艦娘たちとの絆をかけた、提督二人の対決が始まります。
そしてついにイベントが始まりますね。私はと言えば、お迎えした大和を投入したくて演習に動員し、資源の減りに青ざめる毎日です。こんどこそ丙でいいから完走したいです。
皆様は次のイベントの目標は何ですか? 良かったら書いていってください。
Starring:提督
俺が、先輩と戦う? しかも負ければここを去らねばならない?
恥ずかしい事に、俺は与えられたチャンスに燃えるより、ぶち当たる壁への恐怖を感じた。
「簡単じゃないの提督! さっさと終わらせていらっしゃいよ」
「そうです! 多聞丸を超えるための最初の試練ですよ!」
ビスマルクが何故か自信満々に言い、飛龍も胸を張って追従をしてくれる。しかし前任時代を知っている顔ぶれは、どうにも不安そうだ。当然だ。
そしてこれは、皆とここにいる為には必要な試練になるが、同時に今俺ががけっぷちにいる証明でもある。
少し離れたところで、綾郷大将が苦虫を噛み潰したような顔で、一生懸命理不尽を飲み込もうとしていた。客観的に見て可哀想ではあるし、偉い人が考えた俺への仕打ちにも配慮はしてくれていたのだが、先ほどの苦痛を思うほど、素直に同情できない。まあ俺がこの人を再び信用するかどうかは、また考えよう。
「ご主人様!」
「提督!」
励ましなのか、呆けている俺への叱咤なのか。漣と大淀が俺を呼んだ。二人とも艦隊を四苦八苦しながら動かす俺を、背中越しに見ていてくれた艦娘でもある。だからこそ目の前の困難な状況を理解してくれている。
「さあどうする津田君?」
俺は瞑目する。どうするって? やる以外ないだろ。俺だって人並みのプライドはある。提督としての経験を積む中で、先輩との再戦を想定したアイデアも生まれていた。昔のようにはいかないつもりだ。
「やりますよ。それにこのままの状態で俺が続投しても、皆が納得しないでしょう?」
勝つしかない。負けられない戦いがある事を、
「演習室を使いましょう。大勢は入らないので演習の状況は講堂のスクリーンに流せるようにしておきます」
作戦を終えたばかりの艦娘たちには申し訳ないが、今の状況だと休むに休めんだろうからな。
覚悟を決めた俺だが、ひとつだけ確かめねばならない事があった。何も言わずなりゆきを見守っている赤城を見やる。彼女もきっと、動揺をかくしてくれているのだと思う。正直こいつが取り乱してたら、俺も気持ちを立て直すのに難儀したろう。
「赤城、ひとつだけ聞いておきたい」
「な、なんでしょうか?」
彼女は気まずそうに咳払いをした後、汚れた衣装を手で払い、俺に向き直る。妙に対応に身が入ってるな。
「あのさ、先輩の弱点って、何かないかな?」
全員が
「まあテートクはこう言う人ネ」
「うん、まあ良いんじゃないか」
金剛と日向が謎に頷きあっている。失敬な。こっちも必死なんだぞ?
とは言え赤城をからかって、多少緊張も解けた。後は、勝ってくるだけだ。
「じゃあ、ちょいと行ってくるわ」
歩き出す俺の襟首をがしっと掴んだのは、赤城だった。
「ご一緒しましょう。あなただけだと危なっかしいです」
不機嫌な赤城がそんな事を言う。彼女には作戦計画のチェックをお願いしたが、それは現場の視点を入れるためでもあった。俺では見えない事が彼女には見える、かも知れない。
「ご主人様、赤城が適任です!」
「そうね。赤城さんにお願いしなさい」
漣まで同席を勧めてきて、加賀もそれに賛同した。
強がって肩をすくめて見せたが、内心は正直、ちょっとだけ――ちょっとだけだぞ?――俺一人じゃなくて良かったとも思っていた。
俺は頷き、赤城と共に演習室に向かう。
「良いですか提督」
加賀が俺を呼び止めた。普段と同じ無機質な声。だが断固とした意思が込められていた。
「赤城さんが横にいる以上。あなたの勝利は絶対です。それでも負けた場合、それは」
「それは何だ?」
「……全部あなたのせいです」
結論それかよ!?
