【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

14 / 57
12話 セントラ

 

セントラ大陸には船で行く便がほとんど出ていない。

そもそも人が住んでいないからである。

しかも複数の陸地が寄せ集まってできているような地形なので海で分断されている事が多く、離れた陸に行くには浅瀬を渡るためチョコボで行かなければならない。

 

チョコボに乗って移動する人は少ない。

大昔はチョコボを移動手段に活用していた時代もあったらしいが科学力が発展して必要なくなり、もはやチョコボは人に忘れ去られかけている動物だ。

それでもチョコボが好きで寄り添おうとする人も僅かながら存在する。

 

意外にもチョコボはモンスターではなく元々居た動物らしい。

セントラ地方には多く生息していたのだが、過去にセントラに大災害が起こった。

その影響をモロに受けて数を大幅に減らして以降、人と生活圏が交わる文化が途絶えかけている。

しかしチョコボ達はそれでも人間に対し好意的に接してくれる。

 

 

 

私はこの大陸のメイン移動手段となるチョコボを手に入れるため、チョコボの森にきていた。

 

 

「はいどーもどーも、毎度お馴染みちょこ坊です。料金表はこっちね」

 

 

森に入った途端子供が話しかけてくる。

毎度お馴染みでもなんでもないこの自らをちょこ坊と名乗る不審なガキは、チョコボに関するサービスの料金を記した板を提示してきた。

セントラ大陸に何故子供が1人で居るのか。

どうしてこんな割に合わなそうな金儲けをしようとしているのか。

どうやって生活しているのか。

 

ゲームならチョコボを捕まえるミニゲーム解説用NPCで説明が付くのだが……。

現実に居るとなるとはっきり言ってめちゃくちゃ不気味で怖い。

 

話を聞いてみるとどうやら幽霊なようだ。

 

 

(なんだよそれ……サラッと言ってくるなよ……)

 

 

驚愕の真実だった。

どうやらチョコボを好きな思いが強すぎて、死んだ後も世界各地のチョコボの森に幽霊として出没するようになったんだとか。

ちょこ坊という名前も偽名で、長いオバケ生活の末に生前の名を忘れたと明るく言っていた。

 

チョコボ好きを増やすのを目的として、死してなお活動している名実ともにヤバい奴のようだ……。

お金を取るのはギザールの野菜を育てる代金の他にも、金にガメツイ奴を装う事で幽霊だと思わせなくする為らしい。

 

そういえばゲームでも王家の墓で名もなき王の幽霊がいたり、ウィンヒルでも幽霊イベントというレインの霊が居ると思わせるようなイベントがあるので、オバケという現象があり得ないとは言い切れない……。

 

ちなみにレインが死んだ後のウインヒルで私は戦いとモンスター喰いに明け暮れていたので、幽霊と遭遇はしなかった、だが噂は耳にしたことはある。

 

 

 

ちょこ坊からちょこソナーとちょこザイナという笛を貰い、使い方の講義を受ける。

この笛もちょこ坊の手作りでそこらの木を加工しているようだ。

幽霊が作ったものを貰うというのも気色の悪い話だが、原作にも出てきたアイテムなので割と普通に嬉しかった。

 

 

平気で物を触れて人と喋れる幽霊ってそれはもう子孫を残せない以外にデメリットが無いのでは、と思ったが本人が言うには身も心も成長が無いのがデメリットらしい。

 

コチョコボを誘い出し、それを心配した親チョコボを捕まえるまでのプロセスはなかなか慣れが必要だったが、なんとか捕まえる事が出来た。

 

 

チョコボに名前をつけてあげてほしい。そう言われたのでボコとつけようかと思ったがやめた。

それはFF5のチョコボでありお出かけチョコボRPGの主人公の名前だ。

私の相棒となる存在には自らの気持ちを込めた名前をちゃんとつけてあげたいと思った。

これから長い間お世話になるかもしれない相手に失礼はしたくない。

友好的な存在に対しては種族にかかわらず誠実な対応をするべきであり、敬意を忘れてはいけない。

 

 

