【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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13話 トラビア

 

この世界の北に位置する大型の大陸。

常に雪の降り積もる寒冷地、それがトラビアである。

 

 

この地方ではパラパラと降る雪の事を妖精の贈り物と言う。

妖精の贈り物が降る日は何か特別な事が起きるという民間伝承があるらしい。

 

そんなロマンチックな雪が降る日に私はトラビアガーデンに来ていた。

この世界で3種類あるガーデンの内の一校がここだ。

巨大な学校と都市機能が一緒くたになっているので、実質的にトラビアの首都となっている。

何故か関西弁が標準言語として使用され、その印象に違わず住人や生徒たちの気風は明るい。

 

ここは原作パーティメンバーの1人セルフィの故郷である。

そしてストーリーの流れで将来ガルバディアからミサイルが撃ち込まれ、大量の住人とガーデンが滅茶苦茶にされてしまう場所だ。

 

 

私がここに来た理由は当然いつものFF8観光の一種だった。

ミサイルで壊される前のトラビアガーデンはどんな所だったのかFF8好きの興味本位で今のうちに知っておきたいのだ。

 

はっきり言ってめちゃくちゃサイコパスで最低な理由だと自分でも思う。

私は将来起きるミサイル発射の流れを阻止する気が無い。

にも関わらず、これからめちゃくちゃ人が死んでブチ壊れる都市の平和な時代を見たい、だなんて現地の人に知られでもしたら確実にどの面下げて来たんだと言われるだろう。

 

元々トラビア大陸に来たのはここに来るのが目的ではない。

ただ目的地の中継地点として立ち寄るついでに壊される前の風景を見てみようと思った、それだけだった。

 

 

私は学園祭に来ていた。

たまたま今はトラビアガーデンの学園祭シーズンだったらしい。

FF8のデザインできたFF8に似つかわしくない屋台が立ち並ぶ。

 

 

「はい、お兄さんかっこええから私が特別にゲイラ焼き一個オマケしといたるわ!」

 

「おっトラビア語じゃないんやね? もしかしてお兄さん外から来たん? こんなさっむい所に来るなんて物好きやな〜、まぁ気温が寒い代わりにみんなのハートは熱いんやけどな? あはは!」

 

「はいはい寒いのはあんたの冗談、次の人待ってるから逆ナンもその辺にしとき」

 

「もー逆ナンちゃうって! ちょっとええな思たから友達になろうとしただけ〜」

 

「完全無欠のナンパやな、はい次の人、注文決まったら教えてな〜」

 

 

確かに環境は寒いが住人達の熱気は凄かった。

トラビア地方に住む人々の気さくなやりとりと分け隔てない対応は、彼等の芯にある暖かさを感じさせた。

 

ゲイラ焼きという名のほぼタコ焼きを食べながら、私は哀愁を感じていた。

前世の記憶はG.F.のせいでFF8の事以外ほとんど憶えていないが、それでも時たま思い出す事はある。

 

そういえばトラビアに来てから〇〇してクレメンスや、〇〇ニキといった前世で馴染みのある方言の言い回しは聞いていない。

先程のが本当にナンパだとしたら「即ハボやんけ」という言い方になる筈……。

それに一人称はワイで統一されていた気がするのだが、屋台のお姉さんは私と自称していた。

 

(私も〇〇ニキではなくお兄さんと呼ばれたな)

 

確か同じ地域の言葉だった筈だが……。トラビアの方言は前世の関西弁とはまた少し違うのかもしれない。

案外先入観があると細かな差異が出てきて難しい、私はトラビア弁の奥深さをひとつ知ったのだった。

 

 

 

そんな事を考えながら歩いていると案内の看板を見つけた。

どうやらしばらく待っていたらすぐそこで学園祭ライブがあるようだ。

まだ客席に人は少ない。

この世界の中で奏でられる音楽というのはFFの曲という扱いになるんだろうか?

