【完結】FF8の世界に転生してスローライフを満喫する話。   作:速射弾

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20話 森のフクロウ

 

デリングシティから電車でティンバーに着いた私とリノアは、兄妹のふりをしてティンバーの安いホテルに宿泊する事になった。

 

私達はおそらく数日かけてレジスタンス組織に取次いでもらう事になる筈だ。

しばらく森のフクロウに入れるまでホテル暮らしになりそうだ。

 

いや、森のフクロウに入っても住むスペースが貰えるとは限らないか……。

借家を探す必要があるかもしれない。

私一人なら街の外でテントでも張って野宿しても良いし、ホテルに泊まりたくない日はいつもならそうするのだが、お嬢様育ちのリノアにそんな事させるわけには流石にいかないだろう。

 

 

酔いが冷めた翌日、私の脳内は一気に冷え込んでいた。

冷静に考えて軍のトップが溺愛している娘が居なくなったら、権力を使って軍総出で探し出そうとしてもおかしくない。

 

「もしかして誘拐犯の私は捕まって収容所送りにされたり、死刑にされてしまうのでは……?」

 

顔が青白くなった私の不安にリノアは何事もないかのように答えた。

 

 

「じゃあ父親に手紙出しとくね、しばらくボディガードのアンジェロと一緒にティンバーに居るから会いに来るな。って言っとけばOKだから」

 

彼女らしさ満点のとても豪胆で可愛らしい解決方法だった。

さすが私の心のお師匠様だ、頼りになるぜ。

というかおそらく、アンジェロはカーウェイ大佐からの信頼も得ているようだ。

まさか子犬に社会的地位を上回られるとは……。さすがですアンジェロさん。

 

 

「リノアさん! ありがとう!」

 

なんのプライドも無く6歳年下の女の子にさん付けし、コヨコヨのように感謝を伝える。

昨日まで彼女にお礼を言われていた筈なのだが、立場はすっかり逆転していた。

 

 

 

私達はレジスタンス関係者に取次ぎをお願いした。

 

最初は疑いの目で見られていた。

だがガルバディアの現状を語るリノアの熱意が伝わり、気持ちは嘘じゃないと認められたらしい。

何よりガルバディアの現行体制と、デリング大統領の批判を声高らかに話すのは、軽々しく出来ない危険行為だったからだ。

 

私はガルバディア軍の徴兵で父親を失っているから入りたいという事にした。

一応真実ではあるし、説得力のある動機付けとしてはそれで十分だった。

まあ本音は原作の補完をしたいだけなので、正直まともに抵抗運動をする気は無い。

そうしてレジスタンス組織、森のフクロウに入る事になった。

  

リノアは私の動機を聞いてちょっとショックを受けていた。

 

 

「父親が死んだのは私が産まれる前だよ、その頃カーウェイ大佐が軍の指揮をとっていたわけじゃないだろう。そんな事気にしなくていい」

 

「そうだけど……」

 

「それに薄情なようだけど、会ったことも無い父親の死に深く何かを感じるような性格じゃないよ」

 

後で私がそう言っても、昔は家族が大好きだったリノアは気分を落としていた。

つくづく良い子だと思う。

 

 

 

森のフクロウのリーダー、ゾーンは私より少し歳の若い青年だった。

お腹が緩くなる体質で、えっちぃ本が好きという以外のイメージが薄い男だ。

実際に会ってみて頼りになる気はしなかったが、この年齢にしてはしっかりした受け答えをしていた。

 

 

「現在ティンバーのレジスタンスは森のフクロウ以外活動を停止している」

 

「俺達は少しでもこの街の未来を作れればと思って待遇改善を願い、小さい事から一歩づつ活動しているんだ」

 

ゾーンの話にフクロウメンバーの1人であるワッツが注訳を入れる。

 

 

「まあやってることは街のゴミ拾いとか困ってる人のお手伝いッス」

 

レジスタンスとは名乗っているが、言うなれば街のためにボランティアしてるという訳だ。

原作では頼りにならないごっこ遊びしている連中のように見えていたし、

実際に顔を合わせてみても頼りにならないと思ってしまったが、普通にしっかりした考えを持つめちゃくちゃ偉い若者達だった。

 

 

「よーしこれからアジトに案内するッスよ!」

 

アジトと呼ばれるそれは運行も可能な列車の一角だった。

あらかじめ知識として知っては居たが、地域のボランティアにしては凄い秘密基地だ。

 

 

「これはゾーンの親父さんから受け継いだ物ッス。ゾーンの親父さんは森のフクロウを立ち上げた初代リーダーだったんッスよ」

 

ワッツの案内を受け、私は正直ワクワクしていた。

秘密基地に集まって仲間たちとダラダラ過ごすというのは、なんだか眠っていた少年の心をくすぐるのだ。

 

活動内容に関しても私個人としては全く問題ない。

むしろこの程度の活動しかしてないので摘発から逃れられている部分もあるのだろう。

 

 

 

森のフクロウに入ってさまざまな地域貢献活動や街の清掃活動をしながら過ごす事、おおよそひと月。

 

