【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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間話 カードクイーン

 

この世界で恐ろしい普及率を誇っているカードゲーム、正式名称トリプルトライアド。

占い用のカードを大昔の術師オーランが遊べるように改造したのがそのルーツとされている。

 

そして、アビリティ『カード変化』によりカードの種類によって様々なアイテムを作り出し、

戦闘力、経済力、ゲームバランスの全てを終わらせる動きが可能だったFF8の公式チートツールである。

 

私にとって現実と化したこの世界。

カードからアイテムを取り出すことが出来るのかは『カード変化』を覚えるG.F.を所持していないのでわからない。

だが流石FF8の代名詞とも言えるカードゲーム。『カード変化』が無くても便利な存在だった。

 

 

具体的に言うと、世界各地を回る人間にとってこれは非常に優秀なコミュニケーションツールとなるのだ。

世界中どこでもまず大抵の人間はこのカードゲームをプレイしている。

カードゲームから1番縁遠そうな主婦層や老人、国の偉い立場にいる人間にすら広まっていると言えばその普及率の凄さがわかりやすいだろう。

カードを刷っている会社はいったいどれだけの利益を上げているのか想像もできない。

 

犯罪者収容施設、大統領官邸、果ては宇宙ステーションにまで持ち込む人間も居るぐらい幅広くプレイされており、

誰でも一緒に対戦する事で歳の差や初対面の壁を無くせるコミュニケーションツール、という側面が人類の共通認識となって浸透している。

 

この世界は科学力が進んでいる面もあるのだが、とある事情で電波が扱えず携帯電話等も発達していないので一期一会の精神を大事にする傾向にある。

そこもカードゲーム普及を後押ししてる要因の一つかもしれない。

 

 

異なる地域から来た人間は現地で普及していない新しいルールを知っている。

特定地域でしか見かけないモンスター、言わばご当地特産モンスターのカードを所持している可能性も高い。

故にトリプルトライアドプレイヤーは、旅人に対して好意的に接してくれることが多くて非常に助かるのだ。

 

 

 

レイアウトやカードデザインも高級感があるので思わずコレクションしたくなってしまう。

描かれるモンスターは実在するものばかりなので、戦闘をしない人達は集めたカードを見ているだけで図鑑的な楽しみもできるようだ。

 

何らかの記念日や子供の成人祝い、大好きなペットの誕生日などにそれらに纏わる自分の大切な人やペットをカードにして貰い、それを写真のように大事に持っている人もいる。

勿論作ってもらう金額はなかなかなのでそう易々とは注文できないが……。

オーダーメイドの高級腕時計みたいな物と言えばわかりやすいかもしれない。

 

 

カードゲームでオーダーメイドのオリジナルカードなんてゲームバランス的にどうなの? と思うかもしれないが、ゲームを崩壊させるほどふざけた特殊効果がついているわけでもないので、レアモンスターカードより少し強めに設定してくれはするものの意外とゲームバランスは保たれている。

そもそも大事な人のカードをプレイに出す人はあまり居ない。

 

もしもオーダーメイドのカードがプレイに出てきたら周囲は盛り上がり、対戦相手もレアカードを奪ってやろうと勝負が白熱するのでそれはそれでエンタメとしてありなのだ。

万が一対戦に負けそのカードがトレードルールによって相手の手に渡ったとなったら、勝った方も負けた方も一生の思い出となる。

そしてそこから始まる縁やロマンスもある。

 

 

カードゲームの普及率の高さは国境を超えて人と人を繋ぎ合わせ、お世辞や冗談抜きに世界平和に貢献していると言えよう。

おそらくこの世界の住人たちにとってなくてはならない物、人生を豊かにしてくれるツール、それがトリプルトライアドというカードゲームである。

 

 

 

そんな素晴らしいゲームを盛り上げて廃れさせまいと尽力する女性が目の前に居た。

 

 

「おはようございます。今日から取材ですね」

 

白のロングスカートに赤のケープを羽織り、ゆったりとした雰囲気で話かけてきた彼女は数日前たまたま街中で出会ったカードプレイヤーだ。

FF8の名物キャラの1人である彼女を見つけた時はテンションが上がってついカードゲームを申し込んでしまった。

 

 

対戦後にカードゲームについての話を少し聞くと、彼女がどのような活動をしているのかゲームでは知り得なかった部分も知りたくなった。

珍しくモンスターを食べる事以外を取材したいと思ったので、小手調べに明らかに多めに吹っかけてそのあと要求値を下げる交渉テクニックを使って許可を取り付ける事にした。

 

私は冗談混じりに一年間の密着取材をさせてほしいと頼んだところ、なんとOKしてくれる彼女。

え? 本当に一年も密着取材するの? 本業の方の連載ストップしちゃうよ? と冷や汗をかいていたら冗談だと返されて一本取られてしまった。

 

