【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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9話 モンスター狩り

 

この世界ではモンスターの狩猟免許は存在しない。

モンスター狩りは規制されるどころかむしろ積極的に推奨されている。

 

何故なら、モンスター駆除のハードルを上げていたら人が住む地域の存亡に関わるからだ。

恐ろしい事に攻撃的なモンスターに街や個人が襲われる危険は常にある。

 

 

人が暮らしていく以上モンスター退治は必要不可欠なので、民間のモンスターハンターや害獣駆除業者も存在している。

故にモンスターの素材はショップや専門業者に買い取って貰えるし、各地域に武器を取り扱うジャンク屋が存在して戦いに関する情報誌が一般層にも良く売れる。

 

つまりゲームではあまり描写されていなかったが軍事関係者以外の一般人でも戦う人間はそこそこ居る。

当然ながら普通は私のように1人でモンスターをハントしようとせずグループを組む。

私は換金部位の分け前が減るので1人な事が多い、嘘ではない……嘘では。

まあ……そのおかげでこうして諸国漫遊生活を送れている訳だ。

 

未成年だった私が故郷でモンスター退治を禁止されなかったのは、戦闘能力がありその才能が豊かだった事以外にもそのような文化的下地があったからだった。

 

 

当然、訓練を受けていない一般人が手を出すには危険な分野であり、気軽に足を踏み入れるには少々ハードルが高い事も確かだ。

なので専門の教育を受け戦闘経験を積んだガーデン卒業生は、害獣駆除業者としての進路には困らず社会的地位もある。

 

ガーデンで20歳までにSeeD資格を得られず放校扱いとなった元生徒でも戦えはする事が多い。

放校という字面に反して意外にも普通に重宝されている人材だった。

 

これらの情報を故郷の村が雇った傭兵達から教えて貰えたので、15歳という若さで一人旅に出た私は金銭を手にして生きて行けたのである。

 

 

 

 

さて今日も今日とてモンスター退治だ。

 

バラムから移動する前にこの地域ぐらいにしか居ない獲物を狩ることにした。

アルケオダイノス。

バラムを象徴するモンスターであり、みんなが憧れるティラノサウルスの容姿そのものをしているこの地方の覇者だ。

 

この恐竜、普段は基本的に森の中に居る。

何故巨体なのにそんな動きづらそうな場所にいるのかはわからないが、トカゲの親戚だから狭い所が落ち着くとかそういう感じかもしれないと私は考えていた。

 

地元民と会話をした時にアルケオダイノスが話題に出たのでその疑問を話すと、どうやら食べると美味いから狩られすぎて森に逃げ込むようになったと言われているとかなんとか。

バラムの人間は食には容赦が無い。

 

まあそれは冗談で実際は森の中にいるケダチクというモンスターが美味いからそこに居る事が多いんだとか。

 

 

 

ケダチクは私の故郷にも存在していたのでよく知っていた。

緑をベースに青とマゼンダの模様で色彩構成された人より大きい芋虫。

 

芋虫の癖にデカすぎるのが最悪で当然キモい見た目をしているが、慣れたら尻尾にあたる部分の顔のような模様が可愛らしいと思えない事もない……。

普段はのろまに見えるが機敏な動きをする事ができる。もうそれだけで嫌なやつだ。

 

糸を吐いてくるのだが、かけられたらベタついたそれを取るのがかなり面倒なのも勘弁してほしい。

母親から「これ洗うの嫌だから貴方が自分で洗いなさい」と私は言い聞かされ、厳しく手揉み洗いを躾けられていた。

おまけに離れていても空気を魔力で振動させて攻撃してくるという煩わしい事までしてくる。

 

こんなのがのどかな田舎町のウィンヒル内部を平気でうろついていた事実と光景を想像してみてほしい。

それなのにウィンヒルの住民は街中のモンスター退治を担当していたラグナを邪険に扱い、さっさと出ていって欲しいなどと面と向かって言っていたのである。

ウィンヒル住民達の肝の据わり様と陰湿な田舎魂は“口だけ”とはいえ凄まじいと思う。

 

 

 

芋虫という事は成虫が存在しているのだろうか? だとしたらどんな虫になるのか非常に気になる。

 