「なんか、思ってたのと違う」

 

リノアは不満そうだった。

 

 

「レジスタンスって言うぐらいだから、もっと政治家に要求を呑ませるとか大規模にこの国を変える為に活動してると思ってた」

 

「まあ一般的なイメージはそうだ。でも俺達はとりあえず身近な事からコツコツと変えていく事にしたんだ。ティンバーの評判が良くなり、ガルバディアが軽んずる事のできないほど良い街になれば待遇改善にも繋がるかもしれない」

 

そう返すゾーンはまだ二十歳にもなっていないのに堅実な物の見方ができる人間だ。

そんな所が頼りにされている所以なのかもしれない。

 

 

「あっ、でも、このアジトは凄いよね! 小さいけど列車なんて個人で持てるんだってそれはビックリした。うーん……せっかくこんな凄い物があるんだし、この列車を使って何かガルバディアの政治を変える事、出来ないかな……」

 

 

……地域の清掃活動サークルにガチ思想持ちの活動家志望が一人紛れ込んでいた。

 

 

「今は些細な事しかやってない。でもレジスタンスとして活動したいって想いはちゃんとあるんだ。だから月に一度は作戦会議室でガルバディアの政治についてしっかりと語るミーティングを行なっている」

 

「こんな俺たちでも新聞ちゃんと読んで勉強してるッス」

 

そう話すゾーンとワッツには既に両親が居ない。

親は戦争に巻き込まれたり、所属していた反政府組織が摘発を受けてその命を落としている。

森のフクロウはほとんど若者だけで構成されているが、それらメンバー達も同じような境遇が殆どだった。

 

それでもティンバーという街を愛し、どうにか出来ないかともがいている。

安易な手段に手を出そうとしないのは間違いなく彼等の美徳だった。

だがここに安易な手段を躊躇わない過激派テロリストが居た。

 

 

「大統領誘拐できないかな……?」

 

新入りであるリノアが唐突に言い出した言葉にメンバー達は困惑した。

 

 

「あはは、いきなりッスね、大統領誘拐ってそんなこと簡単にできれば苦労はしないッスよ」

 

「この列車に騙して乗せるとか……でどう?」

 

「いきなりすぎないか? まあそんなの普通に考えて無理だ」

 

ゾーンの当たり前すぎる否定に彼女は我慢が爆発して反論した。

 

 

「普通に考えたらデリングをどうにかする事なんてできないの! 何なの貴方達! レジスタンスでしょ!?」

 

リノアは怒っていた。

憤怒に晒されて困惑するメンバー達は、まさか新入りの女の子がブチ切れるとは思っていなかったらしい。

私は腕を組みながら、まだまだ君達は先生の事をわかって無かったようだな、と優越感に浸る。

 

 

「クレイズ! なに自分は関係無いみたいな顔してるの!」

 

しかし、リノアの睨みはどうやら私にも向けられていたらしい。

私は即座に背筋を伸ばし、怒り狂う上司のありがたいお説教を聞く姿勢をとった。

 

 

「どうやったらティンバーが独立できるかを考えるのが私達の役目なんじゃないの!?」

 

確かに彼女の言う通り、本来レジスタンスのやりたい事はそうだ。

人が集まりどんな方法であれ抗議して国に影響を与え、自分達の権利を獲得する。

 

森のフクロウの方針は良い事だと思う。

無視できない観光都市にでもして署名を集め、抗議でもすれば待遇は変わるかもしれない。

それは堅実な選択肢ではある。

上層部の命令が絶対な独裁主義国家相手でなければ、だが。

 

 

「今日から作戦を考える為にミーティングは三日に一回に増やすから、ゾーン! 文句ある?」

 

「え……あ……無い……」

 

綺麗な顔に真正面から睨まれたゾーンは迫力と美貌に負け、即やり込められた。

その様子にワッツが慌てる。

 

 

「ちょちょチョット! 了承しちゃって良いッスか!?」

 

「なんか文句あるの? あ、良い忘れてたけど私ガルバディア軍の大佐の娘だから、定期的に実家に帰って国の大事な情報を手に入れられると思う」

 

「えええええ!?」

 

雑に溢れ出てきた重大な情報に森のフクロウのメンバー達は驚愕した。

当然だ、なんせ目の敵にしてる国の支配階級に当たる人間の家族が居るというのだ。

 

 

「いざとなったら私を人質にして軍部と交渉するってのも有りよね」

 

うんうんと満足気に頷きながら出てきたその発言に、地域のボランティア活動サークルの面々はドン引きしていた。

 

 

既に新入りのリノアに逆らえる者は居なくなっていた。

彼女の付き添いで来たお前がどうにかしろ、と助けを求めるような顔でゾーンが私を見る。

私は無慈悲にも首を横に振り、止める事は不可能だとバツのジェスチャーで彼の希望を断つのであった……。

 

今この時より、森のフクロウはリノアが実質的に支配する植民地となった。

流石は大佐の娘、血は争えないという事だろうか?

当然、この冗談をリノアの前で声に出して言う勇気は私には無い。

 

 

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