仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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( ゚∀゚)o彡° 横須賀リアイベ!横須賀リアイベ!

発表時に職場にいたので、その場で直談判して休みを取りました(・ω・´)b

さてさて、深海棲艦ファンの皆様お待ちかね。新キャラの登場です!
今回はオリジナル要素をかなり盛り込んでみましたが、「異文化コミュニケーションもの」として楽しんでいただければ幸いです。

おかげさまでまた風呂敷が広がりました(゚∀゚)
新キャラについてのご感想など、ぜひぜひお寄せいただけたら嬉しいですヾ(´∀`)ノ`


第88話「最後のチャンス」

Starring:提督

 

 戻ってきた埠頭には先輩と、背広姿の女性がいた。誰だろう。恐らく軍人ではないだろうが、外務省のお役人だろうか?

 俺は暢気にそんな事を考えていたのだが、艦娘たちの異常に気付いて、反射的に身構えた。皆一様に殺気を放っているのを感じ、息をのむ。

 

「お前ら、何を……」

 

 言いかけて止まった。彼女の肌は――白い。それは光の届かぬ深海の、色素のない白い白い肌。

 

「木葉提督! 離れて!」

 

 ほとんどの艦娘たちは武器を持っていなかったが、何人かが「彼女」に砲を向ける。一瞬迷ったが、俺は決断する。

 

「待て! 先輩は警戒してないんだ。まず話を聞こう」

 

 それに、雁首備えていても武器なしじゃお話にならない。あれがDeep-1(ディープ・ワン)級の化物なら、この状況で戦っても酷い事になるしな。

 

「いやぁ、素敵だったわよ津田君。妬けちゃうわ」

 

 暢気にも先輩はそんな事を言う。ただでさえ激戦を終えた後で、今日は色々あり過ぎてめまいがする。

 

「いいからとっとと事情を話してくれ。皆を休ませてやりたい」

「おーけーおーけー。その前に紹介しておくわ。彼女は私の友達」

 

 白い肌の女性は、赤と青のオッドアイで俺たちを順番に見まわし、そしてぎこちなく、頭を下げた。先輩の任務はダッチハーバーに潜入し、北洋艦隊を交渉のテーブルにつける事。それならば確かに、深海棲艦の友人くらい出来ても不思議ではないが。

 

「ワタシは”深海大使”。任務は人間の文化と思考形態を学び、女王に伝えること」

 

 彼女は無表情に答える。その姿から、深海棲艦特有の人間や艦娘に対する強い憎しみは感じない。

 

「!!」

 

 何故か、電が小さく声を上げた。何かに気付いたのだろうか? 彼女の視線は大使を名乗る深海棲艦と、俺の間をせわしなく往復する。

 

「司令官さん。あの子の足、あの時のなのです」

 

 言われて初めて気づいた。深海大使を名乗る彼女の右足は、見覚えのある義足(・・・・・・・・)だった。俺たちが運び、六駆の皆が説得し、明石が必死になって取り付けた、俺たちの「初めての作戦」。

 

「ツダヒロム少佐と艦娘たち。あの時はお世話になった」

 

 息をのんだ。俺たちは彼女を知っている。俺がまだ艦隊に受け入れられる前に、六駆の皆が助けようとしたヲ級だ。

 

「いったいどういう事なんだ? 鶴の恩返しって事でもあるまい?」

 

 言ってから深海棲艦が人間の童話を知るわけがないと思い至るが、彼女は意外にも辞書を引くように概要を諳んじて見せた。

 

「……鶴の恩返し。鶴が人間に恩を返す内容の日本の民話。動物報恩譚の一つ」

 

 なるほど。彼女は人間を学ぶと言った。もしかしたらだが、その脳は巨大な記憶媒体のようなもので、それに体験した事の一切合切を記録して、女王とやらに提供するのが彼女の仕事なのかも知れない。

 

「津田君の仮説、当たってるわよ? この子は人間とコミュニケーションをとる能力に全振りしてるから、戦いには向かないわ。強い事は強いけど」

 

 また顔に出たのか、先輩に考えを読まれた。そうは言われても、深海棲艦を我が家にお迎えする俺や艦娘たちの心境を考えて頂きたい。

 

「困りますな大使閣下。今は停戦交渉を控えた重要な時なのですから」

 

 いつものべらんめぇ口調を封印して、綾郷大将が苦言する。この人もずっと板挟みだな。

 

「ワタシは人間と接触し、人間を知る為に戦う力を捨てた。女王にそれを望んだ。ツダヒロムはワタシの原点。会いに来ない理由が無い」

 

 彼女がそう言った瞬間。弛緩しかけていた空気が突然不穏になる。なんだなんだ?

 

「またなのあんた!?」

「提督、下がっていてちょうだい」

「ご主人様どいてそいつ●せない!」

 

 なんか数名が殺気立っているが、とりあえず先輩が冷静なのだから、すぐに血を見るようなことはないはずだ。俺は意を決して高速艇から埠頭に飛び降りる。

 

「ツダヒロム。そして艦娘たち。あの時のお礼を言わせて欲しい」

「俺はただ手配しただけだ。礼は彼女たちのシーマンシップに言ってくれ」

「しーまんしっぷ? 分からない。記憶した」

 

 どうやら後で調べるつもりのようだ。しかしこいつ、『鶴の恩返し』を知ってるのにシーマンシップを知らないとは、色々アンバランスだな。彼女も船の筈なんだが。

 

「さて津田君。『情けは人の為ならず』とは良く言ったものね。まあ普通に(たら)しただけかもしれないけど」

「何を言ってるんだ?」

「さぁねぇ。それより津田君。彼女が最初で最後のチャンスをくれるそうよ?」

 

 チャンス? どういう事だ? 先輩は余裕を崩さず、自慢の手品を大人に見せる小学生のように笑っている。

 

「ツダヒロム。あなたは敗残兵にも手を差し伸べる高潔な人物であり、将としても極めて有能。ワタシはあなたをサンプルとして欲している」

 

 サンプル、と聞いて艦娘たちがますます殺気立つ。

 

「提督、早く沈めてしまいましょう」

 

 足柄なんかいつにも増して血の気が多い。普段もうちょっと落ち着いてない?

