【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。 作:速射弾
平気で生き物を斬り殺せる人間は特別な才能を持っている。
良心の呵責、骨肉を断ち切る痛々しい感触、生命の消失。
この世に新たに生を受けて22年。そんな当たり前に感じる筈の気持ち悪さは、とうの昔にどうでも良くなっていた。
私は既に今まで生きてきた中で殺しすぎていた。
食事、自衛、趣味、快楽、そのような理由で死体を積み上げる人生。
だが全く恥じる気は起きない。
何故なら殺す相手は人を襲う月から侵略してきたモンスター達だからだ。
私は自らが磨き上げた技に酔いしれた。
如何に美しく野生的に見えるかを意識する余裕すらある。
目の前にいた竜種の首は既に、己が持つ銀に輝く鉄の塊でバラバラに引き裂かれた後だった。
「おおおお!! すげー! こんなに戦えるならなんで今まで見せなかったんだよ!」
仲間達が色めき立つ。誰かに褒められるのは良い気分だ。
生き物を殺した事に嫌悪感を抱く者はおらず、それは一般的な感覚として幅広く浸透していた。
「グレンデルが森から出てきた時は俺達殺されるかもと焦ったけど、まさかこんなに素早く倒すなんてな!」
この集まりの中に戦闘技能を習得している人間は少ない。
凄い凄いと持ち上げる仲間達に対して、私は謙虚に言った。
「これでも一応メンバーの年齢的には保護者枠なんだ、普段目立った事をしない代わりにこういう時ぐらい真面目にやるよ」
しかし仲間の一人が私に突っかかって来る。
最近私達の集まりに参加する事になった少し若さを抑えきれない青年だ。
彼はこの集まりの中で私の他に戦う技能を持った人材であり、新入りにも関わらずメンバー達から信頼を獲得している凄腕の戦闘者だった。
「せっかくの楽しみを取るな、次は俺がやるからくれぐれも手を出すんじゃねぇぞ」
「いやぁごめんごめん、でも一瞬の油断が命取りになる事もあるだろ? ブレスを吐かれたりする前にやっときたかったんだ」
そう言い訳する私に彼は埋め合わせとして模擬戦を所望した。どうやら同じ武器を使う者同士という事も相まって目をつけられたらしい。
まあ良いけど飯食ってからにしようぜ、そう言って私は倒したグレンデルと呼ばれる小型の竜種の皮を剥ぎ取り、血を抜いて肉を切り分ける。
「おいおい、これ食うのかよ……マジか?」
突っかかってきていた彼を含め、この場に居るメンバー全員がどことなく引いていた。
タレとか塩胡椒かけて炭火で焼いたら結構イケるから、と説得してバーベキューコンロをセッティングする。
そうして我々、街の清掃活動サークルの夏休みキャンプ初日は始まった。
早速私達は、実質貸し切り状態の浜辺でBBQを開始したのだった。
魔法で着火されて燃えた炭で野菜と肉が焼ける音がする。
用意された三つのバーベキューコンロは既に良い香りを出して私達を誘っていた。
現地調達した肉は中々評判が良く、お嬢様育ちの女の子でも喜んで食べている。
モンスターの肉はまあいわゆるジビエだが、物によっては市販の肉より美味くて食べやすい場合もある。
今日たまたま狩ったグレンデルなんかは、味が普通の肉に近いので、部位によっては硬い事もあるがかなりイケる部類なのだ。
野生味溢れる飯を食べてお腹一杯になった我々は、沈む夕日を見ながら夢を語り合い青春していた。
日が落ちる前にテントを張り花火の準備をする。
先程私に突っかかってきた青年は、模擬戦の事も忘れて大型花火を持って駆け回る事に夢中になり、メンバー達を追いかけ回す。
お嬢様育ちの女の子も普段やった経験が無いアウトドアを夢中で楽しみ、花火を持って駆け回っていた。
幸い夜間はモンスターも活動的では無いので見張りをする必要は薄い、私も休憩に入るとしよう。
そうして私達の浜辺キャンプ一日目が終了する。
そういえば今までの人生、こういう集まりに参加してワイワイ楽しく過ごす事は殆どやってこなかったなと思い返す。
少しモンスター狩りに精を出しすぎたかなと自省する私だった。
翌日早い内から起こされた私は、青年に模擬戦を要求されていた。
(まあ忘れてるわけないよなぁ……)
そう思いながら了承し両者は得物を構える。
互いの武器は同じ種類でも構えはまるで違う。
そこにお互いの研鑽の跡が出てくる。二人とも型がほぼ独学に近いが故にどう切り込んでくるのかわからない。
彼はこちらに接近し身体を瞬時に回転させ、裏拳を放つ要領で剣先を獣の爪のように薙ぐ。
私はその刃を自分の剣をぶつけて受け流し、その勢いで一回転してカウンターを叩き込んだ。
彼の実力ならこの程度の攻撃は対処してくるだろう。
予想は当たり、僅かに飛び退いて刃をかわした彼は突きを放ってくる。
お互い変則的な攻撃の応酬だったが、それが通る事はなかった。
私より5歳年下のこの青年は血気盛んで、常に自分の力を示していたい性格だった。
そしてそれに見合う実力の持ち主でもある。私達は何度も刃をぶつけ合い弾き合う。
これ程の才能があるなら、いずれ私の腕は超えられてしまうかもしれない。
だが、まだ彼より私の方が強かった。
彼は埒があかないと思ったのか、距離を取って態勢を立て直し息を吐く。
「ハァ……ハァ……。まさかこんな所にお前のような使い手がいるとは思わなかったぜ……」
「私も結構子供の頃からモンスター退治してたからね、仮に相手がプロの傭兵だとしても一対一では負ける気はしないよ」
しばらくの間、彼の気がすむまで打ち合い模擬戦は終了した。
水が出る魔法で汗を洗い流した私達は、みんなが起きて来る前に着替えて、朝食を用意する事にしたのだった。
噛ませ犬のような行動を取る彼だったが、私を認めたのか無駄に噛み付く事は無くなり、好きな映画の話で盛り上がったり戦いについての話を語り合う中でいつのまにか仲良くなっていた。
練習がてら模擬戦をしてお互いの実力を認め合い仲良くなる。
このような事はモンスター退治をする人間の間では稀によくある事だった。
FF8熱が燃え上がったので初投稿です。