仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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Deep-1、なかなかのチートキャラです。これだけ異次元なのには、ちゃんと理由があります……が、それはまだ語れない( ̄ー ̄)ニヤリ

さて、艦これの夏イベは、大規模メンテの影響で開催見送りとのこと。今度こそ感想を目指そうと張り切っていたので、ちょっと肩透かし……ですが、それだけインフラに本気という証拠。つまり、サ終はまだまだ先ということですね。

今後も艦これを推して推して推しまくります。


第75話「血戦! 赤城 vs 深海の悪魔(その1)」

Starring:赤城

 

 正直に言おう。津田(つだ)宏武(ひろむ)と言う男が、ここまでのお膳立てを整えてくれるとは思わなかった。

 数日前まで取り乱して泣き崩れていた赤城である。なのに彼は、本人の精神が危険な局面ですら、自分の起用に何の疑念も抱いていなかった。あの男の事だ。ただの勘ではあるまい。今までやりあった経験から醸成(じょうせい)された赤城像が、今回は実像とぴったり噛み合ったのだ。彼らしい勝負師(・・・)ぶりである。

 

 信頼に応えるなどと言う言葉を使うのは(しゃく)だ。Deep-1を普通に倒して「ほら思ったとおりだった」などと言われるのはもっと癪だ。ここは目の前のこいつを瞬殺して、自分の強さに驚かせ、「赤城ネキは最強や。わいには敵わんで。サンガツ」と皆の前で言ってもらうとしよう。ついでに満漢全席(まんかんぜんせき)は漣さんに悪いので、家系と二郎系ラーメンを10杯ずつと言う事で勘弁してやる事にする。

 

「どうしたの? 早速怖気づいたのかしら? 大変ねぇ。あなたがここで負けたせいでお仲間はみんな燃やしちゃうのよ」

 

 ふっと、笑みが漏れた。自分は今まで、こんな安い挑発に逆上していた。そう思うと頭を抱えたくなる。

 

「それは怖いですね。守らないといけない仲間が多いと大変です」

 

 ぎり。Deep-1が奥歯を噛みしめたのが確かに分かった。何の事は無い。こいつが自分に執着する理由は。それは、赤城がずるい(・・・)からかもしれない。

 だけど。

 

(もういいです。そう言うの!)

 

 第一次攻撃隊、発艦!

 

 〔烈風〕が撃ち出されると同時に、Deep-1の背後で空間が歪む。ねじ曲がって出来た穴の中には、無数の艦載機。正面からぶつかったらすぐ揉みつぶされる。ただでさえ、この戦いで使える(・・・・・・・・)艦載機は少ない(・・・・・・・)と言うのに。

 

 また空間が歪む、突き出されたのは巨大な砲身。

 

(戦艦砲ッ!)

 

 発砲! 炸裂! 一門だけのようだが、直撃でもしようものなら、一瞬で全てを失う。赤城はジグザグ機動で砲弾と魚雷、爆撃を回避しつつ、距離を詰める。

 

(空間をゆがめて飛行機を出す。まったく、何なんでしょうね。深海棲艦(こいつら)は)

 

 〔烈風〕は防空で精一杯。だが焦りはない。自分は気持でも技術でも、前回の自分ではないのだ。

 

 防空の効率は、こちらが上!

 

 

 

 

●6時間前 飛行場

 

「あなたの”ロッテ”は自己流でしょうか?」

 

 艦載機の調整中、いきなり話しかけてきたのは一条少尉。そしてその言葉は突然であったが、的を射ていた。

 

「分かりますか?」

 

 取り繕うつもりはない。正直に聞き返す。

 

「ええ。戦闘機同士が距離を詰めすぎです。あれでは”ロッテ”ではなく”エレメント”になってしまいます」

 

 そこまで見られていたのか。赤城は息をのむ。⁠それは隠していた苦手分野の指摘に他ならない。

 

 ロッテ戦法は二機の戦闘機が連携して敵に当たる戦闘機の基本戦術である。従来の三機編隊(ケッテ)に代わって登場した概念だが、前世でドイツから伝わったのは、彼女の戦没後だ。現在の赤城は無手勝流(むてかつりゅう)で飛行機を用いていた。

 一条少尉は、それを一瞬で見抜いた。

 

 エレメントは類似の発想から生まれたが、習得が容易な代わりに、連携はロッテより劣る。内地の「赤城」と異なり、自分はロッテのレクチャーを受ける機会が無かったのだ。

 

「簡単です。あなたが今動かしている僚機(ウィングマン)気持ち(・・・)後方に離してください。それだけでいいです」

 

 赤城は少尉をまじまじと見つめる。彼女は一見無表情で、加賀さんを見ているようだが、自然体の加賀さんと違って、一条少尉は自分がそうすると決めたからそうしている。そんな感じがした。理由は分からないが。

 

「それだけなのですか?」

「ええ。あなたが積んできた研鑽は並の量ではないでしょう。既に下地は整っています。ただ、あなたの中の何かが、”今までと違うもの”を拒んでいたにすぎません」

 

 彼女は何を言っているのだろう。自分をどこまで知っているのだろう。だけどその言葉は他人の物とは思えなくて。きっと同じような苦悩を抱えた者の言葉なのだろう。

 そして今、まだ小娘の撃墜王(エース)⁠は、自分の覚悟と思い切りを問うているのである。そのケンカ、買わせてもらおう。

 

「ではもう一度艤装を取ってきます。一回で成功させます」

 

 いちど踵を返し、ふと彼女に向き直る。

 

「少尉は、それを私に伝えに?」

 

 彼女は、否定も肯定もしなかった。ただその顔から伝わるものは、先ほどより幾分かの温和さを伴っていた。

 

「あなた達は、似ているのです。昔の私と”変わり者の上官”に」

 

 そして、片目をつむって見せる。

 

「だから、貴方”も”頑張って下さい」

 

 直感が告げた。この(ひと)、外見で判断すると痛い目に遭う。「変わり者の上官」とは、考えるまでもなく南部大尉であろう。そしてそれに似ているらしいのは、恐らく加賀さんとのコンビネーションではない。⁠では誰の事かと考えると、あの消去法で(たわ)け者の顔しか残らないのである。

 それを見た少尉は、なるほどですねと小さくつぶやく。

 

 それは、どう言う? 聞き返そうとしたら、機先を制された。

 

「女の勘です。さあ、演習の割り当てが終わる前に、やってしまいましょう」

 

 面白い! その挑戦受けましょう!

 

 この後実際に赤城は、妖精たちに生じていた機動の誤差を一回で修正して見せた。彼女を賞賛しつつも、少し面白く無さそうな顔をする一条少尉を見て、赤城は初めてこの女性にシンパシーを感じたのだった。

 

 そして赤城は、そのケンカに勝利した。

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