 

「別にダッチハーバーに連れて行こうと言うわけではない。あなたの情報を記録したいだけ。ワタシの目の届かない、トラックに行かれては困る。観察ができない」

 

 戦術や運営の手腕ではなく、人柄を知りたいのか? 深海棲艦の考える事はやはりよく分からん。

 

「それはつまり、俺がここにいる事が、お前たちの利益になると言うことか?」

「それは違う」

 

 違うそうだ。確かに、彼女が俺を救ってくれるなどと、少々都合のいい想定だったが、もはやそれにすらすがってしまいたい状況でもある。

 

「ワタシの利益になる」

「……はい?」

 

 ちょっと何言ってるのか分かんない。何がしたいんだこの子は。

 

「ワタシ”たち”深海大使は、人間や艦娘の情報を持ち帰る役割がある。その一人として、ワタシはツダヒロムを選びたい」

 

 人間と艦娘を学び、主としてそれに近づきたいという事か? それは何故だ? 何が彼女たちをそうさせる? 第一、何で……。

 

「何で、俺なんだ?」

 

 深海大使は特に動揺した様子もなく、無表情で返事をする。抑揚が微塵もない、意味不明な返事を。

 

「……言ワセンナヨ恥ズカシイ」

 

 ふざけてんのかコラ。

 

「コバイツキが、理由を聞かれたらそう言っておけと教えてくれた」

 

 木葉(コバ)樹希(イツキ)先輩を見たら笑いをこらえている。なんなんだよ一体。

 混乱する俺をよそに、深海大使は話し続ける。

 

「私たちは、群体。ヒトへの恨みから生まれた。勝てば増え、負ければ皆滅ぶ」

 

 それは、自分達を生体兵器のようなものと認識しているのか? だが彼女は、深海棲艦たちは変わりたいと望んでいるという。

 

「女王は、海神の駒として戦い滅びるのを拒んだ。ワタシたちは、ヒトに擬態する事を望ぶ」

 

 人に擬態? それってまるで、艦娘じゃないか。

 深海大使は、口に出せない俺の考えを代弁するように、無機質に頷く。

 

「女王は、艦娘がうらやましくなった」

 

 艦娘たちの圧が強くなる。宿敵である深海棲艦が、自分達を羨ましいと言ったのだ。取って代わりたいという意思表示に受け取られかねない。

 こんなところで話すには、この話題は繊細過ぎる。だがもう聞いてしまわねば皆も納得しまい。意を決して口を開く。

 

「……それは、何故だ?」

 

 しかし、彼女は答えなかった。静かに首を振る。

 

「女王に聞くといい」

 

 有無を言わせぬ拒絶だった。しかし穏やかに見守る先輩が視界に入り、とりあえずの信頼を決めた。

 

「北洋艦隊は、あなたの更迭の撤回を外交ルートから要求する用意がある」

 

 現金な事に、艦娘たちの何人かが、ぱっと表情を明るくした。一方で綾郷さんの表情は、まずい事をしてくれたと語っている。ちょっと気の毒になってきた。

 

「そ、それは内政干渉では?」

 

 恐る恐る聞いたら、とんでもない返答が戻ってきた。

 

「ナイセイカンショウ? 記録した」

 

 おいおい、大丈夫かこの外交官。

 しょうがないわねと苦笑して、先輩が話を引き取る。笑いをかみ殺しつつ。

 

「私が翻訳するわね津田君。北洋艦隊は、人間を知りたい。そしてその中でも強い提督の情報が欲しいのよ。そのためなら多少強引な行動も辞さない。――あなたをここに引き留める事も含めてね」

「だから何でだ?」

「考えてごらんなさい? 今の彼女が海千山千の外務省の役人と意思疎通できると思う?」

 

 今までのポンコツなやりとりを思い出す。そりゃあ、無理だろうな。

 

「だから、人間の思考形態を学びたいの。できればなるべく頭のいい人。既にダッチハーバーでは法務官や学者先生が現地入りして交流を図ってるわ。で、ここでもそれをやりたいってわけ。そして、交流するなら強い方が良い。分かるわよね?」

 

 言外の問いかけに、俺は神妙に頷いた。

 散々回りくどい話を聞かされたが、先輩の翻訳はシンプルだった。それならば、俺のやるべきこともまたシンプルだ。つまり――。

 

「つまりあなたか私、どちらか勝った方を丹賑島(ここ)に残して行動を共にし、生態や思考形態を記録に収めたいというわけ」

 

 艦娘たちがざわつく。俺は大作戦が終わったばかりなのに、ずっと逃げていたことに対峙しなければならないらしい。この人、木葉(こば)樹希(いつき)提督に。

 

 俺がここに残る為には、まだ一度も勝てていない、雲の上の存在に勝たねばならないと言う事だ。

 

「勝つ? 勝つって、どうするんじゃ?」

 

 先輩を知らない浦風が、不安そうに問う。

 俺にとって最大の壁になった恩師は不敵に笑い、問うた。

 

「さあ津田君。今度はどんな勝負(レギュレーション)にしよっか?」

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