※てるてる坊主は現在26個。リボンはもらえそうですが、噂の新型機はちょっと厳しいかも……? ぎりぎりまで粘ってみます(`・ω・´)ゞ
●同時刻 講堂
Starring:赤城
南部大尉は懐かしむように二枚目の写真を出した。さっきの三人と、品の良い女性が写っていた。控えめそうな美人で、何故か霞さんがふんっと鼻を鳴らした。
「まあ驚いたよ。長谷部さんどころか津田先輩まで彼女に夢中だった。これはやっと先輩に春が来たか。いや面倒くさい事になっただけかも。そんな事を思ってるうち、結局彼女は長谷部さんを選んだわけだけど」
「ふーん」
足柄さんまで不快そうにしている。まあ自分もよく分からないが面白くはない。
「でも津田先輩は祝福してたよ。結婚式でガチ泣きして周りを引かせてたな。それで長谷部さんがもらい泣きして大変だったなぁ」
目に浮かぶようである。あの人はわざわざ尊大っぽく振舞うくせに、何処まで行ってもお人よしなのだ。そしてこの場の艦娘たちはそれを分かっている。
「そこからは皆順風満帆だった。俺はイーグルドライバーへの道を進み、津田先輩は念願の艦長目指して一直線。そして長谷部さんには子供が生まれた」
つまり彼は子供を残して逝った。その事実に気付いて、一同の顔が暗くなる。
「そこから、戦争が始まった」
必死に向き合おうとしているトラウマを突きつけられて、赤城はうつむく。もしかしたら、もしかしたらだ。自分がメッセンジャーとしての役割を果たせていたら、長谷部と言う人は戦死する事も無く、彼もトラウマを負う事も無かったのではないか。
「赤城さん」
袖を引っ張ってくれたのは加賀さん。今はだめよと首を振ってくれた。首肯して南部大尉に向き直る。
「俺達空自も随分と墜とされたが、海自はもっと酷かったそうだ。救世主のように現れてくれた艦娘も、あの頃はまだ数が少なかったしな」
南部大尉の言葉から、艦娘たちは自分たちが「戻ってくる」前の、悲惨な戦場を想像してしまう。彼らの命は艦娘が深海棲艦と渡り合えるようになるまでの
「詳細は明かされていないが、津田先輩と長谷部先輩は同じ艦に乗っていたらしい。船団護衛作戦中、それが沈んだ」
「……それで、どうしたネ?」
「沈む乗艦で、長谷部さんは足を挟まれた。溺死ってのは、辛いもんらしいからな。長谷部さんは先輩に頼んだらしい。楽にしてくれと」
講堂はしーんと静まり返った。皆考えているのは同じだろう。自分の姉妹や戦友が倒れた時、自分は同じ決断を下せるだろうか?
「戦時下だけど、葬式には俺もたまたま参列できた。そこで津田先輩は八千草さんに
誰かがすすり泣く声が聞こえる。南部大尉は視線を床に向けた。ここから先は、彼も告げたくないのだろう。
「そこから、半死半生だった先輩の心は完全に壊れた。病院に放り込まれて、戦うどころかろくに生活もできない状態だったときいた」
赤城の中で、出会ってからの彼と、伝え聞く情報がぴったりと繋がった。そこから彼は
がたん。雷さん・摩耶さん・足柄さん・瑞鶴・天龍さんに陽炎さんまで。その他何人かが突然立ち上がった。
「待ちなさい。何処にいくのよ?」
霞さんが呼び止める。彼女達は肩を怒らせ振り向いた。かなり興奮しているのは明白。おそらく事前に事情を知っていなければ自分もあの列に加わっていたかもしれない。
「決まってんだろ? その女を電話で呼び出して提督に謝らせんだよ!」
「そうだよ! このままじゃ提督さんがあんまりだよ!」
霞さんは彼女たちを睥睨し、椅子に座るよう促した。
「それでその最低女をどうにかしたところで、何か解決するの?」
それを言われては仕方がない。まだ不満そうな者もいたが、ここで何かを言ってもどうにもならない事に気付いたのだろう。彼女たちは不承不承、椅子に座りなおす。
「でも私には分かる気がします。大切な人や艦を失ったら。やり場のない思いは、私たちも経験しています」
翔鶴が告げる。それもまた事実なのだ。艦娘は総じて情が深い。誰かを失っても、違う誰かを絶対に責める事はない。そんな事誰が言えようか。
「なんか、ありがとな。先輩を大切に思ってくれて」
しんみりと言う南部大尉を、曙さんが即座に斬って捨てた。
「あんたの為じゃないわよ!
こうして提督のトラウマは共有されたが、実はさほど前進してはいない。彼の根深いトラウマを一時的にでも癒すカンフル剤が必要なのだ。今この時を乗り越えれば、自分たちが日常の中で彼を癒して見せる。そう思うし、みんなきっと思ってる。
「全員で活を入れに行くか?」
「摩耶、それは逆効果だと思うわ」
一同の空気は沈んでしまうが、誰かがぱんぱんと大きく手を叩く。長門さんだった。
「まずは、皆で考えよう。知恵を出し合えばきっといいアイデアが浮かぶ」
艦娘たちは、お互いの顔を見合わせ、うんと頷いた。
「そうね!」
「そうだな」
「そうだよっ!」
そうと決まれば動くだけである。みな積極的に意見を出してくる。
「みんなでバスケット大会とかどうよ! 体を動かせば元気になるじゃん?」
「鈴谷、その案はちょっとおバカですわよ?」
最近バスケット漬けの鈴谷さんが可愛らしい提案をし、早速熊野さんに却下された。まあしょうがないと皆が苦笑した時。赤城にひらめいたものがあった。
「バスケットは置くにしても、皆で何かをやって見せると言うのは悪いアイデアでは無さそうですね」
鈴谷さんの顔がぱっと明るくなる。べつに彼女を庇ったわけではなく、思い当たる事があったのだ。
「もうこうなったら泊地全体の問題です。今聞いた話を公開しましょう」
「えっ? 本気ですか?」
本気である。それで恨まれるなら、ヘイトは自分が引き受ける。やはり即座に賛同は得られず、皆周囲の反応をうかがっている。
「あの頑固者は、それくらいしないと心を動かしません」
言い切ってやると、皆納得したように頷く。ただ言葉を贈るだけでは駄目なのだ。仮に愛を囁いても、今の彼はありもしない言葉の裏を読み始め、逃げ出す口実を探し始める。しかしゆっくり心を溶かす時間は無い。ならば物量作戦が肝要。拗らせた人気者を、
「良いですか? 作戦はこうです」
開陳したアイデアをひと通り聞いた後、瑞鶴が言った。
「赤城さん、提督さんに似てきてない?」
聞き捨てならない。自分はあんなに面倒くさくない。もっとスマートでカラッとしている。胸を張ってそれを主張しようとしたら、加賀さんまで小さく笑いをこらえていたのに気が付いて、ちょっとへこんだ。