【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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11話 フィッシャーマンズ・ホライズン

 

ガルバディア大陸とエスタ大陸。

世界の正反対に位置するその二つを結ぶ大陸間鉄道があった。

過去形だ。

エスタが鎖国している今、この路線は運行しておらず長い橋と線路だけが残されている。

私はそこを歩いていた。

ちょっと遠いけどなんとかなるだろ、そう思ってリュックサックを背負いながら歩き出した。

 

 

(遠いよな)

 

「こんなに遠いと思ってなかった……」

 

だが私は自分の口から出た言葉とは違い、遠いという事は事前にわかっていたので織り込み済みだった。

 

 

「俺……何やってるんだ?」

 

私は一人でFF8名シーン再現ごっこをしていた。

 

 

「エスタに行って……エルオーネを探して……エルオーネに会って……」

 

繰り返すがここにいるのは私一人だ。

 

 

「エルオーネに会えば何もかも解決するとは限らないんだぞ」

 

ハッキリ言って私にはエルオーネに合わす顔が無い。

エスタに行ってラグナに合わす顔もだ。

尊敬しているキロさんに対しては後ろめたい事が無いので少し会いたい。

 

 

「それなのに俺は……」

 

何度も言うが会いに行く気などさらさら無い。

解決して欲しいと思う事はほっとけばそのうち原作の流れで解決してくれるからわざわざエスタに行く必要なんて無い。

会うとしても原作ストーリーが終わってからだ。

 

 

「俺……変わったな」

 

相変わらず幼稚な精神で生きている私は昔から全然変わってなかった。

その証拠に今もしょうもないごっこ遊びをしている。

 

荷物を下ろし休憩する。

海に面したコンクリートの縁に座り片膝を立てながら沈む夕陽を見て言った。

 

 

「みんなどうしてるかな……」

 

ちなみに、各地を転々とする私にはみんなと呼べるほど大勢の友や仲間の集まりは居ない。

強いて言うならラグナ達だがどうしているかは原作知識で知っている。

 

 

「俺のこと笑ってるかもな。いや……怒ってるかな?」

 

少なくともこんな事をしてると知られたらスコールには心底不愉快だと思われるだろう。

ラグナ達が私の事をどう思っているのか知らない。

まあせいぜいウィンヒルにいた少し仲の良い近所のガキ程度の認識じゃないかと推測する。

 

 

「どう思う?」

 

リュックサックに話しかけるが当然お喋り機能は搭載されていなかった。

 

 

「俺……本当は他人にどう思われているか気になって仕方ないんだ」

 

それは私もそう思う。

スコールの感じていたその気持ち、わかります。共感します。

 

 

「でも、そんな事気にする自分も嫌で……」

 

他人にどう思われるか気にしない人間というのもそれはそれでひとでなしだ。

モテなくなるし身だしなみはきちんとしておきたい。

え? そういう事を言ってる訳ではない?

 

 

「だから……自分の事、他人に深く知られたくなかったんだ」

 

なんだか原作のシーン思い出してたら涙が出てきた。

 

 

「そういう自分に嫌な部分……隠しておきたいんだ」

 

(スコールが本音を語るシーン最高だ……やっぱFF8って名作だわ……)

 

 

染み出てくる涙を拭きながら私は続けた。

 

 

「クレイズは無愛想で何考えてるかわからない奴」

 

私は無愛想ではないし人当たりが良い方……だと思う、主にカードのおかげで。

何考えてるかわからないミステリアスな所はあるかもしれない。

ミステリアスな男、良い響きだ……。

 

 

「みんなにそう思われていればとっても楽だ」

 

楽というか……カッコいいからミステリアスと思われたいかもしれない。

私は座りながら地面に置いてあるリュックに向かい振り返って言った。

 

 

「今の、みんなには内緒だからな」

 

だからみんなって誰だよ。

みんなという謎概念に内緒にしてくれと頼まれたリュックサックは困惑して何も話さない。

 

 

「リノア……」

 

リュックサックに向けて面識がない原作ヒロインの名を呼ぶ。

当然この背嚢はリノアでもなんでもないので返事をする筈もなかった。

 

 

「これじゃ壁と話してるのと同じだ……」

 

休憩を終えて再びリュックを背負い線路を歩き出す。

そうしてごっこ遊びに満足しながら糞長い線路を歩き続け、大陸間の中心地にある中継地点の駅に辿り着いた。

 

 

 

 

 

町と港と駅、どのジャンル分けをして良いかわからないような線路脇の海に浮かぶ場所。

技術者達が集まり出来た街、それがフィッシャーマンズ・ホライズン、通称F.H.だ。

 

