一枚岩となった艦隊ですが、彼らにはまだ挑まねばならない相手がいます。
仕切り直されたドラマは、星空の埠頭から動き始めます。
それにしても……。
呉行きてぇなぁ。休み取れなかったし、眼鏡駄目にしてお金も無かったし(´・ω・`)
でも明日はコミケいくよ。推しの作家さんに差し入れするよヾ(*´∀`*)ノ
夏の予定ある&あった人、良かったら書いて行ってください。読んで(・∀・)ニヤニヤします。
第79話「それぞれの前夜(赤城・漣)」
●
Starring:赤城
眠れずに訪れた埠頭で、先客を見つけた。彼女もまた、桟橋に座って星空を眺めている。
赤城は何も考えずに星を見上げるのが好きだったから、何かに迷うとここに来る。加賀さんは気付いているだろうけど、彼女は何も言わないでくれる。一人で見上げる空は、ざわついた心を静めてくれる。そう言えば提督が来てから、ここに来る事も減っていた。改めて、自分が彼に依存していた事実を知る。
「申し訳なく思っています」
赤城は前置きなしに、先客――漣さんに告げた。それは、ずっと言わなければと思っていた言葉。
「あなたの大切なものを、私は取り上げようとしています」
漣さんの隣に座り、答えを待つ。彼女はちょっと驚いて、あははと笑った。
「でも、後悔はしてないんですよね?」
これには頷くしかない。あそこで気持ちを伝えていなければ。赤城はもっともっと後悔した。
「出会ってからの時間で決まるなら、身を引いていたかもしれません。でもあの人は、もう私の一部なんです」
漣さんは苦笑し、そして言った。
「分かります」
彼女ならきっと、そう言うと思っていた。だからこそ余計に痛みは募る。
「でも漣さんからあの人を奪うかもしれない事は、本当に苦しいです。これは嘘ではないです」
「漣もです。ご主人様の事で、赤城さんはとっても一生懸命で、そんな赤城さんを嫌うなんてできません」
その一言から漣さんのコンプレックスがうかがえて、胸がちくりと痛む。だからと言って後退は選択できない事にも。
「一生懸命さなら、漣さんの方が上です。あなたがいなければ、あの人はとっくに壊れていたでしょう」
「赤城さんが支えてくれなかったら、ご主人様はつぶれていました」
「でも!」
「でも!」
視線をぶつけ合った後、なんだかおかしく二人同時に吹き出してしまった。
「やめましょう」
「そうですね」
二人して、再び星を見上げる。何をむきになっていたのか。苦笑は照れ笑いに代わる。
「ひとつ提案が。私たちは対等なライバルです。ですから、私の事は敬称抜きで『赤城』と呼んでください。私もそうします」
漣さん、いえ漣はびくっと肩を震わせ、身を引いた。
「おおお畏れ多いです! 加賀さんだって呼び捨てにしてないのに」
その姿がおかしくて、くすくす笑う。
「心配しなくても、加賀さんと私の間には私たちなりの距離感があるのです。そこは漣にも割り込めませんよ」
「そ、そうかもしれませんけど」
それに今回の事で思い知ったのだ。正規空母なんて少しも偉くない。戦争はみんなでやっているもので、漣と自分の違いなんてただの役割の相違だ。
「いいですか? これは私なりの宣戦布告、と言うのもあります。でもそれだけじゃありません。私は自分が提督と結ばれても、あなたがいなくなったら勝った事にならないと思うんです」
「そうでしょうか? いえ、そうですね」
頷く漣に、右手を差し出す。
「なので、共に完走しましょう。
漣はしばらく赤城の手を見つめていたが、すっと息を吸った。
「分かりました! 負けませんよ、
そして彼女は、赤城の手を取ってくれた。
「ご主人様、漣たちに何と言ってくれますかね?」
漣が星空に視線を戻す。それは赤城にも分からない。
「きっと、彼なりの誠実さで応えてくれますよ」
「ご主人様もいっそ、二人とも面倒見てくれればいいのに」
その提案には、苦笑するしかない。それは彼が望まないだろう。彼にはきっと、”そういうの”は無理だ。多くの愛情を背負おうと思えば思うほど、過剰な責任感が彼を蝕むだろうから。人間の常識を外れて生きるなんて、自分の代わりに死んだ後輩に言い訳できない。なんて思っているのだ。どうせ。
下らない考えと思いつつ、艦娘である赤城たちがそこに立ち入る事は出来ない。自分たちの為に真っ当さを捨てろなど、口が裂けても頼めない。その決断は提督自身に委ねる。それが艦娘と提督の間にある、ケジメだ。
「そろそろ、寝ましょうか」
仮定の話をしてもしょうがないと、赤城は苦笑し、漣もそれに応じた。
「そうですね。明日は頑張りましょう!」
実のところ、恐怖や気負いは感じなかった。このところ色んな事があり過ぎて、将来を恐れる余裕は無くなっていたし、それだけの事を乗り越えた方、次もやれると言う自負がある。とは言え、だからと言って睡眠を取らないのは、自信や余裕ではなく慢心の類だろう。
桟橋から立ち上がった時、眠気がこみあげてきて、二人同時に大あくびをしてしまう。赤城と漣は顔を見合わせ、笑いあった。
●作戦決行当日
「おはようございます赤城!」
気が急いて集合時間にフライングしたら、既に七駆の面々が整備兵に艤装を取り付けて貰っていた。漣が自分を見つけ、大げさに敬礼してくる。ついでに動かないで下さいと怒られていた。
おはようと言ってもまだ朝の四時だが、先発の艦隊の出撃時刻を考えれば、まだ遅い方だ。これから赤城たちは、戦いに赴く。
ところが気持ちの良い朝の風景は、不穏な空気を漂わせている。曙さんたちは、漣の挨拶が物凄い失言をしたかのように、咎め始める。
「ちょ、あんたなんてことを!」
「すみません赤城さん! 漣ちゃん最近疲れてて……」
「そうです悪気は無いんです!」
真っ青になった七駆の面々が、漣と自分の間に割って入る。自分はそこまで怖い人と思われているのだろうか?
「いいんですよ。むしろ
曙さんも朧さんも潮さんも、ぶんぶんと首を振る。地味にショックである。
「う、羨ましいです!」
声が聞こえて振り返ったら、艤装の順番待ちの吹雪さんが拳を握り、前のめりなっている。そこまでなのだろうか?
「では吹雪さんも……」
「それは駄目です!」
ぴしゃりと言われてしまい、若干落ち込む。
「やっぱり畏れ多いとか、赤城さんにちゃんと追いついてから堂々と呼び捨てたいなとか、色々お受けできない事情が」
彼女は彼女で色々あるらしい。
「では私の方からは”吹雪”と呼び捨てさせても良いでしょうか?」
ぶばっ! 吹雪が急に鼻を押さえる。指の間から鼻血がたれ始めた。そこまでですか!?
「はひゃい」
白雪さんに鼻を拭いてもらいながら、ガッツポーズをしている。喜んでくれたのなら何よりだ。
「赤城さん、変わったね」
ぼそりともらした朧さんの声を拾ってしまった。もし本当にそう思ってくれているなら、それは嬉しいことだ。変に孤高ぶっていたと思う。でもそう言うのは、もう良いかと思った。加賀さんは笑ってくれていたけれど。
だから今日の作戦は終着点ではない。始まりの日としよう。
「じゃあ、今日は頑張りましょう漣」
「