まあ情報が出そろうまではお迎えしたい艦娘を考えながら、ニマニマしています。誰をお迎えするかでこの小説の内容も変わってくる可能性w
既にイベント突入した猛者の方、良かったら誰をお迎えしたか書いていってくだされヾ(*´∀`*)ノ
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Starring:高雄
講堂を埋め尽くす人も、艦娘も。スクリーンに映し出された二人の提督を凝視していた。無言で端末を操作している師弟は、もうすぐ雌雄を決する事になる。そして泊地の未来も。
人間の隊員たちは余裕がある。提督と個人的なやり取りがある役職とは限らないし、前任も現職も仕事ぶりは好評だから、普通に考えればどちらでも構わないと言うのが本音だろう。せいぜい面白い見世物扱いだ。だが艦娘はそうはいかない。艦娘と提督は対になる存在。一人でも出会えれば、どんな苦境も共に乗り越えられる。艦娘が最も欲する存在を、彼女たちは二人も持ってしまった。奇跡に等しい幸運が、今まさに自分たちを苦しめている。
どちらかが勝てば、負けた方はここを去る。去った者はもう「私達の提督」ではない。
より厳しい状況にある鎮守府があるのも解っている。自分達の悩みは贅沢かもしれないが。だからと言って苦しみが消える事はない。
「それで? 決心はついたの?」
愛宕に声をかけられた時、高雄は親指の爪を噛みかけている事に気付いた。はしたない癖がついたら大変だと、腕を胸の前に組み直す。信じている。そして心配もしていない。だが未来への不安が態度に出てしまう。動揺を悟らせない事は、あの楽しくもしょうもないゲーム勝負で、学んだはずなのに。
「えっ? 何の話?」
自分は相当に思い詰めた顔をしていたらしい。しかし痛みは伴っていても、結論を出せないわけではない。愛宕は肩透かしを食わされたように首を傾げた。
「何って、どっちの提督を選ぶかだよ。勝った方にただついて行くだけなんて、するつもりねーんだろ?」
「姉さんがどちらを選んでも、協力するつもりよ」
摩耶ばかりか普段冷静な鳥海までもが、彼女なりの熱量を以て助力を申し出てくる。木葉提督が敗れた場合、それでも高雄が彼女について行きたいと望んだなら、あらゆる手を尽くすと妹たちは言ってくれている。軍の組織を思えば相当な無茶だし、それを通したとすれば最悪姉妹の別れになるのだが、三人の目に迷いはない。
艦娘になって本当に良かった。不謹慎にも考えてしまった。そう言えば自分も、この景色を守ろうとして散々暴走したのだったな。
「別にどうもしないわよ? この演習の結果を受け入れるわ」
「え! それでいいのかよ?」
高雄は苦笑する。これは何度も何度も自分に問い続け、そして決意していたこと。自分は妹たちや泊地の仲間たちを守ると。
もし大切なものがひとつだけなら、迷いなく全てを放り出していただろう。しかしあらゆるものを投げうって木葉提督の元に走るのには、高雄にとって守るものが多すぎた。あれもこれもは無理。だから自分からは選ばない。勝った提督の指揮下で、今は存分に腕を振るう。そう、今は。
「でも戦いが終わった後は好きにやる事にします。津田提督が勝ったとしても、彼は私に対してそれなりの負い目を感じるでしょうから、大喜びで木葉提督を呼び戻す知恵を貸してくれるかも」
どうしても駄目ならとっとと退官してもらって、自分が養ってしまおう。戦争が終わった後どうなっているか。それは自分には見当もつかない。でも”その先”を見て良いのなら。皆で過ごす未来があるのなら、自分はそのためにずるい艦娘になってみせよう。
「あなた、変わったわね」
愛宕の言葉は驚きと言うより、最近の彼女の総括だったのではないだろうか。摩耶と鳥海も、愛宕の言葉に異論は無いようだ。