もしかしてノビヨサウンド? そんな事が気になって私はすっかりライブを聞く気になっていた。

そこで、最前列に座りトラビア焼きというほぼお好み焼きを食べながらライブ開始を待つ事にした。

 

 

私はライブでセルフィ・ティルミットに出会った。

ステージに上がり、元気にエレキギターを掻き鳴らす可愛らしい彼女は今15歳ぐらいだろう。

学園祭で上手い演奏をして周囲を盛り上げ、人気者になるという若人憧れの妄想を体現している姿はとても楽しそうだ。

 

最初は楽しそうなメロディの楽曲から入ったバンドは、曲を経る事にそれに伴い演奏がヒートアップしてくる。

あれは……シンセサイザーだろうか? 

この世界特有の機械技術で作られた謎のボードの鍵盤を弾くメンバーの1人は、忙しそうに摘みを弄りながら指を忙しなく動かしていた。

テンポの良い曲が続き4曲目が終わり5曲目に入る。想像していたよりも演奏する曲数が多い。

 

よくこの楽曲数を学業と並行しながら修める事が出来るものだと感心する。

もしかしたら学業の時間を犠牲にしているかもしれない……。

ここまで知らない曲ばかりだったが、演奏自体のクオリティも高い様に思えた。

素人意見だったが、会場の熱気に当てられた私の気のせいでは無いだろう。

素早い指の動きに相当な修練を積んだ跡が見えた気がした。

 

 

数々の演奏で会場の熱気は上昇し寒さを忘れさせて演奏者達は汗だくになりながらラストの曲に入った。

アコースティックギターの弦がポロポロと鳴る。

今までにない急激に落ち着いた曲調。

既に日が暮れかけている中で曲の熱気を落ち着かせるようなそのテンポは学園祭の終わりを象徴しているかの様に思えた。

 

その時、メロディを理解した私の頭の中で脳汁が噴き出した。

私はこの曲を知っている……!

アコースティックギターのソロがポロポロと続く静寂に近い雰囲気……。

しかし私の胸の内は静けさとは正反対だった。

 

早く来いと待ち侘びる脳内がゆっくりとエンジンをかけ始めた。

まるで曲が終わるような雰囲気の弦の音。

それがセルフィのエレキギターによって割り込まれ、強制的に曲の方向性を変更した。

私の良く知るイントロが流れ出す。

 

The Extreme

それは私が愛してやまないFF8を代表するBGMのひとつだった。

最後というシチュエーションに相応しい魔女の曲。

何故彼女達が知っているのかはわからない。

このBGMがこの世にあって良いのかもわからない。

どんな理由でもいい。そこに存在してくれた事が私には嬉しかった。

 

今まで大人しくしていた全てのメンバーが急に演奏を開始する。

爆発的にテンションを上げる会場。

 

ドラムが鳴り響き、更にボルテージが上がった中をエレキギターが駆け巡る。

シンセサイザーから鳴り響くオルガンの様な音が重なり、勢いは最高潮に達した。

 

ヘッドバンギングするセルフィの汗が客席最前列の私に向かって飛んでくる。

 

私は演奏中ずっと音楽に乗っかりながら口を大きく開け、彼女の汗を待ち構えていた。

決して変態的な意味合いでは無く純粋な心で盛り上がれたのだ。

というかさっきからジャンプでパンチラしまくっている。

でも今はそんな事どうでも良かった。

いやどうでも良くはないか。

 

一瞬でもパンチラをどうでも良いと思わせる、それはとても難しい事だと思う。

 

最後にアレンジされたメロディでまとめられつつ楽器が一斉に鳴り、全ての演目が終わった。

演奏をしてくれたセルフィバンドのメンバーに客は拍手と歓声を送り、当然この日の学園祭ライブは誰が見ても大成功だった。

 

 

普段なら絶対にセルフィに話しかけに行っていた筈だが、今日の私は違った。

セルフィがいま味わっているであろうこの演奏と文化祭の余韻を邪魔したくない。

部外者が入るのは無粋、ここから先は彼等だけの時間だ。

勝手に納得して身を引く。

だが本心は少し違った。

何を隠そう、私も余韻に浸りたかったのである。

 

 

それにしても学園祭でバンド演奏……なんという爽やかな青春の発露なのだろうか。

今世における私の青春といえばモンスター退治が大半で、こういう集団での活動は行っていなかった気がする。

 

というかよく考えたら今まで私は何処かに所属する事も無く、殆どボッチで各地を徘徊してただけなんじゃないか?