などと私は常々そう思っていたのだが、その筋の専門家によると芋虫のまま蛹になる事をあえて放棄し、糸で攻撃して獲物を捉えそのままで生きる方面に進化したとの事。

ちなみに成虫になる事を捨てなかった方の同系統の種族も存在しているようで、そちらは最終的に空飛ぶ大きめの甲虫であるバイトバグになるようだ。

 

バイトバグよりケダチクの方が強いので成虫に進化する事を放棄したのは正解かもしれない。

 

 

逸れた話を戻そう。

ケダチクは最悪な見た目とぶちゅぶちゅとした肉質が食欲を減退させるが、意外にも中に詰まった体液は少しフルーティなクリームチーズのような美味しい味をしている。

なのでアルケオダイノスの好物になるのも納得と理解ができた。

 

しかし、バラムフィッシュを絶滅させかけている実績があるのがバラム民だ。

狩りすぎて恐竜が森に逃げた話が全て嘘とも思えない。街に恐竜が来たらどうするのかと聞くと、

 

「アルケオダイノスは動きが鈍いから平原で見かけたら……遠くからみんなでブリザドで……逃さないように脚を狙ったり……」

 

というような濁した風の後ろめたい言い方で、しっかりとした考えに裏打ちされた狩りの答えが返ってくるのだ。

やっぱり森に追い込んだのはバラム住民じゃないか? これは……。

そもそも味が美味しいと知ってる時点で犯人と自供してはいないだろうか。

街に来る奴の対処を聞いたのに逃さないように脚を狙う……? どういう事だ……? 追い払ったらダメなのか……?

 

 

バラムの謎を無駄に長々と考えていたら重量感のある足音が聞こえた。

アルケオダイノスのご登場だ。

バラムの森にこの恐竜以上に強いモンスターは居ないので足音を隠す必要性がないのだろう。

平気で音を出して森を歩いていた。

 

 

 

早速相手もこちらを見つけたらしい。

私に向かって巨大な尻尾が薙ぎ払われ周囲のそこそこ太い木が何本もへし折れる。

 

 

(いや……迫力も威力も凄い! これを嬉々として狩ろうとするバラム人おまえらなんなんだよ!!)

 

 

森の木々を足場にして三角飛びをして躱した私は、嬉々として狩りに来た自分の事を棚にあげながらバラム住民の逞しさに驚愕していた。

 

無理矢理開けた森の中で再び尻尾が振るわれる。

なるほどこれは木々の狭さなんて気にせず森に居る理由がわかった、木が邪魔な時は尾を一振りすれば関係無いというわけだ。

 

 

だがこちらも避けてばかりじゃ芸が無い。

私との距離を詰めて、回し蹴りのように振るわれる巨大なムチ。

それをブラスティングゾーンで伸ばした剣先で真正面から迎え撃つ!

輝きが束ねられた魔法剣とも言える光の大剣は尾の半ばに直撃して骨の中心部まで入りその光を消失させた。

咄嗟にその場を飛び退き尻尾を躱す。

 

そのまま尾が勢いよく木々に叩きつけられた。

半分まで肉に切り込みを入れられた部分が衝撃に耐えられず骨が折れ肉が千切れる。

痛みに叫び声をあげのたうち回るアルケオダイノス。

僅かな肉と皮で辛うじて繋がっている尻尾から飛び散る血液は、私の用意していたプロテスの透明な壁にピチャピチャとかかり止められた。

 

 

私は驚愕していた、尻尾が太かったとはいえまさかブラスティングゾーンを耐え切るとは思わなかったのだ。

あれは複数の魔法攻撃がチェーンソーのように回転して一瞬にして強引に削ぎ切る。

多少の分厚さの鉄板ぐらいなら平気で切断できるので生身の生物相手には間違いないと思っていた。

 

 

(巨大生物の攻撃をかっこよく迎撃してスマートかつダイナミックに勝利する予定が狂ってしまったな)

 

 

冷めた私は、今まで生きてきた中で味わったことも無いであろう痛みに苦しみ悶えている恐竜の傷口にケアルガをかけて治癒し、スリプルで眠らせてドローというコマンド技で魔法を回収した後、ガンブレードに纏った光の刃で首を落とした。

ついでにヘイストを死体にかけて心臓の動きを早め、巨大な身体から大量の血抜きを済ませる。

 

