【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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15話 シュミ族の村

 

トラビア大陸の北西、一面雪景色な世界とは裏腹に地下323Mに陽の光が照らす自然豊かな世界があった。

 

 

高い技術で穴を掘りエレベーターを設置して地上との行き来を可能にし、その世界に住んでいる者達がいる。

シュミ族と呼ばれるその名の通り趣味に拘りを持つ種族だ。

 

容姿は象のような肌質をした人型の白い大福……とでも表現すれば良いだろうか……?

人間では無くモンスターでも無くケモノでも無い。

更に心の積み重ねと在り方によって見た目も変化していくというまさにファンタジーの世界の異種族といえる。

 

 

地下に作られた村に住んでいる彼らシュミ族は高潔で清らかな種族だ。

あまり外の世界に良い印象がないようで、村に入れて貰えるのは商人ぐらいらしい。

まあ原作ではラグナが運び込まれていたし、余所者を近づける気が無いと言うその割に結構気さくな性格をしていた。

 

私はシュミ族の生態や文化にも興味があったので、仲良くなるために原作知識を濫用する事にした。

彼らはラグナと接して、そのみりきが何なのか像を作って研究しているらしい。

そのため、一緒に過ごした経験のある私の情報も少しは役に立つだろう。

ウィンヒルにいた頃のラグナや彼が出た映画の話をしたり、今も元気に周囲の人々に支えられ頑張っていると伝えた所、非常に喜んでくれた。

 

 

「ラグナ殿が発する“何か”に惹きつけられた我々も、彼を支えたいと思う気持ちはよくわかります」

 

そう話す長老はラグナの話のお礼に大きな手の平を見せてくれた。

普通の人間にとっては、お礼としてそんな物を見せられたところで困惑しかないだろう。

だが、私は原作知識でそれがシュミ族なりの遊び心であり、手の平を隠して生活する文化ゆえの誠意の見せ方でもあるという事を知っていた。

サブイベントで見た流れを実際に体験できた事に喜び、彼らの心からの感謝を嬉しく思う。

 

 

彼らと親しかったラグナの情報を話す事で村に入る事に成功した私は、シュミ族の村にしばらく滞在させて欲しいとお願いした。

シュミ族は何もしない者には何も与えない風習がある。

 

目に見えない心や本質を大切にする彼らは、自らの為に何かを要求したいわけでも何かをさせたいわけでも無い。

怠惰で居る事と怠惰を許す事の不健全さが心の澱みになる、それを意識的にも本能的にも知っているのだ。

 

そうして村長の家を出たところで、入り口を守っていたムンバにペコペコと挨拶をされて送り出された。

 

シュミ族は違う姿に身体を急変させる、その中でも最も彼らが追い求める理想がムンバだ。

朱色になった二足歩行のネコ科動物の姿をしているが、彼らに言わせるとケモノでは無いらしい。

 

そんなムンバは当然彼らからは崇拝されているが、人間の社会では知能があるケモノ程度にしか認知されていない。

低賃金で長時間労働させられ、雑に扱き使われているのがデフォルトという悲しい扱いも受けている。

そもそも普通に生活していたら見かける存在じゃないので、人前に出ることの無い一部の特殊な職業に割り当てられている事が多いようだ。

 

この世界の人間は時に厳しい差別を垣間見せる。

 

 

 

指定された雑用を手伝う事を対価に滞在許可を貰った。

私は早速、物作りに欠かせない様々な石を拾ってくる事になった。

まあこの雑用も、村と住民を知ってもらうための見せかけだけの物でしかない。

 

当然私は、彼らが形だけのハリボテの雑用を要求していると知っているので拒む気はない。

自分達をわかって貰いたいと思った人にのみ行う要求、それは受け入れられた証でもあるのだ。

 

 

そうして雑用をこなす合間に彼らの仕事を見て、彼らの家におじゃまして、彼らと一緒に食事を取り、彼らと一緒に語る。

私は特に仲良くなったシュミ族の一人と話していた。

 

