仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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アーケード継続宣言や呉リアイベ再始動など、嬉しいニュースが続きますね。そろそろ私も重い腰を持ち上げたいところ。旨い物食いたい遊撃隊に会いたい。

さて、決戦があっさり終わってどうなるかと思えば、なんか別の方向に試練が。

ここからが本当の決戦です。どうぞお楽しみください。


第87話「どんでん返しのどんでん返し」

Starring:提督

 

 デッキに顔を出すと、怒りの形相で高速艇を取り囲んでいる艦娘たちがいた。喧嘩っ早い奴らは既に、中に踊り込まんばかりの勢いである。

 

「やい因業野郎! うちの提督をどうしようってんだ!」

「そうよ! 司令官に何かあったら許さないんだから!」

「事と次第によっちゃあ、出るところでるけえ!」

 

 摩耶はともかく、雷や浦風の沸騰具合がやばい。他の皆も、多かれ少なかれ感情を露わにしている。

 俺は思った。お前らやり過ぎたと。

 

「まさか……大淀か? どうやって気付いた?」

 

 俺が半眼を向けると、彼女は「ばれちゃいましたか」と言わんばかりに受信機を掲げて見せた。俺ははっとして制服を探ると、胸ポケットに小さな円形の機械が。明石め。

 

「提督の様子に違和感を感じましたので。そう言う感覚は無視するなと師匠から教わりました」

 

 俺はお前を弟子に取った覚えはねぇ。と言うかそんなやばい事を教えた記憶もねぇ。ってかこいつ、こんなに図太かったか?

 とは言え俺には、皆がこの事態に気付くと言う確信めいたものがあった。赤城辺りがこの事態に気付いてこっそり脱走させてくれまいか、くらいの期待だったわけだが。

 

「一応聞くがな。おめぇさんたちには木葉がいるじゃねぇか。それで津田のやつまで欲しいってのは、ちょっと贅沢じゃねぇか?」

 

 綾郷大将の言う事はその通りだ。心を通わせ、しかも有能な提督が一人いる。それだけで幸運なのに、もう一人よこせと言うのは、ぜいたくと言われてもしょうがない。だけど。

 

 皆が言葉に詰まる中、進み出たのは意外にも高雄だった。

 

「綾郷閣下。やむを得ない理由があるとはいえ、あなたは私達から、別れの言葉もなく大切な人を奪い、そして今再び奪おうとしています。そんなあなたが、次にまた何かを奪わないと言う保証はあるのですか? 艦娘にとって、提督がどんな存在か。それをお忘れですか?」

 

 綾郷大将は言葉に詰まり、渋い顔をした。元々彼は、高雄と同じ考えだと思う。それが止む無く敵に回っているのだから、覚悟している事だとは言え、この糾弾は不本意だろう。

 

 次に前に出たのは赤城と漣。彼女達とは約束がある。大切な約束が。

 

「閣下。もし彼をこのまま連れて行くなら、私は即座に呉に向かい、海軍大臣なり長官なりに直談判します。今度こそは失敗しません」

「漣もです!」

 

 大将閣下は頭を抱える。そんな暴走をされても百害あって一利なしだ。だが今なら俺にも分かる。もう理屈じゃないんだ。

 

「赤城、漣。おめぇさんたちはもう少し冷静なやつらだと思ってたがなぁ」

 

 苦悩する対象に、二人はしれっと答えた。

 

「もしかしたら色ボケになったと思われ、です!」

「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られろと倣いませんでしたか?」

 

 その声に勇気づけられたのか、皆が次々と進み出る。

 

「そうよ! そいつ映画館の無い島になんて行ったら死ぬわよ!」

「提督は単身赴任なんて似合わないのよ!」

 

 霞と足柄がズレたフォローをする。それをきっかけに全員が一斉に各々の言いたい事を叫び始めた。まだ加賀さんに勝ててないのにとか、またビール奢ってくれるって言ったろとか、そんな声に交じって好きですだの愛してるだのお慕いしてるだの明らかに茶化すようなセリフも飛んでくる。色んな声に紛れて誰が言ったかも不明だが。

 

「分かった、今日のところはこいつを帰してやる。だが俺を説得しても上の決定にゃ届かねぇぞ?」

 

 艦娘たちのブーイングがぴたりと収まる。それと同時に、彼女達はお互いの顔を見合わせ、ノープランである事に気付く。

 

「あの、どうしましょうか? 提督」

 

 赤城が上目遣いで俺を見る。えっ? 俺に聞いちゃうの? 確かにそもそもの原因は俺なんだから、俺が考えるべきなんだが、ついさっき拉致られたばかりなんだぞ?

 無理な手を使えば、確実に艦娘たちの将来に悪影響を与える。だが何もしなければ後悔するだろう。

 どうする?

 

『はいはいみんな。聞いてる?』

 

 突然大淀の受信機が着信した。木葉先輩の声だ。

 

『まったくもう。何も考えずに飛び出してゆくなんて、そんなところまで津田君に似ちゃったのねぇ』

「いや俺、そんな向こう見ずじゃねぇし」

 

 まっとうな反論だと思うのだが、皆が「えっ?」と言う表情で俺に振り返った。俺司令官だぞ? 安全第一だから。

 

「あのですねご主人さま。ヲ級を救出した時と、基地が電波妨害された時と、Deep-1(ディープ・ワン)掃討作戦の時と。まだ聞きます?」

 

 いえ、もう結構でございます。ごめんなさい。

 

「まあ前線に出たがりの鉄砲玉の妄言は置いておくとしまして」

 

 赤城が酷い事言ってるが、皆うんうん頷いている。

 

「木葉提督は、何かいいアイデアがあるんでしょうか?」

 

 皆の視線が大淀……が持つ受信機に集中した。と言うか俺も期待しまくりだった。先輩にアイデアがあるなら、俺はみっともなく彼女の足にしがみついて教えを乞うだろう。

 

『そうねぇ。とりあえず戻ってらっしゃい。綾郷大将も、悪いようにはしませんので』

 

 悪いようにはしないと言っても、既に彼にとって悪い状態になっている。これ以上悪くはなるまいと思ったのか、大将は頷く。

 

「先輩、いったい何が始まるんです?」

 

 真面目な答えは返ってこないと思ったが、案の定彼女は俺の問いを茶化したのであった。俺の好きな映画の台詞を引用して。

 

『第三次大戦よ』

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