんので」

 

 それに対して一条少尉は特に答えず、澄ました顔をしている。多少とっつきにくそうだが、いいお嬢さんじゃないか。

 

「しかしお前女性に興味なさ過ぎて、このままだと飛行機と結婚するのかと心配してたぞ?」

「奇遇ですね。私もそのように心配していました」

 

 一条少尉がさらっと相槌を打つ。南部よ、言われてるぞ?

 

「それを言ったら昔のお前無駄に孤高キャラだったじゃないか。友達が出来た後もそのキャラを崩せず無理をして」

「キャラ付けの話をするなら、あなたは見かけに反してメンタルがやたら弱かったですね」

「む、昔の話だろ?」

 

 妙な雰囲気が流れ始める。こいつら、俺が上官である事を忘れてないか? そんな心配も空しく、二人は何やら自分達だけの世界に突入する。

 

「先日の演習で、私はあなたから五戦して三勝しました!」

「俺の二勝はレギュレーションが劣位戦だった!」

「しかし昔のあなたは大技にこだわって隙が多かったです!」

「だがその後俺の方が場数を踏んだから、経験値は俺の方が上かもなぁ!」

「なら私が同じだけ飛べばもっと強くなってます!」

「その頃には俺はもっと飛んでもっと強くなってるがな!」

「なら私はもっともっと飛んで……!」

 

 俺は何を見せられているんだろうか。二人の世界に入り込む気も起きず、間宮にお茶の追加を頼む。やってきた彼女はくすくす笑いながら、「提督と赤城さんを見てるみたいです」などと言ってお茶を置いて行った。心外だ。

 

「失礼しました。話がそれました」

 

 急に正気に戻った一条少尉は、何事も無かったかのようにぺこりと頭を下げた。

 

「どうもお騒がせしました」

 

 南部も気まずそうに言い放つ。はいはい、ご馳走様。

 この飛行機馬鹿は防大時代、パイロット資格持ちのエリートなのに、女生徒からのアプローチをスルーし続けた男だ。俺や長谷部とばかりつるんでいるから、そう言う趣味を疑われた事すらある。それがまあこんな美人なお嬢さんと犬も食わない喧嘩をねぇ。内容はあんまり色っぽくないけど。

 

「何言ってるんです。先輩こそかなりモテたのに、面食いの女性ばっかり好きになるんですから」

 

 こいつも長谷部も俺がモテると言い張るが、モテた記憶なんてねーよ。

 

「あのな。お前いつもそんな事言ってるが、俺がいつモテたよ」

「またまたぁ。いるんじゃないですか? この泊地でも先輩を好きになった子」

 

 お茶を飲もうとした手が止まる。漣の顔が浮かんだ。

 

「何か、あったんですね?」

 

 あったよ。それもついさっきな。

 

「悪い。この件は放っておいてくれ」

 

 南部の顔が曇る。俺はさっきまでの楽しい時間を濁らせた事に罪悪感を覚える。

 

「長谷部さんの事、まだ――」

「その話もやめてくれ」

 

 南部は悲しそうに笑った。

 

「そうしましょう」

 

 飲みかけの湯飲みに茶を注いでくれる。この話はこれで終わりだ。

 

「失礼ですが津田少佐は、昔の大尉にそっくりですね」

 

 一条少尉がそんな事を言う、南部が余計な事をとばかり渋い顔をしている。

 

「どういう事だ?」

 

 少尉はアイスを口に運ぶと、表情を変えず言った。

 

「少佐は弱い人です。そして恐らく、優しい人です」

 

 俺は、言葉を失った。

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

11:06(ヒトヒトマルロク) 講堂

 

Starring:赤城

 

「一応聞くけど、これなんかの余興ってわけじゃないよな?」

 

 だだっ広い講堂。泊地じゅうの艦娘の眼前で、南部大尉は冗談めかして言う。歴戦の艦娘に囲まれて一切の動揺を見せないのは、流石は彼も歴戦と言う事だろう。

 

 なお一条少尉は扉の前に立っている。友達と待ち合わせでもするかのように、無言で時計を確認しながら。自分はこの件についてノータッチだが、必要なら介入すると言う事だろう。彼女もただ者ではない。

 そして南部瞬大尉と言う人は、存外に察しが良い。困ったもんだと頭を掻いて、直ぐに覚悟を決めたように告げる。

 

「知りたいのは、長谷部さんの事でいいか?」

 

 この場にいる艦娘たちが、一斉に頷いた。皆提督の着任以来縁の濃い者たちだ。赤城と提督の言い争いは一部の者しか知らないが、提督の憔悴ぶりが気にならない彼女達ではない。まず霞さんに問い詰められた。漣さんの件は伏せつつだが、赤城は素直にいきさつを話した。そうしたら彼を心配する者が集まってきて三十人強である。赤城にとって意外な顔も何人かいた。陽炎さんなどは割と意図的に彼と距離を置いている印象だったが、今の彼女は真剣な表情でここにいる。