冗談を言わなそうな雰囲気なので本当に焦った、見よう見まねで慣れない交渉術を使うものじゃないなと反省する。

結局インタビュー取材で数日のあいだ行動を共にし、余暇にインタビューするという事で落ち着いたので結果オーライか。

 

 

「トリプルトライアドというカードゲームの良い所が読者に伝わるようにわたしも精一杯頑張るので、よろしくお願いしますね」

 

言葉とは裏腹におっとりとした彼女のマイペースな雰囲気が揺らぐ事は無い

 

 

「おはようございます。気合いを入れてくれるのはありがたいんですが……ありのままのお仕事風景を見たいのでいつも通りで大丈夫ですよ?」

 

「どうやら張り切ってしまったみたいですね、いつも通りにやろうと思います」

 

そう話す彼女からは先程との違いは見受けられなかった。

捉えどころのない女性だ。

 

 

「改めまして、普段はモンスター狩りをしたりティンバーマニアックス社のバトルシリーズという雑誌で、モンスター飯という記事を書いているクレイズ・オクトーといいます。これから数日間よろしくお願いしますカードクイーンさん」

 

私は名刺を渡しながら自己紹介をした。

 

 

「ふふ……勘違いなされる方は多いのですが、実はわたしがカードゲームの普及に力を注いでいるのは仕事ではありません。使命なのです」

 

「そうなんですか……。つまり企業に所属している訳ではなく、基本的に無給でやっているという事ですか?」

 

「はい、お金を頂くのは特殊な講演会や交流会を開きたいと依頼された時ぐらいでしょうか……。まぁ、お金の為にやっているわけではありませんから」

 

「カードゲーム支援団体のようなものを作ろうとは思わなかったんでしょうか?」

 

「これはあくまでわたし個人が好き好んでやっていることでしかないので、それで良いのです。

特定の団体を作り関与しようとするのはトリプルトライアドの為にならないような気もします。

組織になれば融通が効かない事や金銭面でのトラブルも出てくるので、それはわたしの本意ではありません」

 

 

つまり自らの考えで業界を席巻したいわけではないという事だろう。

見返りを求めずあくまでプレイヤー達の自主性を重んずる活動姿勢には好感が持てた。

 

 

「こういう活動をもうどれぐらいやってらっしゃるんですか?」

 

「おそらくわたしがトリプルトライアドにのめり込んでからの人生の大半でしょう……。どれぐらいやっているのか興味もなく数えてなかったので忘れてしまいました」

 

現在の年齢はヒミツです。そう続けた彼女は傲るでもなく嘆くでもなく当然の事のように淡々と答える。

……かのような表情と雰囲気をだしているが、語っている最中は両腕を大きく左右に広げゆっくりとオーケストラを率いるかのような壮大な指揮をしていた……。

何処となく自慢げに見えるのは私の気のせいだろうか。

 

 

「おっと、基礎的な質問を忘れてましたね。カードクイーンさんがこのカードゲームとの出会いと嵌った経緯について教えて頂きたいです」

 

「出会ったのは産まれてすぐでしょうか、父がトリプルトライアドの絵を担当している絵描きの1人なので出会い自体は早く、気がついた時にはカードという物は側に存在していました。」

 

「嵌ったのは17歳の頃です。知人の女性に教えて貰う機会がありプレイしたところ一気に面白さに惹きつけられ、いつの間にか本気でプレイしている人達の集まりに参加する程になっていました。

今まで全く興味の無かった父の仕事が急に誇らしく思えて来たのを覚えているので……。それも嵌った要因のひとつかなと思います」

 

手でゆっくりと空気を巻き上げるように動きながら喋る彼女。

顔と喋り方は澄ましているが、内心テンションが上がっているようだった。

 

 

「は〜意外とカードゲームに嵌ったのは遅かったんですね。勝手に生まれた時からトリプルトライアド大好き! みたいな感じかと思ってました」

 

「結構驚かれるのですが、そういう訳ではありません。カードゲームに目覚める前は……女優を目指し演劇や役者仕事を勉強していました」

 

「役者ですか……あれ? もしかして『魔女の騎士』というタイトルの映画に出ていませんでしたか?」

 

「よくご存知ですね。あれはわたしの引退作です。」

 

「なかなか良い作品だったと思いますが辞めてしまったんですねぇ……。役者を辞めた理由はお伺いしてもよかったりしますか?」

 

「はい、と言っても演劇が嫌いになったわけではありません。トリプルトライアドに出会ってしまったから他の事がどうでも良くなってしまっただけなのです」

 

「あっ……。なるほど完全に理解しました」

 

 

まさに彼女の人生を変える出会いだったという訳だ。

あまりこういうインタビューをする事に慣れていない為、質問の順序がこれであっているのかわからないが……。

まぁ時間はあるのだ、沢山聞けば良いだろう。

 

私は記事の為にというより自分の興味の為に聞きたい質問を続けた。

 

 