いや、言い訳をさせてもらうと生きていくのに精一杯だっただけなんだ。

誰とも交流してないわけじゃない。一期一会の縁が多いだけだ。

 

 

(演奏、最高にカッコよかった……何か楽器でも覚えようかな……)

 

そう思う私は影響されやすいのかもしれない。

しかしやはり美男美女が音楽を奏でるというのは絵になる。

ならば私も楽器を習得してイケメン度を上げるというのはありだ。

 

前世のファイナルファンタジーの名曲達を忘れないように自らが奏でるというのも乙かもしれない。

なんなら各地域に行った先々でその土地のbgmを演奏するというのも良い。

 

 

この世界は私にとって現実であるが故に、深くまで見渡せるメリットがある。

反面、あの思い出のBGM達が音としてついていないという大きなデメリットもある。

 

ファイナルファンタジーⅧから音楽を取り外す……? そんなのありえない。

FF8の良さに音楽は欠かせない物だ。

知らなければ損をしていると胸を張って言える程の名曲の数々……それが無い。

先程聴いたThe Extremeは当然としてアイズオンミーやカードゲームのBGMなど、一部の曲は存在しているがそれでもやはり殆どのバトルや各マップの曲は無い。

 

もちろん本当に存在していないかは全ての音楽を聴いた訳じゃないので断言出来ないが、少なくとも私が知っている範囲には存在しなかった。

意外にも戦闘終了時の勝利BGMは存在している。F.H.のニュース番組で流れていたから驚いた。

 

 

 

実はG.F.の恩恵というのは戦闘時だけではない。楽器を覚えるのにも役に立つ。

基本的にゲームでやっていたジャンクションは戦闘時におけるカスタマイズだと思っていい。

戦いに関連しないパラメーターにも応用し、ジャンクションによる数値上昇効果を割り振って適用する事が可能だ。

 

 

例えば体力にジャンクションする応用で視覚、聴覚、嗅覚や肌艶なんかも強化できたり、育毛を促進したり、新陳代謝を強化して即座に体脂肪を燃やす事もできる。

 

ちなみに体力Jの応用で体臭や口臭をキツくする、精力を強化する、等も可能である。

おそらくキスティスの固有技であるくさい息はこれを応用し、バイオやペインといった状態異常系魔法を組み合わせていると思われるが私では再現できなかった。

 

精神にジャンクションするというのは曖昧な表現だがこれは脳関連に応用できる。

記憶力や理解力も上がったりするのでG.F.を使っているSeeDは普通の人よりも学習能力が高い。

なので楽器の上達スピードも速いという訳だ。

補足情報だが記憶力を上げてもG.F.による物忘れは防げないようだった。

 

 

なんとFF8は運にすらもジャンクションできる。

これを辿れば何かしら身体に関する物理的要因によって運の良さが決定している、という証明になる……かもしれない。

 

だが運という項目を応用して何を強化すればいいというのだろうか?

私の矮小な脳ではうんこというあまりにも幼稚な一言しか思い浮かばないのであった。

 

 

 

雪がはらはらと降る中で私はテントを張った。

明日は少し遠くにあるチョコボの森に寄り、乗り物移動で目的地を目指す。

その為に今日はトラビアガーデンからある程度歩いて野宿をする事にした。

 

それにしても良い学園祭だった。

別に学園祭の時期を狙って来た訳ではなかったが、偶然にも良い思いをしてしまった。

妖精の贈り物が降ると特別な事が起こる。そんな迷信もあながち間違いではないのかもしれない。

 

 




意外と重要な説明回。
この小説こんな回ばっかですが、あと5話か6話ぐらいで原作キャラと絡む回も出てくるので許してください。
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