そう言えばこいつは、鶴姉妹へのフォローもこんなだったな。彼女なりに気遣ってくれてるのは分かるんだが、その優しさは分かりにく過ぎるぞ加賀。
俺は不安そうな艦娘たちの視線を受け、演習室に向かう。皆の思いは様々だろう。戸惑う者、先輩の勝利を望む者、俺に勝ってほしい者もいるだろう。多分。
「レギュレーションだけど、丹賑島の艦娘をデータにするとあなたが有利。かと言って同じ編成でやりあうと私が圧倒的に有利だから、無改造の艦娘データを使って艦隊を組むのはどうかしら?」
「ああ、それで良いよ」
先輩、そう言うと思ったぜ。俺は内心で安堵する。同じ条件で戦うなら先輩の独壇場。だが編成の段階で裁量をもらえるなら、タネを仕込む余地がある。
「じゃあ20分だけ、編成を決める時間を設けるのでいいか?」
「ええ、問題ないわ。制限はそうねぇ。
採用されたのは養成機関では割とメジャーな、総トン数――軍艦の重さを手持ちポイントとして、戦力を購入するルールだ。
戦艦〔大和〕は戦闘力は最強でも64,000トンある。これは単純計算で駆逐艦〔吹雪〕の38隻分である。つまり〔大和〕一隻で一個艦隊分の重さがあると言う事だ。電子上の演習は、この規模の艦隊が入り乱れて戦う事になる。
空母も戦艦も火力の塊なのだが、大物ばかり揃えては、水雷戦隊の夜間突撃や、忍び寄ってきた潜水艦に魚雷攻撃で詰む。艦隊はバランスが良くなければならない。そしてそれこそが提督の戦術で差がつくポイントであり、それを演習で鍛えるのが、このレギュレーションの目的である。
重量縛りがある以上。どーんと〔大和〕型無双、と言う訳にはいかない。〔金剛〕型がベストなチョイスだろう。正規空母ばかりだと被弾時の戦力喪失が激しいので、リスク分散で軽空母も混ぜておこう。後は〔秋月〕型で護衛をしつつ、重巡などもバランスよく取り揃えていく。
もちろん伝家の宝刀潜水艦もだ。飛龍は俺が潜水艦を使うと嬉しそうにする。多聞丸は潜水艦乗員の教官やってたからみたいだが、俺としてはただ使いやすいから使ってるだけだ。相手を罠にはめるには、結局潜水艦が良い。
「20分経ったわ」
「こっちは準備出来たぜ?」
双方同時にマウスを操作する手が止まった。いよいよ、雌雄を決する時が来たわけだ。
「提督、あまり入れ込み過ぎませんよう。いつものようにやれば必ず勝てます」
赤城が忠告してくれる。そんなに力んでいるように見えたかな。俺は大丈夫なんだけどな。
「心配するな。前みたいに命と引き換えに勝つ、なんて思ってねーよ。ただ俺がここに残りたいから受けたケンカだ。負けるのは死ぬほど嫌だが、その場合もお前らには先輩がいるから安心してトラックへ痛てててて!」
ものすごい勢いで耳を引っ張られた。何でだよ?
「そんな事、ご自分でお考え下さい。あと全く大丈夫ではないので頭を冷やしますように」
ぴしゃりと言い放ち、赤城は会話を打ち切る。俺も怖いのでそれ以上尋ねなかった。
本当は分かってるんだよ。そう言う口を利いてしまう、どうしようもない自信の無さはいい加減にしないとってな。皆の気持ちに応えられるかどうかはきっと、それを
こう言うときの彼女にはちゃんと怒るだけの理由があるのだが、それを確かめるだけの時間もあるまい。
覚悟を決めて上げた視線の先、俺たちにニヤニヤ笑いを向けてくる先輩がいた。……んだよ?