 

「お客人、色んな石があるのはご存じだと思いますが、その中でも私はこの水石の素晴らしさにとり憑かれてしまいまして……」

 

彼から見せてもらった水石は石なのにどことなくプルプルして水々しい。

確かにこれは面白い。

興味深い石を触りながら相槌を打ち、彼の話を聞く。

 

 

「この石は加工品に使われる以外にも、程よく柔らかいので食器洗いにも便利なのですね。色々使える用途があるのです」

 

そう言いながら見せてくれたベッドは、水石が敷き詰められていてまるでゼリーの上に寝ているようだ。

ウォーターベッドのような寝心地に夢中にさせられる。

いつの日か私も何処かに腰を下ろして家を構える日が来るのだろう。

 

その時は家具を作って貰えないだろうか? そうお願いすると「お金次第ですね」と言われた。

シュミ族という名前から、如何にも趣味に傾倒してそれ以外は疎かにするかのようなイメージがあるが、この種族……意外と金銭のやり取りに関しては強かだった。

 

私はどことなくひんやりとした水石を、指で摘んだり擦ったりして感触を確かめる。

水に濡らしたグミのような感触のそれは、石としての頑丈さも有しており、触り心地と滑らかさに反して手が濡れた痕跡は無い。

水分が潤滑油になっている訳では無いようだった。

 

 

「これはもしかすると、アダルティな業界で革命を起こす素材かもしれない……」

 

あまりにも有用性がありそうな素材なのでつい口走ってしまった。

ついでに私はどうしても気になったので失礼を承知で質問する。

 

 

「興味本位で凄い失礼な話を聞くんですが……シュミ族の人達は磨き上げた技術でそういった物を作ったりする事はあるんですか?」

 

「そういった物……ですか。実は我々の中にも昔そういう……人の世界で言う所謂えっちぃ物を専門に作る職人がおりました」

 

彼は私の失礼すぎる質問にも気を悪くせずに語ってくれた。

 

 

「彼はシュミ族として当然ながら己の技術を高めようとしていました。当たり前ですが……自らが作った試作品の改良を重ねるためには、自分で試してみなければ始まりません」

 

「その者はクオリティにこだわるあまり、必然的にそちらの方に傾倒していく事となります。しかしながら我々シュミ族はある時を境に己を変身させるという性質を持っているのです」

 

「その変身は心の在り方によって様々ですが、邪な気持ちが強い者程醜くなるとされています」

 

なるほど、話が見えてきた。

 

 

「つまり……そのエログッズ職人は変身の時を迎えて醜い姿になってしまった……ってことですか……」

 

「いえ、違います。その者は醜い姿になったわけではありません。ですが少し性に傾倒した姿と性質を宿すようになってしまったのです」

 

そもそも性欲という物が悪と決まっている訳ではありませんからね、と注訳しつつも目の前のシュミ族は先を話す。

 

 

「そして彼はムンバに無理やり手を出そうとして、ギリギリの所でそれが発覚し村を追放されました」

 

やっぱ性欲は悪じゃねーか。

 

 

「我々はその時知りました。シュミ族としてのこだわりがそちら側に向くと、最終的にムンバに興奮してしまうようになるという事を」

 

「まあ当然だと思います。ムンバの精悍な顔立ち、愛くるしいピュアな瞳、創作熱を象徴するようなうんたらかんたら────────」

 

長い……。

 

 

「──それらの要素を考えたら、ムンバにそのような感情を抱くのは我々シュミ族にとっては自然の摂理でしょう」

 

「なので我々は村長の命令もあり、ムンバが今後そのような目に遭わない為にも、

本当に必要な時以外には性方面の事柄に傾かないように、各々で極力自粛しながら生きているのです」

 

