今回も陽炎のお話です。
「自分の事を嫌ってた女の子が、何かをきっかけに認識を改める」
それ書くためにラブコメ展開やってるようなもんです(`・ω・´)シャキーン
あと浦風提督の皆さま、彼女の話もちゃんと書きますので、今しばらくお待ちください。( TДT)ゴメンヨー
Starring:陽炎
そもそも。
駆逐艦陽炎は新任の司令官を信用していない。これは資質云々ではなく直観に類する話である。尊大ぶった話し方に問題は感じないが、その裏に隠れた
それは好きにすればいい。でも司令官が軟弱なのはごめんだ。
最初の出撃。彼は漂流中の深海棲艦を救助すると言い出した。悪辣な物量作戦で、多くの
『ねえ、良いのかしら?』
陽炎の問いに、子日が力強く言い切った。
『良いと思うよ!』
飛鷹さんと隼鷹さんまでもが、悟ったように首肯する。
『ああ。良いな』
『ええ。良いんじゃないかしら』
何なのだろう。得体のしれない何かを感じた。その翌日から、六駆の四人が執務室に入り浸るようになったのも。いつの間にか赤城さんと楽しそうに憎まれ口を叩き合うようになったのも。
何なのだろう。あれは。
正体の知れない異物ほど気持ちの悪いものは無い。それは艦娘も人間も同じわけで。天龍さんの件も、首を傾げたまま彼の敷いたレールに乗らざるを得なかった。本当に何なのだろう。
そんな思いがやっと消化されたのは、一ヶ月前。
「あ、陽炎姉さん!」
その日陽炎は、小鍋を抱えて嬉しそうに歩く妹、浦風にあいさつされた。彼女はぱっと華やいだ笑顔を浮かべると、陽炎に向けてぶんぶんと手を振った。
「鳳翔さんに教わって肉じゃがを作ってみたんじゃ。後で姉さんのところにも差し入れるけぇ」
パカッと外された鍋から漂ってくる
「おいしそうね。でもそんないっぱい豚肉を用意するの大変だったんじゃない?」
何しろここは孤島。鶏はともかく、豚の飼育には限界があるし、牛肉に至っては
しかし浦風はちちちと唇を鳴らし、人差し指を振る。
「肉じゃがは鶏肉で作っても美味しんよ。今朝基地の人が何匹か絞めとったから、作った肉じゃがを差し入れる条件でいくつか分けてもらってきたんじゃ。」
なるほど、我が妹ながらちゃっかりしている。そう思ったら余計な事を言ってしまった。
「へぇ、あんたは良い奥さんになるわ」
ちょっとした冷やかしだったのだが、何故か彼女は分かりやすいまでに赤面し、もじもじと肩を揺らした。
「ほんま? ほんまにそう見える?」
「え? そう思うけど?」
浦風がちらちら伺うのは、中央棟。そこに艦娘の用がある場所と言えば、司令官の執務室がまず浮かぶ。あーはいはいそう言う事ねと、色恋に疎い陽炎でも一発で分かった。何しろ浦風の顔は、秋雲が良く描いている”らぶこめ”なる女の子の絵と、同じ目をしていた。なんでも恋するとこうなるらしい。
「きっと喜んでくれるわよ。お姉ちゃんが保証する」
敢えて主語を告げずに励ますと、浦風は乙女な表情なまま頷き。小鍋を抱えた。
「姉さん、ありがとう」
浦風を見送った後、陽炎はひとつの決意をする。
今まで津田少佐の事は自分の問題ではないと放置してきた。しかし妹の事となれば話は別である。
「あの男が浦風に相応しいか、お姉ちゃんが見極めてあげる!」
変な使命感に駆られ、陽炎は強く拳を握った。
そして浦風が帰る頃を見計らって、陽炎は突撃を敢行した。冷房代の節約なのか、執務室の窓もドアも全開である。何やら言い合う声が聞こえて、陽炎は反射的にドアの陰に身を引っ込めた。
「でもなぁ。お前を連れて行くのもなぁ」
「赤城さんが演習なんだから仕方が無いと思われです。漣は
「厨房? キッチンは関係ないだろ? そもそもレスバをしに行くわけじゃないんだが?」
良く分からないやりとりである。漣が厨房にいないと、れすばなる行為ができないらしい。彼女は津田少佐の初期艦だから、彼にべったりな艦娘の筆頭だ。
「なになに? どうしたの?」
野次馬を装って部屋に入ってみた。実際興味津々だし、聞き耳を立てるより
「では陽炎ちゃんに行ってもらいましょう!」
良く分からないが、自分は津田少佐と二人、何処かに送り込まれるらしい。
「はあ? それこそ不味いだろ」
ところか少佐の方は、乗り気で無いらしい。漣に顔をと近づけてぼそぼそと小声で抗議を始める。
「あいつに腹芸とか無理だろ? 挑発に乗ったりしたら厄介だぞ?」
「陽炎ちゃんに腹芸なんて必要ないですぞ? そこらのモンカスなんて一睨みでガクブルしちゃいますヨ」
「威圧してどーすんだよ?」
何かよく分からないが、自分がディスられているのは分かった。普通にいらっとする。
しかし同時に、チャンスと感じた。こそこそと隠れてやっている仕事を覗き見れば、彼の本質が見えるかもしれない。海戦の敗北も不幸なケッコンも、防ぐ方法はひとつ。的確な情報収集だ。
「まあいいじゃないですか。陽炎ちゃんだってご主人様のかっこいいところを見ればメロメロですって」
「なわけねーだろ。だいたいあの仕事の何処がカッコいいんだよ?」
ぶーたれる提督に、何故か漣はきょとんとした。
「え? かっこいいですけど?」
真剣に首をひねる津田少佐。本当に分からない。何の任務なんだろう。良からぬことをやっていないだろうか。だんだんと興味が首をもたげてくる。
「まあいいわ。少佐と一緒にどこかに行けばいいんでしょ? そのくらい簡単よ」
気軽に言ったその一言が、色々な意味で転機になる。そんな事はこの時点の彼女に分かるはずもなく。
「分かった。陽炎、ついてきてくれ。帰ったら何か奢ろう」
こうして、「津田少佐が妹に相応しいか調査するぞ大作戦」は開始されたのだった。