【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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間話 キスティス・トゥリープ

 

バラムガーデン2F教室前の廊下に集められたSeeD候補生達はソワソワと落ち着きの無さを隠せない様子だった。

私もその内の1人だ。

エレベーターが開き、歩いてきたガーデンの教師が告げる。

 

 

「これからSeeD試験結果を発表する。名前を順に挙げていくので呼ばれた生徒はそのまま学園長室に行きなさい、では……キスティス・トゥリープ!」

 

名前を呼ばれた私は喜びを噛み締め学園長室に向かって歩きだした。

ここで嬉しさのあまり走ってしまったら速度オーバーで減点を受けるという罠が待ち構えている。

私はその事を知っていた。

 

 

 

 

それが数日前の出来事。

ガーデンの誇る傭兵部隊SeeDになったからといってすぐ任務を任されるわけではない。

要請が来るまでは基本的に自由に過ごせる待機時間だった。

 

最近は試験のせいで忙しくて、暇な時間がなかった私は息抜きのため久々にバラムに来ていた。

 

適当にショッピングでもしてついでに備品を買い足しておこうかなと考えながら歩いていると、後ろの方で「そうだ! カードでナンパしよう!」といういかにも頭の悪い発言が聞こえた。

 

 

(そういう事は声に出さないほうがいいんじゃない?)

 

呆れて思わず振り向いて視線を向けると、そこには私の方に向かって何やら緊張した様子で歩いてくる男性がいる。

 

 

(え、まさか私をナンパするつもり……?)

 

どうやら本当にそのつもりだったようで、男性は私に声をかけてくる。

 

 

「君が一番カード強そうだね。私と勝負がしたくな〜る、したくな〜る……ダメ?」

 

どんな風にお誘いを受けるのかと思ったら、聞いた事もないようなタイプの不可思議な誘い言葉が出てきた。

しかも指をクルクル回しながら……。

緊張した様子とは裏腹に予想外すぎる強気な誘い文句は、呆れを通り越し私の笑いのツボを押した。

 

 

不安そうにしているナンパ男は一試合だけなら良いわよ。という私の返事に喜びを隠せない様子だった。

良い店があるからそこでやろうと上機嫌で誘ってくる男に名前を聞く。

 

 

「あ、自己紹介がまだだったね、私はクレイズ・オクトーといいます。ウィンヒルっていうガルバディア大陸南方の田舎出身、多分、歳は私の方が上だけど敬語は必要無いよ、よろしく!」

 

嬉しそうに自己紹介する彼をよく見ると田舎者とは思えない程綺麗な顔をしていたし服装も垢抜けているように見えた。

ウィンヒル……申し訳ないけどあまり聞き覚えがない。

 

 

「ご紹介どうもありがとう、私はバラムガーデンに在籍しているキスティス・トゥリープよ。まだカードを始めて間もないから貴方の期待に沿えるかわからないけどね」

 

まあ喜ぶ顔をガッカリさせるのも可哀想だし声をかけてきた勇気に免じて1試合ぐらいは付き合ってあげる事にする。

 

 

 

彼が言うおすすめの喫茶店に行き、備え付けてあるカードゲーム用のプレイボードを用意しながら飲み物を注文した。

特殊なコーティングが施されているおかげで何か飲みながらやっても問題無いのがカードゲームの良い所だった。

少し行儀は悪いけどね……。

 

 

「ぐぬぬぬぬ……」

 

5分後、そこには唸りながら私の指定したカードを献上してくる彼の姿があった。

 

 

「うふふ……。どうやら貴方の見立ては当たってたようね?」

 

「ぐぬぬ……あっ、そうだ……今のはお腹が空いて力が出なかったんだ。食べてからもう一回やらない? マスター! バラムのスペシャルランチを1つ!」

 

明らかに今思いついた言い訳に笑いながら私もついでにお昼を注文する事にする。

私も同じので良いかな。

 

 

「それにしても始めたてとは思えないね、才能あると思うよ。」

 

「貴方が弱すぎるだけかもしれないわよ?」

 

「こう見えてカードはまあまあやってるから自信があったんだ。だけどマグレだとしても初心者に負けるとはね」

 

「ふふっまだ言ってる。もうひと勝負してはっきりさせてあげようかしら?」

 

次の試合が始まるまでの間お互いの話をする。

私がSeeD試験に合格した話をすると凄く驚いていた。

ここまで素直な尊敬の眼差しを感じると流石に悪い気はしない。

 