私は考え抜いた結果このチョコボに「チョコボ」という名前をつける事にした。

頭を巡らせ出た答えがチョコボには「チョコボ」以上に存在を体現しているネーミングが無いという真理だった。

それが決め手だ、断じて思いつかないとか忘れそうだから絶対に忘れない名前をつけたとかではない。

決してFF8のチョコボは影が薄いから興味も薄いとか乗り物の名前に関心が無いとかそういう理由では無いのだ。

 

そしてこれは名付けに全くもって無関係な余談なのだが、前世の私はポケットステーションを持っていなかったのでお出かけチョコボRPGが出来ず、それはそれはもう羨ましさで悔しい思いをしながらFF8をプレイしていた。

 

 

 

 

早速愛しのチョコボちゃんに乗った私は目的地に移動する事にした。

 

 

「我々のセントラ大横断は始まったばかりだ! 行くぞチョコボ! 気を緩めるなよ!」

 

「クエーッ!!」

 

 

私の決意にチョコボが呼応し勇ましい雄叫びをあげた。

 

 

大昔は世界で最もセントラ文明が栄えていた。

月の涙と呼ばれる月から大量のモンスターが降り注ぐ大災害が直撃したおかげで地面がエグれ、島が寄集まったような地形になってしまった。

月の涙に襲われて滅んだセントラから、エスタとドールに別れて人々が移住したのが現在の世界に繋がっている。

その名残りが廃墟となったセントラ遺跡である。

 

 

セントラ遺跡に入る気は無い。

菱型に聳え立つこの遺跡は悪魔を模した像とゲーミング発光する階段があり、FF8好きにとっては観光スポットとしてまあまあ魅力がある見た目をしている。

しかし、ここには乱入型のG.F.であるオーディンが居る。

 

オーディンさんは遺跡に入ると20分後にゲームオーバーとなるカウントダウンを始める。

カウントダウン以内にオーディンを倒せず斬鉄剣を喰らい死ぬのも怖いが、万が一勝利して仲間になるのもこれはこれで怖い。

オーディンさんは即死耐性を無視して敵を殺すG.F.だ。

その制御は効かず、気まぐれに現れては敵を屠って行く姿はカッコいい。

だが今後の人生至る所でおっさんが気分次第で乱入してきて敵を切り捨てていく、そんな一生になるのは嫌だ。

 

 

とにかくカッコいいけど、融通が効かなそうな危ないおっさんに付き纏われるのは御免なのだ。

FF名物モンスターのトンベリも住んでいるから刈って食べたりしてみたいのだが、カウントダウンがゲームと同じように遺跡を出ても終わるのかどうかわからないし怖くて近寄れない。

ここは遠くから写真撮影するだけにしておこう。

 

 

 

岩場と砂利とモンスターだらけで一面そればかりなのだが、何故かこの大陸の港には孤児院があった。

過去形だ、今は廃墟と化した建物は魔女イデアの家であり、原作メインキャラ達が幼少期に居た孤児院だった。

 

はっきり言って孤児を集めるにしても大変すぎる立地だろう。

イデアは幼い頃から魔女だったので、あまり人と関わり合いになりにくい場所に住もうと思ったのかもしれない。

 

ここに来ても何も無いし私は廃墟マニアでもない。

だがFF8マニアではあるので来てみたのだった。

 

 

まあ来てみて、あの場面のあの砂浜だとかここがスコールとリノアの約束の場所かという感激はある。

 

だがそれ以上に寂しい場所だと思ってしまう。

魔女アルティミシアからの支配を逃れた後のイデアは廃墟と化したここに住んでいた筈だが正気だろうか?

 

シドと一緒だとしても雨風は凌げるのか、という疑問が尽きない。

この環境で過ごす辛さは愛の力でなんとかなるものなんだろうか。

思い出がある世界だから我慢できたのか?