 提督の心を何とかするのは、それが必要だと思ったからだ。

 

「いったい何があったんですか? あれはただのPTSDではありません。戦場ではなく()を恐れています」

 

 彼の事情は聞いているがさらっとした話だけだ。真に彼を理解するには、直接事情を知る者から話を聞くべきだと思った。そしてこれが最大で、恐らく最後のチャンスだ。

 

「どの程度まで知ってる?」

 

 流石エースパイロット。尋ねる目には凄みがある。だが潜った修羅場の数は艦娘たちとて同じようなものだ。

 

「後輩の方を楽にしてあげて、その事で奥さんから恨まれている事は知っています」

 

 すっかり覚悟を決めた漣さんが、ぼそりと告げた。それを言うのが自分の義務であるとでも言うように。

 えっ? 艦娘たちは驚き、すぐに合点がいった表情になる。彼の危うさはそのくらい(・・・・・)の事が無ければ不自然だ。

 

「断っておくが、俺も全てを見たわけじゃないぞ?」

「それで構わないわ。さあ」

 

 足柄さんが即座に要求する。南部大尉は一同を見回し、ふっと笑った。

 

「先輩、愛されてるじゃないか。本当に不器用なんだから」

 

 そう言って、パイプ椅子に腰を下ろす。艦娘たちもそれに倣った。南部大尉は懐かしむように手帳から写真を取りだす。提督と南部大尉。もう一人が長谷部と言う人だろう。何と言うか、悪ガキ三人組と言った表情だった。かなりの問題児だったのかもしれない。

 

「俺が防大に入った時、津田先輩は三学年。長谷部先輩は二学年だった。津田先輩は長谷部先輩の対番(たいばん)で、長谷部先輩は俺の対番だった」

「対番?」

 

 天龍さんが首をかしげるが、その疑問には響さんが答えてくれた。

 

「確か先輩が後輩の面倒を見る制度だったと思う」

「つまり、特に可愛がってる後輩って事だね? 加賀さんと瑞鶴みたいに?」

 

 飛龍が余計な事を言い、瑞鶴が頬を膨らませるが、そこに割って入る加賀さんではない。続きを促す。

 

「俺はもうパイロットになるって決めてたから、空自志望だったな。高校生のうちにバイトで金貯めて民間機のライセンスも取ってたし」

「そう言う話はいいのです」

 

 電さんがはなしをぶった切る。思いの外容赦がなかった。

 

「そうか? まあ俺たち三人は休日の度に遊び倒した。急にみそラーメンが食いたくなって、札幌まで日帰り弾丸旅行をやったこともあったな」

 

 何と言うか、防衛大学と言うところは海軍兵学校の文化を受け継いでいると聞いたが、自分に乗り込んでいた新米少尉たちはもっとストイックだったものだが。まあ男の人と言う者は、そう言うものかも知れない。

 

「津田先輩は本当に面倒見が良い人だった。誰かがやらかすと、下げなくていい頭を下げて回ってくれた」

 

 摩耶さんと瑞鶴、更に何人かがうんうん頷いている。中には実際やらかした者もいるんだろう。今は突っ込まないが。

 

「長谷部さんはちゃらんぽらんで万事要領よく立ち回るけど、人懐っこくて良い笑顔をする人でな。皆に好かれていた」

 

 その長谷部なる人物が戦死する事になる。三人の絆のようなものを見せつけられた後だと、予想していたが辛い話になるだろう。

 

「夏休みだった。呉に旅行に行った時の事だ。何でわざわざ呉へと思ったけど、長谷部さんに親戚が居て、仲間を誘ってこいと言ってくれたそうだ。牡蠣を腹いっぱい食わせてもらったな」

 

 つい喉がなってしまった。隣でぐうぅと音がした。加賀さんを見たら、赤面してぷいと反対側をむいた。可愛い。

 

「翌日長谷部さんがナンパをしようと言い出した」

 

 ほーぉ、ナンパですか。ふーん。何で自分が苛ついているのか分からないが、彼が復活したら特大のペナルティで勝負を挑んでやろうと決めた。

 しかし彼にもナンパなどをやろうとする時代があったのだなと、驚きと同時に新鮮さを感じる。

 

「俺は正直気乗りしなかったから、一度回った大和ミュージアムに再入場して〔ゼロ戦〕見てた」

 

 この人、本当にぶれませんね。

 

「そうしたら、先輩たちが女性を連れてきた。それが八千草(やちぐさ)仁美(ひとみ)さんだった」

 

 いよいよその名前が出てきたのだ。提督のトラウマと後輩をめぐる話は、核心に入ろうとしていた。

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