確かにムンバの容姿を事細かに、必要以上に熱を込めて説明する彼からはその素質の片鱗を感じるので英断かもしれない。

一応元は同じ種族なのだから合意の上ならば良いのでは? と聞いた所、また長いムンバに対する拘りを聞かされてしまった。

なんだか墓穴を掘ってしまったかもしれないが、要約すると尊い者をそういう目で見たくないし関わらせたくないとの事。

 

 

「ちょっと語りすぎちゃいましたね……てへへ」

 

照れ笑いで誤魔化す彼は、古臭い萌えキャラみたいな仕草で自分の頭を拳でコツンと叩いた。

全然可愛くない。

 

しかし、生きていく上で避けて通れない欲求を自ら節制しているというのは凄い事だ。

私はその自己抑制に精神性の清らかさと気高さを見出し、なぜだか少し尊敬の念を覚えたのだった。

 

 

 

 

そうして家を回る中で今までの活動で得たモンスター料理の話をしたり、シュミ族の作った創作物を見せてもらったりもした。

 

石を基調とした製作物はどれも独自の魅力を放っている。

カラクリ細工が施してあり、石で出来た出っ張り模様を押すと形が変形するペンダントや、

音楽を鳴らせながら、サボテンダーのカラクリ人形がリズムに合わせて手足を上下に振る置き時計など様々で面白い。

思わず欲しくなってしまうがこれは別に売り物では無いようで少し残念。

 

ラグナの像も見せてもらった。

まだ未完成なのだというが、その熱意を直に感じるクオリティに驚く。

ちょっと顔かっこよく作りすぎじゃないかと思うような気もしたが、ラグナはイケメンだったしこんな物かもしれない。

 

 

それにしても石の使い方が感心するほど上手い。

 

天然素材の模様で瞳を再現したり質感を表現したりと、半端な技術力で手を出そうとしたら安っぽくなってしまいそうなやり方を見事に調和させ、上品に纏めている。

様々な種類の石でカラーリングを再現するのも凄いが、石を接着剤などを使わずに削ってピッタリ嵌め込むだけでくっつけているのも凄い技術だ。

まだ未完成なのに十分楽しめるからこのままで良いのではないかと思うほどである。

 

そんな作品を見て彼らを知りながら過ごす日々は、普段のモンスター狩りの疲れを忘れさせてくれる物だった。

 

 

 

「私達の話を聞いたり世界中で体験した話を語る貴方の瞳は、まるでラグナ殿のように純粋無垢で煌めいていました」

 

「貴方の発するそのエネルギーはラグナ殿とは違いますが、不思議な魅力を発しています。貴方の好きな物を追い求める熱意と我々の拘りには、少し共通する何かを感じますね」

 

確かに私は好きな物を追い求めているが、それが誇れるような内容でもないため、謙遜して答えを返す。

 

 

「正直言って自分が誇れる生き方をしているとは思ってませんでした。ですがそう言ってもらえるのは……なんだかとても嬉しいです」

 

似ていると言ってくれるなら、少しは己に誇りを持とう。

 

これからはシュミ族の名誉に恥じない生き方をする。

そう思う私の気持ちは今までの傾向からおそらく1週間も続かない。

 

 

 

そんな話をしていると、手の平のおまけとしてついでにくれたフェニックスの羽とオーラストーンを加工してアクセサリーを作ってくれるという。

フェニックスの羽という戦闘不能から復活させてくれるG.F.を呼び出せる貴重なアイテムを頂ける。

それだけでもありがたい事なのに、どれだけおまけしてくれるのか。

 

 

命の保険という物がどういう扱いなのか現実になった今確かめる術が無いが、私のライフワークには喉から手が出るほど欲しい逸品だった。

その上、加工して持ち運びもしやすくしてくれるとは、嬉しいやら申し訳ないやらで何も返せない自分が恨めしい。

 

 

