ジークアクスとか、我が青春のToHeartリメイクとかで浮気してましたが、夏イベントに向けて、艦隊の強化も頑張ります!
皆様、てるてる坊主は何個集めましたか? 気が向いたらぜひ教えてください!
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Starring:提督
突然首筋に冷たいものを押し付けられた俺は、悲鳴を上げて立ち上がった。半ばパニックを起こして立ち上がった時、ドヤ顔で立っていたのは赤城であった。そしてその手には結露がしたたる
「お前、随分と余裕があるんだな」
ちょっときつい皮肉だったかも知れん。こんな時に何遊んでやがる、と付け加えようとして、気付いた。八つ当たりは止めとこうぜと。
赤城と言えば、俺の言葉をスルーしつつ、なぜか首をかしげている。
「……なんだよ?」
「そう言えば、我ながら余裕がありますね。あなたと関わると、悩む暇が無くなると言うか」
何だそれは? 俺を変な基準にしないでくれよ。ってか何で不思議そうなんだよ。
「それより何の用だ?」
今はこいつと話したい時じゃない。気まずいと言うのもあるが、今日のこいつは、俺の触れて欲しくないところをざくざく突いてきやがる。「お前に何が分かる」と言ってやれたら楽かもしれん。だがなまじ同じような体験をしてるからな。
「そんな精神状態で作戦をいじくりまわしててもいい案は出ませんよ。それより、いいもの見てみませんか?」
「いいもの? なんだそりゃ」
ぞんざいな言葉で受け流そうとしたとき、窓の外から砲声が轟いた。
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手すりを掴んで身を乗り出すと、そこには砲煙を上げる戦艦群とそれに相対する駆逐艦たちがいた。
「どう言う事だ!? 作戦前だぞ!?」
今回は怒鳴りつけた。これは氷嚢のいたずらどころじゃない。命にかかわる問題だ。赤城はそれをしれっと受け流す。いつの間にか隣にいた南部は、こまったなぁとわざとらしく頭を掻いている。唯一悪びれているのは鳳翔だが、こいつはこいつで謝罪する様子はない。顔は笑っているが、弓を持つ時と同じような迫力で、俺が腹を切れと命じれば本当に切りかねない。
何覚悟決めてるみたいな顔してるんだ。苛立ちは増す。
「砲撃を受けてるのは配属したての連中ばかりじゃないか! あんな高度な機動をさせやがって!」
望遠鏡の先には、長門とビスマルクが、レーベとマックスに砲撃を加えている。彼女たちはジグザグに航行してこれを
「いいから見ててください。提督にはあれを見る義務があります」
赤城の言葉は有無を言わせない。俺はこのやろうと身を乗り出しかけ、何とか理性が勝った。こいつらが理由もなくリスクを冒すはずがない。何をやろうとしてるんだ? 視線を訓練場に戻し、ふとある事に気付く。
「率いているのは、漣だよな? あいつ七駆以外の連中とここまで息を合わせられるのか?」
それはもう自慢げに笑う。そして上から言ってきやがった。
「前も言いましたが、提督は
「気付かなかった」
「おそらく、私が同じ事をしたら気付いてましたよ。提督は漣さんに甘え切っていたって事です」
「……自己嫌悪で死にそうだよ」
軽口風に言ったが、本気だ。俺はあいつのことを、無意識に知る事を避けていた。
「次、始まりますよ」
今度は17駆だ。率いているのは潮。普段の引っ込み思案が嘘のように、浦風たちを巧みに統率している。二つの隊はお互いに干渉しないように相互に連携を取り、魚雷の発射位置に近づいてゆく。
「あいつら、ここまで」
「前から出来ていたんじゃないですかね?」
南部が言う。前から出来ていた? 俺の訓練方針が無駄だった。そう言う事か?
「新米パイロットに基礎をみっちり仕込むのは当然ですが、そればっかりやってると彼らがどれだけ戦えるようになってるか分からなくなってきます。そういう時はちょっと厳しい状況に追い込んでやると、一気に伸びるんですよ」
空軍のパイロットは激戦地に送られると、配属されてきた新米を育てながら戦うと聞いた。悔しいがシビアな環境で人材を死なせずに促成栽培する能力。そんなもの、俺には及びもつかん。
だが言いたい事は分かった。俺は新米たちを大事にし過ぎたわけだ。
「提督が私たちを大事にしてくれている事は、新しい子たちには十分伝わっていますよ。それがあってこその今日のぱふぉ――訓練ですから」
鳳翔、今パフォーマンスと言いかけたな?
「ごほん。……まあともかくですね」
赤城がわざとらしく咳払いした。
「彼女たちは間違いなく、あなたが育てたんです。確かに木葉提督は土を作ってくれましたが、花を咲かせたのは提督、あなたです」
駆逐艦たちが模擬魚雷を発射する、長門とビスマルクの間に配置された標的に、そのうち一発が命中する。射手は浦風だった。
「提督さーん!」
彼女が手を振る。誰に向けて? 考えるまでもなく俺だった。
「ほら、手を振ってあげてくださいよ」
南部が余計な事を言うが、確かに労ってはやりたい。手を振るのは恥ずかしいので、敬礼で応えた。
「俺は、信じてやればよかったんだな。信じる事が怖いから、執拗に過保護にしてたのか」
何故か、三人の顔がぱっと輝いた。鳳翔に至っては小さくガッツポーズなどしている。
「そうです! ここにはあなたを苦しめる人、責めたてる人はいないんです。皆自分の命に責任を持てる子ばかりですよ」
そうなのだろうか。俺はそんなにも。
ん? ちょっと待て?
「待て鳳翔。責め立てる人って、お前――」
鳳翔は声を上げて口を塞ぐ。もうおせぇよ。
「あ、俺が話しました。多分赤城さんが全員に伝えちゃってると思います」
しれっと南部が宣言する。このやろう、とんでもない事を。
「話を聞いて泣きだす子がいっぱいいて大変でしたよ。私も舞風さんと再会した時を思い出してしまいました」
すまし顔で言っても無駄だ赤城。大変なのも何も、お前がやった事だ。
「提督、皆の頑張りを見たでしょう? 全部あなたの為です。あなたときたらそんな彼女達より、自分を振った不誠実な女性の事ばかり。そろそろ誰かを本気で口説きに行く、くらい考えましょう」
赤城は勝ち誇った顔で、そんな事を言った。誰かと恋愛。そんな事をしたら、俺は必ず相手を不幸にして、自分も不幸になるに決まってる。今でもその考えは変わらないが。けど確かに――俺は、不誠実だ。
「漣とは、よく話してみる」
三人は今度こそ茶化す事は無かった。代わりに南部が前に出る。手すりから身を乗り出し、両手で大きくマルを作った。
演習場の艦娘たちが一斉にぴょんぴょん跳ねだす。重い艤装を着けたままなのにな。演習を見守っていた金剛が前に進み出て、空に向けて空砲を撃った。彼女たちなりの「よくできました」なのだろう。
やれやれ。俺は提督だぞ? こんなかっこ悪いことじゃいかんよな。だったら、かっこよく決めてやろうじゃねぇか。俺は端末を取り出し、基地のスピーカーに繋いだ。
「あーあー諸君。悪いが演習は中止だ。全員講堂に集合だ。
さっきまでのはしゃぎっぷりはどこへやら、演習所の艦娘たちはいっせいに敬礼した。振り返ると、赤城・鳳翔、ついでに南部も背筋を伸ばし、俺に敬礼してくれていた。