 

痛みを無くして眠らせて処理するとストレスが減り、筋肉の硬直が無くなるので血抜きが綺麗に出来る。

そういう狩り方をすると肉が美味しくなるが、今回の私の回復と睡眠付与は既に痛みを感じさせた後なのであまり意味がなかった。

ケアルガをかけたのは痛みがあると眠らないという理由で、スリプルで眠らせたのはそっちの方がのたうち回る相手を楽に倒せるからである。

 

何故最初からスリプルを使い痛み無くスマートに殺さなかったかというと、打ち合ってみたかったからだ。

完全に遊び気分で行うブラッドスポーツやトロフィーハンティングと呼ばれる類いの意識だった。

しかしまぁ、そんな事をモンスター相手にいちいち気にしてても仕方ないし私は別に食べない訳じゃない。

 

 

倒したモンスターの過食可能部位は生モノなのでブリザドで冷凍したりエアロで干物や乾物にする。

冷凍で食感や味が悪くなる物はストップを使い時間停止させている。

食材はジッパーに入れ、大きめの衣装ケースのような移動式クーラーボックスに収納して持ち運ぶ。

 

当たり前だがモンスターを『たべる』時は調理した方が美味しく摂取できる。

ゲームだと戦闘中にそのままモンスターに突っ込んで行き咀嚼音がしていたが、アレはやはり生で丸齧りしていたのだろうか……。

モンスターの踊り食いという物にもそれなりに食材のおいしさを感じさせるメリットはあるのかもしれないが、あまりやる気にはならないなと思う私であった。

 

 

アルケオダイノスの尻尾は太くて長い上に皮膚も分厚く、筋肉がしっかりしていて容易に刃を通さないぐらい硬い。

どうやら攻撃用に進化しているらしい。

 

横に倒した物理防御魔法のプロテスをまな板代わりにする。

切り落とした恐竜の尻尾から皮を剥ぎ骨を切り分け、調理しやすいようにガンブレードを関節に入れて切り離す。

勿論ガンブレードの分厚い刃でもそのままだと切るのは難しいし刃がボロボロに欠けるので、これらの作業中は刀身に魔力を纏わせて発生させた小型のブラスティングゾーンをつかっている。

 

この一連の作業をG.F.のジャンクション無しでやろうと思うと、それはもう時間がかかるし疲れて仕方ないだろう。

解体してる時に他のモンスターが来る可能性だってある。

そういう所もモンスタージビエがあまり一般的では無い理由かもしれない。

そして勿論、まだ胴体や手足で食べられそうな部分の解体が残っている……。

 

 

これが美味いとわかっているアルケオダイノスだから良いものの、頑張って解体して不味かった時の徒労感は本当に気分が落ち込む。

ヘッジヴァイパーなんて蛇はわりかし鳥肉に近い味がするというから大丈夫だろうと思って食べたら、パサパサしてるわ血が臭いわ毒はあるわで酷い目にあった。

しかも無駄に体がでかいので処理も大変という始末。

あれを漬けて酒にしようと思った奴はよほど食い物に困っていたに違いない。

 

 

 

さて、調理しやすいように切ったと言っても、骨自体が馬鹿デカい為そのままだと普通の調理器具には入らない。

なので巨大な器のように魔法防御担当のシェルと、物理防御担当のプロテスを重ねがけ展開させる。

魔法のボウルにウォータで水を注ぎファイラで沸騰させ、そこに先程切った肉と骨を入れる。

次にグラビデを使い、尻尾の肉を熱湯ごと圧縮する。イメージとしては圧力鍋。

こうする事で熱が深くまで浸透して、一瞬で硬い肉が柔らかくなり骨からは出汁がでる。

 

 

サバイバル用の小型鍋に、先程とった出汁と煮込んだ尻尾から剥がした肉を入れて塩と香辛料で味を整えた。

最後に、みじん切りにした薬味野菜を散らすとアルケオダイノスのテールスープが完成。

 

本来なら時間のかかる煮込み料理も魔法の力で圧倒的に時短できるのはありがたい。

主婦のような事を思いながら口に運んだスープと肉は予想を裏切らず絶品だった。

 

 

(スープに浮いた脂がキラキラと反射して美しい……)

 

 