沢山の風力発電機と太陽光パネルが美しく配置され、鉄屑を組み上げたような地面の上で生活するこの世界。

一言で表すとのどか。

 

フィッシャーマンズ・ホライズンの人々は暴力を好まない。

話し合いで全てを解決できるという思想の元に作られた場所だからだ。

戦争関係者や傭兵はバトル野郎という蔑称で呼ばれる事もあったりで毛嫌いされている。

だが、そんなバトル野郎だとしても完全に拒みきれない所に、この土地の住人の人の良さが現れているのだろうとも思う。

 

ここの人々は過去に罪を犯した人間でも何も言わずに置いてくれる。

他人を受け入れて過ちを認めさせる……そんな徳の高さと度量の深さがあるのだ。

 

 

私は戦いで人を相手にする事は殆ど無いのでバトル野郎扱いはされなかったが、実はモンスター相手に戦うという事もF.H.の人々には微妙に理解されづらい。

F.H.はガルバディア大陸とエスタ大陸を横断する長い橋の中心地に存在しているので、まずモンスターに出会う機会が無いらしい。

なのでモンスター狩りというのが具体的に想像出来ず、いまいちピンと来ていないみたいだった。

 

ここに住む人たちにとって武器を剥き身で持ち歩く人物は等しく不審者であり、モンスターはカードの中の存在なのだ。

ぐうの音も出ないほどの常識的感性である。

 

 

 

先日デリングシティで仲良くなった女性がここ出身だと言っていた。

私は良い所だと思うのだが、彼女にとってここは退屈すぎる世界だったようだ。

確かにF.H.に何があるのかと言われると平和と技術者と釣り場ぐらいだろう。

 

 

朝になり宿から出てショップに寄ってみると店の親父さんが話しかけてきた。

 

 

「おっ、観光客か? 珍しいなぁ……あんた何処から来たんだ? こんな辺鄙な田舎に良く来ようと思ったな」

 

フィッシャーマンズ・ホライズンは長い線路の中腹に位置する場所にあり、現在ではその線路は運行停止になっているので、長い長い線路を車で走るか地道に歩かなければ地上からは辿り着けない。

確かにわざわざここに来る人物は物好きな人間だろう。

 

 

「私は普段色んな所を転々としてるんですが……出身はウィンヒルという所です。まあそこも凄い田舎ですから、比べたらここなんて都会も良い所ですよ」

 

「いやぁ来たばっかりじゃわかんねぇだろうけど、ここは本当に平和以外何も無い所さ。お客が喜べるような物があれば良かったんだがなぁ……」

 

店の親父さんは卑下するがここはFF8プレイヤーの中では住んでみたい町ランキング上位だった(当社調べ)。

 

 

「いやいや、ここには沢山の技術者が作った色んな物がありますよ。町自体の雰囲気ものどかで良い所です」

 

「いやいや、そう言って貰えるのはありがたいんだが住んでるとなーんにも無い田舎だなと思っちまうんだなこれが、逆に何も無いのがここの良い所でもあるんだが」

 

そうして「いやいや」の往復が何度も繰り返され私の中に良くない火が着いた。

 

 

「────それでもウィンヒルの方が何も無い」

 

 

私は謎のスイッチが入り言葉を続けた。

 

 

「基本的にウィンヒルは花しかないんです。

しかも、ウィンヒルの方が住人の性格が悪い。

さらに、ウィンヒルは町にモンスターも入ってくる。

そして、ウィンヒルは機械すら殆ど見当たらない。

なぜか、ウィンヒルにはチョコボがうろついている。

困った事にウィンヒルには線路も無く電車が通っていない。

恐ろしい事にウィンヒルには幽霊が出る。

とんでもない事にウィンヒルではUFOで連れ去られる危険もある!」

 

 

客観的見て、急激に捲し立てる自分の姿は見苦しい。

それを自覚して恥ずかしさを覚えた私は冷静さを取り戻す。

 

 

「っと、ふぅ……ごめんなさい、熱くなっちゃいましたね……申し訳ない」

 

……どっちがより過酷で田舎か、という事で争っても仕方が無い。

何故人は住む土地の厳しさや問題点で上回ると鼻が高くなるのだろう、そんな事自慢にもならない筈なのに……。

私には田舎者としてのプライドがあるのかもしれない。

 

 

(この程度で田舎面すんじゃねぇぞ都会っ子め! F.H.がウィンヒルと比べてどんだけ恵まれているか分かったか!)

