さて、本作も残すところあと二章となりました。最後までお付き合いよろしくお願いします(`・ω・´)シャキーン
Starring:提督
思えば色々とあった。
俺は、腰の拳銃をそっと撫でた。
長谷部よぉ。お前を守る事は出来なかったけど、今度はたくさんのもの、たくさんの人たちを守れるかもしれない。いや、守るのは俺じゃなくて艦娘たちだけど、少なくても、いい手伝いはできたという自負してるんだぜ?
お前の死を乗り越えるなんてできない。ずっとお前に詫び続けるだろう。八千草さんもきっと許してはくれない。でも、羽を休める場所くらい、作ってもいいよな?
スクリーンの前には着弾によって巻き上がる硫黄島の砂と岩。そして深海棲艦の破片があった。
迎撃艦隊を片付けるには少々骨が折れたが、瑞鶴・長門の指揮は的確だった。瑞鶴はいくつかの場面で若さが出たが、それは俺……ではなく加賀が即座に突っ込みを入れ、危ない部分は軌道修正された。
艦隊はそのまま直進し、猛爆撃によって港湾施設、対空砲を使用不可能にする。飛行場は銃撃で航空機を破壊するに留める。これには理由があるが、まあここまでは問題ない。
ここからが最大の難関。衛星写真から、硫黄島の基地施設は地下化されている事が分かっている。つまり、かつての日本陸海軍が施した鉄壁の防御と同じである。俺たちは80年前米軍が、圧倒的な物量でさえ成しえなかった、この島の短期攻略を行わねばならない。そうでなければ、泊地は南北からの援軍に挟み撃ちに遭う。
「いよいよね」
加賀の言葉はいつになく力が入っている。俺は頷く。皆で組み上げた戦法が決まるかどうか。それが泊地の運命を決める。
今まで要塞砲と猛烈に撃ち合っていた金剛姉妹が引き上げてゆく。砲弾を撃ち尽くしたのだ。
大砲と言う物は撃てば撃つほど、砲身の内壁がすり減って性能が落ちてゆき、最後には使い物にならなくなる。そうそう無駄撃ちするものではないのだが、今回は気にしない。あちこちの鎮守府や泊地からかき集めた無尽蔵の資源があるからだ。今泊地の工廠では予備の砲身が積み上がっている。
榛名が勇み足で中破したので、彼女は泊地まで後退。あとの三人は洋上の補給艦から砲弾を受け取って再度の攻撃を試みる。榛名は悔しがっているだろうが、敵戦艦と刺し違えての損傷なので、お釣りがくる戦果だ。泊地の妖精や整備兵たちには迷惑をかけるが、どんどん修理してもらい、どんどん戦線復帰してもらう。これが物量作戦の骨子だ。
金剛姉妹が去った後には、長門と妙高姉妹が駆逐艦とともに砲撃を行う。
彼女たちが撃ち終えたら、また次の戦艦部隊。そして昼が来たらまた爆撃。更に水雷戦隊による夜襲や、駆逐艦による強行偵察を織り交ぜる。
艦隊がバラバラになり、カタツムリの殻のような機動で渦を作り、次々と敵に当たってゆく。攻撃を終えた艦は後退し補給、リフレッシュし再び戦列に加わる。
敵から見ればありえない頻度で次々攻撃を受けるから、反撃はおろか、戦力を島から出すことすらかなわないだろう。
俺はこの作戦を上杉謙信の故事から「車懸かり」と名付けたが、ヨーロッパにも同じような戦術があるらしく、ビスマルクとアークロイヤルが呼び名でもめていた。だから車懸かりでいいと思うんだがなぁ。
地下施設とはいえ、籠っていたのが歩兵だけだった80年前とは違う。深海棲艦が出入りするためには、必ずどこかに大規模な入口がある。空母の爆撃と、戦艦の砲撃でそれをむき出しにさせ、駆逐艦が突入。内部に魚雷を撃ち込んで破壊する。
あとは陸自の空挺部隊が飛行場を確保。そこに〔オスプレイ〕で増援を送り込み、航空隊の支援で港湾部に侵入し、戦車や機材の揚陸を行う。
『南面坑口、発砲確認。水柱6本、散布界内。敵主砲40cm級と推定!』
長門から入電がある。やっぱりまだ大型砲を隠してやがったか。
「推定座標に爆撃をかけます。陣形を崩さず、落ち着いて対処を」
『了解だ。戦闘を続行する』
俺が指示を出すまでもなく、大淀が対応を完了していた。これから何日も何日も、この繰り返しになる。これは神経戦だ。
同時に泊地側も大発による妖精の上陸部隊を投入。島全体を押さえてしまえば、中の艦隊が生きていたとしても、出航直後に観測射撃を食らうだけだ。そのまま干上がるのを待つ手もあるが、一時的に逃げ道を空けてご退去願う事にする。こちらも余裕がないのだ。日本の戦力がこの島に釘付けになるのは本末転倒。
『司令官。これより朝潮以下、白
スクリーンに映ったのは朝潮とその妹たち。彼女には硫黄島に接岸、揚陸を指揮するように命じた。実力と胆力がある者は他にもいたが、他の艦隊と連絡を密にしながら突入を図るのは、生真面目な彼女が適任と判断した。予想通り彼女は、随伴艦に気心の知れた妹たちを選んだが、満潮・荒潮・霞・霰と、大発の扱いに慣れていて、この手の任務には性格上向いている。大潮はまあ、冷静沈着とは言い難いが、チームにはああいうタイプも必要なのだ。
「頼むぞ。あと白襷とか言うな。ちゃんと生きて帰る前提で作戦を立てとる」
『当然です! 司令官の作戦ですから』
小言を言ったつもりが、熱い信頼の言葉が返ってきた。お、おう。
『私、朝潮は司令官に直言したい事があります』
彼女は突然話題を切り替えた。なんだ? まさか何処かに作戦の穴が!?
『私たちが船だったころ、男性は祝言を挙げてから戦地へ向かうものだったと聞きました』
「そうだな。あの時代はそうだったと聞いているが、何故今その話を?」
わけが分からんぞ?
『ですから何故昨日霞を娶っ……』
その時、霞がものすごい勢いで朝潮の背後に組み付き、彼女の口を押さえつけた。何なんだいったい?
『今のは、あんたの体調を心配したねぎらいだった。そうよね?』
「えっ、でも祝言がどうとか?」
『……そうよね?』
それはもう、ものすごくドスが利いた声だった。
「アッハイ」
これはもう頷くしかない。俺だって生きていたい。
『じゃあ私達、行くから。そう言う事で!』
通信は切れてしまう。ねぎらいの言葉とかぜんぜんかけてなかったと後で気が付いて、ちょっとだけへこんだ。
そしてそれから数時間ほど、加賀がゴミを見るような目を向けてくるにようなった。何故だ!?