クレイズの話も聞いてみる。

彼は意外にもモンスター退治の傍らに雑誌のライターをしているらしい。

自己紹介の時に渡すのを忘れてた。と名刺をくれた。

バラムガーデンの生徒と同じようにG.F.もジャンクションしてるとか。

 

 

 

彼から聞く戦いとG.F.に関する話は意外にも参考になる事が多く、SeeDになった私にとって興味深い内容だった。

なんと3歳の頃からG.F.を使っているという。

今の歳は幾つなのか聞いたら私よりも5つ上だった。

戦いとG.F.に関して私よりもベテランだろうとは思っていたがそこまでとは意外な事実だ。

3歳でG.F.を取得して5歳で実戦を覚え始めた……って、本当?

 

 

 

どうやら彼は炎の洞窟に行こうとしていたらしい。

ひとりで行く気だったけどイフリートの弱点を突けるG.F.を持っているガーデン関係者に手伝って貰えるなら心強いとか。

 

 

(ナンパした歳下の女の子に頼むなんてプライド無いのかしら?)

 

 

「はぁ……まだ会って数時間だけど……。貴方ひとりで炎の洞窟に行ったら帰って来れなさそうだから手伝ってあげる。SeeDがこんな頼み受ける事なんて普通は無いんだから、特別よ?」

 

これがある意味SeeDになってからの初仕事という事になるのかもしれない。

そして忘れかけていた彼のカードリベンジは先延ばしになった。

 

 

 

 

「貴方もG.F.を使ってるみたいだけど何のG.F.をジャンクションしているの?」

 

クレイズは説明しづらそうに答える。

 

 

「うーん……。私はコヨコヨと呼んでいるけど、小さくて水色の……可愛らしい人型生命体?」

 

聞いたことのない未確認G.F.だったので見せてもらう事になった。

コヨコヨという独特のネーミングも相まって姿が全然想像できなかったのだ。

 

 

「今聞いた要素だけならシヴァとそう変わらなそうだけど……」

 

クレイズが額に手を当て脳内のG.F.に合図を送り、正面に手を掲げて召喚する。

空から一筋のスポットライトが照らし出され、その光の中を通り上空からふわふわと地上に降りてくる小人の様な何か。

 

 

(本当にG.F.を持っていたのね。でも……なに、これ?)

 

出てきたのは説明通りの謎の生き物だった。女性型G.F.のシヴァとは似ても似つかない。

どことなくプルプルした水色のそれは、何やら必死にクレイズと私に向かってジャンプしながら手を動かし、おうえんしているようだ。

 

 

「確かに可愛いけど……戦いの役に立つのかしら……?」

 

必死に動いていたそれは疲れたのか息を切らしながらその場にへたり込み消えた。

 

 

「なんか必死に動いて頑張ってはくれるんだけど、どういう効果があるのかいまいち実感が無いし、毎回疲れて帰っていくから可哀想であんまり召喚する気になれないんだ」

 

確かにクレイズのその気持ちもわかってしまうような不可思議なG.F.だった。

なんだかこちら側の方が逆に応援してあげたくなる不憫さがある。

 

 

「その代わりアビリティは結構優秀なんだけどね……。じゃあ次は僕らの戦闘スタイルでも確かめておこうかな。」

 

そう言う彼の視線の先にはこちらに向かってやってくる生物が居た。

宙に浮く肋骨に長いウミウシを被せたような見た目をした、形容し難い青色のモンスター。

 

 

「グヘイスアイが2匹……強い相手じゃないし貴方の実力を見るには丁度良さそうね。危なくなったらムチと魔法でサポートはするからカッコいい所見せてね?」

 

クレイズが取り出したのは私も良く見知った武器、ガンブレードだった。

ガンブレード使いは珍しい。

 

 

(まさかあの2人以外にもこの扱いづらい武器を持とうとする人が居るなんてね。)

 

性格もスコールとサイファーとは正反対だし、どういう戦い方をするのか気になる。

クレイズはガンブレードを肩に担いで走り出す。

武器のタイプはスコールと同じなので似た動きになるのだろう。そう思っているとグヘイスアイがブリザドを放つ。

彼は地面を蹴ってグヘイスアイに向かって跳躍しつつ氷塊をかわした。

 

 

(空中に飛び出して自分の動きを制限するのは戦いの動きとして悪手じゃないかしら?)