 

もしかしたらイデアとシドは自罰的になってたのかもしれない。

そうでなければこんな寂しく雨風も吹きっさらしな廃墟、いくら思い出が詰まってようが人が住むには整備が足りてなさすぎる。

誰もいない大陸でここに住んでいたら心が病むだろうから、さっさと人の住んでる大陸に行った方が良い。

そう思ってしまう私はリアリストなのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

「凄い食材だぞこれは……」

私は思わず唸った。

 

キマイラブレイン。

鳥、山羊、竜、獅子、4つの頭が上下左右に付いている4足歩行のモンスターだ。

その上、翼も生えていて尻尾がコブラという欲張り具合は実際に出会うと凄まじく見応えがあった。

鳥肉、山羊肉、竜肉、獅子肉、蛇肉がこれ1匹で食べられるという私が想像した最強のバラエティパックを具現化したかのような生物だ。

 

鶏肉は言うに及ばす、山羊肉はほぼ臭みの無いジンギスカン。

蛇肉は鳥肉と青魚を足して二で割ったような味で、骨が多いので汁物にしたら最高だった。

ならば竜肉とか獅子肉は美味いのか? という疑問もあるだろう。

 

胸をはってこれだけは言える、竜肉の美味さを知らないのは人生損している。

魔力の豊富な味とでも表現すれば良いのだろうか? 大きな魔力をその身に宿すモンスターなのでデフォルトで肉が魔力漬けになっていて噛むたびに細胞からケアル汁が染み出してくるような……。

 

確実に前世では出会えない味であり、食べると全身のミトコンドリアが騒ぎ出し生物としての原始的な喜びを思い出させてくれるそんな肉だ。

有り体に言うとめっちゃ美味い。

 

 

獅子肉……というかどう見てもライオンの顔がついてるからそう呼んでみたのだが、ライオンはこの世界では存在しない伝説上の生き物な筈である。

ある時酒の席でカードしている時にキマイラブレインのライオン頭について話をしてみた所、どう見ても猫だろこれはと言われた。

 

その後、他の人にも何度か聞いてみたが返ってきた答えは全てライオンではなく猫という認識だった。

いや、ライオンが猫科なのは間違っていないから、ある意味本質を捉えてはいるのだが……。

 

 

つまり獅子肉はこの世界の人間から言わせてみれば猫味という事である。

今の所猫型モンスターは食べた事がないし、肉が少なく前世と今世合わせても好んで食べてる人が居るイメージが無い。

おまけに肉食動物の肉は不味いとも聞く。

 

可食部が少なくても味が良いなら食べる人は一定数出てくる気がするので、おそらく味はわざわざ食べる程でもないのだろう……。

だが、キマイラブレインの獅子肉はうまい。

これだけ身体にしっかりと筋肉がついてると食べられる量もあるし文句無しに合格だ。

 

げんきひゃくばい! と大声を上げたくなる味だった。

 

 

 

 

セントラの東、エスタ大陸という扱いをされている方面にはカシュクバール砂漠という砂の世界があった。

私がわざわざ面倒な道のりを踏破してここに来た理由、それはジャボテンダーを見るためである。

熱い太陽、足を取られて歩きづらい砂、水の無い世界、チョコボが居なければ来ようとは思えない環境だ。

そしてそんな過酷な環境を元気に走り回るサボテンダー。

 

サボテンダー。

最早説明不要の手足があって動くサボテンモンスターである。

非常口のマークのような見た目で素早く走るサボテンダーには中々攻撃が当たらない。

 

そのくせこちらには針を飛ばしてくる曲者だった。

目などに当たらない限り針の1本1本は短く大した事は無いのだがそれを何本も飛ばしてくるから厄介だ。

小さくて細い針の痛みは意外とそうでも無いし、ケアルで治る程度の傷しか受けない。

 

だが戦闘以外でもこの針は厄介な事がある、飛ばされた針はゲームと違って残るのだ……。

私はこの事を実際に戦ったあと体験して知った。

 

 

サボテンダーというFFのシンボルマークに出会えた感動はすぐさま消え去り、残ったのは針塗れの服とサボテンダーの死骸と憂鬱さだけだった。

服に刺さったままの沢山の針……。これを取るのは面倒過ぎる。針に刺されるよりもこちらの方がダメージがでかいかもしれない。

少し考えればわかる結果だった筈だと己の浅慮を恨んだ。

 

ゲームでは可愛げのあるマスコットキャラクターだったが現実になると出来るだけ出会いたくないモンスターだった。

 

幸いサボテンダーは戦いを避けて逃げる傾向にあるのでこちらから追いかけなければ交戦する事もない。

だが私はゲームのちしきでおいしいG.F.成長用稼ぎモンスターとしか考えていなかった。

その結果がこれだ、もう二度と戦いたくない。

 

 

言い訳をさせて貰うなら実際にサボテンダーと戦う事ができる地域はここぐらいなので、普通に生きている人はまず戦う事が無く、その分情報も出回っていなかったのだ。

一応カードでは出回っているので見た目や名前は知られている。

 

 

せっかく倒したんだから食べてみるか……。

 

切ってみると意外にも水分が少なくスカスカしている。

普通サボテンは水を蓄えるものじゃないのか……?

