【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。 作:速射弾
デリングシティ。
凱旋門というまんまの名前と見た目のモニュメントが都市の中心にあるガルバディアの首都だ。
ガルバディアの独裁者である終身大統領ビンザー・デリングの名を冠した都会の街。
各地に戦争を仕掛けている独裁国家の首都と考えると怖さしか感じないが、デリングシティは意外にも間口が広く、どの国からも出入りが許されるし問題が起こるような治安の街でもない。
独裁者の権力のおかげでお膝元の治安維持にはかなり力が入っているのかもしれない。
まあ、あまり騒ぎを起こすと治安管理の名目で、ガルバディアの兵士が普段の鬱憤を晴らすために容赦なく暴力行為とかつあげをしてくる。
だから当然誰も騒ぎを起こす気は無くなる。
しかしそんな兵士達も問題さえ起こさなければ割と大人しい。
デリング大統領の名前がついた都市で理由もなく横暴に振る舞うのはよろしくないとされるらしく、上からの処分と同僚から鬱憤晴らしの制裁があるからだとラグナが言っていた。
暴力とパワハラで強引に維持されている国、それがガルバディアなのである。
この街の空模様は雲が発生しやすく、ほぼ全ての日にちで太陽の光が差す事が無い。
おかげで分厚い雲に覆われ一日中夜になってしまっているが、ネオンが輝いているおかげで陰鬱さとは無縁の世界が広がっていた。
常に夜という特殊な環境である事と意味不明な巨大ピエロのオブジェがあること以外は、この世界の中では最も地球にある都市と近い街並みなのではないだろうか。
それ故に私にとってはある意味ファンタジーを感じづらく退屈とも言えるが……。
まあ私の出自から来る意識が特殊なだけだろう。
前世における海外旅行をしている気分に近いので、そういう方面での楽しさは確かな物がある人気の都市だった。
デリングシティにはさまざまな店がある、だが私の今回の目的はショッピングではない。
ホテルにあるクラブだ。
ラグナが過去、ジュリアを口説こうとして脚を攣った場所。
Eyes on Meという名曲が産まれるキッカケとなった場所。
つまり何時もの私の聖地巡礼だ。
クラブに行くと女性が一人仁王立ちしていた。
女性は私の方に来ると話しかけてくる。
「どうやら私の思いが届いたみたいね! さぁ、やるわよ!」
やべー奴に絡まれてしまった。
(この女とは初対面な筈だ、ここはホテル。……やるってそういう事か?)
やはり都会の誘い方は一味も二味も違う。
据え膳食わぬは男の恥、当然ここで引く私ではない。
田舎者にだって意地はある。
「いきなり誘われて驚いたよ、でも君みたいな美女に声をかけて貰えて嬉しいな。良いよやろうか」
「私の部屋でやるわ! ついて来なさい!」
漢らしい宣言を堂々と行う女。
どうでもいいけどこの女、感嘆符をつけなければ喋れないのだろうか?
お誘いは嬉しいが、はしたないから大声出すんじゃありません。
(それだけ気合いが入っているという事かもな……)
ホテルの部屋に入りベッドに腰をかけ羽織っていた上着を脱ぐ。
「今日は暖かかったけどシャワー、浴びなくていいの? まぁ……私はそのままでも全然良いけど……?」
先程とは打って変わって優しく話しかけてくる彼女の目は既に潤いを帯び、興奮の色が隠せないようだ。
彼女も僕も準備はできているようだった。
「すっきりしてからやるのも良いけど、取り敢えず待てないからすぐ始めようか」
私達はカードを取り出し、話しながら慣れた手つきで手札を選ぶ。
今までの話の流れからして説明するまでも無いだろうが、勿論やる事はカードゲームだ。
「ガルバディアのルールでは物足りないな。君もそう思わない?」
「良いわ! 私だって他のエリアのルールを知ってるの。ガルバディアのルールにフィッシャーマンズ・ホライズンのルールを混ぜてやりましょう」
黄色い二等辺三角形の専用サイコロを振り、彼女の先行が決定した。
右上の角で防御を固めた彼女に対し、私はあえて中央にカードを切った。
私の挑発的な誘いを理解した彼女は嬉しそうに挑発の虜になる。
「貴方……! それでこそ私の相手に相応しいわ……!」
お互い中央のカードを返し自分の色に染める事を狙う。
熾烈な中央合戦を制したのは彼女だった。
だが想定済みだ。
「やるね……言うだけの事はある、口先だけじゃないって訳だ。でも私も経験は豊富なんだ」
「えっ……!」
そう……私は経験豊富だ、人生でこのような誘いを女性から受ける事も一度や二度では無い。
幾度と無く女を泣かせてカードを奪って来た私の実力をとくと味わうがいい。
私が角に置いた余波でセイムが発動し2枚のカードが裏返る。
オープンルールが無いが為に、公開されていない手札から飛び出したどうあがいても読めない一手。
彼女に傾向きかけていた天秤は完全に覆された。
彼女から焦りで滴る汗と香水の混じった香りが漂ってくる。
私の鼻腔はその焦りを見逃しはしない。
残された最後の一枚が彼女の手から剥ぎ取られ私は勝利した。
筈だった……。
「何っ!」
札が最後の角に置かれたその時、両隣のカードが反転する。
セイム発動だと! まさか今までの布陣はこのための布石だったのか!
先程滴れた汗は冷や汗だけではなく興奮による発汗もあったというのか……!
彼女の起こした奇跡はこの試合を同点で終わらせた……。
「同点か、ここまでやる相手だったとは……。ふぅ……中々できない良い勝負だったよ、ありがとう」
「何勘違いしてるのかしら?」
「……ひょ?」
「私達の試合はまだ終わってないわよ?」
「そうか……! 特殊ルール【サドンデス】!」
drawになった場合、お互いの手札をシャッフルして配り直し勝敗がつくまで試合が続けられるフィッシャーマンズ・ホライズンのローカルルール!
「夜は長いの、まだまだ寝かせない」
「どうやら一息つくのは早かったようだ……! 今更だけど名前を聞いても良いかな? 私はクレイズ・オクトー、田舎町のウィンヒル出身、これから君を倒す男だ」
「そういえば自己紹介がまだだったのね、ごめんなさい。カードに夢中な時は他の事を忘れちゃうの……
私の名前は────
私たちの行為は譲り合う事無く、何度も再試合にもつれ込んだ。
幾度もお互いを混ぜ合わせ、熱の篭った駆け引きを終えた頃には2人とも燃え尽きていた。
勝敗なんてもうどうでも良くなっていた。
「夜が明けたら一緒に朝食でもどう?」
「起きたら太陽が昇り切っててお昼ご飯になってるかもね」
笑いあった私達は疲労を隠せずそのままベッドに倒れ込んだ。
幾ら寝てもこの街では夜が明ける事は無い、起きてから私達はそれを思い出した。
2人ともデリングシティに住み慣れてない田舎者だったのだ。
デリングシティのバーにいるカードしたがりの謎の女モブです。
あいつ一体なんなんだ。
そして何故カードゲーム回にエロを挟もうとする癖があるのか自分に問いたい。