 

そう思ってついカッとなってしまった私は、立派にウィンヒルの血が流れているようだった。

私が黄昏ていると男が明らかに引きながら言った。

 

 

「あ、あんたの故郷は色々あるんだな、それは良くわかったよ……。俺はF.H.にある物の事そんなに思いつかねぇなぁ……」

 

店の親父の言葉に私は何も言い返せなくなり、田舎勝負レスバトルに負けた……。

おそらく相手は戦っているという意識すらないだろう。

F.H.の人間らしいレスバの強さだった。

 

 

「勝ち負けから抜け出しきれてない時点でまだまだぢゃな若いの」

 

釣り竿を持って歩いていた爺さんに、すれ違いざまに見透かされ論破されてしまった。

ここの住人はすれ違っただけでレスバに勝つらしい。

 

こんな奴がうじゃうじゃ居やがるのか? F.H.は恐ろしい所だ。

ここの住人を論破したアーヴァインと駅長を黙らせたスコールの凄さをまた一つ思い知ったのだった。

 

私の旅はいちいち己の矮小さと原作キャラの凄さを確認している気がする……。

 

 

(いいもん! 私は顔が良くてモテるんだもん! 可愛い女の子と付き合った事だってあるんだもん!)

 

 

だが、無様だった。

 

 

 

 

 

私はおそらく何十年も使われず街と一体化ししてしまったクレーンの先で釣りをしていた。

バラムでも釣りはしたのだが結局一度も魚を釣る事が出来なかった。

私は多分落ち着きが無いのだろう……。

そう思っていたが、フィッシャーマンズ・ホライズンの空気に心を落ち着かせた今の自分なら行ける気がしていた。

 

 

糸と浮きが揺れた。

釣り具店で借りた竿に振動が手に伝わり、獲物がかかった事を知らせる。

餌に食いついた魚が引き上げられまいと泳ぎ回るが、無駄な抵抗は釣り針を食い込ませるだけだ。

振動を楽しみながらリールをゆっくりと巻き上げ、小ぶりな魚を海から引き上げた。

 

 

私は生まれて初めて戦いをせずに獲物を捕らえた。

 

嬉しかった。

 

釣りはある意味魚との戦いなのかもしれない。

しかし、今まで私が経験してきたそれと全く異なる物だ。

 

G.F.を使っている訳でも無く、ガンブレードを担ぐでも無い。

魔法すらも使わない古より受け継がれてきた遊び。

その朴訥さを技術と歴史によって組み上げられたこの街で味わうのは、とても贅沢な事なのかもしれない。

 

 

「なにか分かったみたいぢゃな」

 

また会ったのぅ若いの。そう言って先程すれ違った爺さんが近くによってくる。

私は何かを分かったのだろうか? 私にはまだ何かが分かるほど人生で極めた物など無い。

 

 

「どうですかね、わかった気になってるだけかもしれません」

 

そう言うならワシの気のせいだったかもしれん、と笑う爺さんは続けた。

 

 

「しかしとても良い笑顔をしとった。その理由が知りたいと思っての」

 

「初めて魚を釣れまして……。なんの変哲もない小ぶりな魚ですが……これから宿に持ち帰って調理して貰おうと思います。まぁたべる所は少ないと思うんですけどね」

 

笑いながら言った私の答えを聞いて納得したように頷いた爺さんは、持っていた釣り具の用意をし始めた。

私はクレーンの先から立ち上がって、釣り場を明け渡しその場を去る。

バケツを持って立ち去る私の耳には、それ万能薬でも治せん猛毒があるから食べん方がええぞぉ〜という爺さんの声が聞こえた。

 

 

竿を借りて魚釣りをしたり、職人の作った機械仕掛けの小物を見て回ったり。

空気がゆったりと流れたこの世界は、親しい誰かと一緒に過ごすには最高の環境だろう。

田舎特有の排他的な空気も薄い。

独り身の私にすら寂しさを感じさせない雰囲気とのどかさがここにはあった。

 

 

 

住民とのレスバにはボロ負けしたが、それでもフィッシャーマンズ・ホライズンは良い所だった、それは変わらない。

変わらないが帰る時に私は気付く、またあの長い長い線路の上をひたすら歩かなければならない……と。

こんな事なら原作の名シーンごっこしたいなんて思わず車かバイクでも借りてくるんだった。

 

帰り道を想像すると気分が悪くなる。

良い所という以上に交通の便が悪いのでそういう意味であまり来たいと思えない場所かもしれない……。

 

 




釣り爺さんの底知れなさ。
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