 

私はいつでもケアルを使えるように準備する。

もう1匹のグヘイスアイが空中のクレイズに向かってブリザドを放った。

クレイズの真上に出現した氷塊が落ちようとするその時、宙にいる彼の上空が爆ぜてその衝撃で身体ごと斜め下に吹き飛ぶ。

身体を捻って横回転しながらクレイズとガンブレードは一体となり、グヘイスアイを切り裂いて地を滑りながら着地した。

 

 

(何なの……? この戦い方!?)

 

おそらく彼は上空に炎系統の魔法を発動し、爆風の衝撃で自らを強引に吹き飛ばして移動しつつブリザドを避けたのだ。

そのついでに進行方向の敵をガンブレードで攻撃した。

 

彼はジャンクションで上昇した身体能力で、地面を水平に跳ぶように走りながら、斜め下に構えたブレードに沿ってエアロを放出。

その衝撃によって再び自分を身体ごと吹き飛ばし、残りのグヘイスアイに急接近してすれ違いざまに切り裂いた。

 

武器に付着した体液を振り払い一息つく彼は、まるで曲芸のような安定性を投げ捨てた戦い方をしていた。

同じガンブレード使いのスコールやサイファーとも違う。

街中で接したクレイズからは想像できない姿だったが実力は確かなようだ。

 

 

「はい終了、どう? 普段戦いを他人に見せる機会が少ないから張り切っちゃったよ」

 

「正直想像よりずっと凄かったわ……! でもガーデンの教師に見られたら減点されそうな戦闘方法ね」

 

「うっ……確かに……。まあ今回は弱い相手で好きに戦えただけだからセーフって事で!」

 

「ふふ……それ、言い訳になってないわよ?」

 

ガンブレード使いは問題児にならなきゃいけないルールでもあるのだろうか?

彼の話によるとグヘイスアイはコリコリしていて、味付けによってはまあまあ美味しいらしい。

 

 

(あれを食べたの……?)

 

全く、私は短い期間で何度クレイズに驚かされればいいのか。

物腰は柔らかくて普通に喋ってる分には大人の男性に見えるのに……。

良い意味でも悪い意味でも一緒に居て暇はしない人だとは思うけど。

 

 

イフリートを倒した後、後日カードで再戦する事を約束し別れた。

こんな予定じゃなかった筈だけど、なんだかんだで楽しい一日だった。

 

クレイズがバラムに滞在している間、何度か遊ぶついでにカードゲームをしたりガーデンで起きた事を話したりする。

そうしているとつい戦いやジャンクションの話になっていき、普段のモンスター退治で面白かった思い出になる。

 

 

(戦いに身を置く者としては為になる話も多かったけど……。異性とする話題ではないわね……)

 

私は一人でそんな自分の職業病に苦笑いした。

 

クレイズも初対面がナンパだった癖に、恋愛に発展させようとする気が感じられないのは意外だった。

学生に手を出そうとしない分別はあったらしい。

 

 

 

SeeDの権限を使いガーデンに招待し、校内を案内するととても喜んでくれた。

最後に訓練施設を案内する。

その最奥にある通称ひみつの場所に案内した。

彼はそこでただ私の話を聞いてくれた。

 

 

私は教官になりたい。

勉強すればなれる自信はあった。

でも教官になりたい理由は生徒を導きたいからじゃなかった。

 

自分の優秀さを証明するため教師という肩書きを欲していた。

私は優秀な人間でいなきゃいけない。

それは、里親と上手く行かなかった幼少期の強迫観念によって形成された自意識の延長だった。

そんな私が教育者になっても良いのだろうか?

誰かに話を聞いてもらいたくて、でもこんな重たい話をできる人は友達や教師には誰もいなかった。

だから今日、私はあえて深い間柄じゃない彼に聞いてもらう事にした。

 

 

「多分尊敬できる大人なんてひと握りだ、当然私は尊敬される側の人間じゃない。だからこそ言えるけどキスティスは既に尊敬できる優秀な人間だよ」

 

「それに君は既に自分のためじゃなく生徒の為になるかどうかを悩めてるじゃないか」

 

……なんだか話をしたら、今まで溜め込んでいた物が吐き出された気がしてスッキリした。

凄くどうでも良い悩みを抱いていた気がする。

 

その日、私は教員試験を受ける事に決めた。

 

 

数日後、彼は私に挨拶をしてバラムから旅立っていった。

また会えるかな、そう思いながら少し寂しさを感じるのだった。

 

 




クレイズの戦い方はディシディアデュオデシムのスコールみたいなイメージです。
ヒールクラッシュとラフディバイド。
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