応援してる絵師さんが同人デビューするので、本当は駆けつけたかったのですが無念……。
まあ、体力とか予算とか、使えるリソースにも限りがありますしね。
皆さまは師走のご予定、何かありますか? よかったらコメントで教えてくださいな(`・ω・´)ゞ
●丹賑島泊地 演習室
Starring:提督
空母機動部隊同士の戦いは、俺が思うに西部劇のガンマンのそれに似ている。とにかく先手を打つ事が第一。なぜなら攻撃を受けた側は、反撃は出来ない。反撃を試みようとしたときにはすでに倒れているからだ。
この法則はマリアナで米海軍がチートじみた防空システムを用いて、先んじて攻撃を行った大鳳や瑞鶴らを返り討ちにするまで続くわけだが。
でもって何を以て先手を取るかと言うと、索敵の一言に限る。早撃ちを繰り出すためには、まず狙うべき”的”を見つけなければならない。勝負は偵察機の的確な運用だ。そして先輩は非常に勘が良く、隙のない索敵網を敷いてくる。
長々と語ったが、要は正攻法で木葉樹希に勝つのは難しいと言う事だ。だから今回も奇策を使う。
開始が告げられ、巨大な盤上に、様々な情報が映し出される。盤、とは様々な「状況」を映し出す為の長方形の大きなテーブルである。丸ごと液晶画面になっていて、俺たち海軍士官はそれを覗き込みながらあれこれ議論するわけだ。
そして俺は、長方形の短辺に位置取って、反対側の先輩と対峙している。
表示されるのは俺の情報だけで、先輩がどのような戦力で、どのように艦隊を動かしているかは分からない。それは当然、向こうも同じだが、講堂で状況を見守る艦娘たちには全ての情報が開示され、スクリーンに映されている。俺にしてみれば良い感じにプレッシャーだ。
「ふむ……」
俺の後ろからディスプレイを覗き込んだ赤城が、俺の考えを読みかねたのか、疑問の声を漏らす。出会った頃ならこの作戦を無茶苦茶だと責めたろうが、「何かある」と思ってもらえる程度には信頼関係が出来たと言う事だろう。
俺は唇に人差し指の手を当て、対峙する先輩に見えないようにちょっとしたハンドサインを送る。彼女はそれに納得したのか、これまた先輩に聞こえないように「了解です」とつぶやいた。
赤城が何に驚いたかと言うと、俺の艦隊は盤上に配置されると、即座に反転。戦場から遠ざかったからだ。これは奇策であるが、ただ奇を
俺が後方に反転すれば、先輩の索敵の裏をかく事ができる。俺は突っ込んでくる敵が、索敵網に飛び込んでくるのを待つだけでいい。敵艦隊の予想航路に偵察機を放ち、発見次第全力攻撃を仕掛ける。同じ条件の縛りで戦っているので、戦力に開きはない。仮にこちらの攻撃地点を割り出されても、先手さえ取ってしまえば、力押しで防空網は突破できる。やれる! そう思った時。
「ねえ、津田君」
不意に。先輩がつぶやいた。勝ち誇るのでもない。失望でもない。ただつまらなさそうに。
「バック&ブロウ。ドイツ軍が東部戦線で同じような作戦をやってるわね。陸軍の作戦を海軍でやっちゃうのはとてもあなたらしい発想だけど、もうひとひねり欲しかったわね」
タッチパネルを操作する手が止まる。赤城が息をのむのが、背中越しに伝わる。
「ほら、顔に出すのは宜しくないわね。まだ勝負は始まったばかりよ?」
「なんで……」
情けない事に、反射的に聞いてしまう。ここまで簡単に作戦を言い当てられた事など無かった。これが、本気を出した木葉樹希だってのか。
「私ね。分かっちゃうのよ。相手の意図とか戦術とか。本気の津田君なら読ませないかもって、ちょっと期待したんだけどね」
先輩の笑いは「不敵」と言うより「挑発」だった。「あなたはこんなものじゃないわよね?」とばかりに。もちろんここで諦めるつもりはない。さっきからの動揺は、半分は本当。だがもう半分は完全にブラフである。ここまであっさりと読まれるとは思ってなかったが、さらにもう一段、俺は奇策を用意していた。
とは言え多分これも破られる。本命は、第三の矢だ。俺が先輩を下す為には、彼女の注意を、そこからずらす必要がある。簡単な事ではないが、やって見せるつもりだ。
「そうそう津田君」
先輩はにっこりと口角を上げ、微笑する。いつもならここで俺をおちょくって挑発し、ペースを乱す手に出る。だが俺も、図上演習で負け続けた頃とは違う。実戦も経験したし、何より覚悟が違う、俺は椅子の背を傾け、余裕ぶってふんぞり返った。これも演技だ、彼女がそれを喝破してきたら、今度は動揺する演技を見せる。このくらいで油断してはくれまいが、布石にはなる。
軍帽で顔をぱたぱたと扇ぎ、先輩は言う。刺激的で致命的な一言を。
「東側の小島。大型艦を隠すにはちょっと小さいわね」
心臓が跳ね上がるのを感じた。そしてもちろんこれは演技ではない。なぜなら――。
「そこに潜水母艦を横付けして、伏兵に置く潜水艦を待機させたりしたら、うっかり虚を突かれそうね」
俺は、生唾を飲み込む。後ろの赤城はどうだろうか。俺の動揺を悟られただろうか。そして先輩は優雅にペットボトルの紅茶に口をつける。俺はと言えば、もう口の中がカラカラだ。そして、とどめの一撃が俺の心臓に突き立てられた。
「本命の三本目の矢は何かしらね? 楽しみにしているわ」
俺は、木葉樹希と言う提督を心の底から恐怖した。