さて、待ちに待った作戦発動です。大戦時の米国は、五倍の歩兵と16隻の空母で挑みましたが、攻略に一ヶ月も費やし、反撃による大ダメージを受けました。
提督と艦娘たちは、その惨禍を繰り返す事無く、因縁の戦場に挑まねばなりません。
あ、だらだらとしたお話にはしないのでご心配なく。でも燃える展開をお約束しますぞ。
Starring:提督
●
訓辞に訪れた俺を出迎えたのは、一糸乱れぬ動作で敬礼する艦娘たちだった。
「全艦娘、いつでも出撃可能です!
高雄の報告に、着任のあいさつを思い出す。あの日の言葉は辛らつだったが、泊地を預かる事の重さを教えてくれた気がする。そんな彼女が「提督」と呼んでくれたのは、俺にとって人生の勲章と呼べるかもしれない。
だから俺は、不敵に笑う。
「諸君、このところ激戦続きだ。そろそろ酒をかっくらって惰眠をむさぼりたい頃合いじゃないか?」
隊列から隼鷹が「いいねぇ!」と声を上げ、飛鷹に耳を引っ張られている。
「まじめにやれよな!」
と摩耶がヤジれば、
「そうよ!」
とビスマルクが追従する。
うん。いつも通りの
「なのでお楽しみの前に、ちょいと面倒ごとを片付けてしまおうじゃないか。なぁに、いつも通りのちょっとしたお使いだ」
全員が不敵な表情を浮かべている。すっかり俺の物の言いように慣れてしまったらしい。
「だが今日はちょっとかさばる物を買い物かごに放り込む。そいつは”日本の未来”だ。なんてことない買い物だろ?」
艦娘たちから笑い声が上がる。良い空気だ。
「こいつをやり遂げれば、もうしばらくは食っちゃ寝でいいだろう。そのくらいの気持ちでやっつけちまおう」
既に自衛隊の輸送船が、三式戦車を満載して急行中。空挺部隊もそれを追いかけて来る予定。ハワイ及びパラオの艦隊は、敵の援軍を通せんぼするべく展開している。
皆がこの作戦に期待をかけてくれているのだ。
だが失敗はあり得ない。作戦を遂行するのが、最高の艦娘たちだからだ。
「では諸君。作戦を始めよう」
艦娘たちは、再び敬礼。一斉に持ち場に散っていった。
●
全艦の出撃が完了後、俺はスクリーンの戦力配置と、手元の作戦計画を順に見つめ、黙々と赤ペンを入れる作業に入った。艦隊の展開には特に遅れは無いが、それでも目の前で動いてゆく状況を見ると、計画書とのズレが気になって来る。
「いい加減、皆を信用したらどうかしら」
いつの間にか後ろに立っていたのは、三角巾で左腕を吊るした加賀だ。今回も出撃したがっていたが、この前のような囮とは違う。大型艦相手に小火器の間合いに突っ込もうものなら。それこそハチの巣だ。
「癖みたいなもんだ。だが気を付けるよ」
一度動き出した作戦をいじくりまわすのは、確かに得策ではない。ちょっと前までの俺なら、加賀の忠告も聞かなかったろうが。
「心配しなくても、あの子たちはやってくれます」
あの子と言うのが誰かは明白だが、突っ込むほど野暮ではない。それほど信用しているなら、普段からそう言ってやればいいのにくらいは思うが。
「敵艦隊は、釣り出せるかしら?」
加賀は言う、作戦に疑念がある様子でもないから、単純な質問だろう。
「そこはあまり心配していない。奴らは多分、下級艦を間引く選択をする」
艦隊を動かすには資源がいる。それは深海棲艦も同じようだ。硫黄島に大艦隊がひしめき合っていては、籠城になった時資源不足になる。だから間引く必要があるのだ。使い捨ての下級艦で波状攻撃を行い、こちらを消耗させ、勝てるようなら温存していた姫級で止めを刺す。それが不可能なら島に引きこもり、ダッチハーバーもしくは南洋艦隊による挟み撃ちを行う。こんなところだろう。
それでもダメなら島を捨てるつもりで、なるべく多くの艦娘を道連れ、とかも考えてるかもしれない。
「海軍全艦隊で揉みつぶせればいいんだろうけどな」
それは楽観論だったので、案の定加賀は却下する。
「無理です。今内地は守備艦隊と南方やインド洋に出撃準備中の艦隊しかいないわ」
何しろアフリカ諸国もインドも艦娘保有国ではないのだ。彼らに戦う力は無いが、だからといって見捨てるわけにはいかない。日本からも大戦型戦闘機の供与や、艦娘によるシーレーン防御及び敵拠点襲撃などの支援が為されている。中東から石油が入らなければ、結局艦娘は戦えない。つまりは……。
「やるしかないわけだな」
加賀は「何をいまさら」とは言わなかった。命を背負う重圧を知っているのは、彼女だって同じだ。
「ありがとな。赤城を支えてくれていて」
意識して出た言葉じゃなかった。だけどその分、本気の言葉。案の定加賀は不満そうにしていたが。
「私が赤城さんを支えるのは、別にあなたの為ではありません」
有無を言わせぬ態度だが、確かにそうである。俺も逆の立場で同じ事を言われたなら腹が立つかもしれない。言葉の選び方も、まるで彼氏ヅラだ。
「そうなんだが、それが結果的に俺の為にもなったから、お礼を言っておきたいっつーか」
すぐに訂正して話題を変えればいいものを、しどろもどろに言い返す。俺の発言に
「お礼を言うのは、私の方」
「えっ?」
俺がいつ加賀に感謝されるようなことをしたと言うのか。いつも色々フォローさせていると言うのに。俺の戸惑いを見て、加賀は二度目のため息をつく。
「泣かせたら、生きていたことを後悔させますので」
彼女なら本当にやるだろうな。だが怖いとは思わなかった。それどころかとても暖かい気分になる。彼女の人となりを知ってしまうと、それが最大級の祝福の言葉だと気づかないわけもない。それで過激な言葉をぶつけられて、ほっこりと和んでいるわけだが。
……俺、Mかな?