「18歳までカードに興味が薄かったという事はカードクイーンというお名前はペンネームみたいな物なんでしょうか? 本名は別にある?」

 

「カードクイーンというのは現在のわたしの本名です。元々生まれた時に親から貰った名前はあったのですが成人してから改名してカードクイーンと名乗るようになりました」

 

名前まで変える意気込みはとても真似できないし誰もしようとは思わないだろう。

まさに人生を賭けていると言える。

 

 

 

日付けが変わって本日はカードの地域別流通枚数調査という名のただひたすらカードゲームをする日だった。

プレイをしつつ並行してカードの流通量調査も行なっているらしい。

 

 

「プレイヤーがレベルの低いカードを使う頻度が増えると、おそらく偏っているという事です。あとは経験則と勘でなんとなく傾向を感じ取り、流通が滞ってるかを察知します」

 

各地のエリア毎にカード自体の枚数が少なくなってしまった場合使用されるカードが固まったりプレイできる人数が減ったりという弊害が起きる。

そうなると、そこのエリアのプレイヤー達はカードゲームに飽きる傾向になってしまう。

その閉塞状態を防ぎ、打破するために枚数の減った地域にはカードを配りに行ったり、ランダムハンドや複数枚のトレードルールを流行らせて流動的にカードが行き渡るよう流通を操作するそうだ。

 

カードクイーンの対戦を見ていると彼女は決まった5枚のカードを使い続ける事がない。

強いカードを5枚選んで安全に勝つのは簡単だが、常に勝ち続けるという事には拘ってはいないようだ。

普段見かけないカードや、低レベルのカードが活躍した時の意外性を対戦相手やギャラリーが知ってくれればもっとトリプルトライアドを好きになって貰えるかもしれない。

だからこそどんなに低いレベルの弱いカードでも平等に選んであげたいとの事。

 

 

二人でお昼ご飯を食べながら話をする。

新しいルールを広めるために依頼されたら、30000ギルでトリプルトライアドが盛んに行われている所に行って講演会や交流会を兼ねた大会を開いてくれるらしい。

マンネリ化を防ぐために依頼される事は結構あるようだ。

 

 

「ルールってそんなに上手く流行らせることができるんですか?」

 

 

今まで同じ質問をされ飽きたであろう当然の疑問にも彼女は丁寧に解答してくれた。

 

 

「カードゲームのコアなプレイヤーの中には長年のわたしの活動を知ってくれる人達が居ます。そのような方々と別の地域のルールでプレイするとこちらの意図を汲み取り、ローカルルールの普及に自主的に協力してくれる人も多いのです」

 

「カードゲームをやるだけで言いたいことやりたい事が伝わるなんて凄いですね……」

 

 

私は長年の活動の重みを感じて思わず唸ってしまった。

しかし場所によっては必ずしもそういう協力してくれるプレイヤーが居る訳ではない。

そういう時は「気合いでどうにかする」らしい。

当然気合いとは地道なカードゲームを繰り返す事に他ならない。

そして彼女はサンドイッチを手に持ったままゆったりとした指揮を始める……。

 

 

「取材を受けたのもあなたと対戦してトリプルトライアドを心の底から好きだ、というのが伝わってきたからなのです」

 

 

指揮が仰々しくなっていく……。

 

 

「ただ……勿論全てのルールが必ずしも流行るわけではありません。しかしあらゆるローカルルールには必ずそのルール特有の面白さが存在しています。それを教えてあげると、今までやり続けてきたルールに飽きている人は自然と別の新しい遊び方をしたくなるものなのです」

 

 

ふりまわされたサンドイッチから輪切りトマトが飛び出し、部屋の隅ではぐれトマトと化した。

 

 

「その新しいルールがエリアの風土や気質に相性が悪く少し時が経てばルールが廃れる事もありますが、そのフットワークの軽さもまたトリプルトライアドの良さなのでしょう」

 

 

彼女の話を聞き、このカードゲームはルールが増えたり減ったりするところまでが大前提。

そういう意識が、幅広いプレイヤーの根底にあるのだとようやく心から理解できた気がする。

 

 

 

既婚者の彼女には6歳になる息子さんがいるという。

 

 

「夫とはこういう暮らしになってもいいなら結婚しても構わない、という約束で籍を入れたのでわかってくれているのですが……。

息子はそう約束して産まれてきたわけではないですから申し訳無さはあるのです」

 

「息子には寂しい思いをさせてしまっています……。しかし、だとしてもカードゲームの発展を優先したいのです」

 

 

これまでの話で、好きな物に対する情熱を持った尊敬できる不思議で面白い女性だと思っていた。

しかし、自らの子供相手だとしてもシビアな優先順位をつける彼女からは、カードゲームに捧ぐ狂気の片鱗が垣間見えたのだった。

 

 




スコールがやってた3万ギルで自分の為にルールを流行らせるというのはガチ勢の番外戦術です。
普通の人はそんな事やりません。
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