素早く動くために体重を減らす事を選択して極力水分を減らすように進化したのだろうか?

水属性が効くのは水が染み込むと重くなり動きが阻害されたり体内が損傷しやすいとかそういう事かもしれない。

 

これまた不幸中の幸いだが、スッカスカなのに味は美味しい。

少し湿気たポテト菓子のような塩をかけて食べたい味で、干して水分を飛ばして食べると殆どスナック菓子のようだった。

ここでもやはり針が邪魔なのでファイアで表面を炙り針を焦がして折ると調理しやすかった。

 

サボテンダーといいキマイラブレインといいこの砂漠、乾いた大地というシチュエーションに反して食が豊かである。

 

 

 

そしていよいよ砂漠の縁に来た。

海を挟んだ向こう側にはサボテンダーアイランドと名付けられている砂漠の小島がある。

双眼鏡で見るとその島からオシャレなカール髭をつけた巨大なサボテンダーが突き出ていた。

 

(でっっっっっ!)

 

 

ビル並みに巨大なサボテンダーの親玉、ジャボテンダーである。

親玉と紹介したが実際他のサボテンダーを率いてる訳でも無し、サボテンダーと比べて種族内のヒエラルキーがどうなっているのかは定かではない。

 

 

「このデカさの生き物というのは半端なくヤバいな……。流石に凄すぎる……」

 

 

デカい半端ないヤバい凄い。

雑誌記者とは思えないほど語彙力が無い、それほどの迫力。

 

サボテンダーの中には稀に長生きして大きくなるものがいるらしい。

恐らくはサボテンダーアイランドという小島の環境こそが生み出したエネルギーが長生きの原因なのではないかと推察する。

 

ジャボテンダーを倒すとG.F.が手に入る為である。

G.F.は特殊なエネルギー生命体でありイメージとしては精霊のような者だ。

実体があるのか無いのかあやふやで、ある一定の力場で姿を現す。

それがどういう条件下なのかは定かでないのだが、何かしらの強い想いや信仰心などが集まった場所やシチュエーションに産まれる、または現れるのではないかと雑誌のG.F.研究レポート記事で紹介されていた。

 

あれは言わば沢山のサボテンダー達の意思が積み重なってできた存在なのでなかろうか。

 

ジャボテンダーはその巨体でありながら地中に潜りワープするかのように別の場所からまた突き出てくる。

そんな事が許される質量ではないが、それができているのもエネルギー生命体としての要素が強いからだ……恐らく。

 

 

はっきりと明言できないのは近寄りたくないからである。

サボテンダーアイランドにはその名の通りサボテンダーが沢山居るというのも嫌なのだが、ジャボテンダーと相対した時に勝てる気がしないのが大きな理由だ。

コイツの使ってくる針万本は確定1万ダメージの回避不可の即死攻撃だった。

死者をフェニックスの尾で生き返らせながら戦います、なんて事は不可能なこの世界では複数人だったとしても挑みたくはない相手だ。

当然1人で戦いを挑むのは論外の自殺行為だろう。

 

 

そもそもあの小島に行く手段も無い。チョコボで歩いて行けるような浅瀬もなかった。

ということで今回は対岸から見るだけになる。

 

あの場所はそれ以外何も無い、その名の通りサボテンダー達の楽園なのだ、邪魔をする事無くひっそりと放っておいてあげる方が良いだろう。

ジャボテンダーを撮影しながら私はそう思った。

 

まあ、とは言いつつも記事にはするのだが。

 

 

 

 




この世界、意外と人が住んでる所少なくて寂しい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。