形はどうするか聞かれたので私はライオンの事を説明し、それをイメージしてほしいと厚かましい無理難題をお願いしたのだが、そのデザインを煮詰める為の議論が白熱。

親の結婚指輪でもダイヤのネックレスでもどんな形態でも良いので、デザインを決めるコンテストが開催される事になった。

のどかでゆったりとしたシュミ族の村で、珍しく大々的なイベントが行われて住人たちが賑わう。

 

 

「ライオンという気高き幻想の獣にピッタリなデザインは、やはりムンバが適任なのではないか?」

「いやいや、ムンバはケモノじゃない、確かに気高さはピッタリだがそこはやはり譲れない」

「何もムンバをそのまま使う必要もあるまい、ムンバの形をもとにしてアレンジを加えれば良いのでは」

「そうだな、ムンバを基点により野生的で荒々しくデザインしてみるか……」

「しかし、ムンバはすでに野生的で荒々しい魅力も兼ね備えてますからねぇ……難しいなぁ……」

「ラグナ! ラグナ!」

 

 

どうやらアクセサリーはネックレスに決まったらしい。

フェニックスの羽を使う時点で指輪は無いし、イヤリングも厳しいからまあ無難なところに落ち着いた。

民族風のネックレスに、ライオンを模したオーラストーンのペンダントトップとフェニックスの羽が付いている。

デザインはやはりムンバをアレンジしたようだが、偶然にもライオンらしくなっていた。

 

コンテストの優勝者には私の手の平を見る権利が贈呈される。

安くて済むのはありがたいが、なんだか実情を知っててもこれで良いのかと少し申し訳ない気持ちになったので、ルブルムドラゴンで作った保存食をオマケで贈呈した。

作り手として自分に作れる物といえばこれぐらいだったが、

「その気持ちこそが我々にとって最も嬉しい事だ」と言われたので、結果的に私の行動は正解だったようだ。

 

 

 

エレベーターに乗り込み設置してある椅子に座る。

扉が開き、地上へと戻った私をトラビアの冷えた空気が出迎えてくれた。

入り口で3人のシュミ族がお見送りしてくれる。

 

 

「またのお越しをお待ちしております」

 

「右に同じ」

 

「左に同じ」

 

彼らは入り口でドローポイントと呼ばれる魔法が手に入るポイントを守り、それで商売をしている3人だ。

村の入り口を守る任務を任されているとかでは無い。

ただ純粋に商売をするために自主的に立っているようだった。

私はここに入る前にアルテマと呼ばれるその魔法を購入させて貰ったが、当然出て行く今も購入させて頂こうと思う。

 

 

こんな所で商売していて魔法を購入してくれる人が私と原作パーティ以外にいるのだろうか?

おそらくこの場所を知っている人はほとんど居ない。

彼らは特殊な魔法だとは話してくれるが、詳しくどんな魔法が手に入るのかすら教えてくれない。

金額も中々なので買おうとする人物はまず現れない筈だ。

私も原作知識でアルテマが手に入ると知ってなければ買おうとは思わないだろう。

 

この世の中には金稼ぎが得意でガーデンを立ち上げ、更に商売を大成功させたシュミ族もいる。

だが、ここにいる3人は金儲けの才能は無いみたいだった。

 

 

雪の降り積もる寒さに凍える土地で、ほぼ誰も来ない場所に立ち続けている彼らの日常。

村に滞在している間も彼らが降りてくる所をほとんど見ていない。

たまに交代で上から降りてきて飯を食いに来るみたいだが、基本的にずっと上でドローポイントを取り囲み守っている。

そんな寒さと虚無の繰り返し……考えれば考えるほど不憫に思えてくる。

 

左右にいる2人は、自らの言葉を真ん中担当のシュミ族に託しているため、

常に「右に同じ」「左に同じ」としか喋らない。

おそらく既に精神崩壊している。

 

彼らがあまりにも可哀想なので、トラビア地方に来た時は必ず立ち寄って買ってあげようと思った。

 

 




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