バラムにおける食物連鎖の頂点はたっぷりとした栄養と脂を蓄えている。

柔らかくなった肉を掬うとそれに付着している半透明なコラーゲンの塊がぶるんと揺れた。

 

 

「ハァ〜……うまい……」

 

 

フォークを鍋の中の巨大な肉に刺す。

熱が浸透して柔らかく裂ける筋肉の繊維、それに噛みつき、スープに浸かった肉塊から剥ぎ取るように行儀悪く食べた。

肉食恐竜の癖に臭みを感じさせず、野生的な肉の旨味と甘い脂がちからをつけてくれる。そんな味が体に染み渡るのだった。

 

まあ、これはどのモンスターにも言える事なのだが美味しいとはいえ到底1人で食べ切れる量ではない。ある意味ソロハントのデメリットと言える。

モンスターは体積が大きすぎるので基本的に全て持ち帰るなんて事も無理だ、なのでその場で調理して食べて少しでも食品ロスを減らそうとする事も多い。

 

この世界、なんだかんだモンスターを倒せる戦闘力さえあればサバイバルで食糧に不自由する事はないだろう。

 

そのためウォータとファイア系統は必須魔法で常に常備している。

 

 

残った肉やだし汁は欲しい分だけ冷凍して持って帰るが量が多すぎるため、大半は泣く泣くその場で放置するか魔法を使い燃やして破棄する。

棄てるのは勿体ないがクーラーボックスで持ち帰る分だけでも、ひと月は過ごせそうなぐらいの量なのだ……。

放っておいたらバイトバグが食べて処理してくれるだろう。

 

目的を果たした私はそろそろバラムともお別れだなと思いながら、燃えカスとなった焚き火の灰を冷ましてジッパーに入れ椅子から立ち上がった。

 

 

 

一応恐竜を食べているバラム民以外のこの世界の人達でも、モンスターを食べている事は稀によくある。

実際に飲んだがヘッジヴァイパーが蛇酒にされているし、メズマライズを使った料理はトラビア地方のレストランなどでも親しまれていると聞く。

 

噂では、国の重要な行事などの際にお偉いさんがSeeDに食用として大きめのドラゴンを狩って来てほしい、という超高額な依頼をする事もあるとかなんとか。

まあ食べるにしても流石に動物の見た目をしたものに手を出すのが主流で、機械やアンデッドタイプのモンスターを食べようとは思う人は居ない。

 

 

この世界の一般人でもモンスター食べて回復したり肉体強化できるならみんな最強になれるじゃないか。

と思うかもしれないが実はそのまま食べただけでは回復や強化などの恩恵を受ける事はできない。

 

あくまでG.F.の『たべる』アビリティを通さなければ回復などのメリット効果は体感出来るほど発揮されないようだ。

 

一部のモンスターはそういう類いの効能がないわけではないようだが、せいぜい健康や滋養強壮に良い薬膳鍋やスッポンを食べた時に身体が熱くなるのと大差無い程度しか効果の実感がなかった。

 

おそらくだが『たべる』はモンスターをただ食べるだけじゃなくその栄養素や魔法的な効能を増幅させる、あるいは元々モンスターにある栄養を余す事なく取り込めるような効果があるのだと思われる。

これはゲームをしていただけではわからなかった事のひとつだ。

 

 

 

そもそも『たべる』というコマンドアビリティ自体が原作ゲームでも相当レアな代物である。

 

エデンというまるで世界の支配者かのような壮大で正体がよくわからない最強クラスの隠しG.F.が覚えている他に、

正規のプレイではほぼ1つしか手に入らないレアアイテムを使うしか習得方法が無い。

 

なのでモンスターを食って回復や、基礎能力の向上云々が普通の食事とどう違うのか、この世界の人々からしても知り得ないし専門の研究者でなければほぼ無関係でどうでもいい情報でしかない。

 

大前提としてモンスターを狩らなきゃいけないという入手難度の問題も存在する。

強いモンスターによっては集団で大掛かりな作戦を立てなければいけない一大事だろう。

 

だからこそある意味自分が心置きなく楽しく開拓しやすく、記事にしやすい分野でもあるのだった。

 

 




トロフィーハンティングやブラッドスポーツを推奨する意図があるわけではありません。
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