「でも姉さん。いまの口ぶりだと津田司令官が勝つ前提みたい」
鳥海が言う。不思議そうに。高雄もまた、そう言えばと唇に指を当てた。
「そう言えばそうね。でも多分、そうなるわ」
これには妹たちも、断言されて驚いたようだ。でも口にした時点で、何となくは確信に変わっていた。
「今まで津田提督とさんざんやり合って思ったけど、あの人実戦だと妙な遠慮があるもの」
「遠慮? 本気出してないって事か?」
高雄は頷く。作戦前に聞いた、津田宏武と言う男性のトラウマ。それを聞いた時妙な納得を感じた。
「木葉提督の読みは確かに規格外だけど、戦い方自体は奇をてらったりしないわ。でも津田提督は違います」
そりゃあなぁ、と摩耶が苦笑する。「虚を実と見せ、実を虚と見せ」と言えばかっこよく聞こえるが、あれの本質は小学生の悪戯だ。相手の思考の外をついて一本取る。
「でも昨日までの戦いって発想は凄いけど、穏便すぎると思わない?」
愛宕はそれの何が悪いのか? とでも言うように考え込む。鳥海が何かに気付き、高雄を見る。
「司令官さんは私たちに無理をさせる事を、極端に嫌っているわ」
そう、彼は無理無謀を敬遠し、撤退のタイミングは早い。一面でそれは美徳だが、軍隊である以上、「提督」は艦娘を死地に送る役割も演じなければならない。それは恐れるのは、彼のトラウマからくるもの。しかしだ――。
「硫黄島作戦を皆で経験して、もし津田提督が”なりふり構わない戦い方”を解禁していたとしたら?」
「はーん、そいつは面白れぇなぁ」
摩耶が拳で掌を叩く。実際楽しそうだ。
「でもまだ分からないわ。鍵は津田提督のリミッターが外れているか。そうでなければこの戦いで外れるかどうかね」
妹たちが息をのむ。だとしたらこの図上演習は、とても激戦になる。そして、とても重要なものになるだろう。
「それで、私達の未来が変わるのね」
鳥海がスクリーンで準備をする二人の提督に目を向ける。
「でもね。悪い事にはならないと思うわよ?」
高雄は自信満々に言いきった。それは強がりではないつもりだ。
「あら、何でかしら?」
「特に根拠はないけどね。あの二人ならこんな状況も何とかしてくれると思わない?」
摩耶と鳥海が顔を見合わせ、くすりと笑う。確かにそうだと思ったのだろう。
「だからみんな安心して良いわよ。木葉提督も、津田提督も、二人とも
「姉さん、それは……」
気が付いたら鳥海が苦笑していた。摩耶はまずいものを見たとばかり頬をかいている。
「高雄。『泊地』が『私』の言い換えになってるわよ?」
「っ?」
まったくその意図は無かったのだが、愛宕の指摘に変な声が出てしまった。
「高雄たちも罪よねぇ。提督を侍らせる、魔性の艦娘を目指すのかしら?」
愛宕が苦笑する。別にそのような下世話な話はしていない。自分は泊地の未来の事を考えているのだ。ただ戦争が終わった後、提督たちと姉妹と皆で楽しく暮らせたら。そんな夢があってもいいではないか(それにSE●A
のゲームもあれば最高だが)。
「ま、頑張ってくれよな。どう転んでもあたしは姉貴の味方だぜ?」
「あら、摩耶の方はどうなのかしら?」
「まーな、そいつは状況次第なんじゃね? お前はどうなんだよ?」
「そうねぇ」
ふざけ合う摩耶と鳥海を見ながら思う。事態がどう転ぼうと、一番大切なものなど決まっている。それだけは二度と手放さないつもりだ。三度目はもうない。だがいかんせん気付いたのは、自分と言う艦娘は、どうやら存外と欲張りらしいと言う事なのだ。
摩耶と鳥海、それを朗らかな笑顔で見つめる愛宕を見やる。
さあ、投げられた賽を見届けて、未来を確定させよう。そして出た目を受け入れ、立ち回ろう。賢く、ずるく、そして真っすぐに。
高雄はスクリーンを見上げ、これから始まる決戦の舞台を見つめた。