投稿直前に確認してたら、少々直したくなってしまい盛大に遅刻をしてました( TДT)ゴメンヨー
ともあれ、戦いの火ぶたは切られたようであります。
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Starring:提督
仮眠を終えた俺は、目下カップ麺をずるずるとすすっている。海軍で戦闘食と言うとおにぎりや乾パンだが、今回は長丁場。陽炎型のジャンク警察も、作戦期間中は取り締まりを遠慮いただいている。
「提督、第一艦隊が敵艦隊を補足しました!」
大淀の報告と共に、偵察機からの情報が映し出される。俺はスープを飲み干したカップを机の横に押しやり、スクリーンを凝視する。
「敵は大型空母だけで一ダース。それに軽空母や随伴艦が加わる。数だけならうちの主力の倍ってところだ。いきなり大盤振る舞いしてきたな」
とは言うものの、敵艦隊上空に忍び寄り、スリのように艦影を掠め撮る艦上偵察機は、どうしても得られる情報の正確性にブレが出る。本当はもっと少ないかもしれないし、勿論多いかもしれない。
「加賀、どう思う?」
横に座る加賀に意見を求める。彼女は特に感情を動かした風でもなく、言った。
「硫黄島にこもる敵艦隊がこちらの想定より多かったと言うだけではなくて?」
「だけ」などと言うが、そいつはかなりやばい事実なのだが。無論、想定を外れた場合でも勝てるように作戦は立てているが、どうも落ち着かなくなって、指をもじもじ動かしてしまう。
「信じなさい」
それだけ言われた。分かってる。皆を信じるさ。
それにしてもこいつ、ほんと腹が据わってるな。俺なんかより指揮官に向いてるんじゃないか? 俺が不在時に代理要員として引き抜きたいとか考えてしまう。冗談でも口に出したら、赤城と瑞鶴にどんなお仕置きをされるか、考えただけでも恐ろしいが。
「指示は出さないの?」
「瑞鶴が判断を仰いできたらな。任せた以上過度に口を出さない方がいい」
「そう」
加賀は余計な事は言わない。余計な事を言わない加賀だから、今の判断に異議はないと分かった。なるほど良い参謀ぶりだが、それでも多分、こいつの本当の能力を引き出せるのは、赤城だけだろうな。
「大淀、基地航空隊を艦隊の直掩に出してくれ」
「敵艦隊には向かわせないのですか?」
大淀の言葉は提案と言うより確認だった。
「確かにその手もあるが、連携無しに戦力をぶつけても各個撃破されるし、仮に上手くいっても効果は減殺される。第一撃は艦隊に任せよう」
今回は敵の規模が大きすぎる。中途半端な戦力で殴りこまない方がいい。
「了解です!」
大淀は元気よく敬礼すると、受話器を取った。
さあ、これからだ!
同時刻。俺と加賀の期待通り、瑞鶴の判断は早かった。二航戦・五航戦を中心とした正規空母が、一斉に艦載機を発進させる。
グラーフやアークロイヤルの欧州艦は艦載機の
機動部隊のフルアタックは成功した。空母棲姫率いる敵機動部隊も、レーダーによる誘導で戦闘機のエアカバーを敷いていたが、我が艦載機はこれを強引に突破した。本来なら多大な犠牲が出るところだが、こちらは編隊の半分を戦闘機にしている。
上空で戦闘を中継する〔彩雲〕から、白煙に包まれた敵空母の映像が届いた時、俺はようやく初戦の勝利を実感する事ができた。
三隻が撃沈確実。それに不確実が二隻。損傷が五隻である。おそらく不確実と損傷の艦は被るだろうが、それでも五から八隻程度は行動不能になっただろう。
あとはもう、やる事はシンプルだ。二の矢、三の矢を繰り出し、手足をもいで行動不能にするだけだ。
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月が照らす暗い海で、砲火が放たれた。追いついてきた戦艦部隊が、敵戦艦部隊と激突したからだ。指揮を執るのは長門。俺は金剛を推したのだが、彼女としては妹たちと戦う方が気楽らしい。練度を考えず、気質だけの問題で言えば、確かに長門の方が大軍を率いるのに向いている。
『長門より発令。これより接近中の戦艦部隊を迎え撃つ。深追いは厳禁とするが、向かってくる敵には容赦は無用。以上だ』
『了解! ――戦艦同士が撃ち合いを始めたら、右舷から突入します! 各艦、この足柄に続きなさい!』
こちらに関しては、俺は楽観視していた。空母戦に比べ、戦艦同士の砲撃戦は運の要素がまだ少ない。基本は確率論の世界であるからだ。かつてビスマルクがやったようなラッキーパンチもありうるのが戦場の怖さだが、一瞬で全てが破綻したミッドウェイを思えば、まだ指揮官が受けるストレスはマイルドなものだ。
何より彼女達の戦術目標は「空母を守る事」なので、倒せなくても倒されなければこちらの勝ち。精神的にも余裕が持てる戦いだった。
状況は俺の予想通りに推移した。敵の猛攻に、我が方は頑丈な長門を先頭に押し立てて打って出る。心配していた練度不足も問題にならず、敵の陣形は崩されてゆく。たまらず後退してゆく深海艦隊に対して、悪いが情けをかけるつもりはない。続いて水雷戦隊が突入。翌朝空母から攻撃隊が飛び立ちとどめを刺す。これで掃討完了だ。
「中破艦は後ろに下げろ。陣形を組み直したら、硫黄島攻略に移る」
そして、作戦は最終局面に入って行く。